かつて天才と言われた落ちこぼれ。ムカついたので自由に生きてたらいつの間にか最強と言われるようになってた件

はくら(仮名)

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第三章 最悪な休日

第四話 こんびに

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「くそがっ。せっかくの休日が台無しだ」

 イライラを滲ませながら文句を言う。住宅地の道を歩いているが、偶然にも周囲の人の姿はまばらだった。おそらく家で昼メシを食ってる奴が多いのだろう。

「ちっ。まあいい。とりあえず、どっかで食いもんを調達しねえとな」

 腹が減っていることは事実だった。本来なら、さっきの通販のスナック菓子と炭酸ジュースで済ますつもりだったのだが、仕方がない。

「確か、漫喫の近くにコンビニがあったはずだ。そこで買ってくか」

 その漫画喫茶は飲食物の持ち込みを許可している店だ。とりあえず何か食って腹を満たしたら、昼寝でもしよう。
 ちなみに、普段なら道の真ん中で独り言なんてつぶやくことはしないが、いまは周りに聞き咎める奴がいないのでしている。誰かいたら変に思われることは必至だろう。
 そして歩くこと十分くらい。住宅地を抜けて広い道路に出る。視界の先にあったコンビニまで向かい、空調のきいた店内に入った。

「いらっしゃいませー」

 レジの向こうにいる同年代くらいの女の店員が言ってくる。休日の昼時だからだろう、店内にはそれなりの数の客がいた。
 まあそんなことはどうでもいい。とりあえずは……スナック菓子のコーナーに向かう前に、いつもの癖で雑誌コーナーへと寄っていく。漫画なら後で漫画喫茶でいくらでも読めるが、一応、最新刊の簡単なチェックをしておくか……。
 と思っていたら、雑誌コーナーの通路を挟んだ向かい側、シャンプーとか歯磨き粉とかを並べている日用品のコーナーに、ラルドの姿を見つけた。
 学生服ではない普段着。フード付きの地味な色のパーカーを着ていて、これまた地味なズボンを履いている。シャンプーやリンスでも切れたのか、熱心にそれらの品を見比べていた。
 が、無視して雑誌コーナーに向かう。下手に話し掛けて長話にでもなったら面倒だ。そうでなくても、プライベートな時間はマイペースに過ごしたいしな。
 しかしそんな思惑に反して、人が来る気配を察したのか、ふと、という感じでラルドが顔を向けてくる。

「あ」

 それがクラスメイトだと気付いたのだろう、小さな声を漏らして。

「カラーくん」

 名前を言ってきた。
 ……ちっ。面倒くせえな。
 だがそんな感情には気付いていないというように。

「カラーくんも買い物ですか。学園以外で会うのは珍しいですよね」

 無視して雑誌コーナーに置かれた本を手に取る。パラパラとめくり、テキトーなページで止めて、視線をそこに落としていく。
 いま忙しいんだ、話し掛けてくんじゃねえ。
 そんな雰囲気を全身から発散させていると。

「…………」

 さすがに空気を察したのだろう、ラルドは気まずそうに口を閉ざすと、また日用品のコーナーへと顔を戻した。
 それでも時折チラチラと目を向けてくるが、やはり完全に無視し続ける。
 そうして少しの時間が過ぎた時。
 雑誌コーナーのガラス窓の向こう側から、一台の自動車がコンビニへと猛スピードで突っ込んできた。

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