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756.転売屋は相手にしてやられる
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「シロウ様。」
「何だ。」
「どうして僕の方を向いてくれないんですか?」
「そちらを見る理由がないから、っていうか近い!踏む!」
寿司パーティーに乱入してきたポーラさんだが、翌日も朝から宿の前で出待ちしていた。
街長の仕事はどうしたのかと問い詰めるも、貴族を出迎えるのも街長の仕事だと言ってきかないので仕方なくひきつれたまま残りの仕事を終わらせているというわけだ。
ひきつれてというか、前をチョロチョロするのを避けてというか。
いや、マジで邪魔。
「ポーラ様、人の目がありますので自重してください。」
「僕は気にしませんけど。」
「ポーラ様は気にされなくてもシロウ様は気にされます。その身はこの街の長、あまり親しくしすぎて賄賂を贈っているなどとあらぬ噂を立てられるとシロウ様の仕事がやりにくくなるんです。」
「そんな噂なんて僕が握りつぶします。」
「ですから・・・。」
キキが懇切丁寧に説明しているというのにまったく聞く耳を持たない。
はぁ、どうしてこんな風になってしまったのか。
港町が揉めていると仕事がやりにくいということでちょっとばかし介入して、ちょうどいいところにリングさんが来てくれたからその流れで家族を助けて、最終的に黒幕にご退場いただいただけなんだけどなぁ。
そのおかげでここでの仕事は非常にやりやすくなったものの、街長であるポーラ様がめんどくさい女に変貌してしまった。
なんだっけ、ヤンデレ?
毎日の手紙はさすがに効果がないと分かったのか送ってこなくなったものの、今度はこんな感じで付きまとってくる始末。
流石に俺達が取引している現場には入ってこないが、通りを歩くときは常に一緒だ。
住民も何事かという顔でこちらを見てく・・・いや、そうでもないか。
チラ見はするものの完全スルー。
仮にも街長だぞ?流石にその反応はどうかと思うが。
「なんで住民はスルーなんだ?」
「わかりません。でも、人によっては微笑ましそうに見てきます。」
「まるで孫を見守る祖父母ですよね。」
いったいどういう勘定で街長を見ているのか、謎すぎる。
「シロウ様、ギルド協会の職員が参りました。打ち合わせをいたしましょう。」
「とんとん拍子で仕事が進むのは楽なんだが、なんだかなぁ。」
「ひとまず船に乗り込むまでは気を抜かないようにお願いします。」
前は黒幕の動きに気を使って仕事をしていたのだが、それが終わったはずなのに別の意味で気を使わないといけない。
やれやれだ。
「で、では始めさせていただきます。今回お越しいただきましたのは月一で開催しております西方商人の市を二回に拡大、ならびに一般商人の市場での出店とそれにかける税率についてについて意見を頂戴する為です。シロウ名誉男爵ならびにポーラ様、よろしいでしょうか。」
「続けてください。」
「同じく。」
「現在行われている西方市ですが非常に好評で、それ目当てに国内から多くの商人が集まっております。その後、シロウ名誉男爵のように市だけでなく街の様々な場所で活発に取引が行われており、その日一日で通常の三日分と同等の売買が行われている状況です。その結果を受け、市を月半ばと月末の二回に拡充し街のさらなる活性化と収益の向上につなげるよう企画しております。また、さらなる西方商人の来訪を促すために現在の8%から5%への税の軽減を考えておりますが、お二人のご意見はいかがでしょうか。」
何故俺がこんな会議に付き合わされているのか。
それは昨日の寿司パーティまで遡る。
愛想のいい奥様に案内されて急遽参加することになったポーラさんだが、寿司を少し食べた後ここぞとばかりに俺に猛攻を仕掛けてきた。
あれやこれやと質問を投げかけ答えを要求してくる。
それが面倒で最初は聞き流していたのだが、奥様の手前適当にしすぎるわけにも行かず結果として会議への参加でその場は手打ちとなった。
いや、マジで後半は寿司のうまさをまったく味わえなかったなぁ。
とはいえワサビも手に入ったし、この秋にまたサモーンが手に入れば同じようなことが屋敷でもできるだろう。
それまでお預けだ。
「西方商人の減税について僕は賛成です。ただ、回数を増やして参加者が減るようなら意味がないので同等数は参加してもらいたいですね。シロウ様はどう思われますか?」
