かつて天才と言われた落ちこぼれ。ムカついたので自由に生きてたらいつの間にか最強と言われるようになってた件

はくら(仮名)

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第五章

第十一話 すいとん

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 やはり速い。
 重傷を負わせないように気を付けているのか、ニンジャは小刀の峰側を前にして攻撃してきている。それを魔力剣で受けているのだが……。

「いい小刀持ってやがんな。俺の魔力剣と渡り合うとはな」

 この魔力剣には相当な質量の魔力を注いでいる。並大抵の刀剣であれば、剣戟を交わすだけですっぱりと斬れてしまうはずだ。

「レインどのこそ、良い身のこなしでござる。強化の術を使っている拙者の動きについてこれるとは……それがマホウの効力でござるか?」

 あまりにも速い剣戟の応酬に、互いの刃から火花が散るようだった。

「正確には魔力による身体強化だがな。そんなことより、やっぱてめえ、その身のこなしは強化してたのか」

 しかし、やはりさっきこいつと会ったばかりのときのように、魔力の流れは感じない。となると、これは魔力でも魔法でもない、全く別の力ということになるだろう。

「聞いたことがある。東の国には、気功、とかいう、生命力を自由に使える力があるってな。てめえのそれも、気功ってやつか」
「残念ながら、違うでござる。拙者は忍者、使うのは忍術でござるよ」
「ニンジュツだと?」

 剣戟の隙間を縫って、奴の姿が消える。直後、背後からの声。

「水遁・激流砲!」

 とっさに振り返ると同時に、息を吸い込むような動作をした奴が、次の瞬間にその口から大量の水を吐き出してくる。それはさながら大雨の際の川などでの鉄砲水のようで、一瞬のうちに視界が水色に染まっていく。

「やった! 拙者の勝ちでござるなっ!」
「はっ、ふざけんな」
「えっ⁉」

 海を断ち斬るように、大量の水を左右に両断する。それを見て、勝ったと早とちりして喜んでいた奴が目をぱちくりとさせていた。

「ちっ、ニンジュツか。そういや大昔にそんなものも聞いたことがあるな。いまじゃ、東の国の固有能力と言やあ気功が定番だから、忘れてたぜ」
「わ、忘れないでほしいでござるっ。忍者も忍術もまだまだ現役でござるよっ。いやいやそんなことよりっ、拙者の激流砲を真っ二つとかでたらめでござるなっ⁉」
「デタラメなのはてめえだろうが」

 なんだいまの水の量は。口から出せる量じゃねえし、そもそもどこにそんなに隠し持ってやがった。

「くそが。服も周りも水浸しじゃねえか。それもニンジュツってやつかよ」

 顔を流れる滴を手で軽く払っていると、木の柵のほうからトパの声。

「あーっ⁉ その水飲んだら間接キスじゃんーっ⁉ 絶対飲んじゃダメだからねーっ!」
「……あいつはとことん緊張感がねえな……間接キスとか気にしてる余裕なんかねえってのに」

 呆れた声を出すと、同じようにトパの声を聞いたニンジャが少しだけ首を傾げて。

「きす、とはなんでござるか?」
「口をものにつけることだ。つける対象によって意味が異なる。てめえの国の言葉で言やあ、接吻だな」
「なっ⁉」

 ニンジャが黒布に隠れていない目元の部分を紅潮させた。

「拙者、そんな誰彼構わず接吻するような破廉恥ではござらんよ」
「知らねえよ」

 遠くのトパもまた。

「こらーっ、レインーっ、冷静ぶって解説してんなーっ! もっと年頃の男の子らしく慌てろーっ! そしてあたしに、『こ、これは違うんだトパっ、誤解しないでくれっ!』って弁解しろーっ!」

 おまえはもう黙ってろ。
 うるせえし、話がややこしくなる。
 もう一度、ニンジャに魔力剣を構えながら。

「だが、ネタは分かった。そろそろこの戦いも終わりにさせてもらうぜ」
「ごくり……でござる……」

 わざとなのか天然なのか、奴は緊張の面持ちでそう言いながら喉を上下させた。
 どいつもこいつも間が抜けてやがる。思わず溜め息をつきたくなった。本当に締まらねえな。

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