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1087.転売屋は試作品を見に行く
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不在にしていた二週間の間に色々とあったようだが、それもなんとか片付き気づけば22月も残り半分。
久方ぶりに街を出た俺は、馬車に揺られて隣町に向かっていた。
バーンの背に乗ればあっという間なんだが、荷物を運ぶにはやっぱり馬車が一番なんだよなぁ。
魔獣を訓練して馬の代わりに使うことも過去にはあったそうだが、調教の手間を考えると結局馬に戻ってしまうんだとか。
それでも採石場なんかではそれ専用の魔獣がいるとかいないとか。
一度見てみたいものだなぁ。
「シロウ様到着しました。」
「了解。それじゃあシュウの工房にいるから帰るときに声をかけるな。」
「よろしくお願いします。多分、気づかないと思うので。」
「根を詰めるなよ。」
「あはは、大丈夫です。多分。」
苦笑いを浮かべるアネットと別れその足でシュウとキョウのいる工房へと向かう。
同行してくれたアネットはビアンカの所でポーションづくりの補助をする予定だ。
不在の間に工事現場で色々とあったらしく、ポーションの在庫が底をついてしまったんだとか。
大量の追加発注が入ったとかで南方から戻って早々にビアンカは缶詰め状態でポーションを続くっているらしい。
過去に何度か倒れるまでやり続けたことがあるので、様子見と手伝いを兼ねてアネットが手を上げたというわけだな。
「シロウだ、誰かいるか?」
「シロウ様!?すぐ開けます!ほらおにぃシロウ様が来たんだからしゃきっとして!」
声をかけるとすぐに今日の返事があったのだが、何やら中は大騒ぎをしているのかドタバタとあわただしい。
別にそんなに大慌てで準備しなくてもいいのになぁ。
「お、お待たせしました。」
「この度は工房新設おめでとう。これ、南方土産のジャムだからまた後で食べてくれ。」
「わ!ありがとうございます!兄貴、ほら早く!シロウ様がお土産持ってきてくれたよ!」
「シュウはどうかしたのか?」
「窯の方が気になるみたいで、本当にごめんなさい。」
「押しかけたのは俺の方なんだから気にしないでくれ、見ても構わないのか?」
「むしろ自慢したくて呼んだみたいなもので。」
そう、今日ここに来たのはシュウから自作のガラス窯ができたという知らせをもらったからだ。
ここに新居を構えてから少しずつ作り始めていたのだが、土の具合が違ったり火力が思ったように出なかったりと中々問題が多かったのだが、この度無事に満足のいくものが出来上がったらしい。
窯用のレンガを作る為にわざわざ炭用の窯まで作ってたからなぁ。
いくらガラスづくりに使うとはいえそこまでやるかっていうぐらいにこだわっていた。
さすが職人、俺にはわからないがものすごい微妙な違いがあるんだろう。
家の中へと案内してもらい、そのまま奥の工房へと向かう。
固い土でしっかりと踏みしめられた土間、その一番奥に巨大な炉と窯が並んでいる。
壁にはガラス加工用の工具がずらっと並んでいた。
決して広いとは言えないが、それでも彼にとっては異国で作った自分だけの城。
そりゃぁ時間を忘れて集中してしまうよなぁ。
「ほらシロウ様だよ!」
「お、おぅ。よく、きてくれた。」
「随分と立派な奴ができたなぁ、大変だっただろ。」
「大変だった。でも、おかげでいいのができた。俺、やっと恩返しが出来る。」
達成感、充実感、様々な感情を含んだ渾身の笑顔が俺に向けられる。
俺に恩返しができる、か。
そんな風に思ってくれているんだなぁ。
ありがたい。
ありがたいが、それはちょっと違う。
「前にも言ったが別に恩返しをしてほしくてここを紹介したんじゃないんだぞ?今日この時からシュウはガラス職人として俺と対等な立場で仕事が出来るようになったんだ。俺が期待しているのは西方で作っていたようなあの素晴らしいガラス。それを俺は買い付けて儲けさせてもらうつもりでいる。だが何でもかんでも買うわけはないぞ、質が悪かったらそもそも買い付けないし望んだものじゃなかったら値引き交渉だってする。俺がしてきた援助はここで終わり、それはわかってるよな?」
「わ、わかってる。おでは職人、いいものを作る。それをシロウに売る、損はさせない。」
