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444.転売屋は休憩する
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燃料問題は何とか解決・・・した。
いや、厳密には根本的な解決にはなっていないんだがとりあえず問題の一週間は何とか乗り越え、街には燃料が到着した。
到着したが、その燃料の出番は当分きそうにない。
「いや~、まさかこの街から燃料を輸出する日が来るとはね。」
「アナスタシア様随分うれしそうですね。」
「そりゃそうよ、いつもはお金を払っているものがお金を生み出すんだもの。これもシロウさんのおかげかしら?」
「そういうのは安定定期に供給できるようになってから言えよ。今はパームボールの巣があったから何とかなってるが、何時枯渇するかわからないんだぞ?せめて人工的な栽培が成功してからいうんだな。」
「でも白炭と脂があるじゃない。」
「あれは既存の燃料と比べると効率が悪い。せめて精製したパームボールと同等の効率が出ればなぁ。っていうか、火力が強すぎていつか火事になるぞ。」
あれから目ぼしい素材は見つからなかったが、候補に挙がった三つの素材のおかげでなんとか燃料危機を乗り越えることができたわけだ。
だが、白炭は元々鍛冶場で使われるような高火力素材。
なんとかボアの脂で火力を下げ、かつ持続化することができたが混ぜる割合を間違えると火に油。
現にボヤ騒ぎが三件起きている。
日中だからよかったものの、夜中なら火事になっていてもおかしくない。
あの後パームボールの巣が見つかっていなかったらそれこそ危なかっただろう。
巣が見つかったおかげで大量の実が手に入った。
それを精製することで既存の燃料よりも高純度の物が出来たわけだ。
かなりの量があるので、買い付けた燃料はそのまま備蓄に回し同じく燃料に困っていた隣町へと輸出が決まった。
決まったが、さっきも言ったように安定的な供給が見込めない以上、産業というのはなかなかに難しいだろう。
精製するにも金がかかっている。
ダンジョン内で手にはいる素材で何とかなるとはいえ、臭いを失くし不純物を取り出すのもなかなかに大変だ。
本来であればかなり複雑な加工工程を経るものだが、ここは異世界。
そういう科学工程を無視する素材があるんだから便利だよなぁ。
「そのあたりは気を付けるように注意喚起するしかないわね。」
「個人的にはパームボールは旨味が無いから、他の素材の方がありがたいんだがな。」
「アレ、原価いくらなの?」
「大量に手に入りすぎて今や銅貨2~3枚ってところか。数が手にはいるからそれなりの稼ぎにはなるし、新人たちにはうってつけだろ。」
「ともかく助かったわ。後はこっちで引き継ぐから、貴方そろそろ店に戻ったら?ここ一週間まともに休んでないでしょ。」
「あ~・・・。」
確かにアナスタシア様のいう通りだ。
素材が絡むのでついつい出張って仕事をしていたが、本来はギルド協会と各ギルドの仕事であって買取屋の仕事じゃない。
俺が買取向こうが持っていく。
それが本来のあるべき姿だ。
働きすぎで身体を壊すわけにもいかないし、助言通り休むとしよう。
「シロウ、いる~?」
「ほら、お迎えが来たわよ。」
「エリザか。」
「ミラが心配してるから迎えに来たわよ、もう話は終わったんでしょ?」
「まぁな。」
「じゃあさっさと行くわよ。アナスタシア様、失礼します。」
「よく休むように言ってちょうだい。」
「は~い。」
いや、一応街のナンバー2なんだけど、この人。
随分と砕けた返事するようになったじゃないか。
まぁ、俺も普通に話をしてるけどさぁ。
今日は比較的気温が高いようだ。
いつものような刺すような冷たさがない。
本来はこれがいつもの冬なんだが、早く寒波が通り過ぎないだろうか。
大通りの端には雪が積み上げられているものの、真ん中は除雪されているので歩きやすい。
気になるとすればぬかるんでいることぐらいだが、雨が降った後もこんなんだし気にする人は誰もいなかった。
「まったく、本業忘れて何やってるのよ。」
「別に忘れてないぞ?ちゃんと素材を売り込んでる。」
「そうかもしれないけど、一週間でずっぱりはやりすぎだわ。ミラなんて心配で一時間ごとに外に探しに行くんだから。」
「ちゃんと家に帰ってるだろ?」
「でも疲れててすぐ寝ちゃうじゃない。昨日なんて食べながら寝てたでしょ?」
「そんな事もあった気がする。」
昨日は昨日で精製用の素材を集めるのに手間取ってあちこち動き回っていたから、そのせいで食べながら少しうとうとしてしまった。
風呂の中でも寝そうだったのでミラと一緒に入ったんだっけか。
結局寝たけど。
「ともかく、明日は絶対に働いちゃだめよ。お店も休みにしたから。」
「いや、休みにしたからって。」
「そして明日は一日私たちに付き合いなさい。」
休みにしたのに結局休みじゃないのか。
別にそれは構わないんだが・・・?
