転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

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93.転売屋は未来のための投資をする

アネットを連れてギルド協会へと向かうと、エントランスで二人が俺の到着を待ちわびていた。

「待たせたか?」

「そうでもありません。」

「全然待ってませんよ、全然!」

つまり結構待ったんだろう。

彼女はいい感じに滑っているなぁ、ここまで滑る子はなかなかいないぞ。

「アネット、ギルド協会のシープさんそれと今回調合器具の管理をしてくれていたルルーさんだ。」

「ルルーです!宜しくお願いします!」

「アネットと申します。これからご主人様の下で薬師として働いて参ります、どうぞよろしくお願い致します。」

「いや~話には聞いていましたが本当に美人ですねぇ。実は銀狐人は初めて見るんですよ。」

「本人曰く幸運に恵まれるかどうかは微妙らしいぞ。」

「え、そうなんですか?お守りにしようと思ってたのに。」

何をお守りにする気だったんだ?

処女の陰毛はお守りになると昔は言ったそうだが・・・。

この世界でも同じ信仰があるとは正直驚きだ。

だがやらんぞ。

「ではお時間もありますし早急にみて頂きましょう。ルルー、案内を。」

「どうぞこちらです!」

元気いっぱいに返事をしてちょこちょこと先を行く。

リスかネズミのような小動物だな。

速攻で捕食される奴だ。

いつもとは違う廊下を進み、裏口から一度外に出る。

広場の先には巨大な倉庫がそびえたっていた。

「ここです、手前に動かしていますので確認してください。すっごい重かったんですよ!」

「だろうな。アネット行くぞ。」

「はい。」

倉庫は開けっ放しだったので遠慮なく中に入らせてもらう。

入ってすぐの場所に複数のよくわからない機械が並んでいた。

ヒーフーミーヨー・・・大きいのが四つにこまごまとしたのがたくさん。

素材は売り払ったって書いてあったし、これ全部がそうなんだろう。

結構多いな。

「状態はどうだ?」

「比較的綺麗ですね、少し型は古いですが十分に使えます。すごい、複層浄化装置まで・・・これ高いんですよ。」

「ほぉ。」

驚きの声を上げるアネットの傍に行き、何とかという装置に触れてみる。

『複層浄化装置。この装置に液体を投入し魔力を流すと、どんな液体でも無毒化することが出来る。最近の平均取引価格は金貨12枚、最安値金貨10枚、最高値金貨15枚、最終取引日は554日前と記録されています。』

