転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

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1080.転売屋は遺跡に潜る

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「それでは皆様こちらになります。」

予定通り羽追い祭りで優勝した俺達は、巨大な街を離れ奇岩群のそのまた奥にあった古びた祠の前に到着した。

しめ縄をほうふつとさせる太い縄で囲まれたその祠はまるで大地が口を開けて餌を待っているようにも見える。

これまで数多くの優勝者がここを訪れているそうなのだが、今だ全貌は明らかになっていない。

今日と明日の二日間が優勝者に許された探索期間となり、その間に見つかったものはすべて優勝者に報酬として与えられることになっている。

いやー、予定通りとか言ったけどあの後かなり大変だったなぁ。

常連の一般参加者を駆逐した後は冒険者のバトルロワイヤルが始まった。

俺みたいなひよっこは早々に尾羽をむしり取られ、熟練者であるエリザやバーンでさえ複数人に追われるような形で一人また一人と脱落していく。

しかしながらアニエスさんとウーラさんのコンビはそんな中でも確実に敵を減らし、最後はウーラさんが相打ち覚悟で自らを囮にして敵をひきつけ、アニエスさんがその後ろから襲い掛かるって優勝を勝ち取った。

本当に紙一重、薄氷の勝利というやつだったがその結果がこの遺跡探索につながっている。

羽追いとは別に行われたコンテストに関しては現在審議中らしいので帰った頃には結果が出ていることだろう。

今はこの遺跡を探索し、お金になりそうな物を発見することが大切だ。

「それじゃあ予定通りに行くとしよう。前衛はエリザとアニエスさんウーラさん、その後ろにアネットとビアンカそれとキキ、んでもって俺とハルカさんとケイゴさんで最後尾っと。バーンは随時動いて敵を錯乱、もしくは殲滅する役目だがあまり動き回って罠を起動させないように注意してくれ。」

