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184.転売屋は魔物を笑わせる
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行商部隊は無事に帰還し、ハーシェさんの初仕事は無事に成功した。
途中魔物に襲われるアクシデントはあったものの、何の問題なく処理されたそうだ。
さすがベテラン冒険者だな。
最近のダンはダンジョンに潜らずもっぱら護衛任務についているらしい。
行商の回数が増えれば安定した収入も見込めるし、リンカも安心できる。
俺達の思っていなかった部分でいい流れが出来ていたようだ。
「今回の収入は合計金貨10枚と銀貨30枚。買い付けに金貨2枚と銀貨70枚使用し、税金が特別に金貨1枚に減額されましたので金貨6枚と銀貨60枚のプラスになりました。買い付けてきました各種合材は一時的に我が家の倉庫に保管しておりますが、明日改めて各工房に納品して最終的な収支をご報告いたします。」
「わかりやすい説明ありがとう、そしてお疲れ様。」
「私は何も、アイン様が頑張ってくださったおかげです。」
「でも、アラクネの糸はハーシェさんが見つけてきたんでしょ?かなりの利益が出ているみたいだしシロウも大喜びよ。」
「そうだな。エリザの楽しみにしていた魚も手に入ったしな。」
「そうなの!今から楽しみだわ。」
買い付けて来た魚を見てエリザが目を輝かせる。
ニジマス系の魚のようで変な臭いもしない。
これなら煮魚以外にも楽しめそうだ。
「それじゃあ明日またよろしく。」
深々とお辞儀をしてハーシェさんは帰って行った。
もう陽が沈む、エリザも早く魚を食べたい感じだな。
「さてっと、良い時間だし今日はもう店じまいにするか。」
「そうですね。」
「おっさっかな~おっさっかな~。」
「そういえば先ほど御主人様が持って帰って来たのは何だったんですか?」
「ん?あぁ、あれか。」
「あまりよろしくない雰囲気をしていましたが、また呪われていたんですか?」
いや、またってなんだよまたって。
確かに売れるとわかってからはむしろ好んで買い付けてはいるけどさぁ。
いいじゃないか、ちゃんと売れるんだし。
「それよりもご飯にしない?」
「いや、せっかくだし先に聞いておくか。エリザ、動かない代わりどんな攻撃も寄せ付けないような魔物はいるか?」
「そんなのいないわよ。」
「そうか、いないのか。」
「それよりも早く料理してよ。」
「教えてくれたら煮魚の他に焼き魚も作るんだけどな。蒸し焼きにしてレレモンかけても美味しいと思うんだが・・・。」
「何それ美味しそう!ちょっと待って、今思い出すから!」
まったく、魚の事で頭がいっぱい過ぎだろ。
そんなに好きだったっけか?
寧ろ肉って感じだったと思うんだが。
「いったい何をするつもりですか?」
「今回買い付けた品が使えるかもと思ってな。」
「あ、いる!」
「どんなやつだ?」
「石の魔物でね、普通に攻撃しても反撃してこない代わりに全然効かないんだ。唯一の倒す方法が強力な魔法をぶつけるやり方なんだけど、2、3人で一気にやらないといけないから基本無視してるの。」
なかなかおあつらえ向きの魔物のようだ。
「素材は何かあるのか?」
「大きめの魔石と、鉱石。運が良ければオリハルコンも落とすらしいけど好んで倒す人がいないから噂話なのか本当なのか確認しようがないのよね。」
「つまり魔法系の攻撃は通用するわけだな?」
「毒はダメよ、そもそも刃が通らないもの。」
「呪いはどうだ?」
「やった事ないけど・・・、ねぇ何するつもり?」
「ちょっと試したいことがあってな。とりあえず飯にしようぜ。」
あまり待たせるのも可哀想だ。
料理をしながらも考えていたのはその魔物の事だ。
物理攻撃は通らない。
でも魔法系はまぁ通るらしいので、魔道具を使えば何とかなるはずだ
冒険者でもない俺が魔物を倒せるのかという疑問もあるが、ディヒーアも魔獣だし問題ないだろう。
別にゲームのような経験値があるわけじゃない。
それよりも魔石と鉱石の方に興味がある。
まさに一攫千金。
何もせずにそれが手に入るのならこれほどいい買い物はなかったのではないだろうか。
「ふふふ、楽しみだ。」
「うわ、シロウが不気味な笑い声上げてる。」
「不気味っていうな。」
「だって今までそんな声出したことないじゃない。イヤラシイ事考えてたんでしょ。」
「そんなこと言う奴は魚無しな。」
「あー嘘です冗談です怒らないで!」
「ったく、レレモンでも果汁でも絞って待ってろ!」
魚は美味かった。
見た目通りニジマス系の白身魚で臭いも無く程よく脂も乗っていた。
これならマスターやイライザさんの店に卸しても問題ないだろう。
今後の買い付け品が一つ増えたな。
なんてことを考えつつ迎えた翌朝。
早速例の仮面を持って冒険者ギルドに向かった。
「石の魔物について聞きたいんだが。」
「あれ、シロウさん。石の魔物ですか?あの動かなくているだけ邪魔な奴?」
「そうらしいな。だが魔石と鉱石を落とすんだろ?」
「らしいってだけですよ?最近は誰も倒さないから記録が古くて・・・。」
「何処にいるんだ?」
「一番最初の階層にいます。ダンジョンに入ったらまっすぐ進んで最初の分かれ道を右に、すぐに岩場が見えて来るのでその道を通せんぼするように立ってます。」
道を通せんぼとは何か目的があってそこに置かれているのか?
