転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

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921.転売屋は球技を楽しむ

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短い雨期を前にした晴天。

春野菜は収穫を終え、作付けを終えた夏野菜がぐんぐんと成長している。

この夏も豊作になる事を願いつつ、豊作すぎた時の事も考えておかなければならない。

芋類と違って夏の葉物は日持ちしないからなぁ。

トトマトなんかは乾燥させる手もあるのだが、他のをどうするか。

「あ、シロウだ!」

「シロウだ!」

畑を見て回っていると、ドロドロの手をしたガキ共が俺の周りに群がって来た。

えぇい、汚れた手でわざとズボンを触るんじゃない。

別に汚れてもかまわない服ではあるがわざとされるのはちょっと違う。

まったく、油断も隙もありゃしない。

「今日の作業は終わったのか?」

「終わったよ!」

「全部むしったよ!綺麗!」

「虫も捕ったよ、見る?」

「いや見せなくていい。ってことは昼まで休憩か。」

陽は高く上っているが昼の時間にはまだ少しある。

仕事を終えたもののまだまだ元気一杯という感じのガキ共が、何故か期待に満ち溢れた目で俺を見てくるのは何でだろうか。

「あー・・・、遊んで欲しいのか?」

「「「「うん!」」」」

声を揃えて仲がよろしいことで。

とはいえ総勢7人のガキを相手に一体何をしろというんだろうか。

子供の遊びといえば鬼ごっことかかくれんぼとかを思い浮かべるが、彼らが望んでいるのはそういうのじゃないんだろう。

なんていうか特別な物を俺に求めて来るんだよな、いつも。

しかしなぁ、特別って言われても何にも思いつかない。

俺が彼らぐらい、つまり小学校ぐらいの時にはドッジボールとかサッカーとか楽しんでいたけども。

ふむ、ボールか。

投げて遊んでいる奴はそこらじゅうで見かけるが、あまり蹴って遊ぶところは見てないなぁ。

サッカー的なのってもしかしてないのか?

「それじゃあとりあえず場所を変えるぞ、それと道具が要るな。バウンドロールの足とかあるか?」

「教会にあるよ!取ってくる!」

「任せた。それじゃあ残りは俺と一緒に草むしりな。」

「「「「「えぇぇぇぇぇ!」」」」」

「そんな声出すなよ、遊びたいんだろ?」

遊ぶにしても畑を走り回るわけにもいないので、城壁付近の空き地に生える雑草を邪魔にならない程度にむしっていく。

別に全部やる必要はない。

特にゴール付近だけ入念にしておけばそれで十分だ。

「もってきたよ~。」

「よし、それじゃあ四人と三人に分かれろ。少ないほうに俺が入るから。」

「え、ずるい!」

「仕方ないだろ。いいからほら、さっさとしろって。」

ガキ共があぁだこうだと言いながらチームわけをしている間に、俺は大まかに線を引いてコートを作成。

本当はゴールも立てられたらいいのだが、まぁ子供の遊びだしそこまで本格的じゃなくてもいいだろう。

「分かれたよ!」

「よし、それじゃあルール説明だがそんなに難しくない。こいつを蹴りながら移動させて、両サイドに書いたマスの中を通過させれば点数が入る。ただし、手は使っちゃいけないし蹴ろうとしている人を押したり叩いたりするのも禁止だ。転がった奴を足で止めて、自分の陣地と反対側の相手陣地に攻め入りマスの上を通過させるんだぞ、いいか?」

「うーん、なんとなく分かった。」

「まぁやればわかるさ。最初は俺が入るが、慣れてきたら3対3でやってみてもいいだろう。それじゃあはじめるぞ。」

習うより慣れろとよく言ったもんだ。

とりあえずボール代わりに持ってきてもらったバウンドロールの足を確認。

『バウンドロールの足。ダンジョン内をコロコロと回転しながら徘徊している魔物。見た目はただのボールだが、人間を見つけるとムキムキの上半身が現れドムドムと跳ねながら襲ってくる。その足は非常に弾力があり、子供の玩具として人気。最近の平均取引価格は銅貨35枚。最安値銅貨30枚、最高値銅貨50枚、最終取引日は二日前と記録されています。』

うん、いい感じの弾力と反発、この感じならしっかりと転がってくれそうだ。

合図をして早速始めると、相手味方関係なくボールに向かってくる。

すぐにボコボコ至近距離でのボールの蹴りあいになってしまうので、定期的に外に向かって強く蹴飛ばすと、そのほうが効率がいいと気づいたのか何も教えていないのにパスをし始めた。

