転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

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440.転売屋は父親になる

開いた口が塞がらないとはこの事だろう。

いや、悪い意味ではないぞ?

本当に開いたまま閉じないんだよ。

やり切った感満載で家に戻ると、何やら女たちが雁首揃えて食卓を囲んでいた。

ちなみにマリーさんとアニエスさんは店に戻っているし、イザベラはそのまま置いてきた。

だから家にいたのはいつものメンバー。

あ、メルディもいたな。

で、戻ってきた報告をしようと思ったらいきなりこの発言ですよ。

そりゃ考えていたことが何もかも吹っ飛ぶってもんだろう。

「ちょっとシロウ、なんて顔してるのよ。おめでとうぐらい言えないの?」

「エリザ様、シロウ様は思考が追い付いていないだけかと。」

「だいぶ大変だったんでしょう。あれ、イザベラさんは?」

「シロウ様、とりあえず中へ。」

「お、おぉ・・・。」

ハーシェさんに誘導されるがまま、いつもの席に着席する。

すぐにミラが香茶を出してくれた。

とりあえずこれを飲んで一息つこう。

はぁ、美味しい・・・。

「で、誰の子だって?」

「何ふざけたこと言ってるのよ、シロウの子に決まってるじゃない!」

「だよなぁ。」

「あの、お嫌でしたか?」

「そ、そんなことないぞ。お前らが薬を飲まないと言い出してから覚悟はしていた、していたんだが・・・。」

「まさかハーシェ様に先を越されるとは思いませんでした。」

「悔しいですが、順番を考えると妥当でしょう。」

「そうね、私達はまだまだ余裕があるし。」

ハーシェさんの申し訳なさそうな顔がパッと光り輝く。

そう、妊娠を告げたのはハーシェさんだ。

誰が最初に妊娠してもおかしくはないのだが、女たちの中で最年長のハーシェさんが妊娠したのはある意味必然ともいえる。

エリザ達とは毎日交代で致しているがその分回数も少なく、なんていうか精神的な満足感を得る行為に近いんだよな。

その点ハーシェさんとは、がっつりやってしまう。

それこそ孕ませる気でやっていたのかもしれない。

元の年齢を考えるとエリザ達よりも好みに近いってのがあるのかもしれないな。

もちろん少ないと言っても最低三回戦はするぞ。

なんせ若いからな。

体だけは。

「そうか、子供か・・・。」

「今で二か月ほどです、安定期に入っていませんのでまだ予断は許しませんが、このままいけば7月頃には産まれるかと。」

「夏が楽しみだな。」

「つきましてはお仕事について相談を・・・。」

「仕事?もちろん休止だ休止。」

「いえ、出来れば安定期までお休みさせていただいてその後は無理のない範囲でやらせてほしいんです。ダメでしょうか。」

なに?

働きたいだって?

「休むわけにはいかないのか?」

「お付き合いのある業者さんもいますので、引継ぎが完了するまでは。それと、動けるうちに稼いでおきたいというのもあります。」

「別に稼がなくてもいいんじゃないか?」

「ダメです。シロウ様にお借りしたお金を返さないと、本当の意味でシロウ様のものになれたとは言えません。」

真剣な面持ちでそう言われてしまうと何も言い返せないんだが。

っていうか、いつものハーシェさんだったらもう少し穏やかな話し方をするものだが、これが母親になるという事なのか?

「いいなぁ、私もそんなこと言ってみたい。」

「仮にお前が妊娠したらどうするんだ?」

「もちろん休むわよ。だっておなかの子に何かあったら大変だもの。」

「だよなぁ。」

「でも、ゴロゴロするだけは何か嫌なのよねぇ。ハーシェさんの言うように、安定期に入ったらギルドの手伝いはしたいかも。ほら、この前みたいに講師の仕事なら負担も少ないし。」

「私もギリギリまで働くつもりです。お薬の種類は限られますけど、私の薬を待っていて下さる方もいますから。」

エリザとアネットも同様に働く気満々だ。

子供のためにゆっくりするという選択肢はどうやらないらしい。

「ミラはどうだ?」

「私もそうですね、出来るだけシロウ様のお手伝いをしたいと思います。」

「俺が休めと言ってもか?」

「ご命令であれば従うしかありません、ですが運動不足は子供の発育にも良くないとリンカ様が仰っておりました。元気な子供を産むためにもある程度は体を動かしたく思います。」

