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304.転売屋は百穴の秘密を知る
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願いの小石の謎は思いもよらない所で解決した。
「願いの小石?あぁ、入り口にたくさん穴の空いている場所があるだろ、あそこに入れるんだよ。へぇ、あれを集める人がいたんだなぁ。え、彼が買い取っていた?使い方も知らずに?はぁ~、本当に面白いなぁ彼は。」
なんてやり取りが行われたんだろう。
彼ならそう言いかねない。
調べはじめて二日。
願いの小石がダンジョンから見つかる事から、ダンジョンに詳しいホードに話を聞きに行ってもらったんだ。
もちろんエリザに。
「つまり石の魔物の奥にある百穴に願いの小石を入れればいいんだな?」
「そうらしいわよ。でもあんまりお勧めしないって。」
「なんでだ?」
「それは噂通りの事になるからよ。」
噂というのは願いに比例して良くない事が起きるという奴だ。
突然のように降って湧いた噂はあっという間に街中に広まっていった。
それが広がるのと同じようにダンジョンにも異変が起きている。
奥にしか出ないような魔物が浅い階層に出る。
宝箱が突然消えたり、魔物が急に増えたりする・・・等々。
いつもなら起こらないような事がダンジョン内で発生している。
俺もいつもの日課をこなしていたら、例の魔物が魔石を落とした。
それもかなり純度の高い奴だ。
普通はダンジョンの奥深くに潜らないと手に入らないようなやつがぽろっと出た。
それも三つも。
オリハルコンが出るんだから純度の高い魔石が出てもおかしくないのだが、魔石は絶対に一つしか落ちなかった。
それが三つ。
明らかにおかしい。
「もう少し詳しく調べた方が良いな。」
「そうね、願いの小石については調べたけど百穴は調べてないもんね。」
「今回の件ギルドには言ったか?」
「言えるはずないじゃない。ホードの事は秘密だもん。」
「だよな。」
ってことは俺もその辺をうまくごまかして探すしかないか。
「わかった、とりあえずこっちで調べておくから休んどけ。また召集されるかもだろ?」
「今日は別の冒険者が対応するから大丈夫よ。」
「ならゆっくり休んどけ、俺も夕方までには戻る。」
「ミラとアネットは?」
「市場に行って貰ってる。アネットは上で製薬中だ。」
「そっか。」
ポキポキと首を鳴らしながら二階に上がっていくエリザを見送り、俺も店を出る。
もちろん店は休業中だ。
「今度は百穴?」
「あぁ、どうやらそこが怪しいって話を聞いたんで調べに来た。」
「ダンジョンにある祠だね。そう言えば穴が百個、確かに願いの小石の必要数と一致する。」
「だろ?」
「そこは盲点だったよ。えぇ~っとどこにあったかな。前と違ってそんなに数が無いんだよなぁ。」
アレン少年がいつもと違って書庫へと向かう。
よほど古い本なんだろう。
10分ほどして戻ってきた彼が持ってきたのは、二冊の古ぼけた本。
かなりの年代物のようだ。
というか二冊だけ?
「この前みたいに伝記だけなのか?」
「いや、これで全部さ。ダンジョンの初期からあるはずなのに、全く研究されてこなかったみたいだね。目の前にある石の魔物が不気味でという記述もあった。」
「あぁぁ・・・なんとなくわかる。とりあえず読んでみるか。」
「僕はこっちを読むよ。」
「あぁ、頼む。」
二人で読めば一時間ぐらいで終わるだろう。
この前同様いい感じの場所に座れば、読書の時間も苦にならない。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
いや、苦痛だった。
苦痛というか書いてあった内容があまりにもすごすぎて胃が痛くなったが正しいか。
「はぁ。」
「これは、中々の内容だね。」
「そっちも同じ感じか?」
「うん。『百穴の各穴に願いの小石を入れ、対象者は願いを唱える。どのような願いでも叶えられるが、願いに比例するだけの悪夢が地の底より現れるだろう。』だって。」
「こっちも似たようなもんだ。過去二回分の記が残っていたが金貨1000枚を望んだ時は二日間ダンジョンから魔物が湧き続けて、絶世の美女を願った時は半日魔物が湧き続けたらしい。基準が変わらないが、ともかくダンジョンから多種多様な魔物が出てくることだけは分かったな。」
「どのぐらいかな。」
「それはわからないが、金貨の時は不眠不休だったらしい。」
「となるとそれ相応の準備がいるよね。」
「多いのか少ないのかはわからないが、金と女でその程度だ。世界征服とか不老長寿とかよくある最悪ネタをぶち込んだらどうなるんだ?」
「世界を征服するかわりに世界が魔物で埋め尽くされるぐらいに魔物が出て来るとか?」
「比例するってのがあれだよな。はぁ、簡単に使用できないわけだよ。」
元の世界に戻る気はないが、戻りたいと願ったとしたらどうなってしまうんだろうか。
さっき言ったみたいに世界が滅びるまで魔物が出るとか?