「わかってるじゃないか。俺達の立場はあくまでも対等だ、恩返しがしたいんならいい奴をガンガン作って大儲けさせてくれ。」
「おで、いいもの作りたい。でも、今は作れない。」
「どういうことだ?」
さっきまでのテンションはどこへやら、まるで膨らんだ風船が急激にしぼんでいくようにシュウの顔が暗くなっていく。
立派な炉も窯もある、道具もある、材料も見つかっている。
にもかかわらず作りたいものを作れないとはこれいかに。
「窯はできたんですけど温度管理がまだまだ難しくて。それに、色を入れるための材料もまだ見つかってないんです。」
「廃鉱山で見つけたやつはダメなのか?」
「あ、あでは普通の奴。前に使ってたのは、もっと色々、加工してた。」
「ふむ、じゃあどんなのが作れるんだ?」
「これ、見てほしい。」
そういってシュウが棚から大事そうに運んできたのは、何の変哲もない透明なグラス。
ホテルとかに普通に設置されている何の変哲もないガラス製のコップ。
一見するとあまりにも普通なのだが、これを人の手で作り出せることに驚きと共に畏怖の念を抱いてしまう。
彼の実力がどれほどの物か、これ一つでわからされたような気分だ。
『コップ。ガラス製のそれは気泡もなく向こう側が透けて見えるほどの透明度を保っている。最近の平均取引価格は銀貨3枚。最安値銀貨1枚最高値銀貨5枚、最終取引日は6日前と記録されています。』
「綺麗だ。」
「これが、おでの精一杯。」
「いや、十分すぎるだろ。これほどの品は王都でもなかなかお目にかかれないぞ?」
「本当は、もっと作りたい。でも、作れない。だから、これをいっぱい作って、練習する。」
「これを練習作というあたりがもうアレだな。」
「あはは、兄貴は自分に厳しいから。」
王族が使っているような見事なコップ。
この世界ではまだまだガラス製の製品は少なく主に使われているのは木製の物ばかり。
ただ飲み物に関しては見た目も大事なのでジョッキなんかで提供されているが、それらは透明度も低く分厚いからどうしても重たくなってしまうんだよなぁ。
それと比べてこれは羽のように軽い。
エールを入れるには少し小さいが、今回仕入れた海酒や琥珀酒なんかを入れるには十分ありだろう。
もう少し小さくしてショットグラスにしても面白いかもしれない。
「ちなみに月産でどのぐらいだ?」
「が、頑張ったら300個は、作れる。」
「一日10個も作れるのか?」
「頑張ったら。」
「なら休息日も入れて150個だ。一つ銀貨2枚で金貨3枚、できるよな?」
「えぇぇ、そんな高くていいんですか?だって材料費もタダですよね?」
高いか安いかでいえば高いのかもしれない。
利益を出そうと思ったら銀貨1枚が妥当なところ、無理をして銀貨1.5枚ってところだろうか。
それを銀貨2枚で買いさらには材料費もこっち持ちとなればキョウが驚くのも無理はない。
だが別に知人だから高く買っているというわけでもないんだよなぁ。
これだけの品質にもなれば相場スキルで出た最高値の銀貨5枚でも十分に売れる。
さすがに一般家庭にこれを広めるのは中々に大変だが、貴族や商店、娼館とかなら間違いなく金を出してくれるだろう。
個人ならともかく客相手の商売ともなれば見た目ほど大事な物はない。
このグラスに入れられる酒をみて客がどう思うか、それを想像すればむしろ安いというかもしれない。
使い捨てじゃないのもポイント高いよな。
そりゃあ使い続ければくすんでくるだろうけど、そうなったら払い下げて新しいのを買えばいい。
払い下げられた奴は一般家庭で流通していずれは街中の家にこのコップが置かれるようになるんだ。
一つの街しかなければそこで終わりだろうけど、おかげさまで売り先はいくらでもあるんでね。
一つ銀貨2枚で買っても一つ銀貨4枚で売ればひと月で金貨3枚の儲け。
年間金貨72枚もの利益を俺もシュウも手に入れることができる。
まぁ、それができるのも材料が俺の廃鉱山で手に入るので材料費がタダってことも関係してるんだけどな。
それにだ、月産300個にしてしまったらシュウはそれしか作れなくなってしまう。
余裕がなかったら新しい商品を作ることはできないし、面白くもなんともないだろう。
そういう遊びこそが素晴らしいものを作り出すと俺は思っている。
事実、ルティエ達がそうだしな。
無理して仕事を詰め込んでいるときは何の面白みもない作品になってしまうが、心にゆとりがあれば新しいアイデアも浮かんでくるし、技術を磨く時間もできる。
