かつて天才と言われた落ちこぼれ。ムカついたので自由に生きてたらいつの間にか最強と言われるようになってた件

はくら(仮名)

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第四章

第九話 ひりゅう

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 ……何だ?
 そう思うと同時に、最初は針の穴ほどに小さかった黒点が徐々に大きくなっていき、やがて一体の魔物の姿を取って、学園のグラウンドへと落下してきた。
 まるで隕石が落ちてきた時のような衝撃音を響かせて大地が揺れる。その場から跳ね起きてその魔物の正体を確かめるために視線を向けて……それはワイバーンだった。
 ワイバーン。ドラゴン種族の一種であり、細身で流線形の身体を持っている。グラウンドに落下したワイバーンの体色は深緑色であり、どうやら背中に生えている翼に傷を負っているようだった。

「あれは……ワイバーン……⁉ どうしてこの街の上空なんかに……⁉」

 同じようにその姿を認めたサフィが驚きの声を漏らす。彼女の疑問に答えるように、額に手でひさしを作りながらモードが言った。

「怪我してんな。多分だが、どっかで討伐されそうになってたところを逃げてきたって感じ、だな」

 その時、学園内全体に緊急サイレンがつんざいた。

『緊急警報。緊急警報。これは訓練ではありません。当学園のグラウンドに大型の魔物が落下してきた模様。学園生は速やかに避難し、教師は学園生の避難誘導、及び討伐準備をおこなってください。これは訓練ではありません。繰り返します、これは訓練ではありません!』

 校舎の階下からどよめきが広がっていく。窓から魔物の姿を確認したのだろう、ワイバーンだ! という叫び声もあちこちから聞こえてくる。
 そんな中。

「おいこら、軽率な行動はするな!」
「見て! あれってユキさんじゃない⁉ ゾディアックの!」

 などという教師や学生の声もして、グラウンドに一人の人影……ユキの姿が現れた。彼女は血を流して倒れているワイバーンへと駆け寄っていき、気付いたワイバーンが首を上げて威嚇の咆哮を上げる。
 ユキはその場で立ち止まると自分の胸に手を当てて何かしら言っているようだった。

「何してんだ、あいつ?」

 モードが言う。
 ユキからは距離がありすぎて、さすがに聞き取れない。ので、耳に魔力を集中させて一時的に聴力を強化する。
 届いてきたユキの声は。

「……ち着いて。わたしは敵じゃないわ。あなたの怪我を治しに来たの。お願いだから、おとなしくして……」

 …………。

「……どうやら、ワイバーンの怪我を治そうとしているらしいな」
「「え……?」」

 サフィとモードが顔を向けてくる。どういうことだと聞きたそうなそれを無視して。

「サフィ。ワイバーンの周りに結界を張れ。中の様子が外に見えないようにと、中の衝撃が外に出ないやつをだ」
「それって……」

 結界の内外の関係性を隔てる結界魔法のこと。
 サフィの返答を聞く前に、両足に魔力を込めて、学園の屋上からグラウンドへと飛び出した。

「ちょっと⁉」
「おい⁉」

 二人の驚く声が後ろへと遠ざかっていく。空中にところどころ立方体の足場を形成し、それらを踏み下りながらグラウンドの地面へと到達する。
 目の前に横たわるワイバーンが気付き咆哮を上げてくる。ユキもまた振り返ってきて。

「あなたは……レイン=カラー……」
「よお。昨日ぶりだな、ユキ」

 右手に魔力剣を握るのと前後して、ワイバーンを中心とした周囲にサフィの結界が張り巡らされていった。

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