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817.転売屋はオルゴールを買う
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「おー、どうしたどうした。」
「すみません、なかなか寝付かないみたいで。寒いんでしょうか。」
「その割には顔が赤い、暑いのかもしれないな。」
朝の仕事を片付けてリーシャの様子を見に行ってみたのだが、珍しくハーシェさんに抱っこされてもグズグズとご機嫌斜めな感じだ。
試しに抱っこを代わってみても変化なし。
ミミィに代わってもらっても変化はない。
唯一立ったまま左右に揺れると多少はマシになるものの、それでも眠るには至らないという感じだ。
「恐らくは鼻水が詰まって眠れないんだと思います。横抱きじゃないと眠れないんですが、それだと鼻水が喉に降りずに溜まるんです。」
「なるほど、眠たいのに眠れないと。」
「アネットさんに呼吸を楽にする塗り薬を作ってもらったので、それで効くといいんですけど。」
「ハーシェ様少し休みますか?昨日から寝てないですよ。」
「私は大丈夫です。」
私は大丈夫と言いながら目の下にはクマが出来ている。
どう見ても大丈夫じゃない。
「残念ながらそうは見えないんだって。少し眠ったほうがいい、俺もミミィもいる。」
「・・・わかりました、そうさせて頂きます。」
代わりがいないのならばともかく今は人の手があるんだ、無理をする場面じゃない。
泣き声が聞こえるとハーシェさんが起きてしまいそうなので、リーシャの気晴らしもかねてミミィと三人で散歩に出ることに。
暑くなりすぎない様に気を配りながら、晴天の街をのんびりと歩く。
「外の方がご機嫌だな。」
「色んなものが見えますから気がまぎれるんだと思います。」
「それは大人と同じか。お、美味そうな菓子があるぞ。ミミィ食べるか?」
「え!いいんですか!?」
「クッキー、食い飽きただろ?」
「えへへ、はい。」
大量に作ったクッキーは全員で消費中。
日持ちするので大至急というわけでもないのだが、食べないと減らないので各自頑張って食べている。
美味しいけど飽きるんだよなぁ。
露店で見つけたのは飴細工の店。
小さなりんご飴的なやつが売られていたのでミミィと一つずつ頂くことにした。
うーん、甘い。
『リトルアップルの飴菓子。小粒のリトルアップルを飴で加工した菓子、噛むと爽やかな酸味が口いっぱいに広がる。最近の平均取引価格は銅貨10枚。最安値銅貨8枚、最高値銅貨15枚。最終取引日は本日と記録されています。』
鑑定結果に味をネタバレされるのはどうかと思うが、噛むとその通り爽やかな酸味が飴の甘さを良い感じに中和してくれる。
中に種が入っている様子は無く、そのままペロッと食べてしまった。
「あーぶ。」
「なんだ、欲しかったのか。」
「まだちょっと早いですね、春先ぐらいに離乳食を始めるのでそれからかな。」
「だそうだ、残念だったな。」
飴の刺さっていた木の棒を捕まえようと小さな手が空を切る。
少しご機嫌は戻ったようだが屋敷に戻るとだめなんだろうなぁ。
このまま寝てくれたらいいんだが。
「代わりますか?」
「いやまだ大丈夫だ。」
「あぶぶ。」
「凄い涎だなって、この反応は違うか。」
木の棒を追っかけていたリーシャだったが、今度は別の場所をみて手足をジタバタと動かす。
これはアレだ、良い感じのアイテムを見つけた時の反応だ。
通称リーシャセンサー〈父命名〉
あれから何度か市場を回っているが、その度に珍しい素材や道具を発見してくれる。
流石俺の子、早く大きくなってどういう原理か教えてほしい。
スキルなのかそれとも直観なのか。
うーむ謎だ。
ひとまずリーシャに促されるまま露店に近づくと、店主の若い女性がにこやかな笑顔を向けてくる。
「いらっしゃいませ、可愛いですね。」
「褒められてるぞ。この子がこの店を気に入ったみたいなんだが、何を売ってるんだ。」
「ありがとうございます。父が作ったオルゴールを売っているんですが、ご存じですか?」
「あれだろ、レバーを回すと中の歯が回転して音が鳴るやつ。」
「よくご存じですね。」
その人は近くの箱を手に取ると、リーシャの前で蓋を開ける。
すると中からドレスを着た小さなお姫様が姿を現し、ゆっくりと周り始めた。
それと一緒に澄んだ音色が聞こえてくる。
なんていう曲かは知らないが、非常に落ち着く音色だ。
「わ、可愛い。」
「音も綺麗だな。」
「これは舞踏会を想像して作られたもので、こっちが子守歌を再現したものです。」
「どうやらそっちをご所望らしい。」
「どうぞ開けてみてください。」
リーシャをミミィに預けてから手のひら大の少し大きな箱を受け取り、蓋を開ける。
中には気持ちよさそうに乾草の上に横たわる一匹の狼の模型が入っており、その下からなんとも穏やかな音色が奏でられはじめた。
