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1082.転売屋は喰われかける
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壁の向こうに見える巨大な二つの瞳。
それはゆっくりと左右に動き、動きを止めた俺達をゆっくりと見比べていく。
それはまるで獲物を狙う肉食獣の様。
すぐに逃げ出せばいいものを、まるで蛇ににらまれた蛙のようにピクリとも動くことが出来なかった。
動きたいのに動けない。
恐怖なのかそれとも別の何かなのか。
声を発したってことはそれなりの知性なんだろうけど・・・。
「皆さん目を見ないで下さい!目を閉じて!」
「おや、わえの事を知る者がおるようじゃ。じゃが、もう遅い。お主らはわえのごはんとして美味しくいただいてやるからのぉ。」
キキの鋭い声が背中越しに聞こえて来るものの、目を閉じようとしても瞼が下りてこない。
何人かは先にベースキャンプに戻っているはずだから、この場にいるのはキキとバーンとウーラさん、そして俺の四人。
さっきまで俺の手を引いていたバーンの気配が無いのだが、大丈夫だろうか。
あまりの恐怖に逆に冷静になってしまいそんな事を考えてしまう。
そうしているうちに壁の向こうからずるずるという音と共に巨大な金色の瞳がゆっくりと近づいてきた。
「うそ・・・だろ。」
「わえの美しさに見惚れたか?ふふん、中々見る目があるようじゃからお主は一番最後に食べてやる。頭からか?それとも足からがいいか?わえは足からが好きじゃ、怯え震え叫ぶ声は最高の調味料じゃからな。」
壁の向こうから現れたのは巨大な蛇。
頭部だけでも優に2mを越えて大人ぐらい簡単に丸呑みできる大きさがあり、体の長さはわからないがこの感じならかなりの長さがあるだろう。
なにより一番驚きなのはその頭部に女性の体が生えている事。
いや、まじで腰から上が頭のてっぺんから生えていて両腕を組んで惜しげもなく晒した二つのふくらみを支えている。
下半身が蛇の魔物はダンジョン内でも見たことがあるが、これはそういうのを越えた別の何かなんだろうか。
「エキドナ?ううん、違う、もっと別の何か。信じられない、こんな魔物がいるなんて・・・。」
「わえをあのような下等な生き物と一緒にするでないぞ小娘。」
「違うのか?」
「ほぉわえのこの姿を見て尚普通に話せるか、益々気に入った。」
巨大な蛇の上に生えたその女は楽しそうにカラカラと笑う。
別に驚いていないわけじゃない、何て言うかあまりにも信じられなさ過ぎて思考が麻痺しているだけだ。
怖いのに怖くない、だから思わずツッコミをいれてしまった。
女が笑うのを止め俺と再び目を合わせた次の瞬間、巨大な蛇の頭が俺の前に降りてきて丸のみにするかのようにその大きな口を開け、チロチロと細く長い舌が固まった俺の右頬を優しく撫でる。
「うむ、久々に味わう恐怖の感情は誠に美味じゃな。しかしその後ろの小童といい、妙に懐かしい気配を感じる。お主、何者だ?」
巨大な口が閉じられたかと思うとそのまま地面に伏し、代わりに半裸の女が俺の前に現れる。
こういう場合食べるのはどちらの口になるんだろうか。
というか消化器官はどうなるんだ?
さっきの感じだと下の口で感じた味覚は上にも伝わっていたようだけど・・・って何を冷静に考えているんだ俺は。
「俺はただの商人だ。」
「商人?あぁ人間の営みの一つじゃったな。じゃがわえが聞きたいのはそんな事ではない。この気配、この守護、お主ディネストリファの縁者じゃな?」
「ディーネを知っているのか?」
「ほほほ、やはりか。あのお転婆娘、暫く会わぬうちに人間の連れ合いを作っているとは。しかもこれ見よがしに祝福を授け自己主張するなどまだまだ子供じゃのぉ。そしてお前、お前からも似た気配を感じる。いや、違うな。これはドーン、ドーンロンダルトじゃ。しかしなぜこんな姿をしておる。」
本体は大きいが、人型の方はそんなに大きくはない。
この場合本体はどっちなんだ?