「なんだあれ。」
「あぁ、準備できたのね。流石ハーシェさん仕事が早いわ。」
「どこか行くのか?」
「そうよ、準備は出来てるからさっさと乗って。」
「は?」
「みんなー、シロウが帰ってきたわよ。」
店の前には大きな馬車が止まっていた。
何時も使っている荷運び用のやつじゃない、人を運ぶための馬車だ。
ほら、王族や貴族がよく使うやつ。
なんでこんなのがここに?
「シロウ様おかえりなさいませ。」
「準備完了、いつでもいけます!」
「じゃあさっさと出発しましょうか、早く出ないと夜になっちゃう。」
「そうですね。」
「おい、一体どこに行くんだ?」
「どこって、温泉に決まってるじゃない。」
温泉・・・だと?
背中をぐいぐい押されて馬車に無理やり乗せられる。
思った以上に中は広い。
四人ずつ向かい合って8人ぐらいは座れるんじゃないだろうか。
そこに俺とエリザミラアネット、いつもの四人が乗り込む。
って、あれ?
「だれが運転するんだ?」
「アニエスさん。」
「は?」
「で、こまごまとした荷物は別の馬車で先に運んであるから。向こうにはハーシェさんとマリーさんが先に乗ってるから向こうで落ち合うわよ。」
「・・・大人数過ぎないか?」
「みんなシロウを心配してるのよ。別に温泉が目当てじゃないからね?」
「その言い方は後者でとらえるんだが?」
「ほ、本当よ。」
ま、エリザはそうかもしれないが他の二人は違うだろう。
・・・・・・。
違うよな?
「皆様お待たせしました、出発致します。」
「アニエス様宜しくお願い致します。」
「シロウ様、短い旅ですがどうぞおくつろぎください。」
「よくわからんがよろしく頼む。」
今更じたばたしても始まらない。
久々の休みなんだ、しっかり堪能させてもらうとしよう。
アニエスさんが乗り込んだ振動の後、馬車がゆっくりと動き出した。
しばらくはミラとアネットから報告を受けていたのだが、心地よい振動の為かいつの間にか眠ってしまったようだ。
気づけばミラの膝の上で横になっていた。
「っと、悪い寝てたか。」
「どうぞそのままで、まだもう少しかかります。」
「そうか。」
「シロウ様はもう少し自分を大事にされるべきかと。私には働きすぎと言いながら自分は倒れるまで動かれるのですから。今回も私達が止めなければまだ働かれていましたよね?」
「あ~、そうだな。」
「お金儲けが大好きなのはわかっております。そしてそれを止められないのも。ですが、それとこれとは話が別です。倒れてはお金儲けも出来ません、たまには休んで私達をかわいがってもらわないと。」
「本音はそっちか?」
「なんのことでしょうか。」
ミラがプイっと視線を逸らす。
起き上がろうとしたが、おでこに手を当てて戻されてしまった。
太ももの柔らかさが気持ちがいい。
「まったく、ミラのいう事は聞くんだから。」
「まぁまぁエリザ様。」
「別にミラだけじゃないぞ?アネットのいう事も聞いてる。」
「でも私の言うことは聞かないでしょ?」
「・・・・・・。」
「何か言いなさいよ!」
エリザの大声と共にミラとアネットの笑い声が馬車の中に響く。
あぁ、これだ。
今の俺に足りなかったのはこれだったんだ。
女たちの声が耳から体の中に入ってくる。
その心地よさに俺はもう一度目を閉じた。
心地よい揺れが再び俺を夢の世界へといざなう。
結局、隣町に到着するまで俺は眠り続けたのだった。
いや、厳密には根本的な解決にはなっていないんだがとりあえず問題の一週間は何とか乗り越え、街には燃料が到着した。
到着したが、その燃料の出番は当分きそうにない。
「いや~、まさかこの街から燃料を輸出する日が来るとはね。」
「アナスタシア様随分うれしそうですね。」
「そりゃそうよ、いつもはお金を払っているものがお金を生み出すんだもの。これもシロウさんのおかげかしら?」
「そういうのは安定定期に供給できるようになってから言えよ。今はパームボールの巣があったから何とかなってるが、何時枯渇するかわからないんだぞ?せめて人工的な栽培が成功してからいうんだな。」