『眠りのオルゴール。細かな細工で作られたオルゴールは聞く者を穏やかな眠りへと誘う。安眠の効果が付与されている。最近の平均取引価格は銀貨3枚。最安値銀貨1枚、最高値銀貨30枚。最終取引日は200日前と記録されています。』
職人が作った道具や装備には効果が付与されることはよくあるが、さまさか安眠の効果まであるとは思わなかった。
静かながら心に響く音色は段々と眠気を増幅させていく。
なんだか瞼が重たくなってきた。
慌てて箱を閉じると眠気が少しずつ晴れていく。
「やばいなこれは。」
「私も寝るときによく聞くんですが、とってもよく眠れるんです。」
「だろうな。」
「あ、見てください。リーシャ様寝そうですよ。」
「お、マジか。」
ミミィに抱かれたリーシャが眠たそうに瞼を閉じては慌てて開け、また閉じてを繰り返している。
これはあと一押しという感じか。
再び蓋を開け音色が響き始めると最後の抵抗もむなしくスヤスヤと寝息を立てはじめた。
「良い音色なんだが、俺達も眠くなるな。」
「あはは、そうですね。眠くなってきちゃいました。」
「買わせてもらおう、いくらだ?」
「銀貨4枚です、他にも見ていかれますか?」
「あぁ、せっかくだから見せてもらおう。」
店には他にも大小様々な箱が置かれていた。
その中から10個ほど気に入ったものを見つけ、代金を支払う。
驚くなかれ全てに何かしらの効果が付与されている。
これを作った職人がどれだけすごいかがこれだけでもわかる。
店主に名刺を手渡し、また何かできた時には屋敷に来るようにお願いして店を後にした。
「凄かったですね。」
「あぁ、良い買い物が出来た。さすがリーシャセンサーだ。」
「あの~お館様、私、お姫様のオルゴールが欲しいんですけど・・・。」
「あれがいいのか?」
「はい!」
「銀貨1枚でいいぞ。」
ついてきてくれたお礼を兼ねてタダでも別に構わないのだが、金を使う楽しみも忘れてもらっては困る。
奴隷ではあるがミミィ達には自由に使える金を渡してある。
決して多い金額ではないが自分の好きにできる金があるのはいい事だ。
また、貰いものではなく自分で買った物ほど大事にする。
せっかく気に入ったんだから自分で買って欲しいじゃないか。
そんなこんなで屋敷に戻ると、少し眠ってすっきりとした顔に戻ったハーシェさんが出迎えてくれた。
「おかえりなさい。」
「ただいま、少しはスッキリしたみたいだな。」
「お陰様で、ミミィちゃんもありがとうございます。あら、綺麗な箱ですね。」
「えへへ、綺麗な音もするんですよ。」
興味深そうに箱を覗き込むハーシェさんに、ミミィが自慢げに蓋を開ける。
小さなお姫様がくるくると回りだす。
それを見てハーシェさんの顔にパッと花が咲いた。
「可愛いですね。」
「宝物です。」
「因みにハーシェさん達にも買ってあるぞ。好みもあるだろうが皆で選んでくれ。」
「いいんですか?」
「もちろんリーシャのも買ってある。というか、今回のも見つけたのはリーシャだしな。」
リーシャセンサーのおかげで今回もいい買い物が出来た。
ありがたい。
まだスヤスヤと眠るリーシャを抱いたまま食堂へと移動。
各自好きなオルゴールを選びご満悦のようだ。
「それがリーシャちゃん用なのね。」
「安眠の効果の付いた特別なオルゴールだ。正直に言う、やばいぞ。」
「え?そんなに?」
「そんなに。」
物は試しと箱のふたを開けると、再びあの音色が鮮やかに響き始める。
「綺麗な音色ね。」
「なんでしょう、柔らかなお日様の下にいるような気がしてきました。」
「私は暖かなお布団ですね。」
「あ、私もそんな感じ。なんだか眠くなってきちゃったわ。」
いい感じに食堂の空間が音を反響させるというか響かせるというか。
そろそろ閉じようかと思ったら手からオルゴールが転がり落ちてしまった。
幸い机の上だったので壊れることなく音は響き続ける。
が、少し遠い。
リーシャを抱いたままなのですぐに動くことが出来なかった。
「ミラ、悪いがとめてくれないか?」
近くにいたミラに声をかける。
しかし反応が無い。
「ミラ?」
見るとさっきまで起きていたのに机に突っ伏したように眠っていた。
よく見るとアネットやハーシェさんまでもがうとうとし始めている。
これ、やばいよな。
そう思ったのもつかの間、猛烈な睡魔が俺を襲う。
だが決してそれは深いではなく、むしろ抵抗できないような優しさで満ち溢れていて。
「リー、シャ。」
抱いているこの子は離すまいと強く抱きしめたままゆっくりとその場にひざを着き、そして床の上に転がってしまう。
最後に見たのは幸せそうなリーシャの寝顔。
そこで俺の記憶はプツリと途絶えた。
一体どれぐらいの時間が経ったんだろうか。
ふと、ほほを叩く感触に目が覚める。
「ん?」
「アブ!」
「いたい、そんなに叩くな。」
ペチペチと俺のほほを叩くリーシャ。
最近力が付いてきたのか結構痛いんだよなぁ。
そんなことを思いながら体を起こしたところでハッと我に返る。
そうだ、オルゴール!