胸は凶悪なほどに大きいが、顔が非常に幼くそれが違和感を増幅させていた。
コロコロと変わる表情は子供そのもの、なのにその小さな口から発せられる声と中身は酷く年老いた雰囲気を感じさせる。
先程舌で撫でた俺の頬を今度は手で撫でた後、俺の肩越しに後ろをじっと見つめた。
そこにはバーンがいるはず、そう思ったその時だ。
ドスン!という音共に足元がぐらぐらと揺れた。
「お前なんて怖くないぞ!トトを離せ!」
「ほぉ、われの目を見てなお動けるか。ドーンのようでドーンのない子よ、お前は何者じゃ?」
「僕はバーン!トトの子供だ!」
「こ奴の?じゃがお前からはこ奴の気配など感じぬぞ?」
「子供ったら子供だ!トトに何かしてみろ、僕がお前を食べてやる!」
「ほほほ、青い、青いのぉ。ドーン坊も昔はこんな感じじゃったか。」
その後もドスンドスンと振動は来るものの、女が動じる様子はない。
バーンが攻撃を仕掛けているのかもしれないが、それを確かめられずにいる。
そんなことをされてもなお、まるで孫に会った祖母のような優しい眼差しでバーンを見つめる女。
ディーネやバーンの元になったドーンロンダルトの名前が出てくるあたり、かなり古くから生きているのかもしれない。
いや、もしかするとここに封印されていたとか?
あの二枚の扉は逃亡防止で、目の前にある祭壇が封印。
宝に目がくらんでしまっていたが、もしかすると大変な物を呼び起こしてしまったのではないだろうか。
「お主は最後、坊は同じ血族として食べるのはやめてやろう。残るは後ろの人間と亜人、いや、他にも何人かおるようじゃな。わざわざわえに食べられるために集まってきよるわ。久しく人間は食べておらんからのぉ、最初は誰から喰ろうてやろうか。」
「キキ!今すぐ皆と一緒に逃げろ!」
食ってやる。
その言葉を聞いた瞬間に俺は叫んでいた。
「でも!」
「いいから逃げろ!これは命令だ!」
後ろは見えない、でも声は出せる。
こんな所で全員食われるぐらいなら、誰か一人でも外に逃げて状況を伝えなければ。
「ほぉ、自らを犠牲にして仲間を逃がすか。じゃが、わえがそのような事を許すと思ってか?」
「早くし・・・。」
「耳元で煩い、少しは黙っておれ。」
女は強引に俺の肩を掴むと、そのまま自分の胸に押し付けてきた。
見た目通りの柔らかなふくらみ、いや、想像以上の柔らかさに完全に口がふさがれる。
「トト!」
「なに、今すぐ殺しはせんから安心せぇ。それよりも空腹を満たす方が先決じゃ、仲間が食われる様をこの特等席でお主にも一緒に見せてやろうではないか。」
足元の巨体が再び起き上がり、天井が一気に近くなる。
それよりも息、息が出来ない。
必至にもがくと余計に顔が乳に埋もれてしまい、益々苦しくなってしまう。
殺しはしないとか言いながらこのままでは窒息死するぞ!
「なんじゃその成りで母の乳が恋しいか?いくらわえが美しいとはいえ、残念ながら乳はでんぞ。」
「ちが!息が!」
必死にもがくのがくすぐったかったのか、女が身じろぎをした瞬間に顔が離れ慌てて叫んだ。
「おっと、すまんすまん。」
「はぁ、死ぬかと思った。」
抱きしめられていた手が緩み、それに合わせて首を上にそらせて何とか呼吸を確保する。
あれ、首が動くぞ。
女はそんな俺の様子がおかしかったのか、笑みを浮かべながら子供をあやすように俺の髪の毛を優しく撫でて来た。
「あのお転婆娘が心を許した男か。ガルとくっついていればよかったものを、しかしこのまま殺すとあの子がうるさそうじゃからのぉ。どうしたもんか。」
「ならこの場で死んでやる。俺が死ねばディーネが飛んで来るだろう、あいつを怒らせてどうなっても知らないからな。」
「バカなことを、あのお転婆が怒った所で何も怖くないわ。わえを誰だと思っておるのじゃ?」
「しらん。」
「・・・なに?知らぬと申したか?」
「だからしらないって言ったんだ。ここに封印されていたんだから邪神かなにかじゃないのか?」
女が何者なのか。
この姿から察するにどう考えても普通じゃないのは間違いないが、それが何者なのかなんてどうでもいい話だ。
とにかくみんなを外に逃がすためにどうにかしなければ、必至に頭を回転させながらふと女の方を見ると、呆然とした顔で俺を見下ろしている。
それどころか巨大な蛇の体がどんどんと小さくなっていき、あっという間に床に足がついてしまった。
さっきまでの勢いはどこへやら、呆然自失の様子でじっと俺をみてくる。
「なんだよ。」
「本当にわえを知らんのか?」
「悪いが本当に知らない。ここに来たのも非公開の遺跡だって話だから来ただけだ。」
「そんな、わえを、わえの事をしらぬと申すか。確かに体を維持するには腹が減ると思ったが、まさかそんな。」
気づけば背も縮み胸まで萎み・・・っていうかツルペタになってしまった。