「でも白炭と脂があるじゃない。」
「あれは既存の燃料と比べると効率が悪い。せめて精製したパームボールと同等の効率が出ればなぁ。っていうか、火力が強すぎていつか火事になるぞ。」
あれから目ぼしい素材は見つからなかったが、候補に挙がった三つの素材のおかげでなんとか燃料危機を乗り越えることができたわけだ。
だが、白炭は元々鍛冶場で使われるような高火力素材。
なんとかボアの脂で火力を下げ、かつ持続化することができたが混ぜる割合を間違えると火に油。
現にボヤ騒ぎが三件起きている。
日中だからよかったものの、夜中なら火事になっていてもおかしくない。
あの後パームボールの巣が見つかっていなかったらそれこそ危なかっただろう。
巣が見つかったおかげで大量の実が手に入った。
それを精製することで既存の燃料よりも高純度の物が出来たわけだ。
かなりの量があるので、買い付けた燃料はそのまま備蓄に回し同じく燃料に困っていた隣町へと輸出が決まった。
決まったが、さっきも言ったように安定的な供給が見込めない以上、産業というのはなかなかに難しいだろう。
精製するにも金がかかっている。
ダンジョン内で手にはいる素材で何とかなるとはいえ、臭いを失くし不純物を取り出すのもなかなかに大変だ。
本来であればかなり複雑な加工工程を経るものだが、ここは異世界。
そういう科学工程を無視する素材があるんだから便利だよなぁ。
「そのあたりは気を付けるように注意喚起するしかないわね。」
「個人的にはパームボールは旨味が無いから、他の素材の方がありがたいんだがな。」
「アレ、原価いくらなの?」
「大量に手に入りすぎて今や銅貨2~3枚ってところか。数が手にはいるからそれなりの稼ぎにはなるし、新人たちにはうってつけだろ。」
「ともかく助かったわ。後はこっちで引き継ぐから、貴方そろそろ店に戻ったら?ここ一週間まともに休んでないでしょ。」
「あ~・・・。」
確かにアナスタシア様のいう通りだ。
素材が絡むのでついつい出張って仕事をしていたが、本来はギルド協会と各ギルドの仕事であって買取屋の仕事じゃない。
俺が買取向こうが持っていく。
それが本来のあるべき姿だ。
働きすぎで身体を壊すわけにもいかないし、助言通り休むとしよう。
「シロウ、いる~?」
「ほら、お迎えが来たわよ。」
「エリザか。」
「ミラが心配してるから迎えに来たわよ、もう話は終わったんでしょ?」
「まぁな。」
「じゃあさっさと行くわよ。アナスタシア様、失礼します。」
「よく休むように言ってちょうだい。」
「は~い。」
いや、一応街のナンバー2なんだけど、この人。
随分と砕けた返事するようになったじゃないか。
まぁ、俺も普通に話をしてるけどさぁ。
今日は比較的気温が高いようだ。
いつものような刺すような冷たさがない。
本来はこれがいつもの冬なんだが、早く寒波が通り過ぎないだろうか。
大通りの端には雪が積み上げられているものの、真ん中は除雪されているので歩きやすい。
気になるとすればぬかるんでいることぐらいだが、雨が降った後もこんなんだし気にする人は誰もいなかった。
「まったく、本業忘れて何やってるのよ。」
「別に忘れてないぞ?ちゃんと素材を売り込んでる。」
「そうかもしれないけど、一週間でずっぱりはやりすぎだわ。ミラなんて心配で一時間ごとに外に探しに行くんだから。」
「ちゃんと家に帰ってるだろ?」
「でも疲れててすぐ寝ちゃうじゃない。昨日なんて食べながら寝てたでしょ?」
「そんな事もあった気がする。」
昨日は昨日で精製用の素材を集めるのに手間取ってあちこち動き回っていたから、そのせいで食べながら少しうとうとしてしまった。
風呂の中でも寝そうだったのでミラと一緒に入ったんだっけか。
結局寝たけど。
「ともかく、明日は絶対に働いちゃだめよ。お店も休みにしたから。」
「いや、休みにしたからって。」
「そして明日は一日私たちに付き合いなさい。」
休みにしたのに結局休みじゃないのか。
別にそれは構わないんだが・・・?
