転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

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254.転売屋は花見をする

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「ねぇシロウ・・・。」

「ダンジョンにはいかないぞ。」

「なんで私の言う事が分かるのよ。」

「エリザがそんな感じで話しかける時は大抵ダンジョンに誘う時だからな。」

「え、そうなの!?」

「なんだよ、気付いてなかったのか。」

自分の癖はなかなかわからないと言うが、俺にも何か癖があるのかもな。

「それで、今回はどうしてダンジョンに行きたいのですか?」

「春になったし、お花見がしたいなって。」

「花見なら外だろ?」

「でも外にはまともな花が咲いてないでしょ?」

「まぁ確かに。」

「その点ダンジョンの中ならいろんな花が見られるし、場所さえ間違えなければ安全よ?」

「でもなぁ、ダンジョンかぁ。」

外にも魔物はいるがダンジョン内ほど危険は少ない。

ルフもいるし。

だがダンジョン内はどこから魔物が来るかわからないんだよなぁ。

「ちなみに、何を見に行くんですか?」

「この時期ならワイルドフラワーかな。」

「時期?」

「一応ダンジョンの中も外の季節とリンクしてるみたいなのよね、春になったら花が咲くし夏になったら草が生い茂るわ。」

「それは知らなかった。」

「でもワイルドフラワーは動きますよね?」

「は?」

花が、動く?

脚でも生えてるのか?