「まぁどんな魔物が出てきてもこのメンバーなら問題ないでしょうね。」

「油断は禁物ですが、正直何が出てきても負ける気はしません。」

「それでも治癒者はいませんので気を付けてくださいね、ポーションと傷薬じゃ限界もありますから。」

「ビアンカのポーションがあれば大丈夫だと思うけどなぁ。」

確かにこれだけのメンバーがいて回復魔法を使うやつがいないんだよなぁ。

なんていうか脳筋?殲滅重視?攻撃は最大の防御ってのを完全に地で行ってる。

遺跡探索の秘密兵器として、バーンの背に乗ってキキにも来てもらったことで更に殲滅力が増している。

前後ろは言わずもがな、中衛の幅も厚くアネットやビアンカの補助に加えて俺やハルカ、キキの遠距離攻撃もある。

バーンはまだまだ連携を取るのはまだ難しくても遊撃役として一人で動き回るならそれなりの強さがあるからなぁ。

「では皆様ご武運を。何がありましても我々は責任を負えません、それだけはどうぞご了承ください。」

「もちろん承知の上だから気にしないでくれ。」

案内人に見送られてぞろぞろと遺跡の中へと突入する。

通常のダンジョンと違って入るときに視界が暗転することもなく、中は入り口と違ってかなり広い通路が続いていた。

大人三人が横に並んでも邪魔にならない広さ。

どんな魔物が出るかすらわからないが、これだけの広さがあれば十分に戦えるだろう。

入り口の外見とは裏腹に、内部は人工的な雰囲気が強い。

これはダンジョン内で見つかった遺跡と同じ感じだ。

旧王朝がどれだけ先進的な技術などを持ち合わせていたのかはわからないが、すごい技術を持っていたことは何となくわかる。

廊下を進み、小部屋を一つずつ確認して途中何度か休憩をはさみながらも奥へ奥へと進んでいく。

外と違って時間感覚がわからなくなってしまうのだが、我々には腹時計という強い味方がいる。

この日の為に持ってきた探索道具を使いながら、こまめに香茶を淹れるなどして比較的快適な探索が続けられた。

「暇ねぇ。」

「だな。」

「思ったよりも魔物がいませんが、おそらくは長年かけて駆除されてしまったのでしょう。」

「それでも駆除されたのは行ったことのある場所までですよね?」

「未開錠の扉があるはずですので、そこから先はこことは比べ物にならない魔物が出てくると思います。」

そう、キキのいうように今回の目的は遺跡にあると思われる未開錠の奥を探索すること。

前に手に入れた雷花の結晶を使えばそこを開けることができるのは確認してある。

今回持ってきたのは残っていた二本。

それを使ってたどり着ければ一番いいんだが・・・。

その後も散発的に魔物と遭遇しながら進むこと一時間程。

そろそろ夕方かというタイミングでその場所を見つける事が出来た。

固く閉ざされた門の前には過去に誰かがここまで到着したと思われる形跡が残されていたが、残念ながら先に進めなかったんだろう。

一度荷物を降ろしてしっかりと休息と腹ごしらえを済ませる。

「それじゃあ開けます。」

「魔物がすぐに出てくるとも限りません、皆さん警戒を怠らないように。」

「何かあったらすぐ前に出るから、フォローよろしく。」

「お任せください。」

全員がこの日一番の緊張感をもってその時を待つ。

キキが扉の開錠部に結晶を置くと、固く閉ざされていた門に一筋の光が走った。

そしてドドドドと土煙を上げながらゆっくりと左右に開き始める。

武器を握りしめ、いつでもこい!と気合を入れる。

「魔物の反応多数、来ます!」

「バーン、前に出すぎるなよ。でも好きなだけ暴れていいからな!」

「わかった!トトは僕がしっかり守るから!」

なんとも頼りになる息子だ事。

門が開ききる前に雪崩のように何かがこちらに飛び出してくるのがわかった。

「来るわよ!」

エリザの緊張した声に長い戦いになる、誰もがそう覚悟して武器を強く握った。

はずだった。

「え、もうおわり?」

「魔物の反応ありません、どうやら終わりみたいだねお姉ちゃん。」

「え、本当に?未開錠だともっとこう、どばーーーーって出てくるんじゃないの?」

「確かに出てきはしたが、少なかったな。」

相手が少なかったのかそれとも俺達が強すぎたのか。

一応それなりに戦闘は行われたものの、こちらまで魔物が来ることもなくあっという間に終わってしまった。

拍子抜けしたまま倒した魔物の素材をはぎ取り、各々装備を整える。

遺跡と言えば防御機構を備えた金属系の魔物がほとんどなのだが、今出てきたのは生物系の魔物。

長いこと封印されていたというのにいったい何を食べて生きながらえてきたんだろうか。

ダンジョンと同じく魔素を吸うだけでも魔物は生きていけるが、その魔素を供給する何かがなければそれも難しい。

結局体を維持するために魔素を含んだ食べ物を摂取するはずなのだが、この奥に何か食べ物があると考えるのが妥当だろう。

「まぁ余計な戦闘しなくてもいいのは助かる。ここからは手付かずだし、今まで以上に罠とか魔物に注意しつつ小部屋を徹底的に調べていくぞ。お宝は一つ残らずいただこう。」

「さっきの魔物から察するに何かがあるのは間違いないでしょう。それこが、ここが非公開にされていた理由だと考えられます。」

「ぶっちゃけ金にならないのならそっちはどうでもいいけど。」

「お前らしい考えだ。」

「だってそうだろ?いくらすごい秘密だったって持ち帰れなければ意味がない。逆に持ち帰られるなら根こそぎもらっていくつもりだ。その許可は取っているわけだしな。」

おそらく外は夜になっている頃だろうから残り時間は休憩も入れてあと一日、その間に手に入れたものは俺達の物になるわけだし金目の物は根こそぎいただいていこう。

それはもう泥棒のように。

確実準備を済ませて気合いを入れ直し未開錠エリアに足を踏み入れたわけだが、思った以上に中の空気は澄んでおりむしろ呼吸しやすいぐらいだ。

普通はかび臭いものなのだがそういう部分でも普通と違うのは間違いない。

先程の戦闘で出そこなった魔物はいるものの、それらもやはり生物系。

道中宝箱がいくつかあったので、その中身を回収しつつさらに奥へと進んでいく。

中身はじっくり確認していないがそれなりに当たりのようだ。

それだけでもここに来た価値があるというもの、でも全員の意識はそこにはなかった。

『この奥にはいったい何があるのか』

その問いが俺達の足を前に前に進め続ける。

「あ、また扉。」

「結晶で開くみたいですけど、これで最後です。」

「開けましょう、ここまで来て引き返すのはもったいない。」

「私もそれに賛成だ、休憩はするべきだがここで出し惜しむものでもあるまい。」

先程と同様巨大な扉の前はホールのようになっており、休憩するにはちょうどいい。

それに、他の道は全て探索し尽くしたはずなのでここを開けなければ先はない。

ケイゴさんの言うように出し惜しみをする必要はないだろう。

次に来れるとして半年後、仮にまた壁があったとしてもその時に勝ち上がって来たらいい。

小休止の後再び扉に結晶を嵌め込むと先程と同じように扉が開き始める。

さて、鬼が出る蛇は出るか。

「魔物の反応多数!ダメ!さっきよりも量が多い!」

「敵は私たちが押さえるからシロウ下がって!」

「下がるのは全員です、こんな広いところでは囲まれてしまいます。」

「なんかよくわからんが下がらないとやばそうだし下がるぞ!」

キキの緊迫した声がさっき以上に状況がよくないことを知らせていた。

即座にエリザが武器を構えるもアニエスさんが冷静に後退を進言する。

この辺は集団行動になれている騎士団の判断に間違いはない、なのでそれに従い急いで広場を離れ通路に逃げ込んだ。

「ウ、キタ」

「これは、何て量・・・。」

雪崩のように押し寄せてくる無数の魔物、その種類は様々だがそのどれもが餓えた獣のような目をしている。

さっきの奴らと比べ物にならない殺気。

どうやら本当の戦いはここからのようだ。
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