かつて天才と言われた落ちこぼれ。ムカついたので自由に生きてたらいつの間にか最強と言われるようになってた件

はくら(仮名)

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第五章

第三話 こうがい

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 次の休日。午前。街の飲食店や食料品店が営業を始めるくらいの時間帯に、ある用事で街の入口へと向かっていた時。

「あー、レインじゃーん。何してんのー、こんな時間にー?」

 道を歩いていると、声を掛けてきた奴がいた。視線を向けると、私服に身を包んだトパだった。
 無視しても良かったが、そうしたらそうしたでついてきそうだ。そのほうが面倒だったので、説明する。

「小遣い稼ぎのクエストだ。ギルドで掲載されてたやつで、街の外の村で作物を食い荒らしているバッタを狩ってほしいってな。街の入口で依頼主と待ち合わせしてるんだよ」
「バッタ!」
「いわゆる蝗害ってやつだ。報酬額が良かったんでな。面倒だが、欲しい漫画とかを買うために受けたんだ」
「ほーほー。バッタくらいなら魔法を使えば一掃出来るしねえ。よーしっ、あたしも手伝うよー!」
「どうしてそうなる。報酬の分け前はやらねえし、そもそも応募してねえ奴がいきなり行ったら依頼主が困るだろうが。つーか、おまえの用事もあるだろ」
「用事は特にないよー、朝の街をぶらぶら散歩してただけだしー。それに報酬はいらないって言えば、依頼主の人も了承してくれるんじゃないー?」
「タダ働きとか、俺ならあり得ねえな」
「ちっちっちっ、あたしは面白そうだからやってみるだけだしー」

 人差し指を左右に振るトパ。

「ふん。物好きな奴だ。だが、そんな上着とスカートじゃ、クエストには向いてねえな」
「すぐに着替えるよー、衣装魔法でー」
「よく外で出来るな。もし万が一失敗したら素っ裸なのに」
「だいじょぶだいじょぶ。そこのコンビニのトイレでしてくるからー。ちょっと待っててねー」

 トパがコンビニへと駆けていく。その店内に入っていったのを見てから、再び街の入口へと足を向けて歩き出した。
 ややあって、街の入口へとたどり着き、そこにいた農家らしい服装のおっさんを見つける。おそらく依頼主だろう。

「レイン=カラーだ。バッタ狩りのクエストの依頼を受けたんだが、あんたが依頼主か?」
「あ、どうも、こんにちは。そうですそうです、私が依頼しました。実はもう一人頼んでいるのですが……」

 そのとき、いまやって来た道の向こうから、ドダダダッ! と砂ぼこりを上げるようにして誰かが走ってくる。冒険者ふうの軽装に着替えたトパだった。
 キキーッ! という擬音が聞こえてきそうな勢いで、そばで急ブレーキをしたトパが、息を乱しながら言ってくる。

「ちょっとー、レイン⁉ なんで先に行っちゃうのさー⁉ 待ってて、って言ったじゃん⁉」
「なんで待つ必要がある? おまえは依頼を受けてねえだろうが。おら、依頼主の迷惑になるからさっさと帰れ」
「えーっ⁉」

 トパが声を上げる。すると、会話を聞いてきた依頼主のおっさんが口を挟んできた。

「あのー、もしかしてそちらの方って、カラーさんのお知り合いですか?」
「学園のクラスメイトだ」
「ちなみに、ランクのほうは……?」

 トパに視線を向けると、彼女は、えっへん、と言いたげに。

「Cですっ」
「自慢するようなランクじゃねえな」
「なにおうっ。これでも学園の授業とか自主練とか、簡単なクエストをいっぱいして経験値を稼いでるんだからねーっ」

 そう文句を言ってくる。
 話を聞いた依頼主のおっさんは少し考える素振りをしたあと。

「いや、実はカラーさん以外にもう一人依頼していたんですけど、昨日の夜に、やっぱ虫は無理! とキャンセルの連絡が入ってしまいましてね。困っていたところなんですよ」

 おっさんがトパに顔を向ける。

「なので、もし依頼を受けてくれるというのなら、是非お願いします。幸い、相手は二、三匹ですし、身体も小さいほうですので、ランクがC以上なら大丈夫だと思います。もちろん、飛び込みの参加とはいえ、報酬はきちんとお支払いしますので」
「やったーっ!」

 トパが両腕を上げて喜んだ。

「それでは行きましょうか。ここから馬車で二、三十分くらいなので」
「よーしっ、頑張るぞーっ」
「ははは、よろしくお願いします」

 街の入口近くに停めている馬車におっさんが向かっていき、それについていく途中、トパに言う。

「ちっ。足を引っ張んじゃねえぞ」
「分かってるってー。あたしに任せなさいっ。バッタの二、三匹くらいちょちょいのちょいで片付けちゃうからっ」
「……だといいがな」

 そして馬車に乗り込んで、おっさんが住む村へと向かっていった。

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