いや、魔物だから置かれているわけじゃないのか。
ダンジョンとは不思議なもので、倒しても倒しても魔物が沸いてくる。
しかも同じ奴が沸く。
極たまに違うのも混ざるらしいが、そいつは決まった所に出て来るんだろう。
「その奥には何が?」
「なんにもありません。洞穴みたいなところに穴が開いているのはわかってるんですけど、何を埋めるのかはさっぱりで。因みに100個穴が開いているので百穴(ヒャッケツ)と呼ばれてます。」
「ふ~ん。」
「最初の階層とはいえハグレの魔物もでますから一人で入らない方がいいですよ。まぁ、子供でも倒せる魔物しか出ませんけど。」
「忠告感謝する。」
とりあえずお礼を言ってダンジョンへと向かった。
「シロウ、何してるの?」
「ダンジョンに行くんだ。」
ダンジョンの入り口前でエリザが冒険者と話していた。
相手は俺に気付くと会釈をしてさっさとダンジョンに入ってしまう。
よかったんだろうか。
「え!?シロウが?」
「入ってすぐの所に百穴って場所があるんだろ?」
「あぁ、あそこの石の魔物に用があるのね。」
「そういう事だ。」
「じゃあ一緒に行ってあげる。何もないと思うけど念の為。」
短剣もあるし大丈夫だと思うが・・・。
ダンジョンなんてよくわからない場所に行くんだし、護衛はいた方がいいだろう。
「よろしく頼む。」
「じゃあしゅっぱ~つ!」
嬉しそうに俺の手を握りエリザと共にダンジョンへと潜る。
人生三度目になるとあまり感動もないなぁ。
手をひかれるまま道を進み、10分もかからず目的の場所に到着した。
「これこれ、この子が石の魔物。」
「ふむ、地蔵みたいなやつだな。」
「こうやって叩いても何しても反応無いの。」
そういいながら持っていた武器でコンコンと魔物の頭?を叩く。
子供とも大人とも見せるつるっぱげの石像。
無表情なのが若干不気味だ。
「ほんじゃまあ、早速こいつの出番だな。」
「何それ。」
「マスターが地下倉庫に隠してたやばそうな仮面。」
「うわ、呪われてるんじゃないの?」
「その通り。つけたが最後外れずに体力を吸い取っていくんだってさ。しかもつけたら笑うらしい。」
「ヤダ怖い。」
言い方が全然怖がってないけどな。
おどろおどろしい仮面を手に取り石造の顔にそっと近づける。
すると見えない力で吸い寄せられるように仮面は石造の顔にくっついた。
そして次の瞬間。
無表情だった石造の目が、仮面の下でニヤリと笑うのが分かった。
「うっわ、怖。」
「夢に出そうだな。」
石像が禍々しい仮面をつけて笑っている。
仮面の下の目も笑っている。
ホラー映画に出て来るんじゃないかと思うぐらいの嵌り具合だ。
試しに引っ張ってみたが取れる様子はない。
「ねぇ、このままどうするの?」
「体力を吸うらしいからそのまま待ってみる。」
「それだけ?」
「んで、様子を見てからこうする。」
鞄から火の魔道具を取り出し、火の属性石をセットする。
普通の魔石でも構わないが、属性の合った魔石を使うと効果が上がるんだよな。
焚き火の火おこしぐらいにしか使えない道具なのだが、このやり方だと・・・。
魔物に魔道具を向けてスイッチを押す。
すると野球ボールぐらいの火の玉がまっすぐ石像に向かって飛んで行った。
ゴォ!という音を立てて石像にぶつかり火球は消えてしまった。
「何も起きないじゃない。」
「体力を吸収しきってないんだ。ギリギリまで吸い取られたらこれで何とかなるんじゃないかと思ってな。」
「ふ~ん、変なこと考えるのね。」
「それしか使い道が思いつかなかったんだよ。」
「じゃあまた後で来る?」
「何度も来るのは面倒だから夕方でいいか。一度戻るぞ。」
「は~い。」
一度店に戻り商売しながら夕方まで待つ。
そして再び石造の所へ戻ると・・・。
「なんだか疲れた目をしてる。」
「でも笑ってるな。」
「だから怖いのよ。さっさとやっちゃって。」
「はいよっと。」
