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191.転売屋は子供の成長を実感する
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風邪は翌日には完治した。
だが大事をとって・・・というか半ば無理やり押し込められ、二日ぶりに外出としゃれこんだわけだ。
やはりシャバはいいなぁ。
空気が美味いぜ。
ちょいと寒いけど。
「シロウ様風邪は大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。悪かったなルフを任せて。」
「いい子にしていましたよ。」
散歩ついでに畑に顔を出すと真っ先にルフが飛んできた。
珍しく頭をゴンゴン押し付けてくる。
ワシャワシャと頭を撫でてやりながらアグリから報告を受ける。
冬野菜はアネットの肥料がよかったのか予定よりも早く収穫できそうな感じだ。
この分だともう一回冬野菜が作れそうだな。
薬草も無事に育ち、昨日収穫を終えたそうだ。
なるほど、だからアネットがうれしそうだったんだな。
理解した。
「冬野菜の収穫は二週間後を予定しています。それを過ぎると還年祭に被ってしまうので、シロウ様もお忙しいでしょう。」
「特にコレといった事をするわけではないんだが・・・忙しいだろうなぁ。」
「心中お察しします。」
遠い目をする俺をアグリが察してくれた。
「ワフ。」
と、ルフも察してくれたようだ。
ありがとうな。
「収穫はガキ共も手伝うんだったな。」
「えぇ、今や貴重な戦力ですよ。」
「最初は危なっかしい感じだったのになぁ。」
「むしろ今は我々が手本にしなければならないぐらいに丁寧な仕事をしてくれます。昨日の収穫も傷一つなかったんですから。」
「そりゃ凄い。」
「また褒めてあげてくださいね。」
「寒空の下頑張ってくれているわけだし、またご褒美やらないとなぁ。」
飴のほかに何がいいだろうか。
また考えておこう。
「で、そのガキ共はどこに行ったんだ?」
「朝一番で仕事は終わりましたからもう戻ったと思います。今頃別の仕事をしているのではないでしょうか。」
「別の仕事?」
「簡単な荷物の配達や伝言等、新しい仕事を結構任されているそうですよ。ここでちゃんと仕事ができると証明したからでしょう。」
まさかそんなことになっているとは思わなかった。
今までもゴミ拾いなんかはさせてもらっていたが、まともな仕事はあまりなかったはずだ。
それが労働力としてちゃんとカウントされているというのはいいことだ。
無理しなければそれでいい。
それから一時間ほどかけてルフと共に畑を見て回り、町に戻った。
大通りを避けて路地裏へ。
すると、見覚えのある顔が前から走ってきた。
「あ、シロウだ!」
「ほんとだシロウだ。」
「今日もご苦労さん。」
「風邪はもういいの?」
「モニカが心配してたよ?」
孤児院の下二人。
まだ7~8歳ぐらいだったと記憶している。
ヤンチャ盛りでいつも二人一緒に行動しているんだよな。
顔は似ていないので兄妹ではないはずだ。
「もう大丈夫だ。何してるんだ?」
「お手紙届けるの。」
「それと届け物だよ!」
「へぇ、ちゃんと仕事してるんだな。」
「そうだよ!えらいんだよ!」
「ちゃんとお仕事探してきてるんだから。」
「自分達でか?」
「「うん!」」
そりゃ凄い。
自分たちで仕事を探して報酬をもらう。
この年でそれができるなんて前途有望だな。
「手紙とか届け先はわかるのか?」
「わかるよ~。」
「これは教会の裏に住んでるおばちゃんから、大通りを抜けて二番目の筋を進んだ所のお母さんに。それで、こっちの手紙は八百屋さんから商店街の修理屋さんにだよ。」
「もしかして住民全部知ってるのか?」
「全部じゃないけど、大体わかるよね。」
「ね。」
いや、ふつうはわからないと思うんだが・・・。
これってすごい事じゃないのか?