だって世界からいなくなるんだよな?
じゃあ世界も無くなってもおかしくない。
願い事は慎重にってか?
「とりあえず俺は急ぎ手紙を出す。今日は助かった。」
「構わないよ、久々に楽しい時間だった。」
そいつは何よりだ。
急ぎ店に戻り事情を説明する。
予想通りエリザはガッカリした顔をしていたが。
「まぁ仕方ないわよね。自分のお願いで皆に迷惑はかけられないし。」
「だよな。」
「ですが、王族は分かりませんよ。」
「どういう事アネット。」
「自分のしたい事の為には何でもする、それこそ私みたいな人種を狙い始めたのも王族ですから。」
「成程、権力があるとそれも出来るか。あの国王陛下に限ってそれはない、そう言いきれるほど親しいわけでもないからなぁ。特に王子の為になったら・・・親バカってのはどこの世界にもいるものだ。」
「でも教えるんでしょ?」
「あぁ、そう言う約束だ。事実はしっかりと伝え、その上でどう判断するかは俺達の知ったこっちゃない。でもまぁ、世界が滅びるとわかって変なことは願わないだろう。」
「そうであることを願います。」
個人的な恨みがるわけではないが、きっかけを作ったのは王族。
だからあまり好ましい顔をしていなかったのか。
なるほどなぁ。
「さて、俺達は来るべき時の為に準備をするか。」
「シロウは願い事をすると踏んでるのね。」
「当り前だろ、王族が叶うかもわからない願いの小石なんかを集めてたんだ。よほど叶えたい願いがあるって事だろう。どんな願いかはわからないが覚悟はしておいた方がいいだろうな。」
「世界を滅ぼさない程度の願いならいいけど。」
エリザのいう通りだ。
その叶えたい願い次第で俺達の運命が変わる。
その日のうちに手紙をしたため、ギルド協会を通じて速達を頼んだ。
二日もかからず向こうに到着するらしい。
一体どういう原理なのか聞いてみたら、なんと伝書鳩宜しく高速で飛ぶ魔獣を使うらしい。
なんとまぁローテクというかハイテクというか。
どの世界でも使うもの、考えるものは同じなんだなぁ。
「さて、来る日に備えてやるべきことをやるわけだが。」
「具体的には何するの?」
「あの記述から察するに今のダンジョンの不安定さも願いの小石が集まったことから派生してるんじゃないかと勝手に考えている。なに、出てくる場所がわかってるんだからそれにあわせればいいだけだよ。武器、薬、食料、ダンジョンで必要とされる全てを集める。」
「どのぐらい集めますか?」
「費用に上限は設けない、集められるだけ集めよう。」
「本気!?」
「あぁ、いつになるかは断定できないが間違いなく元は取れる。先に仕入れておき、必要となったところで高く売りつけてやればいいのさ。やるとなったら金を出すのは向こうだろうからな。」
「なるほど。」
向こうの都合で大変なことをやらかすんだ、金ぐらい出すだろう。
金貨1000枚をぽんと出すぐらいだからな、今回もたっぷり支払ってくれるだろう。
「アネットはビアンカの所に行ってポーションなんかを出来る限り集めてくれ。なんなら薬を飲ませて作らせても良い、倒れない程度にな。ミラは取引所に行って食料の確保だ。とはいえ、生ものは難しいから多少日持ちのする奴がいいだろう。エリザはギルドにいって食料に使える素材の確保。さっきも言ったように金は気にするな、とことんやってやれ。」
「「「はい!」」」
俺の勘が外れれば大損だが・・・。
おそらく外れないだろうなぁ。
「願いの小石?あぁ、入り口にたくさん穴の空いている場所があるだろ、あそこに入れるんだよ。へぇ、あれを集める人がいたんだなぁ。え、彼が買い取っていた?使い方も知らずに?はぁ~、本当に面白いなぁ彼は。」
なんてやり取りが行われたんだろう。
彼ならそう言いかねない。
調べはじめて二日。
願いの小石がダンジョンから見つかる事から、ダンジョンに詳しいホードに話を聞きに行ってもらったんだ。
もちろんエリザに。
「つまり石の魔物の奥にある百穴に願いの小石を入れればいいんだな?」
「そうらしいわよ。でもあんまりお勧めしないって。」
「なんでだ?」