再び魔道具を向け火球を発射。
すると今度は火球が石像のど真ん中に穴を開けた。
衝撃で後ろに倒れ、ハラハラと砂になってしまった。
「すごい!一発で倒せちゃった。」
「まさか上手くいくとはな。」
残されたのはテニスボール大の魔石にゴルフボール大の緑の石、それと例の仮面だ。
火球に包まれても焦げ一つない。
こころなしか仮面がつやつやしているようにも思える。
『ジェイドの原石。これを磨き研磨する事で宝石に生まれ変わる。最近の平均取引価格は銀貨30枚、最安値銀貨5枚、最高値銀貨50枚。最終取引日は11日前と記録されています。』
魔石は中クラスの大きさなので銀貨5枚ほどで売れるだろう。
加えてこの原石だ。
一日でこの儲けって、ヤバイな。
「なんだったの?」
「ジェイドの原石だ。」
「じゃああの噂話は本当だったのね。」
「あぁ、これはもしかするともしかするかもしれんぞ。」
再び後ろの石像に仮面をつける。
また吸い付くようにぴったりと張り付き、そいつはニヤリと笑った。
「お楽しみが増えたわね。」
「だが誰にも言えんなぁ、これは。」
こんな手軽な金儲け、噂になったらすぐに狩り尽されてしまうだろう。
誰も知らないからうまみがあるんだ。
思わず石像のようにニヤリと笑ってしまった。
「あ、同じ顔してる。」
「気のせいだ気のせい、ほら帰るぞ。」
エリザの背中を押して家に戻る。
背中にたくさんの視線を感じながら・・・。
途中魔物に襲われるアクシデントはあったものの、何の問題なく処理されたそうだ。
さすがベテラン冒険者だな。
最近のダンはダンジョンに潜らずもっぱら護衛任務についているらしい。
行商の回数が増えれば安定した収入も見込めるし、リンカも安心できる。
俺達の思っていなかった部分でいい流れが出来ていたようだ。
「今回の収入は合計金貨10枚と銀貨30枚。買い付けに金貨2枚と銀貨70枚使用し、税金が特別に金貨1枚に減額されましたので金貨6枚と銀貨60枚のプラスになりました。買い付けてきました各種合材は一時的に我が家の倉庫に保管しておりますが、明日改めて各工房に納品して最終的な収支をご報告いたします。」
「わかりやすい説明ありがとう、そしてお疲れ様。」
「私は何も、アイン様が頑張ってくださったおかげです。」
「でも、アラクネの糸はハーシェさんが見つけてきたんでしょ?かなりの利益が出ているみたいだしシロウも大喜びよ。」
「そうだな。エリザの楽しみにしていた魚も手に入ったしな。」
「そうなの!今から楽しみだわ。」
買い付けて来た魚を見てエリザが目を輝かせる。
ニジマス系の魚のようで変な臭いもしない。
これなら煮魚以外にも楽しめそうだ。
「それじゃあ明日またよろしく。」
深々とお辞儀をしてハーシェさんは帰って行った。
もう陽が沈む、エリザも早く魚を食べたい感じだな。
「さてっと、良い時間だし今日はもう店じまいにするか。」
「そうですね。」
「おっさっかな~おっさっかな~。」
「そういえば先ほど御主人様が持って帰って来たのは何だったんですか?」
「ん?あぁ、あれか。」
「あまりよろしくない雰囲気をしていましたが、また呪われていたんですか?」
いや、またってなんだよまたって。
確かに売れるとわかってからはむしろ好んで買い付けてはいるけどさぁ。
いいじゃないか、ちゃんと売れるんだし。
「それよりもご飯にしない?」
「いや、せっかくだし先に聞いておくか。エリザ、動かない代わりどんな攻撃も寄せ付けないような魔物はいるか?」
「そんなのいないわよ。」
「そうか、いないのか。」
「それよりも早く料理してよ。」
「教えてくれたら煮魚の他に焼き魚も作るんだけどな。蒸し焼きにしてレレモンかけても美味しいと思うんだが・・・。」
「何それ美味しそう!ちょっと待って、今思い出すから!」
まったく、魚の事で頭がいっぱい過ぎだろ。
そんなに好きだったっけか?
