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277.転売屋は契約する
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とんだ流れで始まった化粧品開発だが、俺の想像以上の成果を見せ始めていた。
学者女ことカーラの実力は本物で、なんでも王都の有名な機関でかなりの研究成果を上げていたそうだ。
だが、王都に居ては自分の好きな研究が出来ないという事で多くの引き留めを振り切って退職。
貯めに貯めた貯金を切り崩しながら自分の求める化粧品を作るために旅をしていたらしい。
何だよその映画みたいな設定は!とつっこんでみたりもしたが、羊男に色々と調べてもらうとそれが紛れもない事実であることが証明された。
この国で五本の指に入る程の魔科学者が目の前で目を輝かせながら化粧品作りに没頭している。
アネットとも研究者?としての波長が合うのか、そのままうちの三階に居座ってしまった。
「見てください!本に書いてあった通りです!」
「本当にワイルドカウの眼球から美容成分が抽出できるなんて・・・。」
「今晩にはミノタウロスの眼球からも同様の成分が出るはずです。濃度は分かりませんが、まずは量をしっかりと確認していきましょう。」
「そうですね。ワイルドカウの方が効率が良いのであれば量産も可能ですから。」
「楽しみですねカーラ様。」
「はい!」
何とまぁ楽しそうな事。
会話だけ聞いていれば微笑ましい?感じもあるが、やっていることは中々にグロテスクだ。
なんせ、大量の眼球を潰して中の液体、硝子体だっけ?
ともかくそれを取り出すわけだがかき混ぜている時の後ろ姿は魔女のようだ。
買取を決めた時にはあまり思わなかったが、さすがに大量の眼球を提出された時は気分が悪くなった。
流石にもう慣れてしまったが、これをギルドに任せるのはなんだか可哀想だなぁ。
「どんな感じ?」
「第一段階は成功、次は量産に向けた第二段階って所らしい。」
「今までは簡単に上に上がれたけど、もう上がれなくなっちゃったわね。」
「お前でもあれはダメか?」
「大量の目に見つめられるのは流石に・・・。」
「あぁ、なんとなくわかる。」
「でもまぁ良かったじゃない。これで、あの女にぎゃふんと言わせることが出来るんでしょ?シープさんも喜んでいたわよ。」
「アイツは個人的な恨みが強すぎるんだよな。」
「それと、製品が出来たら持ってくるようにってアナスタシア様に言われているみたい。」
やっぱりそうなるよな。
俺が思っている以上に女性のお肌に対する執着はすごい。
年齢が上がれば上がるほどその傾向は強くなるようで、案の定アナスタシア様の耳にも入ってしまったようだ。
まだ第一段階で製品化なんてまだまだ先だと思うんだけど・・・。
そう思っているのは俺だけなんだろうか。
「出来たらな。だが、専売はしないぞ。」
「それは自分で言ってよね。」
「はいはい。」
「その声はエリザ様ですね、ちょっと試したいことがあるので来てくれませんか?」
「人体実験頑張ってな。」
「やめてよその言い方。」
いや、人体実験じゃなかったら何だっていうんだろうか。
興味と恐怖が入り混じる表情を浮かべながら、エリザが魔女の住む三階へと旅立っていく。
さて、休憩も終わったしミラと替わるか。
階段を降りると台所でミラがで水を飲んでいた。
「お疲れ様。」
「いかがですか?」
「今エリザが実験台にされている所だ。」
「それはそれは、順調そうで何よりです。思った以上に効き目があるので驚きました。」
「なんだ、ミラも試してもらったのか。」
「はい、昨日の晩に塗ってもらいました。水仕事をしてもカサカサにならないんですよ。」
「ほぉ。」
ミラの手を取りまじまじとみてみる。
うん、確かにいつも以上にすべすべだ。
「シロウ様、そろそろ手を。」
「おっと、スマン。」
「いえ、先程大量の素材を買い取ったので・・・。一応手は洗いましたが汚れていませんか?」
「全く問題ない。そうか、今日も持ち込みが多いか。」
「魔物の素材系はいつも通りですが、レレモンとボンバーオレンジの持ち込みがすごいですね。初心者にとってはかなり美味しい依頼のようです。取引所の依頼は取り下げましたが、ギルドの方はまだですから。」
「今の所実験は魔物系で行っているようだ。いくら日持ちするとはいえ、これ以上増えると扱いに困るな。」
裏庭の方に目を向けると、大量のレレモンとオレンジが山のように積まれていた。
こりゃこいつらの使用方法も考えないとなぁ。
ジャムでも作るか?