職人は機械じゃないんだ。
一人の人間として過ごす時間を作ることで結果として新しい儲けのネタが生まれてくる。
それを作るのもまた俺達買う側に求められるスキルというわけだ。
「もちろんだ。その代わり毎月これと同じ品質の物を間違いなく作り続けてくれ。加えて新しい作品もどんどん頼むぞ、昔の在庫がなくなって早く新しいのをよこせって王都の奴隷に文句を言われてるんだ。」
「奴隷なのに文句を言うんですか。」
「そういうやつだからな。ちなみに奴隷ではあるが毎月王都で金貨100枚分ぐらい稼いでるぞ。」
「えぇぇぇぇ!」
まぁそんなに驚くのも無理ないよな。
でもそれぐらい売るんだよ、あいつは。
もちろん化粧品とか色々な物を合わせてになるが、貴族やるよりも商人やる方が儲かるんじゃないかなぁ。
それだけの器量もセンスも持ち合わせているのは間違いない。
でも本人はあくまでも奴隷を抜けるための手段としか考えていないわけで。
正直奴隷を抜けられた後のことを考えるのがめんどくさいなぁ。
ほんと、どうしたもんか。
「お、おでのやつ、そんなに売れるのか?」
「売れる。だからよろしく頼むぞ、シュウ。」
「おで、頑張る!」
「その意気だ。それとキョウ、この間送ったカールカプラだけどなかなか反応がいいぞ。」
「本当ですか!?」
不在の間に街を襲撃したカールカプラだが、討伐後奥様方の手によって毛糸に加工された後にローザさんやキョウなどの裁縫職人の元へと運ばれ、それを使って好きな物を作ってほしいというお願いをしたらしい。それを使ってキョウの作った子供用の手袋がなかなか評判らしくて追加発注してきてくれと頼まれていたのを今思い出した。
危ない危ない。
「子供達用にもっと欲しいって話が出てる、この冬は寒くなるみたいだし個数は問わないから作れるだけ作って送ってくれ。報酬は前回の二割増しだってさ。」
「え、二割もですか?」
「それだけ期待されてるってことだ。忙しいのは兄貴だけじゃないぞ、しっかり頑張れよ。」
「どどど、どうしよう!」
一人慌てるキョウをよそにシュウはやる気満々で再び工房へと戻っていった。
兄妹そろって大忙しだな。
異国の地での再出発は無事に軌道に乗ったみたいだし、この勢いで俺の儲けに貢献してもらえると助かる。
といあえず今日はこのグラスを使って祝杯を上げようじゃないか。
未来ある二人に乾杯ってね。
久方ぶりに街を出た俺は、馬車に揺られて隣町に向かっていた。
バーンの背に乗ればあっという間なんだが、荷物を運ぶにはやっぱり馬車が一番なんだよなぁ。
魔獣を訓練して馬の代わりに使うことも過去にはあったそうだが、調教の手間を考えると結局馬に戻ってしまうんだとか。
それでも採石場なんかではそれ専用の魔獣がいるとかいないとか。
一度見てみたいものだなぁ。
「シロウ様到着しました。」
「了解。それじゃあシュウの工房にいるから帰るときに声をかけるな。」
「よろしくお願いします。多分、気づかないと思うので。」
「根を詰めるなよ。」
「あはは、大丈夫です。多分。」
苦笑いを浮かべるアネットと別れその足でシュウとキョウのいる工房へと向かう。
同行してくれたアネットはビアンカの所でポーションづくりの補助をする予定だ。
不在の間に工事現場で色々とあったらしく、ポーションの在庫が底をついてしまったんだとか。
大量の追加発注が入ったとかで南方から戻って早々にビアンカは缶詰め状態でポーションを続くっているらしい。
過去に何度か倒れるまでやり続けたことがあるので、様子見と手伝いを兼ねてアネットが手を上げたというわけだな。
「シロウだ、誰かいるか?」
「シロウ様!?すぐ開けます!ほらおにぃシロウ様が来たんだからしゃきっとして!」
声をかけるとすぐに今日の返事があったのだが、何やら中は大騒ぎをしているのかドタバタとあわただしい。
別にそんなに大慌てで準備しなくてもいいのになぁ。
「お、お待たせしました。」
「この度は工房新設おめでとう。これ、南方土産のジャムだからまた後で食べてくれ。」
「わ!ありがとうございます!兄貴、ほら早く!シロウ様がお土産持ってきてくれたよ!」
「シュウはどうかしたのか?」
「窯の方が気になるみたいで、本当にごめんなさい。」
「押しかけたのは俺の方なんだから気にしないでくれ、見ても構わないのか?」
「むしろ自慢したくて呼んだみたいなもので。」