寧ろ肉って感じだったと思うんだが。
「いったい何をするつもりですか?」
「今回買い付けた品が使えるかもと思ってな。」
「あ、いる!」
「どんなやつだ?」
「石の魔物でね、普通に攻撃しても反撃してこない代わりに全然効かないんだ。唯一の倒す方法が強力な魔法をぶつけるやり方なんだけど、2、3人で一気にやらないといけないから基本無視してるの。」
なかなかおあつらえ向きの魔物のようだ。
「素材は何かあるのか?」
「大きめの魔石と、鉱石。運が良ければオリハルコンも落とすらしいけど好んで倒す人がいないから噂話なのか本当なのか確認しようがないのよね。」
「つまり魔法系の攻撃は通用するわけだな?」
「毒はダメよ、そもそも刃が通らないもの。」
「呪いはどうだ?」
「やった事ないけど・・・、ねぇ何するつもり?」
「ちょっと試したいことがあってな。とりあえず飯にしようぜ。」
あまり待たせるのも可哀想だ。
料理をしながらも考えていたのはその魔物の事だ。
物理攻撃は通らない。
でも魔法系はまぁ通るらしいので、魔道具を使えば何とかなるはずだ
冒険者でもない俺が魔物を倒せるのかという疑問もあるが、ディヒーアも魔獣だし問題ないだろう。
別にゲームのような経験値があるわけじゃない。
それよりも魔石と鉱石の方に興味がある。
まさに一攫千金。
何もせずにそれが手に入るのならこれほどいい買い物はなかったのではないだろうか。
「ふふふ、楽しみだ。」
「うわ、シロウが不気味な笑い声上げてる。」
「不気味っていうな。」
「だって今までそんな声出したことないじゃない。イヤラシイ事考えてたんでしょ。」
「そんなこと言う奴は魚無しな。」
「あー嘘です冗談です怒らないで!」
「ったく、レレモンでも果汁でも絞って待ってろ!」
魚は美味かった。
見た目通りニジマス系の白身魚で臭いも無く程よく脂も乗っていた。
これならマスターやイライザさんの店に卸しても問題ないだろう。
今後の買い付け品が一つ増えたな。
なんてことを考えつつ迎えた翌朝。
早速例の仮面を持って冒険者ギルドに向かった。
「石の魔物について聞きたいんだが。」
「あれ、シロウさん。石の魔物ですか?あの動かなくているだけ邪魔な奴?」
「そうらしいな。だが魔石と鉱石を落とすんだろ?」
「らしいってだけですよ?最近は誰も倒さないから記録が古くて・・・。」
「何処にいるんだ?」
「一番最初の階層にいます。ダンジョンに入ったらまっすぐ進んで最初の分かれ道を右に、すぐに岩場が見えて来るのでその道を通せんぼするように立ってます。」
道を通せんぼとは何か目的があってそこに置かれているのか?