あわてて立ち上がると、机の上のオルゴールはバネの力がなくなったのか開いたままで音を発することは無かった。
なるほど、だから起きたのか。
机の上の香茶はまだ冷めていない。
そんなに長い時間は経っていないようだが、女達はみな幸せそうな顔で眠ったままだ。
「これはかなり危険なんじゃないだろうか。」
オルゴールのフタを閉め大きく息を吐く。
足元ではリーシャが早く抱き上げろと不服そうな顔をしていた。
抱き上げてやるとすぐに満面の笑みを浮かべる。
「眠ってスッキリしたか?」
「あぶぶ!」
「そうかそうか。」
よだれまみれの口を布でぬぐってやる。
この顔を見るとどんな疲れも吹き飛んでしまうよなぁ。
ってそれよりもそろそろ皆を起こさないと。
とりあえずこのオルゴールの効果はよく分かった。
ゆっくり寝たいときには最高かもしれないが、使用するタイミングには気をつけるほうがいいだろう。
何事も程々が一番だ。
その後、オルゴールはリーシャの寝かしつけだけでなく別の用途にも使われるのだが、それは別の話だ。
「すみません、なかなか寝付かないみたいで。寒いんでしょうか。」
「その割には顔が赤い、暑いのかもしれないな。」
朝の仕事を片付けてリーシャの様子を見に行ってみたのだが、珍しくハーシェさんに抱っこされてもグズグズとご機嫌斜めな感じだ。
試しに抱っこを代わってみても変化なし。
ミミィに代わってもらっても変化はない。
唯一立ったまま左右に揺れると多少はマシになるものの、それでも眠るには至らないという感じだ。
「恐らくは鼻水が詰まって眠れないんだと思います。横抱きじゃないと眠れないんですが、それだと鼻水が喉に降りずに溜まるんです。」
「なるほど、眠たいのに眠れないと。」
「アネットさんに呼吸を楽にする塗り薬を作ってもらったので、それで効くといいんですけど。」
「ハーシェ様少し休みますか?昨日から寝てないですよ。」
「私は大丈夫です。」
私は大丈夫と言いながら目の下にはクマが出来ている。
どう見ても大丈夫じゃない。
「残念ながらそうは見えないんだって。少し眠ったほうがいい、俺もミミィもいる。」
「・・・わかりました、そうさせて頂きます。」
代わりがいないのならばともかく今は人の手があるんだ、無理をする場面じゃない。
泣き声が聞こえるとハーシェさんが起きてしまいそうなので、リーシャの気晴らしもかねてミミィと三人で散歩に出ることに。
暑くなりすぎない様に気を配りながら、晴天の街をのんびりと歩く。
「外の方がご機嫌だな。」
「色んなものが見えますから気がまぎれるんだと思います。」
「それは大人と同じか。お、美味そうな菓子があるぞ。ミミィ食べるか?」
「え!いいんですか!?」
「クッキー、食い飽きただろ?」
「えへへ、はい。」
大量に作ったクッキーは全員で消費中。
日持ちするので大至急というわけでもないのだが、食べないと減らないので各自頑張って食べている。
美味しいけど飽きるんだよなぁ。
露店で見つけたのは飴細工の店。
小さなりんご飴的なやつが売られていたのでミミィと一つずつ頂くことにした。
うーん、甘い。
『リトルアップルの飴菓子。小粒のリトルアップルを飴で加工した菓子、噛むと爽やかな酸味が口いっぱいに広がる。最近の平均取引価格は銅貨10枚。最安値銅貨8枚、最高値銅貨15枚。最終取引日は本日と記録されています。』
鑑定結果に味をネタバレされるのはどうかと思うが、噛むとその通り爽やかな酸味が飴の甘さを良い感じに中和してくれる。
中に種が入っている様子は無く、そのままペロッと食べてしまった。
「あーぶ。」
「なんだ、欲しかったのか。」
「まだちょっと早いですね、春先ぐらいに離乳食を始めるのでそれからかな。」
「だそうだ、残念だったな。」
飴の刺さっていた木の棒を捕まえようと小さな手が空を切る。
少しご機嫌は戻ったようだが屋敷に戻るとだめなんだろうなぁ。
このまま寝てくれたらいいんだが。
「代わりますか?」
「いやまだ大丈夫だ。」
「あぶぶ。」
「凄い涎だなって、この反応は違うか。」
木の棒を追っかけていたリーシャだったが、今度は別の場所をみて手足をジタバタと動かす。