おぉ、結構高いな。

特に壊れている様子はないし、他も似たような値段なら確かに損はなさそうだ。

その後大型機器の鑑定をしてみると残りは金貨11、8、6枚だった。

大型機器だけで金貨37枚分の価値がある計算になる。

もちろんこれは平均価格なのでもっと高くつく可能性もあるだろう。

うーむ、時間が掛かる上に結局この金額を支払うならここで買うべきだろうか。

だが高い。

流石に金貨50枚もの予算は無いぞ。

アネットを買ってすっからかんなんだ。

「他はどうだ?」

「計量器具もそろっていますし、ビーカーやフラスコなども大丈夫だと思います。一度蒸留水を生成して消毒する必要はありますが、この道具一式ですぐに仕事が出来ます。」

「そいつは何よりだ。準備に一週間って所か?」

「それだけあれば大丈夫です。」

「わかった。これを引き取ろう。」

「ありがとうございます!」

「ただし、条件がある。」

「え?」

喜びもつかの間俺の反応に彼女は再び身を固くした。

そんなに怯えるなっての。

なんだか悪い事をした気分になるじゃないか。

「分割払いでなら引き取ってやる。理由はわかるよな?」

ルルーではなく羊男の方を向きながら条件を提示した。

それを聞いて何かを考えるように俯いてしまった。

新しい薬師が来ない限りいつまでもこの不良債権を回収することは出来ない。

だがアネットが来たことによりその道ができ、さらに一度は断った金を払うと言っているんだ。

時間はかかるが回収は出来る。

決して悪くない取引のはずだ。

「わかりました、それで結構です。」

「ちなみに何回まで考えてる?」

「毎月金貨5枚の10回でどうですか?」

「いいねぇ同じことを考えていた。」

「では書類を用意しますので先程の部屋までお願いします。」

交渉成立だ。

固く握手を交わし倉庫を出る。

「ついでに登録もしておくか。登録料とか要らないよな?」

「本当は税金が必要ですが、今回はシロウさんの奴隷ですので不要です。」

「どういうことだ?」

「個人であれば税金が発生します。ですが今回は税を納めておられる事業者の奴隷ですので、一度税金を払って頂いている方には追加の税金を求めないという街の決まりにのっとり免除されます。」

「それはなによりだ。ちなみにいくらだったんだ?」

「金貨50枚です。」

たっか!

つまりこの街で薬師として開業しようと思ったらしょぱなから金貨100枚必要になるのかよ。

そりゃ誰もこの街で開業しないわけだ。

謎が一つ解けたな。

その後正式な契約書を取り交わし、ギルド協会を後にした。

大きな器機は屋根裏の改装が終わってからの搬入になる。

それまでは小さな奴を消毒したりしなければならないから、それが全部終わってから薬師として本格始動することになるだろう。

調合用の素材なんかも集めないといけないしな。

「朝から出ずっぱりで疲れただろう。」

「そんなことはありません、大丈夫です。」

「そうか?」

「はい。」

まだまだよそよそしい感じだなぁ。

まぁ出会ってまだそんなに時間も経ってないし無理もない。

エリザやミラが特殊なんだ。

出会ってその日にやっちまったわけだからなぁ。

普通はこんなもんだ。

「とりあえず部屋の改築が終わるまでは準備を続けてくれ。俺達はいつも通り店を開ける。」

「はい。」

「俺は露店に出ることもあるからその時はミラの指示に従ってくれ。エリザは適当にやるだろう。」

「あの・・・。」

会話が途切れ無言の時間が続いていたが、ふとアネットが立ち止まり意を決したように声をかけてきた。

もの凄く真剣な顔をしている。

何だろうか。

「どうかしたのか?」

「どうしてこんなにも色々としてくれるんですか?」

「そりゃ高い金払って買ったからな、元を取る為さ。」

「エリザ様やミラ様もですか?」

「そうだ、エリザは金になる品を持って帰ってくるし、ミラは俺の代わりに店番が出来る。俺が別の事をしていても金が勝手に湧いてくるってわけだ。その為の投資だと思ってくれ。」

「投資・・・。」

そう、全ては金の為だ。

最初にエリザを買ったのは偶然だったが、ミラを買ったのは店番をさせる為。

ミラが来たことで買取と並行して販売が出来る理想の形を作り上げることが出来た。

そこにもう一つ金を生む要素が加わったんだ。

単に買取して売るだけではなく、買い取った素材を有効に利用して金を生むことが出来る。

しかも店舗を持たずに収益を上げられる最高の逸材だ。

まさに金が金を生む。

金貨330枚を回収するにはかなりの時間を要すだろうが、それは俺の腕の見せ所ってね。

需要が多いのに供給が少ない品だけにターゲットを絞り、それを作らせることで一気に金を稼ぐ。

何を売るかは取引板で把握できるし、相場もスキルで確認すれば問題ない。

いやー、まさかこんな短期間でこんなにも収益を上げられる体制を作れるとは思わなかったなぁ。

この世界に来てまだ12カ月経ってないんだぜ?