いや、魔物だから置かれているわけじゃないのか。
ダンジョンとは不思議なもので、倒しても倒しても魔物が沸いてくる。
しかも同じ奴が沸く。
極たまに違うのも混ざるらしいが、そいつは決まった所に出て来るんだろう。
「その奥には何が?」
「なんにもありません。洞穴みたいなところに穴が開いているのはわかってるんですけど、何を埋めるのかはさっぱりで。因みに100個穴が開いているので百穴(ヒャッケツ)と呼ばれてます。」
「ふ~ん。」
「最初の階層とはいえハグレの魔物もでますから一人で入らない方がいいですよ。まぁ、子供でも倒せる魔物しか出ませんけど。」
「忠告感謝する。」
とりあえずお礼を言ってダンジョンへと向かった。
「シロウ、何してるの?」
「ダンジョンに行くんだ。」
ダンジョンの入り口前でエリザが冒険者と話していた。
相手は俺に気付くと会釈をしてさっさとダンジョンに入ってしまう。
よかったんだろうか。
「え!?シロウが?」
「入ってすぐの所に百穴って場所があるんだろ?」
「あぁ、あそこの石の魔物に用があるのね。」
「そういう事だ。」
「じゃあ一緒に行ってあげる。何もないと思うけど念の為。」
短剣もあるし大丈夫だと思うが・・・。
ダンジョンなんてよくわからない場所に行くんだし、護衛はいた方がいいだろう。
「よろしく頼む。」
「じゃあしゅっぱ~つ!」
嬉しそうに俺の手を握りエリザと共にダンジョンへと潜る。
人生三度目になるとあまり感動もないなぁ。
手をひかれるまま道を進み、10分もかからず目的の場所に到着した。
「これこれ、この子が石の魔物。」
「ふむ、地蔵みたいなやつだな。」
「こうやって叩いても何しても反応無いの。」
そういいながら持っていた武器でコンコンと魔物の頭?を叩く。
子供とも大人とも見せるつるっぱげの石像。
無表情なのが若干不気味だ。
「ほんじゃまあ、早速こいつの出番だな。」
「何それ。」
「マスターが地下倉庫に隠してたやばそうな仮面。」
「うわ、呪われてるんじゃないの?」
「その通り。つけたが最後外れずに体力を吸い取っていくんだってさ。しかもつけたら笑うらしい。」
「ヤダ怖い。」
言い方が全然怖がってないけどな。
おどろおどろしい仮面を手に取り石造の顔にそっと近づける。
すると見えない力で吸い寄せられるように仮面は石造の顔にくっついた。
そして次の瞬間。
無表情だった石造の目が、仮面の下でニヤリと笑うのが分かった。
「うっわ、怖。」
「夢に出そうだな。」
石像が禍々しい仮面をつけて笑っている。
仮面の下の目も笑っている。
ホラー映画に出て来るんじゃないかと思うぐらいの嵌り具合だ。
試しに引っ張ってみたが取れる様子はない。
「ねぇ、このままどうするの?」
「体力を吸うらしいからそのまま待ってみる。」
「それだけ?」
「んで、様子を見てからこうする。」
鞄から火の魔道具を取り出し、火の属性石をセットする。
普通の魔石でも構わないが、属性の合った魔石を使うと効果が上がるんだよな。
焚き火の火おこしぐらいにしか使えない道具なのだが、このやり方だと・・・。
魔物に魔道具を向けてスイッチを押す。
すると野球ボールぐらいの火の玉がまっすぐ石像に向かって飛んで行った。
ゴォ!という音を立てて石像にぶつかり火球は消えてしまった。
「何も起きないじゃない。」
「体力を吸収しきってないんだ。ギリギリまで吸い取られたらこれで何とかなるんじゃないかと思ってな。」
「ふ~ん、変なこと考えるのね。」
「それしか使い道が思いつかなかったんだよ。」
「じゃあまた後で来る?」
「何度も来るのは面倒だから夕方でいいか。一度戻るぞ。」
「は~い。」
一度店に戻り商売しながら夕方まで待つ。
そして再び石造の所へ戻ると・・・。
「なんだか疲れた目をしてる。」
「でも笑ってるな。」
「だから怖いのよ。さっさとやっちゃって。」
「はいよっと。」
再び魔道具を向け火球を発射。
すると今度は火球が石像のど真ん中に穴を開けた。
衝撃で後ろに倒れ、ハラハラと砂になってしまった。
「すごい!一発で倒せちゃった。」
「まさか上手くいくとはな。」
残されたのはテニスボール大の魔石にゴルフボール大の緑の石、それと例の仮面だ。
火球に包まれても焦げ一つない。
こころなしか仮面がつやつやしているようにも思える。
『ジェイドの原石。これを磨き研磨する事で宝石に生まれ変わる。最近の平均取引価格は銀貨30枚、最安値銀貨5枚、最高値銀貨50枚。最終取引日は11日前と記録されています。』
魔石は中クラスの大きさなので銀貨5枚ほどで売れるだろう。
加えてこの原石だ。
一日でこの儲けって、ヤバイな。
「なんだったの?」
「ジェイドの原石だ。」
「じゃああの噂話は本当だったのね。」
「あぁ、これはもしかするともしかするかもしれんぞ。」
再び後ろの石像に仮面をつける。
また吸い付くようにぴったりと張り付き、そいつはニヤリと笑った。
「お楽しみが増えたわね。」
「だが誰にも言えんなぁ、これは。」
こんな手軽な金儲け、噂になったらすぐに狩り尽されてしまうだろう。
誰も知らないからうまみがあるんだ。
思わず石像のようにニヤリと笑ってしまった。
「あ、同じ顔してる。」
「気のせいだ気のせい、ほら帰るぞ。」
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そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
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