「俺ももちろん賛成だ。回数が増えるのも楽しみにしている身としてはありがたいが、それで持ち込まれる商品の質が下がるようであれば俺は月に一回しか見に来ないだろうな。複数回参加したいと思う商人もいるかもしれないが、それを強制するのはどうかと思うぞ。」
「では減税は問題ない?」
「そりゃそうだろう。税金が下がれば儲けが増える、わざわざ遠方から足を運んででも売りたいと思うやつは増えるだろうさ。特に新しい品が増えれば俺みたいな商人は喜ぶ、西方ブームが来ている現状なら余計にな。」
「じゃあ一般商人の減税はどう思われますか?」
司会の職員が俺に声をかける前にポーラ様が俺に意見を聞いてくる。
が、その目は真剣そのものでさっきまでの雰囲気は一切感じられない。
一応街長なわけだし、街の運営にかかわる事には真剣なんだろう。
普段もそれぐらいでいてもらえると嬉しいんだが。
「ここはどのぐらいかけてるんだ?」
「現在は10%ですがその代わりに出店料を取らない事で出店数を増やすように促しています。正直に申しまして三街道を有していながら一般商人の出店数は少なくてですね。」
ここは海の玄関口。
海の向こうに出荷するにはどうしてもここを通らなければならないわけで、必然的に人と荷物は集まってくるがここで売買されるわけではない。
もちろん様々な事情で出荷できないものもあるので、それをここで売りさばきたいという商人もいるだろう。
税率は少し高いものの気軽に市を利用できるのは彼らにとって悪い話ではないはずだ。
「まぁ出荷先が決まっているだけにわざわざここで売ろうって商人は少ないよな。だが、少なからず需要はあるわけで今は無理に出店数を増やす必要はないんじゃないか?税金は確かに増えるかもしれないが、街に落ちる金は少なくなる。折角街で買い物してくれるんだ、そこで儲けが出ているのなら下手に手を広げるよりも堅実だろう。」
「「なるほど。」」
「というのが俺の意見だが、ポーラ様はどう思う?」
「僕もシロウ様の意見に賛成です。市の回数が増えることでそれ目当ての商人が増えるのは間違いないですから、必要であれば彼らも一般枠で市を利用すると思います。まずは一歩ずつ確実に収益を増やすべきです、そうでなければ前町長の二の舞ですから。」
身内の恥を隠すこともせず、それを反面教師にするあたり芯が強い。
素人ながら街長を任されていたって話だが、助言する奴らがいなくなってもいい感じに街は回っているわけだし案外素質があったのかもな。
「儲け欲しさに良からぬ商品に手を出して、よろしくない連中に弱みを握られると。」
「その点シロウ様のような清廉潔白な貴族相手でしたら安心して取引できますよね!ということで、うちの魚介をもう少しいかがでしょうか。」
「生憎と十分買わせてもらってる。それにだ、折角新しい魚の食い方を教えてやったんだ、それを上手く使ったらどうだ?」
「え、真似していいんですか?」
「別に俺だけの特別な食い方じゃない。それにだ、西方商人を招くのなら向こうの食材を使った方が色々と便利だろ。」
醤油や米酢など向こうの食材を使った料理を売りにすることでどっちにもメリットが生まれるだろう。
もちろん俺にもメリットはある。
西方商人が増えるのもそうだし、向こうの食材が色々入ってくればお楽しみがさらに増える。
もちろんモーリスさん経由で買うけどな。
そういう約束だし、市から取引先を開拓するのはめんどくさい。
「ありがとうございます!」
「では税率に関しては次の市から適用できるよう急ぎ先方に伝えます。シロウ名誉男爵、今日はありがとうございました。」
「話は以上か?それなら俺も船の時間があるからこの辺で失礼するぞ。」
「え、もう帰っちゃうんですか?」
「いる理由がないからな。それとも何か、金になるとっておきでも用意してくれているのか?」
冗談半分でそういったのが俺の間違いだった。
俺の言葉を聞いてポーラさんが満面の笑みを浮かべる。
この場にキキやアネットがいたらこんなこと言わなかったかもしれないが、つい口が軽くなってしまった。
そう後悔してももう遅い。
「もちろん用意してありますよ。」
くそ、さっきの魚はこのためのブラフか。
どうやら職員ともこの流れは織り込み済みのようで、喜々として何かを取りに職員が部屋を出て行った。
ポーラさんと二人きり。
これはまずい。
非常にまずい。
「シロウ様が喜んでくれると思って僕も色々と用意したんです、いっぱい買ってくださいね。」
「お、おぅ。」
虎穴に入らざれば虎子を得ずとはよく言うが、これはどう考えてもダメな方だ。
結局、身の安全を確保するために色々と買い付けさせられる羽目になってしまった。
めんどくさい女のフリは全部このためだったんだろうか。
それとも本当にあの性格なんだろうか。