「まぁ、動くわね。」

「群生すると綺麗ですけど、単体だと危険だと書いてありました。」

「単体だと群れる場所を探す間凶暴化するのよねぇ。大丈夫、群れたら大人しくなるから。」

「それは大丈夫なのか?」

「ワイルドフラワーの蜜は薬にも使えるので、見終わった後は回収してもらいたいです。」

「まっかせといて!」

見終わった後は刈り取る。

花見とは?という感じもするが相手は魔物みたいだし、金になる物を置いておくのはもったいない。

「本当に安全なんだな?」

「私が護衛するのよ?当然じゃない!」

「まぁそれもそうか。」

「もちろん皆も行くわよね?」

「でしたらイライザ様のお店でお弁当をお願いしましょう。」

「弁当なんて売ってたか?」

「最近始めたそうですよ。デリバリーはできないけれどテイクアウトは可能だそうです。」

なんとまぁ商売上手だこと。

折角のお誘いだし皆で行くとしますかね。

「ちなみにダンジョンのどの辺なんだ?」

「片道2時間ってところかな。」

「道中安全なんだよな?」

「あはは、そうね。」

「ダンにも声をかけるか。」

「ダン様でしたらハーシェ様と一緒にビアンカさまの所に行かれているはずです。」

「・・・念のために魔物避け持って行こうな。」

ってな感じで急遽花見が決まった。

各自で用意を済ませてダンジョンの前に集合する。

「よーし、集まったわね。それじゃあお花見に・・・しゅっぱ~つ!」

「「「おー!」」」

「で、なんでニアまでいるんだ?」

「エリザから話を聞いたんですけど、道中の護衛欲しくないですか?」

「そりゃ欲しいが・・・戦えるのか?」

「言っとくけどニアは強いわよ。」

「マジか。」

「えへへ、これでも冒険者ギルドの職員ですからね。」

そんな風には見えなかったんだが、今更ながら考えるとそうだよな。

あの荒くれ者たちがニアの言う事を聞くっていう事は、つまりは実力があるという事だ。

そうでないと冒険者になめられてしまう。

一応持ちつ持たれつの関係ではあるけれど、向こうは荒くれ者。

それなりの実力がなければいう事を聞いてくれない事もあるだろう。

「でも、本音はサボりたかったのよね。」

「そ、そんなことないよ?」

「まぁ飯はあるし安全が確保できるのならば文句はない。ついでにワイルドフラワー討伐依頼も受けて来たしな。」

「この時期は動きが活性化しますので助かりました。」

「本当に安全なんだよな?」

「半径5メートル以内に近づかなければ大丈夫です。群れていれば。」

それはつまり単体だと危険だという事。

何を持って安全だと言い切るのか。

これだから脳筋は。

エリザを先頭にダンジョンの奥へと足を進める。

途中何度か襲撃を受けたが、エリザとニアがあっという間に返り討ちにしてしまった。

もちろん素材は回収している。

随分と血なまぐさい匂いがするが、まぁそれも含めての花見なんだろう。

「あ、そろそろよ。」

「やっとか。」

「ダンジョンの中ってもっと暗くてジメジメしている印象でしたが、天井は高いですし快適ですね。」

「今回はそう言う場所を通ったからね、場所によってはそう言う所もあるわよ。」

「エリザもそう言う気配りが出来るようになったのねぇ。」

「ちょっと、どういう意味よ。」

「そのまんまの意味よ。」

ニアにからかわれてエリザが頬を膨らませている。

可愛らしい?二人がふざけ合っているようにも見えるが、道中魔物を血祭りにあげているからな。

だまされちゃいけないぞ。

エリザが曲がり角を右に曲がり、その後を追いかけるように俺達も曲がる。

「おぉ・・・。」

「すご~い!」

「これは・・・綺麗です。」

曲がった先の光景に思わず感嘆の声が漏れてしまった。

天井はかなり高く、大きなプラネタリウムのようにドーム型になっていた。

その下には赤青黄紫橙等々色とりどりの花が咲き誇っている。

普通と違うのは地上1メートルぐらいの高さに咲いている事。

コスモスと思えば違和感はないが、花弁はヒマワリのように大きかった。

まるで畑に植えているカニバフラワーのようだ。

「ね、すっごいでしょ!」

「今年も良く群れてるわねぇ。」

「これが魔物とは思えないな。」

「見た目はね、でも近づくと・・・。」

おもむろにエリザが花たちに近づいていく。

先程話していた半径5メートル以内に近づいた途端、花弁の中心が裂け中から巨大な歯と舌が現れた。

周りの華もそれに反応し、一気に口を開く。

なかなかのホラー映像だ。

「こんな風になるの。」

その場からすぐに離れると、花は元の形に戻った。

「魔物だな。」

「そ、そうですね。」

「近づかなければ害はないし見た目も綺麗。悪くないでしょ?」

「悪くないというかなんというか・・・。」

「ま、いいじゃないの。ほらほら、お弁当食べようよお腹空いちゃった。」

「すぐに準備しますね。」

エリザとニアがドームの中央、まるで広場のようになっている場所で手招きをしている。

半径10メートル程の円形なので多少動いても花が反応することは無い。

真ん中に茣蓙を布き、持ってきた弁当を広げる。

こいつらは花だ、魔物じゃない。

そう言い聞かせながら、イライザさんお手製の弁当に舌鼓を打つのだった。

最初こそビビっていたが五分もすればその状況に慣れてしまう。

人間というのは現金な生き物だなぁ。

そんな事を思いながらボーっと辺りを見渡していると、俺達が来た通路から何かがやって来るのが見えた。

「あ、ちょうど一匹来たわね。」

同じくそいつに気付いたエリザが指をさすと全員の視線がそちらに向いた。

通路の奥からやってきたのは一匹の魔物。

周りの花と同じようにピンク色の大きな花弁をしたそれには、他の奴らにはない足がついていた。

いや、あれは足というか根っこか。

茎の下の方が二つに分かれ、器用にひょこひょこと歩いている。

「大丈夫なのか?」

「ここにいる限りはね、まぁみてなさいって。」

そいつはゆっくりだが確実にこちらに向かってきていた。

不安になる俺達をよそにニアとエリザはワクワクしている様子。

その時だった。

何かに躓きよろよろと横にずれる魔物。

よろめいた先はちょうど、さっきエリザが花を揶揄った場所だった。

半径5メートル以内に入り即座に反応する花達。

そして次の瞬間。

一番近くにいた花が体を曲げ、よろけた魔物の茎にかみついた。

「うぉ!」

「まだまだこれからよ!」

そして曲げた体を元に戻す反動で加えた魔物を空高く放り投げる。

そいつは放物線を描きながら花達が群れる空間へと落下した。

叫び声などは聞こえないが、落下地点では他の花達が落ちてきた魔物に顔を突っ込んでいる。

捕食しているんだろうか。

横にいる二人はかなりテンションが高いが、俺達はなんていうかかなり暗い気分になってしまった。

「食われたのか?」

「違うわよ、歓迎してるの?」

「俺には食っているようにしか見えないんだが。」

「私も最初はそう思ったんだけど、周りの花が場所を開けてその子を迎え入れているのよ。その証拠に、ほらさっきの子が出て来たでしょ。」

落下地点には青い花ばかりだったが、そこにぽつんとピンク色の花が混ざっている。

「随分と手荒な歓迎だな。」

「動けないからそうなっちゃうのよ。」

「群れれば歩く必要はないと・・・。なるほどねぇ。」

「なんだかこれを刈り取るのは可哀想になってきました。」

「何言ってるの!魔物は魔物、知らない初心者が近づいてあそこに放り投げられたらそれこそどうなるか、わかるでしょ。」

確かにその通りだ。

花だから迎え入れられたものの、それ以外だと奴らの餌食になってしまうだろう。

あぁ、動かなくていいのは他の魔物を養分にしているからなのか。

怖!

「他の魔物を喰って成長する花、そりゃ駆除されるわ。」

「でしょ?蜜は後で絞らないといけないからみんな頑張ってね。」

「「「「は~い。」」」」

ダンジョンの花見はエリザとニアによる高速刈り取りという出し物で無事に終了した。

動けないのをいいことに一気に近づいて通り抜けざまに根元から借りとる。

まるで草刈機のような動きに思わず拍手してしまった。

帰り道は全員で刈った花を背負ってまた来た道を戻る。

大変ではあったがなかなかに面白い花見だった。

また来たいかと聞かれると、それはまぁ別の話だけどな。
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