巨大な蛇は見る影もなく、俺を見下ろしていたはずが今や俺を見上げている。
いったい何が起きたのかわからないが先程までの圧迫感が消え、首から上だけでなく体も動かせるようになっていた。
すぐにキキとウーラさんに目配せをしてその場から離脱してもらい、俺を守るようにバーンがすぐ隣にやってきた。
「知られていないのがそんなショックなのか?」
「長いこと寝ていたような気もするが、まさかわえを封じたことまで忘れられているとは、なんということじゃ。」
「封じられてたのかよ。」
やっぱり邪神的な何かなにかもしれない。
なんだかよくわからないが小さくなった今のうちに逃げた方がよさそうだ。
「そうじゃ!ウンチュミー、そう言ってもわからんか!?」
ウンチュミー。
聞いたことあるような無いような・・・あれ、どこでこの名前を聞いたんだっけ?
必至に記憶をたどっていく。
このまま無視することもできるが それをしてまた大きくなられても困るしなぁ。
「確か、海の神様だったっけ?」
「そうじゃ!やはりわえの事を知っているではないか!」
答えた瞬間に再び女の体が大きく、具体的には乳がAカップからFカップぐらいにでかくなった。
いやいやどうなってるんだよ。
目を輝かせて俺を見上げる巨乳の少女。
乳は守備範囲内でも見た目が守備範囲外なので、なんとも言えない感情で頭が混乱しそうになる。
「いや、言われて思い出しただけで。っていうか何で海の神様がこんな辺鄙な所に封じられているんだよ。」
「それは・・・。」
「それは?」
「昔、人間をな、ちょいとたべてしもうたんじゃ。」
人を食うのはちょっとじゃすまないと思うぞ。
登場したときの恐怖ははどこへやら、あまりにも小さくなってしまった女を見ながら心の中で冷静にツッコミを入れつつ、この後どうするべきか必死に考えを巡らすのだった。
それはゆっくりと左右に動き、動きを止めた俺達をゆっくりと見比べていく。
それはまるで獲物を狙う肉食獣の様。
すぐに逃げ出せばいいものを、まるで蛇ににらまれた蛙のようにピクリとも動くことが出来なかった。
動きたいのに動けない。
恐怖なのかそれとも別の何かなのか。
声を発したってことはそれなりの知性なんだろうけど・・・。
「皆さん目を見ないで下さい!目を閉じて!」
「おや、わえの事を知る者がおるようじゃ。じゃが、もう遅い。お主らはわえのごはんとして美味しくいただいてやるからのぉ。」
キキの鋭い声が背中越しに聞こえて来るものの、目を閉じようとしても瞼が下りてこない。
何人かは先にベースキャンプに戻っているはずだから、この場にいるのはキキとバーンとウーラさん、そして俺の四人。
さっきまで俺の手を引いていたバーンの気配が無いのだが、大丈夫だろうか。
あまりの恐怖に逆に冷静になってしまいそんな事を考えてしまう。
そうしているうちに壁の向こうからずるずるという音と共に巨大な金色の瞳がゆっくりと近づいてきた。
「うそ・・・だろ。」
「わえの美しさに見惚れたか?ふふん、中々見る目があるようじゃからお主は一番最後に食べてやる。頭からか?それとも足からがいいか?わえは足からが好きじゃ、怯え震え叫ぶ声は最高の調味料じゃからな。」
壁の向こうから現れたのは巨大な蛇。
頭部だけでも優に2mを越えて大人ぐらい簡単に丸呑みできる大きさがあり、体の長さはわからないがこの感じならかなりの長さがあるだろう。
なにより一番驚きなのはその頭部に女性の体が生えている事。
いや、まじで腰から上が頭のてっぺんから生えていて両腕を組んで惜しげもなく晒した二つのふくらみを支えている。
下半身が蛇の魔物はダンジョン内でも見たことがあるが、これはそういうのを越えた別の何かなんだろうか。
「エキドナ?ううん、違う、もっと別の何か。信じられない、こんな魔物がいるなんて・・・。」
「わえをあのような下等な生き物と一緒にするでないぞ小娘。」
「違うのか?」
「ほぉわえのこの姿を見て尚普通に話せるか、益々気に入った。」
巨大な蛇の上に生えたその女は楽しそうにカラカラと笑う。
別に驚いていないわけじゃない、何て言うかあまりにも信じられなさ過ぎて思考が麻痺しているだけだ。
怖いのに怖くない、だから思わずツッコミをいれてしまった。
女が笑うのを止め俺と再び目を合わせた次の瞬間、巨大な蛇の頭が俺の前に降りてきて丸のみにするかのようにその大きな口を開け、チロチロと細く長い舌が固まった俺の右頬を優しく撫でる。
「うむ、久々に味わう恐怖の感情は誠に美味じゃな。しかしその後ろの小童といい、妙に懐かしい気配を感じる。お主、何者だ?」
巨大な口が閉じられたかと思うとそのまま地面に伏し、代わりに半裸の女が俺の前に現れる。
こういう場合食べるのはどちらの口になるんだろうか。
というか消化器官はどうなるんだ?
