かつて天才と言われた落ちこぼれ。ムカついたので自由に生きてたらいつの間にか最強と言われるようになってた件

はくら(仮名)

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第五章

第四話 ろかすと

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「のどかだねぃ」

 ガタゴトと揺れる馬車から草原を眺めて、トパがのんびりした声を出す。
 いま乗っている馬車は客室の設置された乗り合い馬車ではなく、壁板も屋根もない荷台が取り付けられている荷馬車だった。床に牧草や藁などの欠片があることから、普段、農作業などで使われているものなのだろう。

「この辺りは狂暴な魔物があまり出ないからな」
「あっ! あそこにウサギさんがいるよっ」

 草原の草花の間から野うさぎが顔を出していた。朝メシのつもりなのか、そこら辺の雑草を食べている。
 その様子を見るともなしに見ていると、御者台に座るおっさんが声を掛けてくる。

「いやーしかし、相変わらずあの街は凄いですなあ。さすが近代国家の中心都市なだけはあります」

 感嘆しつつも、のんびりとした口調で。

「こんびに、とか、すうぱあ、とか、あとは魔力で動く自動車とか、見るたびに驚かされますよ。帝国や王国の他の街にも仕事や旅行で行ったことがありますが、やはり近代国家のあの街が一番発展してますなあ」
「学園の先生達からは、五十年や百年くらいは時代を先取りしてるって聞いたことがありますねー」
「ははは、まさにそうかもしれませんね」

 トパの言葉に笑い声で応じてから。

「私もいずれは住んでみたいですなあ。でも他の街よりも物価や土地が高くて、中々難しくてねえ」
「あー、それも先生達が言ってました。生活が便利になったぶん、どうしてもそうなっちゃうって」
「難しい問題ですからなあ」

 そうやって、とりとめのない会話をしながら荷馬車は走り続け、やがて一つの農村にたどり着く。そこの一角にある、広い作物畑に向かうと、早速クエストの依頼にあったバッタを発見する。
 数は三体。体長は人間の子供くらいの大きさで、二足歩行で歩き、虫型魔物の特徴である触角と複眼を持っている。口からはギザギザの歯が覗いていて、両手に持つ作物をムシャムシャと食べていた。

「…………」

 それを見たトパが口をあんぐりと開けていた。さっきまで意気揚々としていやがったのに、変な奴だ。

「さあ、狩るか」
「お願いします。私達家族や付近の人達は向こうのほうに避難してますので」
「ああ、終わったら知らせる。待ってろ」
「はい」

 おっさんが向こうのほうに避難していく。
 そして右手に魔力剣を握って、バッタ型の魔物……ローカストデビルへと向かおうとしたとき。

「ちょちょちょ、ちょっと待って! もしかしなくても、バッタってあれのこと⁉」

 トパがびっくりした顔で言ってくる。

「そうだが?」
「そうだが? じゃないよ⁉ バッタ型の魔物なんて聞いてないよ⁉」
「言ったじゃねえか。バッタ狩りだって」
「いやいやいやいや! バッタとしか聞いてないって! てっきり虫のあの手のひらに乗るくらいの小さなバッタのほうかと!」
「はあ? それが分かっててついてきたんじゃねえのか? 服装や装備だって冒険者ふうのそれじゃねえか」
「いやいやいやいや! これは街の外に出るからで、万が一魔物と遭遇したときのためで!」
「なら問題ねえな。いまその魔物が目の前にいるんだから」
「ええ⁉ いやそれはそうかもしれないけど⁉」
「ごちゃごちゃ言ってねえで、ほら行くぞ。俺は左の二体を狩るから、おまえは右の一体を狩れ。多少の畑の被害は仕方ねえが、なるべく畑を荒らしすぎるなよ。あのおっさんに文句を言われて、報酬を減額されるかもしれねえからな」
「…………っ!」

 奴らへと向かい始めると、驚愕した表情をしつつもトパもついてきた。

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