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1094.転売屋はカイロ袋を依頼する
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吐く息は白く、ふわふわと空に昇っていく。
悴む手に息を吐きかけながら早朝の大通りを畑へと向かっていた。
ここ最近の日課であるジョギングをするためなのだがここまで寒いとやる気も半減。
とはいえ外出した手前すぐに戻るわけにもいかず、こうして惰性で向かっているというわけだ。
だって寒いんだから仕方ないだろ?
畑に到着するがいつも付き合ってくれるはずのルフも今日は自分の場所で温かい毛布にくるまっている。
俺の気配を感じたのか顔を上げてこちらを見たが今日は俺と同じでやる気を感じない。
気持ちはわかる。
ルフの毛皮は温かいからなぁ、そのよこにすべりこんで眠ってしまいたいがそれをすると噛まれそうな気もする。
あぁ見えてレディだからな、嫌がることはしない主義だ。
「おはようございますシロウ様。」
「アグリか、この寒いのにご苦労さん。」
ルフの頭をなでて挨拶だけしていると、畑の奥からアグリがモコモコの布を抱えながら戻ってきた。
「この冬はいつにもまして冷え込みますので焔の石をカニバフラワー達に用意してやろうと思いまして。」
「あー、最近動きが弱くなっていたのはそのせいか。喜んでいただろ?」
「それはもう。」
カカカカと葉を鳴らして喜ぶ姿が目に浮かぶようだ。
どちらかというと夏のイメージが強く、実際暑い季節の方が元気だったりする。
彼らもこの時期は大人しくしているのだが、さすがに冷え込みすぎると命にかかわるので焔の石を手配してくれたらしい。
ダンジョンで産出される強い熱を帯びた石。
永久に熱を持ち続けるわけで取り換えは必要だが、畑では寒さに弱い植物を雪や冷気から守るために昔から使われている。
最初に使ったのはホワイトベリーを守る為だったか。
そのほかにも懐炉代わりに持ち歩いたりもする。
とはいえそのまま持っていると火傷してしまうのでアグリのように布でぐるぐる巻きにしてだけどな。
この寒さなら人間にも焔の石が必要になるだろう。
「この冬は特に冷え込むからなぁ。アグリの家は大丈夫か?必要ならヒーターを追加で入れるぞ?」
「おかげさまでこの前いただいたものがまだ使えますので大丈夫です。それにこの冬は倉庫に干し草を敷くなどして防寒対策をする予定ですのでおそらく大丈夫だと思います。」
「無理はするなよ?特に朝方の作業はかなり冷えるから今みたいに焔の石を懐炉代わりにして作業にあたってくれ。」
「確かに暖かいのですが、少々動きにくいのが欠点でして。」
アグリの手に抱かれた焔の石は分厚い布で何重にも巻かれている。
それぐらいしないと熱が伝わりすぎて火傷をしてしまうからだが、そのせいで持ち歩くのが非常に不便で懐に入れてもぶっちゃけ動きづらいので基本はカバンの中に入れておいて必要なら取り出すって感じだ。
焔の石そのものはさほど大きくないのでそのままの大きさで使えたらありがたいんだけどなぁ。
『フレイムカウの革。フレイムカウ、別名燃え盛る牛は火を身に纏う魔物だが、燃えているのは表面に流れる汗であり皮は非常に高い防火性を有している。耐火装備の他、消火・延焼防止用の防火布にも使用されており、その効果は国中で使用されていることが証明となっている。最近の平均取引価格は銀貨2枚。最安値銅貨89枚、最高値銀貨4枚。最終取引日は59日前と記録されています。』
ちなみに巻かれている布の正体はフレイムカウの革。
防火布として使われているフレイムカウの革は耐火性能だけでなく耐熱性能の面でも優れているため、焔の石を搬出運搬するのに使われている。
火事で傷んだ後タープに流用していたのだが、そこでも傷みが出てしまうので最後はこういった感じで使われるんだとか。
傷んではいるけれど元は革、雑に使うにはまだまだ効果はある。
「せめてもう少し熱伝導率が高かったら使い道もあっただろうに。」
「そうですね、欲を言えばもう少し薄手であれば持ち歩きもしやすいです。」
ダンジョン内に季節は関係ないので中に潜る冒険者にはあまり関係のない話だが、屋外で作業する労働者や商売人、街行く人々にも必須のアイテムになるのは間違いない
懐炉と言えばこれ!っていう物が別にあればいいんだが、生憎とすぐに思い浮かばないわけで。
「ごめんシロウ、遅くなって。」
「あれ、来たのか。」
アグリと話し込んでいると思わぬ人物が慌てた様子で畑にやってきた。
てっきりこの寒さで走る気がないと思っていたのだが、来たからには走らないといけないわけで。
まさに退路は断たれたって感じだ。
「え、来ちゃダメだった?」
「そんなことはないんだが、寒かっただろ?」
「寒いけど走ればあったかくなるし。あ、もしかして焔の石?」
「はい。カニバフラワー達に差し上げてきたところです。」
「これぐらい寒くなると欲しくなるけど、走ると邪魔だし暑いわよ。」
一瞬不安そうな顔をしたエリザだったが、すぐに笑顔に戻り準備運動を始める。
仕方がない、ここまで来たんだからしっかり運動して屋敷に戻るとしよう。
ちらっとルフの方を確認したのだが本人が出てくる気配はない。
代わりにレイが尻尾を振りながら俺達の周りをぐるぐると回りだした。
どうやら母親に代わりお供をしてくれるようだ。
さて、やるからにはしっかり走らないとな。
「ほぉ、そんな素材があるのか。」
「フレイムカウの革は確かに分厚いわよねぇ。それならファイアギャロップの革とかどう?あれなら薄いし耐熱性能もしっかりしてるわよ。」
走りながらフレイムカウの代用品がないか聞いてみたのだが、思ったよりもすんなりと発見できてしまった。
あくまでもエリザの話だが、フレイムカウと同等以上の耐熱性能がある上に皮が薄いので加工しやすいのだとか。
「鬣が燃える馬ねぇ、体が燃えるよりもマシではあるができれば遭遇したくない。」
「後ろに回り込まなきゃ問題ないわよ。でも、間違って移動したら頭を蹴飛ばされて首とおさらばしちゃうかな。」
いやいや、笑って話せる状況じゃないだろう。
おさらばってことは蹴り飛ばされた勢いで首が引きちぎれるって事だろ?