これはアレだ、良い感じのアイテムを見つけた時の反応だ。
通称リーシャセンサー〈父命名〉
あれから何度か市場を回っているが、その度に珍しい素材や道具を発見してくれる。
流石俺の子、早く大きくなってどういう原理か教えてほしい。
スキルなのかそれとも直観なのか。
うーむ謎だ。
ひとまずリーシャに促されるまま露店に近づくと、店主の若い女性がにこやかな笑顔を向けてくる。
「いらっしゃいませ、可愛いですね。」
「褒められてるぞ。この子がこの店を気に入ったみたいなんだが、何を売ってるんだ。」
「ありがとうございます。父が作ったオルゴールを売っているんですが、ご存じですか?」
「あれだろ、レバーを回すと中の歯が回転して音が鳴るやつ。」
「よくご存じですね。」
その人は近くの箱を手に取ると、リーシャの前で蓋を開ける。
すると中からドレスを着た小さなお姫様が姿を現し、ゆっくりと周り始めた。
それと一緒に澄んだ音色が聞こえてくる。
なんていう曲かは知らないが、非常に落ち着く音色だ。
「わ、可愛い。」
「音も綺麗だな。」
「これは舞踏会を想像して作られたもので、こっちが子守歌を再現したものです。」
「どうやらそっちをご所望らしい。」
「どうぞ開けてみてください。」
リーシャをミミィに預けてから手のひら大の少し大きな箱を受け取り、蓋を開ける。
中には気持ちよさそうに乾草の上に横たわる一匹の狼の模型が入っており、その下からなんとも穏やかな音色が奏でられはじめた。
『眠りのオルゴール。細かな細工で作られたオルゴールは聞く者を穏やかな眠りへと誘う。安眠の効果が付与されている。最近の平均取引価格は銀貨3枚。最安値銀貨1枚、最高値銀貨30枚。最終取引日は200日前と記録されています。』
職人が作った道具や装備には効果が付与されることはよくあるが、さまさか安眠の効果まであるとは思わなかった。
静かながら心に響く音色は段々と眠気を増幅させていく。
なんだか瞼が重たくなってきた。
慌てて箱を閉じると眠気が少しずつ晴れていく。
「やばいなこれは。」
「私も寝るときによく聞くんですが、とってもよく眠れるんです。」
「だろうな。」
「あ、見てください。リーシャ様寝そうですよ。」
「お、マジか。」
ミミィに抱かれたリーシャが眠たそうに瞼を閉じては慌てて開け、また閉じてを繰り返している。
これはあと一押しという感じか。
再び蓋を開け音色が響き始めると最後の抵抗もむなしくスヤスヤと寝息を立てはじめた。
「良い音色なんだが、俺達も眠くなるな。」
「あはは、そうですね。眠くなってきちゃいました。」
「買わせてもらおう、いくらだ?」
「銀貨4枚です、他にも見ていかれますか?」
「あぁ、せっかくだから見せてもらおう。」
店には他にも大小様々な箱が置かれていた。
その中から10個ほど気に入ったものを見つけ、代金を支払う。
驚くなかれ全てに何かしらの効果が付与されている。
これを作った職人がどれだけすごいかがこれだけでもわかる。
店主に名刺を手渡し、また何かできた時には屋敷に来るようにお願いして店を後にした。
「凄かったですね。」
「あぁ、良い買い物が出来た。さすがリーシャセンサーだ。」
「あの~お館様、私、お姫様のオルゴールが欲しいんですけど・・・。」
「あれがいいのか?」
「はい!」
「銀貨1枚でいいぞ。」
ついてきてくれたお礼を兼ねてタダでも別に構わないのだが、金を使う楽しみも忘れてもらっては困る。
奴隷ではあるがミミィ達には自由に使える金を渡してある。
決して多い金額ではないが自分の好きにできる金があるのはいい事だ。
また、貰いものではなく自分で買った物ほど大事にする。
せっかく気に入ったんだから自分で買って欲しいじゃないか。
そんなこんなで屋敷に戻ると、少し眠ってすっきりとした顔に戻ったハーシェさんが出迎えてくれた。
「おかえりなさい。」
「ただいま、少しはスッキリしたみたいだな。」
「お陰様で、ミミィちゃんもありがとうございます。あら、綺麗な箱ですね。」
「えへへ、綺麗な音もするんですよ。」
興味深そうに箱を覗き込むハーシェさんに、ミミィが自慢げに蓋を開ける。