「あ、早くいかないと!」
「ほんとだ!シロウまたね!」
「またね~。」
そんな事を考えていたら二人は元気よく走って行ってしまった。
顔なじみはそれなりにいるが、それでもどこに住んでいるかとかまではわからない。
子供の記憶力って半端ねぇなぁ。
そのまま裏通りを抜けて露店へ行き、買い物をして家に戻った。
「ただいま。」
「おかえりなさい。いかがですか?」
「あぁ、もう問題なさそうだ。息切れもしないし、さすがアネットの薬だな。」
「えへへ、よかったです。」
「店はどんな感じだ?」
「買い取りが多く今やっと片付いたところです。後で装備品の確認をお願いします。」
「わかった。」
「でも忙しかったんでお昼の準備がまだなんですよ。ちょっと待ってもらえますか?」
忙しかったのならば仕方ない。
俺もそろそろまともな飯を食いたいと思っていたところだ。
とはいえ味の濃いやつはさすがにあれなので出来ればアッサリとした奴がいいなぁ。
ざるそば的な。
そう言えば露店を抜けたところに麺類を売ってる店があったな。
匂いにつられて思わず入りそうになったんだっけ。
あそこにするか。
「ならちょっと買ってくるわ。」
「え?」
「面白い店が出てたからそこにしようと思う。二人とも食べるだろ?」
ちなみにエリザはいつものようにダンジョンにこもっている。
今日は戻らないと言っていた。
「では、お願いします。」
「どんなお店でしょう、楽しみですね!」
なんだか自分でハードルを上げてしまったような気がするが大丈夫だろう。
再び外に出て露店へと向かう。
するとまたあの二人組に遭遇した。
「あ、またシロウだ。」
「シロウだ!」
「今戻りか?」
「うん、お仕事終わったよ。」
「頑張った!」
「早いな、ご苦労さん。」
「でもまだ元気だよね。」
「うん!でもお腹すいた。」
「シロウお腹すいた!」
いや、おなかすいたって言われてもな。
まるでエサをねだる雛のように俺の前でビービー騒ぐガキが二人。
世間体的にあまりよろしくない。
「わかった、分ったから静かにしろ。今から飯を買いに行くから一緒に来い。」
「「わ~い!」」
ったく、なんで俺がこいつらの分まで。
まぁ頑張っているのは間違いないんだよな。
大きいガキ共が他の仕事をしている中この二人だけがまともな仕事をしていなかった。
いや、できなかった。
でも、畑仕事で自信をつけて自分でもできるってわかったからこそこうやって色々と仕事をやりだしたんだろう。
それを褒めてやるのもまた、雇用主いや、大人の役目ってもんだ。
チビ二人を連れて見つけたばかりの店に向う。
露店の端のほうにあるからかあまり繁盛していない感じだった。
「いらっしゃい。」
「ここは何の店なんだ?」
「野菜のスープに自家製麺を入れて食べるんだ。温まるしお腹にもたまるぜ。よかったら食ってみないか?」
「いいのか?」
「おぅ!チビ共も食べてみな。」
「「わ~い!」」
気前よく小さな器を別々に三つ用意してくれた。
洗いもの増えるのに大変だな。
どれ、味はっと。
「・・・美味いな。」
「美味しい!」
「だろ!?」
「それに、いい匂いだ。味もあっさりしているが薄いわけじゃない、野菜のダシがしっかり出てる。」
「そう、そうなんだよ!いや~わかる人にはわかるんだなぁ・・・。」
「だがあんまり売れてない。」
「そうなんだよ!自信作なんだけど場所が悪いのかなかなか買ってくれなくてさ。」
この味とこの匂いなら客が寄ってきそうなものだが、場所の問題だろうか。
「お代わり!」
「僕も!」
「おう、たっぷり食べてけ!そして宣伝してくれ。」
「うん!いっぱい宣伝するよ!」
「よしよし、ありがとな。」
金も払ってないのに二杯目を提供する店主。
食いに来てくれたのがよっぽどうれしいんだろうなぁ。
うーむ、美味い。
「今のに追加で三人分頼みたいんだが、持ち帰りは出来るか?」
「容器を返してくれるなら大丈夫だ。」
「まぁそうなるよなぁ。」
「容器も高くてさぁ、取りに行ってもいいんだけどその間店を空けないといけないだろ?」
「確かに。」
持ち帰り用のプラ容器なんて存在しない。
昔の店屋物宜しく容器は回収っていうのが基本になる。
だが、店主の言うように回収にもじかんはかかるわけで・・・。
いっそのこと容器を持ってきたら値引きするのはどうだろうか。