そう、今日ここに来たのはシュウから自作のガラス窯ができたという知らせをもらったからだ。
ここに新居を構えてから少しずつ作り始めていたのだが、土の具合が違ったり火力が思ったように出なかったりと中々問題が多かったのだが、この度無事に満足のいくものが出来上がったらしい。
窯用のレンガを作る為にわざわざ炭用の窯まで作ってたからなぁ。
いくらガラスづくりに使うとはいえそこまでやるかっていうぐらいにこだわっていた。
さすが職人、俺にはわからないがものすごい微妙な違いがあるんだろう。
家の中へと案内してもらい、そのまま奥の工房へと向かう。
固い土でしっかりと踏みしめられた土間、その一番奥に巨大な炉と窯が並んでいる。
壁にはガラス加工用の工具がずらっと並んでいた。
決して広いとは言えないが、それでも彼にとっては異国で作った自分だけの城。
そりゃぁ時間を忘れて集中してしまうよなぁ。
「ほらシロウ様だよ!」
「お、おぅ。よく、きてくれた。」
「随分と立派な奴ができたなぁ、大変だっただろ。」
「大変だった。でも、おかげでいいのができた。俺、やっと恩返しが出来る。」
達成感、充実感、様々な感情を含んだ渾身の笑顔が俺に向けられる。
俺に恩返しができる、か。
そんな風に思ってくれているんだなぁ。
ありがたい。
ありがたいが、それはちょっと違う。
「前にも言ったが別に恩返しをしてほしくてここを紹介したんじゃないんだぞ?今日この時からシュウはガラス職人として俺と対等な立場で仕事が出来るようになったんだ。俺が期待しているのは西方で作っていたようなあの素晴らしいガラス。それを俺は買い付けて儲けさせてもらうつもりでいる。だが何でもかんでも買うわけはないぞ、質が悪かったらそもそも買い付けないし望んだものじゃなかったら値引き交渉だってする。俺がしてきた援助はここで終わり、それはわかってるよな?」
「わ、わかってる。おでは職人、いいものを作る。それをシロウに売る、損はさせない。」
「わかってるじゃないか。俺達の立場はあくまでも対等だ、恩返しがしたいんならいい奴をガンガン作って大儲けさせてくれ。」
「おで、いいもの作りたい。でも、今は作れない。」
「どういうことだ?」
さっきまでのテンションはどこへやら、まるで膨らんだ風船が急激にしぼんでいくようにシュウの顔が暗くなっていく。
立派な炉も窯もある、道具もある、材料も見つかっている。
にもかかわらず作りたいものを作れないとはこれいかに。
「窯はできたんですけど温度管理がまだまだ難しくて。それに、色を入れるための材料もまだ見つかってないんです。」
「廃鉱山で見つけたやつはダメなのか?」
「あ、あでは普通の奴。前に使ってたのは、もっと色々、加工してた。」
「ふむ、じゃあどんなのが作れるんだ?」
「これ、見てほしい。」
そういってシュウが棚から大事そうに運んできたのは、何の変哲もない透明なグラス。
ホテルとかに普通に設置されている何の変哲もないガラス製のコップ。
一見するとあまりにも普通なのだが、これを人の手で作り出せることに驚きと共に畏怖の念を抱いてしまう。
彼の実力がどれほどの物か、これ一つでわからされたような気分だ。
『コップ。ガラス製のそれは気泡もなく向こう側が透けて見えるほどの透明度を保っている。最近の平均取引価格は銀貨3枚。最安値銀貨1枚最高値銀貨5枚、最終取引日は6日前と記録されています。』
「綺麗だ。」
「これが、おでの精一杯。」
「いや、十分すぎるだろ。これほどの品は王都でもなかなかお目にかかれないぞ?」
「本当は、もっと作りたい。でも、作れない。だから、これをいっぱい作って、練習する。」
「これを練習作というあたりがもうアレだな。」
「あはは、兄貴は自分に厳しいから。」
王族が使っているような見事なコップ。
この世界ではまだまだガラス製の製品は少なく主に使われているのは木製の物ばかり。
ただ飲み物に関しては見た目も大事なのでジョッキなんかで提供されているが、それらは透明度も低く分厚いからどうしても重たくなってしまうんだよなぁ。
それと比べてこれは羽のように軽い。
エールを入れるには少し小さいが、今回仕入れた海酒や琥珀酒なんかを入れるには十分ありだろう。
もう少し小さくしてショットグラスにしても面白いかもしれない。
「ちなみに月産でどのぐらいだ?」
「が、頑張ったら300個は、作れる。」
「一日10個も作れるのか?」
「頑張ったら。」