ともかく一つ言えるのは、女豹ばりに厄介な相手ということだ。
はぁ、港町にまた来にくくなってしまった。
畜生。
「何だ。」
「どうして僕の方を向いてくれないんですか?」
「そちらを見る理由がないから、っていうか近い!踏む!」
寿司パーティーに乱入してきたポーラさんだが、翌日も朝から宿の前で出待ちしていた。
街長の仕事はどうしたのかと問い詰めるも、貴族を出迎えるのも街長の仕事だと言ってきかないので仕方なくひきつれたまま残りの仕事を終わらせているというわけだ。
ひきつれてというか、前をチョロチョロするのを避けてというか。
いや、マジで邪魔。
「ポーラ様、人の目がありますので自重してください。」
「僕は気にしませんけど。」
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「ですから・・・。」
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港町が揉めていると仕事がやりにくいということでちょっとばかし介入して、ちょうどいいところにリングさんが来てくれたからその流れで家族を助けて、最終的に黒幕にご退場いただいただけなんだけどなぁ。
そのおかげでここでの仕事は非常にやりやすくなったものの、街長であるポーラ様がめんどくさい女に変貌してしまった。
なんだっけ、ヤンデレ?
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流石に俺達が取引している現場には入ってこないが、通りを歩くときは常に一緒だ。
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チラ見はするものの完全スルー。
仮にも街長だぞ?流石にその反応はどうかと思うが。
「なんで住民はスルーなんだ?」
「わかりません。でも、人によっては微笑ましそうに見てきます。」
「まるで孫を見守る祖父母ですよね。」
いったいどういう勘定で街長を見ているのか、謎すぎる。
「シロウ様、ギルド協会の職員が参りました。打ち合わせをいたしましょう。」
「とんとん拍子で仕事が進むのは楽なんだが、なんだかなぁ。」
「ひとまず船に乗り込むまでは気を抜かないようにお願いします。」
前は黒幕の動きに気を使って仕事をしていたのだが、それが終わったはずなのに別の意味で気を使わないといけない。
やれやれだ。
「で、では始めさせていただきます。今回お越しいただきましたのは月一で開催しております西方商人の市を二回に拡大、ならびに一般商人の市場での出店とそれにかける税率についてについて意見を頂戴する為です。シロウ名誉男爵ならびにポーラ様、よろしいでしょうか。」
「続けてください。」
「同じく。」
「現在行われている西方市ですが非常に好評で、それ目当てに国内から多くの商人が集まっております。その後、シロウ名誉男爵のように市だけでなく街の様々な場所で活発に取引が行われており、その日一日で通常の三日分と同等の売買が行われている状況です。その結果を受け、市を月半ばと月末の二回に拡充し街のさらなる活性化と収益の向上につなげるよう企画しております。また、さらなる西方商人の来訪を促すために現在の8%から5%への税の軽減を考えておりますが、お二人のご意見はいかがでしょうか。」
何故俺がこんな会議に付き合わされているのか。
それは昨日の寿司パーティまで遡る。
愛想のいい奥様に案内されて急遽参加することになったポーラさんだが、寿司を少し食べた後ここぞとばかりに俺に猛攻を仕掛けてきた。
あれやこれやと質問を投げかけ答えを要求してくる。
それが面倒で最初は聞き流していたのだが、奥様の手前適当にしすぎるわけにも行かず結果として会議への参加でその場は手打ちとなった。
いや、マジで後半は寿司のうまさをまったく味わえなかったなぁ。
とはいえワサビも手に入ったし、この秋にまたサモーンが手に入れば同じようなことが屋敷でもできるだろう。
それまでお預けだ。
「西方商人の減税について僕は賛成です。ただ、回数を増やして参加者が減るようなら意味がないので同等数は参加してもらいたいですね。シロウ様はどう思われますか?」
「俺ももちろん賛成だ。回数が増えるのも楽しみにしている身としてはありがたいが、それで持ち込まれる商品の質が下がるようであれば俺は月に一回しか見に来ないだろうな。複数回参加したいと思う商人もいるかもしれないが、それを強制するのはどうかと思うぞ。」
「では減税は問題ない?」