「ねぇシロウ、見て!」
と、人体実験されていたエリザが転がり落ちるようにして下に降りて来る。
最後は本当につんのめり、二段ほど残して俺に向かって飛び込んできた。
慌ててその体を抱きしめるも壁にぶつかってしまった。
思わず息が詰まる。
マジで痛い。
「あ、ごめん。」
「ごめんじゃねぇよ、気をつけろ。」
「わかった。ってそうじゃないのよ、見て!」
慌てて俺を突き放すと拳を突き出してくる。
外国でよくやる挨拶だろうか。
拳で拳を小突いてみる。
「違うわよ!手の甲を見てって言ってるの!」
「ん?」
よく見ると、一部分だけがつるつるになっている。
違うな、すべすべ?
ともかくその部分だけ肌の調子が違うようだ。
「ねぇすごいでしょ!ここだけつるつる!」
「まぁ、そうだな。」
「ワイルドカウの目にこんなすごい成分が眠っていたなんて!今日の夜にはミノタウルスの方も出来るみたいよ、ねぇミラ見て!」
「えぇ良く見えています。素晴らしい効き目ですね。」
「これでガサガサお肌ともおさらばよ!あぁ、早く実用化されないかなぁ。」
「まだ実験段階なんだからそこまでは無理だろ。」
「そんなことないわ!抽出に成功したってことはあとはどれだけ薄めるかだけだもの。入れ物さえ決まれば売りだせるはずよ!」
「はずってお前・・・。」
何をそんなにテンション上がってるんだ?
俺にはさっぱりわからん。
だが、本当に実用化されて売りに出せるのであれば、ちゃんとした契約とか交わした方がいいんじゃないだろうか。
製法とか守秘義務とか色々あるだろうに。
にしても入れ物、入れ物かぁ。
前の世界では山ほど化粧品が出ていたけれど、どれもデザインとか色とかにこだわっていたよなぁ。
もし売りに出すのなら、その辺もしっかりと作りこむ必要があるだろう。
庶民には手軽さを、金持ちには高級感を。
この二つをしっかりと考えれば、必ず売れて来る・・・はずだ。
「可愛い入れ物が良いですね。」
「私はキラキラしたやつが良いかなぁ。」
「この前のボトルみたいにか?」
「そう、それよ!あの入れ物とっても綺麗だったわ!」
「持ってきていただいた花瓶もなかなかの物でした。シロウ様・・・。」
「あぁ、言わなくてもわかってる。どこに住んでいるかはわかってるよな?」
「はい、リノン様からこの前頂いております。」
「なら完成したら相談してみるか。いや、その前に動かないと遅いな。」
「あ、シロウがまた悪い顔してる。」
悪い顔じゃない、金儲けを企てている顔だ。
って一緒か。
化粧品の効果が本物で、特に副作用とかないのであれば是非あの入れ物で売り出したい。
といっても、あまり経費はかけられないので庶民向けには既存の物を。
金持ち用には高級感のある特別製のやつをお願いするってのはどうだろうか。
特別製の方はあまり量産せず個数を絞って売ればプレミアもつくだろう。
今のうちに契約を結んで量産してもらっておけば、庶民向けの方は一気に売り出す事も出来るはずだ。
特注の分は時間もかかるだろうから仕込んでおかないとな。
「とりあえず様子見だ。」
「そうですね。」
「そっか、とりあえず今晩次第ね。」
その後、女達の歓声が響き渡ったのは夜遅くの事だった。
近所迷惑になるのでひとまず落ち着かせ、翌日の朝を迎える。
久々に良く寝たんだろう、二人ともいい顔をしていた。
「とりあえず抽出成功おめでとう。」
「ありがとうございます!」
「で、結局どっちが良いんだ?」
「品質はミノタウルスで、量はワイルドカウの方が上という感じです。」
「必要数は?」
「ミノタウルスが2頭分ワイルドカウは5頭分必要・・・かな。」
「結構いるんだな。」
「もう少し研究を続ければあと10%は効率化できると思うんだけど・・・。でも、抽出したのは原液だから薄め方によってはそれなりの数が作れると思うの。」