「なら休息日も入れて150個だ。一つ銀貨2枚で金貨3枚、できるよな?」
「えぇぇ、そんな高くていいんですか?だって材料費もタダですよね?」
高いか安いかでいえば高いのかもしれない。
利益を出そうと思ったら銀貨1枚が妥当なところ、無理をして銀貨1.5枚ってところだろうか。
それを銀貨2枚で買いさらには材料費もこっち持ちとなればキョウが驚くのも無理はない。
だが別に知人だから高く買っているというわけでもないんだよなぁ。
これだけの品質にもなれば相場スキルで出た最高値の銀貨5枚でも十分に売れる。
さすがに一般家庭にこれを広めるのは中々に大変だが、貴族や商店、娼館とかなら間違いなく金を出してくれるだろう。
個人ならともかく客相手の商売ともなれば見た目ほど大事な物はない。
このグラスに入れられる酒をみて客がどう思うか、それを想像すればむしろ安いというかもしれない。
使い捨てじゃないのもポイント高いよな。
そりゃあ使い続ければくすんでくるだろうけど、そうなったら払い下げて新しいのを買えばいい。
払い下げられた奴は一般家庭で流通していずれは街中の家にこのコップが置かれるようになるんだ。
一つの街しかなければそこで終わりだろうけど、おかげさまで売り先はいくらでもあるんでね。
一つ銀貨2枚で買っても一つ銀貨4枚で売ればひと月で金貨3枚の儲け。
年間金貨72枚もの利益を俺もシュウも手に入れることができる。
まぁ、それができるのも材料が俺の廃鉱山で手に入るので材料費がタダってことも関係してるんだけどな。
それにだ、月産300個にしてしまったらシュウはそれしか作れなくなってしまう。
余裕がなかったら新しい商品を作ることはできないし、面白くもなんともないだろう。
そういう遊びこそが素晴らしいものを作り出すと俺は思っている。
事実、ルティエ達がそうだしな。
無理して仕事を詰め込んでいるときは何の面白みもない作品になってしまうが、心にゆとりがあれば新しいアイデアも浮かんでくるし、技術を磨く時間もできる。
職人は機械じゃないんだ。
一人の人間として過ごす時間を作ることで結果として新しい儲けのネタが生まれてくる。
それを作るのもまた俺達買う側に求められるスキルというわけだ。
「もちろんだ。その代わり毎月これと同じ品質の物を間違いなく作り続けてくれ。加えて新しい作品もどんどん頼むぞ、昔の在庫がなくなって早く新しいのをよこせって王都の奴隷に文句を言われてるんだ。」
「奴隷なのに文句を言うんですか。」
「そういうやつだからな。ちなみに奴隷ではあるが毎月王都で金貨100枚分ぐらい稼いでるぞ。」
「えぇぇぇぇ!」
まぁそんなに驚くのも無理ないよな。
でもそれぐらい売るんだよ、あいつは。
もちろん化粧品とか色々な物を合わせてになるが、貴族やるよりも商人やる方が儲かるんじゃないかなぁ。
それだけの器量もセンスも持ち合わせているのは間違いない。
でも本人はあくまでも奴隷を抜けるための手段としか考えていないわけで。
正直奴隷を抜けられた後のことを考えるのがめんどくさいなぁ。
ほんと、どうしたもんか。
「お、おでのやつ、そんなに売れるのか?」
「売れる。だからよろしく頼むぞ、シュウ。」
「おで、頑張る!」
「その意気だ。それとキョウ、この間送ったカールカプラだけどなかなか反応がいいぞ。」
「本当ですか!?」
不在の間に街を襲撃したカールカプラだが、討伐後奥様方の手によって毛糸に加工された後にローザさんやキョウなどの裁縫職人の元へと運ばれ、それを使って好きな物を作ってほしいというお願いをしたらしい。それを使ってキョウの作った子供用の手袋がなかなか評判らしくて追加発注してきてくれと頼まれていたのを今思い出した。
危ない危ない。
「子供達用にもっと欲しいって話が出てる、この冬は寒くなるみたいだし個数は問わないから作れるだけ作って送ってくれ。報酬は前回の二割増しだってさ。」
「え、二割もですか?」
「それだけ期待されてるってことだ。忙しいのは兄貴だけじゃないぞ、しっかり頑張れよ。」
「どどど、どうしよう!」
一人慌てるキョウをよそにシュウはやる気満々で再び工房へと戻っていった。
兄妹そろって大忙しだな。
異国の地での再出発は無事に軌道に乗ったみたいだし、この勢いで俺の儲けに貢献してもらえると助かる。
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