「容器を持って帰ってきたらいいの?」
「ん?」
「私達が代わりに持ってきてあげる。そのかわり・・・。」
「駄賃だろ?ちゃっかりしてやがる。」
あははと店主が笑った。
「それだ。」
「なんだよ、いきなり大声出して。」
「繁盛する方法を思いついたぞ。」
「本当か!」
「そのためにはいくつか必要なものがあるんだが、可能だろう。」
「繁盛するなら何でもする、言ってくれ!」
身を乗り出して俺の提案に食いついてくる。
これはもしかするともしかするかもしれない。
面白い商売を思いついたぞ。
その為には準備が必要だ。
確かあれが使えるよな。
俺は頭の中で必要なものを必死に考えるのだった。
だが大事をとって・・・というか半ば無理やり押し込められ、二日ぶりに外出としゃれこんだわけだ。
やはりシャバはいいなぁ。
空気が美味いぜ。
ちょいと寒いけど。
「シロウ様風邪は大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。悪かったなルフを任せて。」
「いい子にしていましたよ。」
散歩ついでに畑に顔を出すと真っ先にルフが飛んできた。
珍しく頭をゴンゴン押し付けてくる。
ワシャワシャと頭を撫でてやりながらアグリから報告を受ける。
冬野菜はアネットの肥料がよかったのか予定よりも早く収穫できそうな感じだ。
この分だともう一回冬野菜が作れそうだな。
薬草も無事に育ち、昨日収穫を終えたそうだ。
なるほど、だからアネットがうれしそうだったんだな。
理解した。
「冬野菜の収穫は二週間後を予定しています。それを過ぎると還年祭に被ってしまうので、シロウ様もお忙しいでしょう。」
「特にコレといった事をするわけではないんだが・・・忙しいだろうなぁ。」
「心中お察しします。」
遠い目をする俺をアグリが察してくれた。
「ワフ。」
と、ルフも察してくれたようだ。
ありがとうな。
「収穫はガキ共も手伝うんだったな。」
「えぇ、今や貴重な戦力ですよ。」
「最初は危なっかしい感じだったのになぁ。」
「むしろ今は我々が手本にしなければならないぐらいに丁寧な仕事をしてくれます。昨日の収穫も傷一つなかったんですから。」
「そりゃ凄い。」
「また褒めてあげてくださいね。」
「寒空の下頑張ってくれているわけだし、またご褒美やらないとなぁ。」
飴のほかに何がいいだろうか。
また考えておこう。
「で、そのガキ共はどこに行ったんだ?」
「朝一番で仕事は終わりましたからもう戻ったと思います。今頃別の仕事をしているのではないでしょうか。」
「別の仕事?」
「簡単な荷物の配達や伝言等、新しい仕事を結構任されているそうですよ。ここでちゃんと仕事ができると証明したからでしょう。」
まさかそんなことになっているとは思わなかった。
今までもゴミ拾いなんかはさせてもらっていたが、まともな仕事はあまりなかったはずだ。
それが労働力としてちゃんとカウントされているというのはいいことだ。
無理しなければそれでいい。
それから一時間ほどかけてルフと共に畑を見て回り、町に戻った。
大通りを避けて路地裏へ。
すると、見覚えのある顔が前から走ってきた。
「あ、シロウだ!」
「ほんとだシロウだ。」
「今日もご苦労さん。」
「風邪はもういいの?」
「モニカが心配してたよ?」
孤児院の下二人。
まだ7~8歳ぐらいだったと記憶している。
ヤンチャ盛りでいつも二人一緒に行動しているんだよな。
顔は似ていないので兄妹ではないはずだ。
「もう大丈夫だ。何してるんだ?」
「お手紙届けるの。」
「それと届け物だよ!」
「へぇ、ちゃんと仕事してるんだな。」
「そうだよ!えらいんだよ!」
「ちゃんとお仕事探してきてるんだから。」
「自分達でか?」
「「うん!」」
そりゃ凄い。
自分たちで仕事を探して報酬をもらう。
この年でそれができるなんて前途有望だな。
「手紙とか届け先はわかるのか?」
「わかるよ~。」
「これは教会の裏に住んでるおばちゃんから、大通りを抜けて二番目の筋を進んだ所のお母さんに。それで、こっちの手紙は八百屋さんから商店街の修理屋さんにだよ。」
「もしかして住民全部知ってるのか?」
「全部じゃないけど、大体わかるよね。」
「ね。」
いや、ふつうはわからないと思うんだが・・・。
これってすごい事じゃないのか?