まぁ、まだそこまで研究してないし、それは今後の話だろう。
「わかった。でだ、ここからが大事な話なんだが・・・。」
「製法についてね。」
「話が早いな。」
「研究成果を守るためには色々と決まりが必要だもの。」
「今回は俺とカーラの共同研究って事になっているみたいだが、その辺は問題ないのか?」
「うん、アネットはシロウさんの奴隷だし機材も原料も全部そちら持ちだから全然オッケー。私はこれが出来ただけでも大満足。」
「欲のないやつだなぁ。」
「そうやって身を滅ぼした同僚を何人も知っているもの。」
王都の研究所ってことはそれなりの金が動く研究をしていたんだろう。
あれもダメこれもダメのがんじがらめは大変だったに違いない。
「じゃあ製法に関してだが当分は公開せず専売とさせてもらう。問い合わせがかなり来るだろうが、流出にはそれ相応の違約金を支払う事になるだろう。そうだな、金貨1000枚って所か?」
「そうね、それぐらいになっても仕方ないと思う。」
「えぇそんなに!?」
「だからくれぐれも漏らすなよ、ミラやアネットはともかくお前の分は面倒見ないからな。」
「そんなに必要なのでしょうか。」
「あぁ、お前達の喜びようから察するにそれだけ売れると俺は思う。カーラも自信満々だしな。」
「当たり前よ!」
それじゃああとはどうやってこいつを売るかだが・・・。
「販売に関しては俺に任せてもらって、カーラには製造をお願いしたい。機材や場所、原料はすべてこちらが用意させてもらう。構わないか?」
「え、私は作るだけでいいの?」
「他に作りたいものがあるのならそれを研究してもらっても構わない。だが、契約した以上必要数は作ってもらわないと困る。つまりは製法が公開されるまで拘束される事になる。」
「そんなの全然問題ない!魔物の素材にはまだ多くの可能性が秘められているもの!グリムモアさんみたいな立派な魔科学者になって見せるから!」
「純利益は折半。もちろんやり方や売り方に不満があれば口を出してもらっても構わない。ってな感じでいいか?」
「私は好きに研究と製作が出来て、お金まで貰えるのね。あぁ、最高だわ。」
「よかったですねカーラ様。」
「うん!これからもよろしくね、アネット!」
何はともあれ化粧品は完成、無事に契約も結ぶことが出来た。
これはもしかすると本業よりも儲けが出るかもしれない。
まさかこんなことになるとは・・・。
女豹に感謝しないとなぁ。
学者女ことカーラの実力は本物で、なんでも王都の有名な機関でかなりの研究成果を上げていたそうだ。
だが、王都に居ては自分の好きな研究が出来ないという事で多くの引き留めを振り切って退職。
貯めに貯めた貯金を切り崩しながら自分の求める化粧品を作るために旅をしていたらしい。
何だよその映画みたいな設定は!とつっこんでみたりもしたが、羊男に色々と調べてもらうとそれが紛れもない事実であることが証明された。
この国で五本の指に入る程の魔科学者が目の前で目を輝かせながら化粧品作りに没頭している。
アネットとも研究者?としての波長が合うのか、そのままうちの三階に居座ってしまった。
「見てください!本に書いてあった通りです!」
「本当にワイルドカウの眼球から美容成分が抽出できるなんて・・・。」
「今晩にはミノタウロスの眼球からも同様の成分が出るはずです。濃度は分かりませんが、まずは量をしっかりと確認していきましょう。」
「そうですね。ワイルドカウの方が効率が良いのであれば量産も可能ですから。」
「楽しみですねカーラ様。」
「はい!」
何とまぁ楽しそうな事。
会話だけ聞いていれば微笑ましい?感じもあるが、やっていることは中々にグロテスクだ。
なんせ、大量の眼球を潰して中の液体、硝子体だっけ?