さっきの感じだと下の口で感じた味覚は上にも伝わっていたようだけど・・・って何を冷静に考えているんだ俺は。
「俺はただの商人だ。」
「商人?あぁ人間の営みの一つじゃったな。じゃがわえが聞きたいのはそんな事ではない。この気配、この守護、お主ディネストリファの縁者じゃな?」
「ディーネを知っているのか?」
「ほほほ、やはりか。あのお転婆娘、暫く会わぬうちに人間の連れ合いを作っているとは。しかもこれ見よがしに祝福を授け自己主張するなどまだまだ子供じゃのぉ。そしてお前、お前からも似た気配を感じる。いや、違うな。これはドーン、ドーンロンダルトじゃ。しかしなぜこんな姿をしておる。」
本体は大きいが、人型の方はそんなに大きくはない。
この場合本体はどっちなんだ?
胸は凶悪なほどに大きいが、顔が非常に幼くそれが違和感を増幅させていた。
コロコロと変わる表情は子供そのもの、なのにその小さな口から発せられる声と中身は酷く年老いた雰囲気を感じさせる。
先程舌で撫でた俺の頬を今度は手で撫でた後、俺の肩越しに後ろをじっと見つめた。
そこにはバーンがいるはず、そう思ったその時だ。
ドスン!という音共に足元がぐらぐらと揺れた。
「お前なんて怖くないぞ!トトを離せ!」
「ほぉ、われの目を見てなお動けるか。ドーンのようでドーンのない子よ、お前は何者じゃ?」
「僕はバーン!トトの子供だ!」
「こ奴の?じゃがお前からはこ奴の気配など感じぬぞ?」
「子供ったら子供だ!トトに何かしてみろ、僕がお前を食べてやる!」
「ほほほ、青い、青いのぉ。ドーン坊も昔はこんな感じじゃったか。」
その後もドスンドスンと振動は来るものの、女が動じる様子はない。
バーンが攻撃を仕掛けているのかもしれないが、それを確かめられずにいる。
そんなことをされてもなお、まるで孫に会った祖母のような優しい眼差しでバーンを見つめる女。
ディーネやバーンの元になったドーンロンダルトの名前が出てくるあたり、かなり古くから生きているのかもしれない。
いや、もしかするとここに封印されていたとか?
あの二枚の扉は逃亡防止で、目の前にある祭壇が封印。
宝に目がくらんでしまっていたが、もしかすると大変な物を呼び起こしてしまったのではないだろうか。
「お主は最後、坊は同じ血族として食べるのはやめてやろう。残るは後ろの人間と亜人、いや、他にも何人かおるようじゃな。わざわざわえに食べられるために集まってきよるわ。久しく人間は食べておらんからのぉ、最初は誰から喰ろうてやろうか。」
「キキ!今すぐ皆と一緒に逃げろ!」
食ってやる。
その言葉を聞いた瞬間に俺は叫んでいた。
「でも!」
「いいから逃げろ!これは命令だ!」
後ろは見えない、でも声は出せる。
こんな所で全員食われるぐらいなら、誰か一人でも外に逃げて状況を伝えなければ。
「ほぉ、自らを犠牲にして仲間を逃がすか。じゃが、わえがそのような事を許すと思ってか?」
「早くし・・・。」
「耳元で煩い、少しは黙っておれ。」
女は強引に俺の肩を掴むと、そのまま自分の胸に押し付けてきた。
見た目通りの柔らかなふくらみ、いや、想像以上の柔らかさに完全に口がふさがれる。
「トト!」
「なに、今すぐ殺しはせんから安心せぇ。それよりも空腹を満たす方が先決じゃ、仲間が食われる様をこの特等席でお主にも一緒に見せてやろうではないか。」
足元の巨体が再び起き上がり、天井が一気に近くなる。
それよりも息、息が出来ない。
必至にもがくと余計に顔が乳に埋もれてしまい、益々苦しくなってしまう。
殺しはしないとか言いながらこのままでは窒息死するぞ!