「そりゃそうだろう。税金が下がれば儲けが増える、わざわざ遠方から足を運んででも売りたいと思うやつは増えるだろうさ。特に新しい品が増えれば俺みたいな商人は喜ぶ、西方ブームが来ている現状なら余計にな。」
「じゃあ一般商人の減税はどう思われますか?」
司会の職員が俺に声をかける前にポーラ様が俺に意見を聞いてくる。
が、その目は真剣そのものでさっきまでの雰囲気は一切感じられない。
一応街長なわけだし、街の運営にかかわる事には真剣なんだろう。
普段もそれぐらいでいてもらえると嬉しいんだが。
「ここはどのぐらいかけてるんだ?」
「現在は10%ですがその代わりに出店料を取らない事で出店数を増やすように促しています。正直に申しまして三街道を有していながら一般商人の出店数は少なくてですね。」
ここは海の玄関口。
海の向こうに出荷するにはどうしてもここを通らなければならないわけで、必然的に人と荷物は集まってくるがここで売買されるわけではない。
もちろん様々な事情で出荷できないものもあるので、それをここで売りさばきたいという商人もいるだろう。
税率は少し高いものの気軽に市を利用できるのは彼らにとって悪い話ではないはずだ。
「まぁ出荷先が決まっているだけにわざわざここで売ろうって商人は少ないよな。だが、少なからず需要はあるわけで今は無理に出店数を増やす必要はないんじゃないか?税金は確かに増えるかもしれないが、街に落ちる金は少なくなる。折角街で買い物してくれるんだ、そこで儲けが出ているのなら下手に手を広げるよりも堅実だろう。」
「「なるほど。」」
「というのが俺の意見だが、ポーラ様はどう思う?」
「僕もシロウ様の意見に賛成です。市の回数が増えることでそれ目当ての商人が増えるのは間違いないですから、必要であれば彼らも一般枠で市を利用すると思います。まずは一歩ずつ確実に収益を増やすべきです、そうでなければ前町長の二の舞ですから。」
身内の恥を隠すこともせず、それを反面教師にするあたり芯が強い。
素人ながら街長を任されていたって話だが、助言する奴らがいなくなってもいい感じに街は回っているわけだし案外素質があったのかもな。
「儲け欲しさに良からぬ商品に手を出して、よろしくない連中に弱みを握られると。」
「その点シロウ様のような清廉潔白な貴族相手でしたら安心して取引できますよね!ということで、うちの魚介をもう少しいかがでしょうか。」
「生憎と十分買わせてもらってる。それにだ、折角新しい魚の食い方を教えてやったんだ、それを上手く使ったらどうだ?」
「え、真似していいんですか?」
「別に俺だけの特別な食い方じゃない。それにだ、西方商人を招くのなら向こうの食材を使った方が色々と便利だろ。」
醤油や米酢など向こうの食材を使った料理を売りにすることでどっちにもメリットが生まれるだろう。
もちろん俺にもメリットはある。
西方商人が増えるのもそうだし、向こうの食材が色々入ってくればお楽しみがさらに増える。
もちろんモーリスさん経由で買うけどな。
そういう約束だし、市から取引先を開拓するのはめんどくさい。
「ありがとうございます!」
「では税率に関しては次の市から適用できるよう急ぎ先方に伝えます。シロウ名誉男爵、今日はありがとうございました。」
「話は以上か?それなら俺も船の時間があるからこの辺で失礼するぞ。」
「え、もう帰っちゃうんですか?」
「いる理由がないからな。それとも何か、金になるとっておきでも用意してくれているのか?」
冗談半分でそういったのが俺の間違いだった。
俺の言葉を聞いてポーラさんが満面の笑みを浮かべる。
この場にキキやアネットがいたらこんなこと言わなかったかもしれないが、つい口が軽くなってしまった。
そう後悔してももう遅い。
「もちろん用意してありますよ。」
くそ、さっきの魚はこのためのブラフか。
どうやら職員ともこの流れは織り込み済みのようで、喜々として何かを取りに職員が部屋を出て行った。
ポーラさんと二人きり。
これはまずい。
非常にまずい。
「シロウ様が喜んでくれると思って僕も色々と用意したんです、いっぱい買ってくださいね。」
「お、おぅ。」
虎穴に入らざれば虎子を得ずとはよく言うが、これはどう考えてもダメな方だ。
結局、身の安全を確保するために色々と買い付けさせられる羽目になってしまった。
めんどくさい女のフリは全部このためだったんだろうか。
それとも本当にあの性格なんだろうか。
ともかく一つ言えるのは、女豹ばりに厄介な相手ということだ。
はぁ、港町にまた来にくくなってしまった。
畜生。
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