「あ、早くいかないと!」
「ほんとだ!シロウまたね!」
「またね~。」
そんな事を考えていたら二人は元気よく走って行ってしまった。
顔なじみはそれなりにいるが、それでもどこに住んでいるかとかまではわからない。
子供の記憶力って半端ねぇなぁ。
そのまま裏通りを抜けて露店へ行き、買い物をして家に戻った。
「ただいま。」
「おかえりなさい。いかがですか?」
「あぁ、もう問題なさそうだ。息切れもしないし、さすがアネットの薬だな。」
「えへへ、よかったです。」
「店はどんな感じだ?」
「買い取りが多く今やっと片付いたところです。後で装備品の確認をお願いします。」
「わかった。」
「でも忙しかったんでお昼の準備がまだなんですよ。ちょっと待ってもらえますか?」
忙しかったのならば仕方ない。
俺もそろそろまともな飯を食いたいと思っていたところだ。
とはいえ味の濃いやつはさすがにあれなので出来ればアッサリとした奴がいいなぁ。
ざるそば的な。
そう言えば露店を抜けたところに麺類を売ってる店があったな。
匂いにつられて思わず入りそうになったんだっけ。
あそこにするか。
「ならちょっと買ってくるわ。」
「え?」
「面白い店が出てたからそこにしようと思う。二人とも食べるだろ?」
ちなみにエリザはいつものようにダンジョンにこもっている。
今日は戻らないと言っていた。
「では、お願いします。」
「どんなお店でしょう、楽しみですね!」
なんだか自分でハードルを上げてしまったような気がするが大丈夫だろう。
再び外に出て露店へと向かう。
するとまたあの二人組に遭遇した。
「あ、またシロウだ。」
「シロウだ!」
「今戻りか?」
「うん、お仕事終わったよ。」
「頑張った!」
「早いな、ご苦労さん。」
「でもまだ元気だよね。」
「うん!でもお腹すいた。」
「シロウお腹すいた!」
いや、おなかすいたって言われてもな。
まるでエサをねだる雛のように俺の前でビービー騒ぐガキが二人。
世間体的にあまりよろしくない。
「わかった、分ったから静かにしろ。今から飯を買いに行くから一緒に来い。」
「「わ~い!」」
ったく、なんで俺がこいつらの分まで。
まぁ頑張っているのは間違いないんだよな。
大きいガキ共が他の仕事をしている中この二人だけがまともな仕事をしていなかった。
いや、できなかった。
でも、畑仕事で自信をつけて自分でもできるってわかったからこそこうやって色々と仕事をやりだしたんだろう。
それを褒めてやるのもまた、雇用主いや、大人の役目ってもんだ。
チビ二人を連れて見つけたばかりの店に向う。
露店の端のほうにあるからかあまり繁盛していない感じだった。
「いらっしゃい。」
「ここは何の店なんだ?」
「野菜のスープに自家製麺を入れて食べるんだ。温まるしお腹にもたまるぜ。よかったら食ってみないか?」
「いいのか?」
「おぅ!チビ共も食べてみな。」
「「わ~い!」」
気前よく小さな器を別々に三つ用意してくれた。
洗いもの増えるのに大変だな。
どれ、味はっと。
「・・・美味いな。」
「美味しい!」
「だろ!?」
「それに、いい匂いだ。味もあっさりしているが薄いわけじゃない、野菜のダシがしっかり出てる。」
「そう、そうなんだよ!いや~わかる人にはわかるんだなぁ・・・。」
「だがあんまり売れてない。」
「そうなんだよ!自信作なんだけど場所が悪いのかなかなか買ってくれなくてさ。」
この味とこの匂いなら客が寄ってきそうなものだが、場所の問題だろうか。
「お代わり!」
「僕も!」
「おう、たっぷり食べてけ!そして宣伝してくれ。」
「うん!いっぱい宣伝するよ!」
「よしよし、ありがとな。」
金も払ってないのに二杯目を提供する店主。
食いに来てくれたのがよっぽどうれしいんだろうなぁ。
うーむ、美味い。
「今のに追加で三人分頼みたいんだが、持ち帰りは出来るか?」
「容器を返してくれるなら大丈夫だ。」
「まぁそうなるよなぁ。」
「容器も高くてさぁ、取りに行ってもいいんだけどその間店を空けないといけないだろ?」
「確かに。」
持ち帰り用のプラ容器なんて存在しない。
昔の店屋物宜しく容器は回収っていうのが基本になる。
だが、店主の言うように回収にもじかんはかかるわけで・・・。
いっそのこと容器を持ってきたら値引きするのはどうだろうか。
「容器を持って帰ってきたらいいの?」
「ん?」
「私達が代わりに持ってきてあげる。そのかわり・・・。」
「駄賃だろ?ちゃっかりしてやがる。」
あははと店主が笑った。
「それだ。」
「なんだよ、いきなり大声出して。」
「繁盛する方法を思いついたぞ。」
「本当か!」
「そのためにはいくつか必要なものがあるんだが、可能だろう。」
「繁盛するなら何でもする、言ってくれ!」
身を乗り出して俺の提案に食いついてくる。
これはもしかするともしかするかもしれない。
面白い商売を思いついたぞ。
その為には準備が必要だ。
確かあれが使えるよな。
俺は頭の中で必要なものを必死に考えるのだった。
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