怒涛の展開だろ。

「俺は金が欲しい。アネットはその金を稼いでくれればそれでいい。もちろんしたい事があるのなら言ってくれて構わない、言われるがままの仕事は面白くないからな。」

「したい事って?」

「薬師の仕事ってのは良く知らないが、この薬を作りたいとかその為の道具が欲しいとかならとりあえず言ってくれ。値段次第で考えなくもない。もちろん、それが金を生むことが前提だけどな。」

「ご主人様はお金がすべてなんですね。」

「そうだ。わかりやすいだろ?金があれば何でもできる。美味い物も食えるしいい女も抱ける。助けたいと思った人を助ける事も出来るからな。まぁ、今回はあのバカ兄貴に頼まれたってのもあるがほとんど縁だな。レイブさんがあの金額を出してくれなかったら届かなかった。」

本当わずかの差で届かなかっただろう。

まるで俺の残高が分かっているかのような値段の提示だった。

まぁ、そのおかげでアネットがこの場にいるわけだ。

ホントあの人には頭が上がらないよ。

一体どこを見て生きているんだろうなぁ。

「わかりました。この命尽きるまで、ご主人様に富を運び続けます。」

「期待しているぞ。」

何か吹っ切れたような顔をするアネットに俺は手を差し出した。

その手をしっかりと握り返してくる。

きっと買われたものの今後どうすればいいのかわからなかったんだろうな。

奴隷として働けと言われても自主性が無い。

それこそ機械のように言われるがまま何かを作り続ける未来を想像していたのかもしれない。

そうでないとわかったからこそ、今のような晴れやかな表情をしているんだろう。

やはりいい買い物だった。

「あ、シロウ!」

「戻ったか。」

「兄さんお帰りなさい。」

「・・・死ぬかと思った。」

「死んでないから大丈夫よ。予想以上に冒険者に適性があるみたい、危機回避もそうだし何より場全体を見て行動できるのはすごいわ。」

「エリザが褒めるなんてよっぽどだな。」

「それに見てよこれ。」

嬉しそうに取り出したのは古ぼけたネックレスだった。

赤や緑の宝石がついている。

見ただけで高そうな品だ。

「隠し部屋を見つけてさらに開錠まで自分でしたのよ。」

「偶然だって、壁の色が変だったから気になってつついたんだ。そしたら隠し部屋があってさ、中は魔物だらけで死ぬかと思ったよ。」

「その為に私がいるんじゃない。いい運動になったわ。」

「どれ、見せてみろ。」

エリザからネックレスを受け取ると即座にスキルが発動した。

『怨嗟のネックレス。鮮やかな見た目とは裏腹に、身につけた者に不幸をもたらす呪われた品。夜な夜な過去にこれによって死んだ者達の恨みの声が聞こえてくる。最近の平均取引価格は金貨5枚、最安値金貨3枚、最高値金貨10枚、最終取引日は1年と223日前と記録されています。』

おぉぅ、これまたデンジャーな品を持って帰って来たな。

解呪できそうにないし、大人しく売っ払うのがいいだろう。

「身に着けたら夜な夜な恨みの声を聴かされる呪いのネックレスだとさ。」

「えぇ呪われてるの!」

「しょっぱなからこんな品を見つけるなんて、ついてるじゃないか。」

「ついてるって言えるのか?」

「買い取りで金貨2枚だ、これで装備が買えるだろ?」

「金貨2枚!?」

値段を聞いて三人が大きな声を出す。

そんなに大きな声を出して周りの人が驚いてるだろうが。

「半分は私のだからね。えへへ儲かっちゃった。」

「まじかよそんなに取るのか。」

「あのまま死んだほうが良かった?」

「・・・助かりました。」

「しばらくは一緒に行動しましょ、その方が儲かる気がするの。」

「死んだら骨は拾ってあげますね、兄さん。」

「死なねぇよ!」

アネットのバカ兄貴への扱いが中々にひどい。

まぁ自業自得だな。

「さぁ、とっとと帰って飯にするぞ。もちろんエリザの奢りだよな。」

「どうしてよ!」

「金貨1枚も儲かったんだ安いもんだろ。」

「そうだけど~。」

「ほら、帰ってさっさと風呂に入れ。フールは外で水浴びな。」

「俺も風呂に入りたい・・・。」

「稼げるようになったらそれも出来るさ。ほら、さっさと行くぞ。」

夕暮れの街に笑い声がこだまする。

さぁ明日もジャンジャン稼がせてもらいますかね。
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