「それは噂通りの事になるからよ。」
噂というのは願いに比例して良くない事が起きるという奴だ。
突然のように降って湧いた噂はあっという間に街中に広まっていった。
それが広がるのと同じようにダンジョンにも異変が起きている。
奥にしか出ないような魔物が浅い階層に出る。
宝箱が突然消えたり、魔物が急に増えたりする・・・等々。
いつもなら起こらないような事がダンジョン内で発生している。
俺もいつもの日課をこなしていたら、例の魔物が魔石を落とした。
それもかなり純度の高い奴だ。
普通はダンジョンの奥深くに潜らないと手に入らないようなやつがぽろっと出た。
それも三つも。
オリハルコンが出るんだから純度の高い魔石が出てもおかしくないのだが、魔石は絶対に一つしか落ちなかった。
それが三つ。
明らかにおかしい。
「もう少し詳しく調べた方が良いな。」
「そうね、願いの小石については調べたけど百穴は調べてないもんね。」
「今回の件ギルドには言ったか?」
「言えるはずないじゃない。ホードの事は秘密だもん。」
「だよな。」
ってことは俺もその辺をうまくごまかして探すしかないか。
「わかった、とりあえずこっちで調べておくから休んどけ。また召集されるかもだろ?」
「今日は別の冒険者が対応するから大丈夫よ。」
「ならゆっくり休んどけ、俺も夕方までには戻る。」
「ミラとアネットは?」
「市場に行って貰ってる。アネットは上で製薬中だ。」
「そっか。」
ポキポキと首を鳴らしながら二階に上がっていくエリザを見送り、俺も店を出る。
もちろん店は休業中だ。
「今度は百穴?」
「あぁ、どうやらそこが怪しいって話を聞いたんで調べに来た。」
「ダンジョンにある祠だね。そう言えば穴が百個、確かに願いの小石の必要数と一致する。」
「だろ?」
「そこは盲点だったよ。えぇ~っとどこにあったかな。前と違ってそんなに数が無いんだよなぁ。」
アレン少年がいつもと違って書庫へと向かう。
よほど古い本なんだろう。
10分ほどして戻ってきた彼が持ってきたのは、二冊の古ぼけた本。
かなりの年代物のようだ。
というか二冊だけ?
「この前みたいに伝記だけなのか?」
「いや、これで全部さ。ダンジョンの初期からあるはずなのに、全く研究されてこなかったみたいだね。目の前にある石の魔物が不気味でという記述もあった。」
「あぁぁ・・・なんとなくわかる。とりあえず読んでみるか。」
「僕はこっちを読むよ。」
「あぁ、頼む。」
二人で読めば一時間ぐらいで終わるだろう。
この前同様いい感じの場所に座れば、読書の時間も苦にならない。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
いや、苦痛だった。
苦痛というか書いてあった内容があまりにもすごすぎて胃が痛くなったが正しいか。
「はぁ。」
「これは、中々の内容だね。」
「そっちも同じ感じか?」
「うん。『百穴の各穴に願いの小石を入れ、対象者は願いを唱える。どのような願いでも叶えられるが、願いに比例するだけの悪夢が地の底より現れるだろう。』だって。」
「こっちも似たようなもんだ。過去二回分の記が残っていたが金貨1000枚を望んだ時は二日間ダンジョンから魔物が湧き続けて、絶世の美女を願った時は半日魔物が湧き続けたらしい。基準が変わらないが、ともかくダンジョンから多種多様な魔物が出てくることだけは分かったな。」
「どのぐらいかな。」
「それはわからないが、金貨の時は不眠不休だったらしい。」
「となるとそれ相応の準備がいるよね。」
「多いのか少ないのかはわからないが、金と女でその程度だ。世界征服とか不老長寿とかよくある最悪ネタをぶち込んだらどうなるんだ?」
「世界を征服するかわりに世界が魔物で埋め尽くされるぐらいに魔物が出て来るとか?」
「比例するってのがあれだよな。はぁ、簡単に使用できないわけだよ。」
元の世界に戻る気はないが、戻りたいと願ったとしたらどうなってしまうんだろうか。
さっき言ったみたいに世界が滅びるまで魔物が出るとか?