「なんじゃその成りで母の乳が恋しいか?いくらわえが美しいとはいえ、残念ながら乳はでんぞ。」
「ちが!息が!」
必死にもがくのがくすぐったかったのか、女が身じろぎをした瞬間に顔が離れ慌てて叫んだ。
「おっと、すまんすまん。」
「はぁ、死ぬかと思った。」
抱きしめられていた手が緩み、それに合わせて首を上にそらせて何とか呼吸を確保する。
あれ、首が動くぞ。
女はそんな俺の様子がおかしかったのか、笑みを浮かべながら子供をあやすように俺の髪の毛を優しく撫でて来た。
「あのお転婆娘が心を許した男か。ガルとくっついていればよかったものを、しかしこのまま殺すとあの子がうるさそうじゃからのぉ。どうしたもんか。」
「ならこの場で死んでやる。俺が死ねばディーネが飛んで来るだろう、あいつを怒らせてどうなっても知らないからな。」
「バカなことを、あのお転婆が怒った所で何も怖くないわ。わえを誰だと思っておるのじゃ?」
「しらん。」
「・・・なに?知らぬと申したか?」
「だからしらないって言ったんだ。ここに封印されていたんだから邪神かなにかじゃないのか?」
女が何者なのか。
この姿から察するにどう考えても普通じゃないのは間違いないが、それが何者なのかなんてどうでもいい話だ。
とにかくみんなを外に逃がすためにどうにかしなければ、必至に頭を回転させながらふと女の方を見ると、呆然とした顔で俺を見下ろしている。
それどころか巨大な蛇の体がどんどんと小さくなっていき、あっという間に床に足がついてしまった。
さっきまでの勢いはどこへやら、呆然自失の様子でじっと俺をみてくる。
「なんだよ。」
「本当にわえを知らんのか?」
「悪いが本当に知らない。ここに来たのも非公開の遺跡だって話だから来ただけだ。」
「そんな、わえを、わえの事をしらぬと申すか。確かに体を維持するには腹が減ると思ったが、まさかそんな。」
気づけば背も縮み胸まで萎み・・・っていうかツルペタになってしまった。
巨大な蛇は見る影もなく、俺を見下ろしていたはずが今や俺を見上げている。
いったい何が起きたのかわからないが先程までの圧迫感が消え、首から上だけでなく体も動かせるようになっていた。
すぐにキキとウーラさんに目配せをしてその場から離脱してもらい、俺を守るようにバーンがすぐ隣にやってきた。
「知られていないのがそんなショックなのか?」
「長いこと寝ていたような気もするが、まさかわえを封じたことまで忘れられているとは、なんということじゃ。」
「封じられてたのかよ。」
やっぱり邪神的な何かなにかもしれない。
なんだかよくわからないが小さくなった今のうちに逃げた方がよさそうだ。
「そうじゃ!ウンチュミー、そう言ってもわからんか!?」
ウンチュミー。
聞いたことあるような無いような・・・あれ、どこでこの名前を聞いたんだっけ?
必至に記憶をたどっていく。
このまま無視することもできるが それをしてまた大きくなられても困るしなぁ。
「確か、海の神様だったっけ?」
「そうじゃ!やはりわえの事を知っているではないか!」
答えた瞬間に再び女の体が大きく、具体的には乳がAカップからFカップぐらいにでかくなった。
いやいやどうなってるんだよ。
目を輝かせて俺を見上げる巨乳の少女。
乳は守備範囲内でも見た目が守備範囲外なので、なんとも言えない感情で頭が混乱しそうになる。
「いや、言われて思い出しただけで。っていうか何で海の神様がこんな辺鄙な所に封じられているんだよ。」
「それは・・・。」
「それは?」
「昔、人間をな、ちょいとたべてしもうたんじゃ。」
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