「いくぞー!」

「こっちこっち!」

「あ!そっちはヤバイ!」

「いまだ!」

テンポよく相手チームのパスが繋がり、誰もいないマスの前へボールが転がる。

もちろん慌てて蹴りだそうと近づいたのだが、そこに後ろから猛スピードで突っ込んできたガキがスライディング宜しく足を伸ばして俺よりも先にボールに触れた。

ちなみにキーパーはいないのでそのままボールはマスの向こうへと転がって行く。

「入った!」

「やったぁ!」

「悔しい!もう一回!」

「シロウちゃんととめてよ!」

どうやら失点の責任は俺にあるらしい。

解せぬ。

それから後二回ほどは一緒に遊んだのだが、慣れてきた所で一人を審判にして予定通り3対3で遊ばせる。

あれだな、若くなったとしても子供の体力についていくのはかなりきつい。

無尽蔵の体力とはまさにこのことを言うんだろう。

その後も昼飯も食わずにギャーギャーいいながらボールを蹴りまくっている。

「楽しそうですねぇ。」

「だなぁ。俺には無理だ。」

「アレはなんていう遊びなんですか?」

「サッカーって言う遊びだ。本来は11人でそれこそもっと大きなコートを使って遊ぶんだが、まぁ最初だしこんな感じでいいだろう。」

いつの間にかやってきたアグリと共にはしゃぎまわるガキ共を見守る。

子供ってのは本来こうあるべきなんだろうなぁ。

しっかり食ってしっかり遊んで、少し勉強して。

仕事中も楽しそうではあるがやはり遊んでいるときが一番輝いている。

「ちなみに他に何があります?」

「他?そうだな、ドッジボールなんかは大人も子供も関係なくあそべ・・・。」

ふと気配を感じて後ろを振り返ると、アグリの後ろには何かを期待する大人たちの姿があった。

なんだよそのキラキラした目は。

「あー、一応聞くがマジでやるのか?」

「そりゃやりますよ!」

「ボールなら用意してあります!」

「何でそんなに用意周到なんだよ。」

「まぁまぁいいじゃないですか。それで、どんなルールなんです?」

ガキ共が楽しそうに遊んでいるのがうらやましかったんだろう。

まったく、男は何歳になっても子供よねとエリザなら言いそうなものだが、実際そうなんだから反論できない。

簡単にルールを説明した後、地面にコートを書いて二手に分かれる。

あとはまぁ想像の通りだ。

「いけ、そこだ!」

「あぶねぇなぁ!顔はやめろよ。」

「うっせぇ、当てりゃいいんだよ当てりゃ!」

子供と違い意地汚く言葉も汚い大人の戦い。

決して子供のように美しいとはいえないが、本人達はいたって真剣だ。

最初は畑を手伝っている大人だけだったのだが、どこから騒ぎを聞きつけたのか冒険者が一人二人と集まってきて、気づけば4チームぐらいできていた。

街の外に巨大な土地があるのをいい事に、何面もコートを作って大会みたいなものを勝手に始める。

優勝賞金は銀貨10枚。

何故か俺が出すことになったのだが、どうしてだろうか。

「次は特攻野郎と銀狼の対戦だ!掛け率は4対2で特攻野郎が人気だぞ、さぁさぁどっちに賭ける!?」

「とれたてアングリーバードのから揚げだ、5個で銅貨20枚!さぁ買った買った!」

「酒がないぞ!もっと持ってこい!」

そして盛り上がっているのは参加者だけじゃない。

バカ騒ぎを始めると集まってくるのが賭け屋と飲み屋。

さらにはそれ目当てに大勢の冒険者やお祭り好きの住民が集まればもう誰にも止められない。

「なんでこうなった?」

「まぁまぁいつものことじゃないですか。」

「そういうなら賞金はギルド協会が出せよ。」

「え、嫌ですよ。」

大騒ぎをききつけ警備と共に羊男が様子を見に来たのだが、特に問題なしとのことで大会は続行。

むしろお墨付きを得たことで騒ぎは更に大きくなっている気がする。

気づけば出店は5軒を越え、そこらじゅうで宴会が行われている。

大会なんてお構いなし、みんなタダ騒ぎたいだけって感じだ。

「お前主導で飯屋が二軒出てるの知ってるんだぞ。」

「そりゃあ運営費を稼ぐチャンスですから。でも、こういうことをやるなら事前に行ってもらえるともっと稼げるんですけどねぇ。」

「俺だってこうなるなんて思ってなかったんだよ。分かってたらマスターに頼んで今頃大儲けしてたはずだ。」

「それはご愁傷様です。」

「賞金出さないってなら儲けは折半だからな。」

「それずるくないですか?」

「俺がやり始めたんだから俺に権利がある。それにだ、定期的に開催して労働者と冒険者のチームで対戦とか面白いと思わないか?」

「賞金出しましょう!」

ったく、金になると思ったらすぐコレだ。

別に労働者と冒険者が喧嘩しているわけじゃないのだが、どうしても同属というか同じ仲間どうしていることの方が多いように感じる。

むりやり交流させる必要はないのだが、せっかく同じ街にいるんだからお互いに盛り上がれることがあるといいのかもしれない。

もちろんそうなれば色々と俺にもプラスがあるしな。

とりいそぎバウンドロールの足を大量に仕入れて、それから羊男と一緒にルール作り。

この間のスリング用の弾のように量を売るのは難しそうだが、サッカーとドッジボール両方に使えるのでそれなりの数は出るだろう。

なんせ客は子供と大人両方だ。

たまにはこういう健全な娯楽があってもいいよな。

こうして、サッカーとドッジボールは街に受け入れられ大盛り上がりするのだが、それはまた別の話。
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