「なんだあれ。」
「あぁ、準備できたのね。流石ハーシェさん仕事が早いわ。」
「どこか行くのか?」
「そうよ、準備は出来てるからさっさと乗って。」
「は?」
「みんなー、シロウが帰ってきたわよ。」
店の前には大きな馬車が止まっていた。
何時も使っている荷運び用のやつじゃない、人を運ぶための馬車だ。
ほら、王族や貴族がよく使うやつ。
なんでこんなのがここに?
「シロウ様おかえりなさいませ。」
「準備完了、いつでもいけます!」
「じゃあさっさと出発しましょうか、早く出ないと夜になっちゃう。」
「そうですね。」
「おい、一体どこに行くんだ?」
「どこって、温泉に決まってるじゃない。」
温泉・・・だと?
背中をぐいぐい押されて馬車に無理やり乗せられる。
思った以上に中は広い。
四人ずつ向かい合って8人ぐらいは座れるんじゃないだろうか。
そこに俺とエリザミラアネット、いつもの四人が乗り込む。
って、あれ?
「だれが運転するんだ?」
「アニエスさん。」
「は?」
「で、こまごまとした荷物は別の馬車で先に運んであるから。向こうにはハーシェさんとマリーさんが先に乗ってるから向こうで落ち合うわよ。」
「・・・大人数過ぎないか?」
「みんなシロウを心配してるのよ。別に温泉が目当てじゃないからね?」
「その言い方は後者でとらえるんだが?」
「ほ、本当よ。」
ま、エリザはそうかもしれないが他の二人は違うだろう。
・・・・・・。
違うよな?
「皆様お待たせしました、出発致します。」
「アニエス様宜しくお願い致します。」
「シロウ様、短い旅ですがどうぞおくつろぎください。」
「よくわからんがよろしく頼む。」
今更じたばたしても始まらない。
久々の休みなんだ、しっかり堪能させてもらうとしよう。
アニエスさんが乗り込んだ振動の後、馬車がゆっくりと動き出した。
しばらくはミラとアネットから報告を受けていたのだが、心地よい振動の為かいつの間にか眠ってしまったようだ。
気づけばミラの膝の上で横になっていた。
「っと、悪い寝てたか。」
「どうぞそのままで、まだもう少しかかります。」
「そうか。」
「シロウ様はもう少し自分を大事にされるべきかと。私には働きすぎと言いながら自分は倒れるまで動かれるのですから。今回も私達が止めなければまだ働かれていましたよね?」
「あ~、そうだな。」
「お金儲けが大好きなのはわかっております。そしてそれを止められないのも。ですが、それとこれとは話が別です。倒れてはお金儲けも出来ません、たまには休んで私達をかわいがってもらわないと。」
「本音はそっちか?」
「なんのことでしょうか。」
ミラがプイっと視線を逸らす。
起き上がろうとしたが、おでこに手を当てて戻されてしまった。
太ももの柔らかさが気持ちがいい。
「まったく、ミラのいう事は聞くんだから。」
「まぁまぁエリザ様。」
「別にミラだけじゃないぞ?アネットのいう事も聞いてる。」
「でも私の言うことは聞かないでしょ?」
「・・・・・・。」
「何か言いなさいよ!」
エリザの大声と共にミラとアネットの笑い声が馬車の中に響く。
あぁ、これだ。
今の俺に足りなかったのはこれだったんだ。
女たちの声が耳から体の中に入ってくる。
その心地よさに俺はもう一度目を閉じた。
心地よい揺れが再び俺を夢の世界へといざなう。
結局、隣町に到着するまで俺は眠り続けたのだった。
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