「うぅむ、そういうものなのか。」

「子供が大切なのはわかるけど、私達の事も心配してよね。」

「だから休むんだろ?」

「肉体的にはそうだけど、精神的にはしんどいの。」

そういうものなんだろうか。

確かに作業をすると嫌な事を忘れられたりするから、何もしないよりかはマシかもしれないが。

「それにしても、俺が父親か。」

「なによそんな顔しちゃって。」

「元の世界でも子供はいなかったんだ、一生そういうのには縁がないと思っていた。だから急に父親になると言われても実感がわかないってのが本音だ。」

「ダン様がおっしゃっておりました、父親になるには時間がかかるそうです。」

「男は気楽でいいわよね、女は命が宿った時から戦いなのよ。そうだ、つわりは?ハーシェさん一人でしょ、大丈夫なの?」

「おかげさまでまだそこまで本格的には来てません、恐らく大丈夫かと。」

「ダメよ!」「ダメだ。」

エリザと同時にダメ出しをする。

うん、ダメよな。

エリザよく言った。

「な、何がでしょうか。」

「俺の子、そしてハーシェさんに何かあってからでは遅い。今すぐうちの屋敷にこい。」

「シロウ様のですか?」

「幸い部屋は山ほどある、使用人もいるし何かあった時にすぐ対応できる。いい加減家を分けるのもアレだろう、いい機会だ。」

「えっと、それはつまり・・・。」

「俺の所に来い、ハーシェ。」

「は、はい!」

これまではなんとなく仕事をする仲間、という線引きをしていた。

もちろんすることはしていたし、他の女たち同様大切にもしていた。

だが前の旦那さんや借金もありどこかで引いていた部分もあったんだ。

だが、お腹に俺の子がいる以上そんなくだらない線引きをする必要はない。

こいつは俺の女だ。

だから俺のそばに置いておく。

何も難しいことは言っていない、エリザ達同様のことをするだけだ。

「これで名実共にハーシェ様と家族になるのですね、宜しくお願いしますハーシェ様。」

「お薬は任せてください!お腹に影響のないお薬もたくさんありますから、しんどくなったらいつでも言ってくださいね。」

「ありがとうございます、ミラさん、アネットさん。」

「さぁ、そうと決まったら早速引っ越しよね!」

「いや、それは無理だろう。」

「なんでよ!」

どれだけ気が早いんだよこいつは。

確かに俺の所に来いとは言ったが、いきなり動けるわけないだろうが。

「言ってただろ、引継ぎやらなんやらとやることが多いんだ。いきなり環境が変わるのも良くないだろうし、俺達の引っ越しも当分先だ。しばらくは屋敷の管理をハーシェさんに任せて両方を移動してもらう感じになるだろう。かまわないか?」

「はい。今の家も売らないといけませんので、ひとまず今月は今の家に住んで来月から移ろうかと思います。」

「それでいい、荷物の搬入はエリザ達がやるから貴重品なんかをゆっくり移動させてくれ。屋敷の掃除なんかは使用人がやる。そうだ、来月以降の使用人をどうにかしないといけなかったな、それも任せていいか?」

「私でよろしいのですか?」

「ミラ一人ではなかなかに大変だからな。イザベラもいなくなったし、手伝ってくれると助かる。」

ウィフさんが雇っていた使用人たちは今月いっぱいで契約が切れる。

それまでに何人か見繕っておかないとすぐに屋敷が汚れてしまうだろう。

さすがにミラとアネットに掃除を全部任せるわけにはいかない。

二人には店と製薬もしてもらわないといけないんだ、屋敷の管理は別の人にしてもらわねばなるまい。

そういう意味でも、基本屋敷で仕事ができるハーシェさんが来てくれるのは好都合だよな。

「ねぇ、そのイザベラさんはどこいったの?例の作戦は成功したのよね?」

「エリザ様、色々聞きたいのはわかりますがシロウ様もお疲れです。」

「でも気になるじゃない。」

「そんじゃま、場所を変えてゆっくり話をするか。マリーさんとアニエスさんにもお礼をしたいし。」

「ではイライザ様のお店を貸し切ってまいります。」

「祝杯よ祝杯!でも次は私なんだから!」

「別に構わないが妊娠したら飲めなくなるぞ。」

「う、それは・・・。」

「ダメですよエリザさん、赤ちゃんの為にもお酒は禁止です。」

「ま、まだいないから大丈夫・・・よね?」

いや知らんがな。

することはしてるわけだし、近々他の女達も孕むかもしれないし、そうならないかもしれない。

こればっかりは授かりものだからなぁ。

一つだけ言えるのは、俺にも子種はあったってことだ。

高熱を出すと無くなるとかいうが、その心配は無かったようだな。

嬉しそうに微笑むハーシェさんを後ろからそっと抱きしめる。

何も言わずに俺の手を取り自分のお腹の上に押し当てた。

「ここにいるのか。」

「はい。頑張って育てますね。」

「あぁ、頑張ってくれ。」

男にできるのは安全に産める場所を提供するだけだ。

その為にもしっかり稼いでおかないとな!

だが、今日はゆっくりこの幸せをかみしめよう。

そうか、俺も父親になるのか。

幸せなはずなのに何故か不安が大きいのは気のせいだろう。
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