ともかくそれを取り出すわけだがかき混ぜている時の後ろ姿は魔女のようだ。
買取を決めた時にはあまり思わなかったが、さすがに大量の眼球を提出された時は気分が悪くなった。
流石にもう慣れてしまったが、これをギルドに任せるのはなんだか可哀想だなぁ。
「どんな感じ?」
「第一段階は成功、次は量産に向けた第二段階って所らしい。」
「今までは簡単に上に上がれたけど、もう上がれなくなっちゃったわね。」
「お前でもあれはダメか?」
「大量の目に見つめられるのは流石に・・・。」
「あぁ、なんとなくわかる。」
「でもまぁ良かったじゃない。これで、あの女にぎゃふんと言わせることが出来るんでしょ?シープさんも喜んでいたわよ。」
「アイツは個人的な恨みが強すぎるんだよな。」
「それと、製品が出来たら持ってくるようにってアナスタシア様に言われているみたい。」
やっぱりそうなるよな。
俺が思っている以上に女性のお肌に対する執着はすごい。
年齢が上がれば上がるほどその傾向は強くなるようで、案の定アナスタシア様の耳にも入ってしまったようだ。
まだ第一段階で製品化なんてまだまだ先だと思うんだけど・・・。
そう思っているのは俺だけなんだろうか。
「出来たらな。だが、専売はしないぞ。」
「それは自分で言ってよね。」
「はいはい。」
「その声はエリザ様ですね、ちょっと試したいことがあるので来てくれませんか?」
「人体実験頑張ってな。」
「やめてよその言い方。」
いや、人体実験じゃなかったら何だっていうんだろうか。
興味と恐怖が入り混じる表情を浮かべながら、エリザが魔女の住む三階へと旅立っていく。
さて、休憩も終わったしミラと替わるか。
階段を降りると台所でミラがで水を飲んでいた。
「お疲れ様。」
「いかがですか?」
「今エリザが実験台にされている所だ。」
「それはそれは、順調そうで何よりです。思った以上に効き目があるので驚きました。」
「なんだ、ミラも試してもらったのか。」
「はい、昨日の晩に塗ってもらいました。水仕事をしてもカサカサにならないんですよ。」
「ほぉ。」
ミラの手を取りまじまじとみてみる。
うん、確かにいつも以上にすべすべだ。
「シロウ様、そろそろ手を。」
「おっと、スマン。」
「いえ、先程大量の素材を買い取ったので・・・。一応手は洗いましたが汚れていませんか?」
「全く問題ない。そうか、今日も持ち込みが多いか。」
「魔物の素材系はいつも通りですが、レレモンとボンバーオレンジの持ち込みがすごいですね。初心者にとってはかなり美味しい依頼のようです。取引所の依頼は取り下げましたが、ギルドの方はまだですから。」
「今の所実験は魔物系で行っているようだ。いくら日持ちするとはいえ、これ以上増えると扱いに困るな。」
裏庭の方に目を向けると、大量のレレモンとオレンジが山のように積まれていた。
こりゃこいつらの使用方法も考えないとなぁ。
ジャムでも作るか?
「ねぇシロウ、見て!」
と、人体実験されていたエリザが転がり落ちるようにして下に降りて来る。
最後は本当につんのめり、二段ほど残して俺に向かって飛び込んできた。
慌ててその体を抱きしめるも壁にぶつかってしまった。
思わず息が詰まる。
マジで痛い。
「あ、ごめん。」
「ごめんじゃねぇよ、気をつけろ。」
「わかった。ってそうじゃないのよ、見て!」
慌てて俺を突き放すと拳を突き出してくる。
外国でよくやる挨拶だろうか。
拳で拳を小突いてみる。
「違うわよ!手の甲を見てって言ってるの!」
「ん?」
よく見ると、一部分だけがつるつるになっている。
違うな、すべすべ?
ともかくその部分だけ肌の調子が違うようだ。
「ねぇすごいでしょ!ここだけつるつる!」
「まぁ、そうだな。」
「ワイルドカウの目にこんなすごい成分が眠っていたなんて!今日の夜にはミノタウルスの方も出来るみたいよ、ねぇミラ見て!」
「えぇ良く見えています。素晴らしい効き目ですね。」
「これでガサガサお肌ともおさらばよ!あぁ、早く実用化されないかなぁ。」
「まだ実験段階なんだからそこまでは無理だろ。」
「そんなことないわ!抽出に成功したってことはあとはどれだけ薄めるかだけだもの。入れ物さえ決まれば売りだせるはずよ!」
「はずってお前・・・。」
何をそんなにテンション上がってるんだ?