小さなお姫様がくるくると回りだす。
それを見てハーシェさんの顔にパッと花が咲いた。
「可愛いですね。」
「宝物です。」
「因みにハーシェさん達にも買ってあるぞ。好みもあるだろうが皆で選んでくれ。」
「いいんですか?」
「もちろんリーシャのも買ってある。というか、今回のも見つけたのはリーシャだしな。」
リーシャセンサーのおかげで今回もいい買い物が出来た。
ありがたい。
まだスヤスヤと眠るリーシャを抱いたまま食堂へと移動。
各自好きなオルゴールを選びご満悦のようだ。
「それがリーシャちゃん用なのね。」
「安眠の効果の付いた特別なオルゴールだ。正直に言う、やばいぞ。」
「え?そんなに?」
「そんなに。」
物は試しと箱のふたを開けると、再びあの音色が鮮やかに響き始める。
「綺麗な音色ね。」
「なんでしょう、柔らかなお日様の下にいるような気がしてきました。」
「私は暖かなお布団ですね。」
「あ、私もそんな感じ。なんだか眠くなってきちゃったわ。」
いい感じに食堂の空間が音を反響させるというか響かせるというか。
そろそろ閉じようかと思ったら手からオルゴールが転がり落ちてしまった。
幸い机の上だったので壊れることなく音は響き続ける。
が、少し遠い。
リーシャを抱いたままなのですぐに動くことが出来なかった。
「ミラ、悪いがとめてくれないか?」
近くにいたミラに声をかける。
しかし反応が無い。
「ミラ?」
見るとさっきまで起きていたのに机に突っ伏したように眠っていた。
よく見るとアネットやハーシェさんまでもがうとうとし始めている。
これ、やばいよな。
そう思ったのもつかの間、猛烈な睡魔が俺を襲う。
だが決してそれは深いではなく、むしろ抵抗できないような優しさで満ち溢れていて。
「リー、シャ。」
抱いているこの子は離すまいと強く抱きしめたままゆっくりとその場にひざを着き、そして床の上に転がってしまう。
最後に見たのは幸せそうなリーシャの寝顔。
そこで俺の記憶はプツリと途絶えた。
一体どれぐらいの時間が経ったんだろうか。
ふと、ほほを叩く感触に目が覚める。
「ん?」
「アブ!」
「いたい、そんなに叩くな。」
ペチペチと俺のほほを叩くリーシャ。
最近力が付いてきたのか結構痛いんだよなぁ。
そんなことを思いながら体を起こしたところでハッと我に返る。
そうだ、オルゴール!
あわてて立ち上がると、机の上のオルゴールはバネの力がなくなったのか開いたままで音を発することは無かった。
なるほど、だから起きたのか。
机の上の香茶はまだ冷めていない。
そんなに長い時間は経っていないようだが、女達はみな幸せそうな顔で眠ったままだ。
「これはかなり危険なんじゃないだろうか。」
オルゴールのフタを閉め大きく息を吐く。
足元ではリーシャが早く抱き上げろと不服そうな顔をしていた。
抱き上げてやるとすぐに満面の笑みを浮かべる。
「眠ってスッキリしたか?」
「あぶぶ!」
「そうかそうか。」
よだれまみれの口を布でぬぐってやる。
この顔を見るとどんな疲れも吹き飛んでしまうよなぁ。
ってそれよりもそろそろ皆を起こさないと。
とりあえずこのオルゴールの効果はよく分かった。
ゆっくり寝たいときには最高かもしれないが、使用するタイミングには気をつけるほうがいいだろう。
何事も程々が一番だ。
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どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
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より良いスキルは早い者勝ち。
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さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
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