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エピローグ
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待ち合わせまで少し時間が余っていたので、わたしは久しぶりに思い出の場所に足を運んだ。
かつての駅は撤去されていて、ビルだかマンションだかの建設を始めていた。
あのときの面影は、もうほとんどない。
近くの公園では桜が早めの開花を始めている。
まだまだ肌寒いけど、それを見るとああ春だなって思った。
「もう一年以上経つんだ」
平行世界とやらにつながり、わたしは向こうでは台本のキャラクターだった。
その世界で会った二人の男の子。
特にトヨジとの出会いはわたしを大きく変えた。
もしかしたら夢だったのでは無いかと思うときもある。
でも確かにわたしはあちらの世界で彼らと過ごしたのだ。
彼らと、トヨジとの別れから一年。
思い返せばあっという間だった。
それだけ充実していたんだと思う。
部の立ち上げから新入生の確保。
そして素人映画の撮影と文化祭での上映。
ものを作るという事はいろいろな意見がぶつかり合う。
喧嘩も絶えなかったけど、本音をぶつけ合ったからこそお互いを深く知れたと思う。
上映会が終わった時は全てを忘れ、泣いて抱き合った。
思い出すと恥ずかしいけど、でもやっぱり良い思い出だった。
一年間同じ目標に向かって一緒にやってきた絆は深い。
今日で卒業しても、きっといつかこの一年をみんな思い出すだろう。
一人違う高校に進む柏木夏希も、三年生に進級すると同時に仲直りし、いろいろと手出すけしてもらったゆっこも。
それにしても一年前は美羽と、映画好きの彼がまさかつきあうことになるとは思わなかった。
それも美羽の方がめろめろで、見せつけられるわたし達の方が赤面するぐらいだ。
その二人と同じ高校に行く予定のわたしは、なんだかのけ者にされた気分だ。
今にすてきな彼氏を見つけてやるからみとけよー、と密かに対抗意識を燃やしている。
「ライト、いるの?」
柏木夏希の声に振り向いた。
早い時間だというのにもう全員集まっているようだ。
美羽が片手で彼氏の腕をつかみ、もう片方の手をこちらにぶんぶん振っている。
待ち合わせ時間にはまだ早く、待ち合わせ場所からは離れている筈だが。
「どうしてここにいると思ったの?」
「なんとなくかな」
そううそぶく夏希には、一年以上経った今もなんだか勝てそうな気がしない。
たぶん卒業式にわたしがここに来ることを察知していたのだろう。
むかつくぐらい頭が良くて、用意周到で、気が利く女だ。
彼女と友達で本当に良かったと心から思う。
映研のみんなとの出会いも、ゆっことの喧嘩も、リノ達と過ごしたのも全ては無駄ではなかった。
もちろんトヨジとショウと過ごした時間は、もっとも価値のあるものだったと思う。
出会いがあるから別れもあって、それから新しい出会いに繋がっていく。
なんだか照れくさくなって、夏希の視線から逃れるために空を見上げた。
気持ちの良いぐらい、きれいな青空だった。
そのどこかに、トヨジがいることがわたしには確信できた。
トヨジ、わたしは元気です。
これからも時々泣きそうになることはあるかも知れないけど、きっと大丈夫。
わたしは一人じゃ無いから。
あなたはこの空の下で、元気でやっていますか?
大好きな演劇を、仲間と一緒に笑顔で過ごしていますか?
この広い空のどこかで、あなたが健やかであることを願っています。
その時、桜の花びらが一片枝からこぼれ落ちるのが見えた。
それは風にのって晴天の空へと大きく舞い上がった。
まるでわたしたちに祝福のダンスを捧げているように。
かつての駅は撤去されていて、ビルだかマンションだかの建設を始めていた。
あのときの面影は、もうほとんどない。
近くの公園では桜が早めの開花を始めている。
まだまだ肌寒いけど、それを見るとああ春だなって思った。
「もう一年以上経つんだ」
平行世界とやらにつながり、わたしは向こうでは台本のキャラクターだった。
その世界で会った二人の男の子。
特にトヨジとの出会いはわたしを大きく変えた。
もしかしたら夢だったのでは無いかと思うときもある。
でも確かにわたしはあちらの世界で彼らと過ごしたのだ。
彼らと、トヨジとの別れから一年。
思い返せばあっという間だった。
それだけ充実していたんだと思う。
部の立ち上げから新入生の確保。
そして素人映画の撮影と文化祭での上映。
ものを作るという事はいろいろな意見がぶつかり合う。
喧嘩も絶えなかったけど、本音をぶつけ合ったからこそお互いを深く知れたと思う。
上映会が終わった時は全てを忘れ、泣いて抱き合った。
思い出すと恥ずかしいけど、でもやっぱり良い思い出だった。
一年間同じ目標に向かって一緒にやってきた絆は深い。
今日で卒業しても、きっといつかこの一年をみんな思い出すだろう。
一人違う高校に進む柏木夏希も、三年生に進級すると同時に仲直りし、いろいろと手出すけしてもらったゆっこも。
それにしても一年前は美羽と、映画好きの彼がまさかつきあうことになるとは思わなかった。
それも美羽の方がめろめろで、見せつけられるわたし達の方が赤面するぐらいだ。
その二人と同じ高校に行く予定のわたしは、なんだかのけ者にされた気分だ。
今にすてきな彼氏を見つけてやるからみとけよー、と密かに対抗意識を燃やしている。
「ライト、いるの?」
柏木夏希の声に振り向いた。
早い時間だというのにもう全員集まっているようだ。
美羽が片手で彼氏の腕をつかみ、もう片方の手をこちらにぶんぶん振っている。
待ち合わせ時間にはまだ早く、待ち合わせ場所からは離れている筈だが。
「どうしてここにいると思ったの?」
「なんとなくかな」
そううそぶく夏希には、一年以上経った今もなんだか勝てそうな気がしない。
たぶん卒業式にわたしがここに来ることを察知していたのだろう。
むかつくぐらい頭が良くて、用意周到で、気が利く女だ。
彼女と友達で本当に良かったと心から思う。
映研のみんなとの出会いも、ゆっことの喧嘩も、リノ達と過ごしたのも全ては無駄ではなかった。
もちろんトヨジとショウと過ごした時間は、もっとも価値のあるものだったと思う。
出会いがあるから別れもあって、それから新しい出会いに繋がっていく。
なんだか照れくさくなって、夏希の視線から逃れるために空を見上げた。
気持ちの良いぐらい、きれいな青空だった。
そのどこかに、トヨジがいることがわたしには確信できた。
トヨジ、わたしは元気です。
これからも時々泣きそうになることはあるかも知れないけど、きっと大丈夫。
わたしは一人じゃ無いから。
あなたはこの空の下で、元気でやっていますか?
大好きな演劇を、仲間と一緒に笑顔で過ごしていますか?
この広い空のどこかで、あなたが健やかであることを願っています。
その時、桜の花びらが一片枝からこぼれ落ちるのが見えた。
それは風にのって晴天の空へと大きく舞い上がった。
まるでわたしたちに祝福のダンスを捧げているように。
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