俺にはさっぱりわからん。
だが、本当に実用化されて売りに出せるのであれば、ちゃんとした契約とか交わした方がいいんじゃないだろうか。
製法とか守秘義務とか色々あるだろうに。
にしても入れ物、入れ物かぁ。
前の世界では山ほど化粧品が出ていたけれど、どれもデザインとか色とかにこだわっていたよなぁ。
もし売りに出すのなら、その辺もしっかりと作りこむ必要があるだろう。
庶民には手軽さを、金持ちには高級感を。
この二つをしっかりと考えれば、必ず売れて来る・・・はずだ。
「可愛い入れ物が良いですね。」
「私はキラキラしたやつが良いかなぁ。」
「この前のボトルみたいにか?」
「そう、それよ!あの入れ物とっても綺麗だったわ!」
「持ってきていただいた花瓶もなかなかの物でした。シロウ様・・・。」
「あぁ、言わなくてもわかってる。どこに住んでいるかはわかってるよな?」
「はい、リノン様からこの前頂いております。」
「なら完成したら相談してみるか。いや、その前に動かないと遅いな。」
「あ、シロウがまた悪い顔してる。」
悪い顔じゃない、金儲けを企てている顔だ。
って一緒か。
化粧品の効果が本物で、特に副作用とかないのであれば是非あの入れ物で売り出したい。
といっても、あまり経費はかけられないので庶民向けには既存の物を。
金持ち用には高級感のある特別製のやつをお願いするってのはどうだろうか。
特別製の方はあまり量産せず個数を絞って売ればプレミアもつくだろう。
今のうちに契約を結んで量産してもらっておけば、庶民向けの方は一気に売り出す事も出来るはずだ。
特注の分は時間もかかるだろうから仕込んでおかないとな。
「とりあえず様子見だ。」
「そうですね。」
「そっか、とりあえず今晩次第ね。」
その後、女達の歓声が響き渡ったのは夜遅くの事だった。
近所迷惑になるのでひとまず落ち着かせ、翌日の朝を迎える。
久々に良く寝たんだろう、二人ともいい顔をしていた。
「とりあえず抽出成功おめでとう。」
「ありがとうございます!」
「で、結局どっちが良いんだ?」
「品質はミノタウルスで、量はワイルドカウの方が上という感じです。」
「必要数は?」
「ミノタウルスが2頭分ワイルドカウは5頭分必要・・・かな。」
「結構いるんだな。」
「もう少し研究を続ければあと10%は効率化できると思うんだけど・・・。でも、抽出したのは原液だから薄め方によってはそれなりの数が作れると思うの。」
まぁ、まだそこまで研究してないし、それは今後の話だろう。
「わかった。でだ、ここからが大事な話なんだが・・・。」
「製法についてね。」
「話が早いな。」
「研究成果を守るためには色々と決まりが必要だもの。」
「今回は俺とカーラの共同研究って事になっているみたいだが、その辺は問題ないのか?」
「うん、アネットはシロウさんの奴隷だし機材も原料も全部そちら持ちだから全然オッケー。私はこれが出来ただけでも大満足。」
「欲のないやつだなぁ。」
「そうやって身を滅ぼした同僚を何人も知っているもの。」
王都の研究所ってことはそれなりの金が動く研究をしていたんだろう。
あれもダメこれもダメのがんじがらめは大変だったに違いない。
「じゃあ製法に関してだが当分は公開せず専売とさせてもらう。問い合わせがかなり来るだろうが、流出にはそれ相応の違約金を支払う事になるだろう。そうだな、金貨1000枚って所か?」
「そうね、それぐらいになっても仕方ないと思う。」
「えぇそんなに!?」
「だからくれぐれも漏らすなよ、ミラやアネットはともかくお前の分は面倒見ないからな。」
「そんなに必要なのでしょうか。」
「あぁ、お前達の喜びようから察するにそれだけ売れると俺は思う。カーラも自信満々だしな。」
「当たり前よ!」
それじゃああとはどうやってこいつを売るかだが・・・。
「販売に関しては俺に任せてもらって、カーラには製造をお願いしたい。機材や場所、原料はすべてこちらが用意させてもらう。構わないか?」
「え、私は作るだけでいいの?」
「他に作りたいものがあるのならそれを研究してもらっても構わない。だが、契約した以上必要数は作ってもらわないと困る。つまりは製法が公開されるまで拘束される事になる。」
「そんなの全然問題ない!魔物の素材にはまだ多くの可能性が秘められているもの!グリムモアさんみたいな立派な魔科学者になって見せるから!」
「純利益は折半。もちろんやり方や売り方に不満があれば口を出してもらっても構わない。ってな感じでいいか?」
「私は好きに研究と製作が出来て、お金まで貰えるのね。あぁ、最高だわ。」
「よかったですねカーラ様。」
「うん!これからもよろしくね、アネット!」
何はともあれ化粧品は完成、無事に契約も結ぶことが出来た。
これはもしかすると本業よりも儲けが出るかもしれない。
まさかこんなことになるとは・・・。
女豹に感謝しないとなぁ。
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