だって世界からいなくなるんだよな?
じゃあ世界も無くなってもおかしくない。
願い事は慎重にってか?
「とりあえず俺は急ぎ手紙を出す。今日は助かった。」
「構わないよ、久々に楽しい時間だった。」
そいつは何よりだ。
急ぎ店に戻り事情を説明する。
予想通りエリザはガッカリした顔をしていたが。
「まぁ仕方ないわよね。自分のお願いで皆に迷惑はかけられないし。」
「だよな。」
「ですが、王族は分かりませんよ。」
「どういう事アネット。」
「自分のしたい事の為には何でもする、それこそ私みたいな人種を狙い始めたのも王族ですから。」
「成程、権力があるとそれも出来るか。あの国王陛下に限ってそれはない、そう言いきれるほど親しいわけでもないからなぁ。特に王子の為になったら・・・親バカってのはどこの世界にもいるものだ。」
「でも教えるんでしょ?」
「あぁ、そう言う約束だ。事実はしっかりと伝え、その上でどう判断するかは俺達の知ったこっちゃない。でもまぁ、世界が滅びるとわかって変なことは願わないだろう。」
「そうであることを願います。」
個人的な恨みがるわけではないが、きっかけを作ったのは王族。
だからあまり好ましい顔をしていなかったのか。
なるほどなぁ。
「さて、俺達は来るべき時の為に準備をするか。」
「シロウは願い事をすると踏んでるのね。」
「当り前だろ、王族が叶うかもわからない願いの小石なんかを集めてたんだ。よほど叶えたい願いがあるって事だろう。どんな願いかはわからないが覚悟はしておいた方がいいだろうな。」
「世界を滅ぼさない程度の願いならいいけど。」
エリザのいう通りだ。
その叶えたい願い次第で俺達の運命が変わる。
その日のうちに手紙をしたため、ギルド協会を通じて速達を頼んだ。
二日もかからず向こうに到着するらしい。
一体どういう原理なのか聞いてみたら、なんと伝書鳩宜しく高速で飛ぶ魔獣を使うらしい。
なんとまぁローテクというかハイテクというか。
どの世界でも使うもの、考えるものは同じなんだなぁ。
「さて、来る日に備えてやるべきことをやるわけだが。」
「具体的には何するの?」
「あの記述から察するに今のダンジョンの不安定さも願いの小石が集まったことから派生してるんじゃないかと勝手に考えている。なに、出てくる場所がわかってるんだからそれにあわせればいいだけだよ。武器、薬、食料、ダンジョンで必要とされる全てを集める。」
「どのぐらい集めますか?」
「費用に上限は設けない、集められるだけ集めよう。」
「本気!?」
「あぁ、いつになるかは断定できないが間違いなく元は取れる。先に仕入れておき、必要となったところで高く売りつけてやればいいのさ。やるとなったら金を出すのは向こうだろうからな。」
「なるほど。」
向こうの都合で大変なことをやらかすんだ、金ぐらい出すだろう。
金貨1000枚をぽんと出すぐらいだからな、今回もたっぷり支払ってくれるだろう。
「アネットはビアンカの所に行ってポーションなんかを出来る限り集めてくれ。なんなら薬を飲ませて作らせても良い、倒れない程度にな。ミラは取引所に行って食料の確保だ。とはいえ、生ものは難しいから多少日持ちのする奴がいいだろう。エリザはギルドにいって食料に使える素材の確保。さっきも言ったように金は気にするな、とことんやってやれ。」
「「「はい!」」」
俺の勘が外れれば大損だが・・・。
おそらく外れないだろうなぁ。
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