馬の後ろには立つなとよく言われてはいるが、その勢いが半端なさすぎる。
そんなのを軽く当てられただけでも内臓が破裂とかするんじゃなかろうか。
「つまり討伐にはかなり気を付けないといけないわけか。」
「そうね、魔物自体はそうでもないんだけど場所が場所な上に他の魔物も多いから周りに気を取られてっていうのは良くある話よ。でも対処さえ間違えなければそんなに狩りにくい魔物じゃないわね。」
「つまり依頼を出せば手に入ると。」
「焔の石の産出場所と近いからついでに募集をかければ勝手に集めてくれるわよ。」
「いいことを聞いた。とりあえず走り終わったら冒険者ギルドに言って依頼を出してみるとしよう。それと倉庫に在庫が残ってないかのチェックだな。」
思い立ったらなんとやら、いつものように城壁周りをぐるっと回り焔の石で大喜びをするカニバフラワー達の横を通って北の倉庫へと足を運び、入り口に置かれた目録を見ると少量ではあるが目的の革が眠っていたのでそれを回収してアグリから余った焔の石を回してもらう。
『ファイアギャロップの皮。鬣の代わりに燃え続ける火は命が消えるまで燃え続けるといわれており、その火から身を守るために皮は非常に高い耐熱性を持っている。足の力が強く誤って後ろに回ったが最後命を失うともいわれている。水に濡れても火は消えないため雨の日などは蒸気を上げながら走るのでスチームギャロップともいわれることがある。最近の平均取引価格は銀貨3枚。最安値銀貨1枚、最高値銀貨5枚、最終取引日は17日前と記録されています。』
思っていた以上に薄い革なのだが、石を三重位に巻いてやると我慢すれば持てるぐらいの熱さまでしっかりと熱を防いでくれている。
それでいて厚みはさほど感じないので、これなら十分使えそうだ。
「ってことで革は手配してるから届き次第いい感じに処理してくれ。ガンガン届くからな、頑張れ。」
「ちょっとがんばれっていきなり来て何なのよ!」
「なんなのって言われても、仕事だよ仕事。」
ファイアギャロップの皮に関してはエリザに頼んで手配してもらったので問題はないだろう。
一緒にギルドに言ったらちょうど焔の石を追加発注していたところなのでそのついでに狩ってきてもらえるはずだ。
手に入れる算段が整ったので満を持してブレラの所に仕事を依頼しに来たわけなのだが、なぜか本人はあまり乗り気じゃない様子。
この時期は仕事が少ないんだしむしろ喜んでくれるはずなんだが、どうしてだろうか。
「私この前気がおかしくなるぐらいにディヒーアの革を処理したんだけど?」
「大丈夫だ全くおかしくなってない。ってことはまだまだ頑張れるって事だろ?」
「全然違うわよ!」
「そうか、折角美味い儲け話を持ってきたつもりだったんだが・・・。」
「どういう事?」
「今度の感謝祭、その時に開かれるオークションにアルビノ種の皮が出品されるらしい。何の種類かまではまだわかっていないが、中々お目にかかれないっていう噂だ。かなりの金額になるのは間違いないが、それを加工して売ればかなりの儲けになると思う。ただし条件があってな、落札できるのはそれを加工できるだけの技術者だけだって話なんだが・・・。そうか、軍資金を援助しようと思っていたんだが余計なお世話だったみたいだな。」
わざと大げさな言い方をして盛大なため息をつく。
向こうからしてみればへたくそな演技をして、と思うかもしれないがオークションの件は確かな筋の情報だ。
アルビノ種はめったに出てこない希少な皮素材だし、それを加工できるのはまたとない機会な上になにより高く売れる。
もちろん俺も狙っているのだが、結局はブレラの所に持ち込むことになるんだよなぁ。
それなら本人が買い付けて加工しても同じこと。
「い、いくら出すつもりなの?」
「大至急仕上げてほしいから一枚につき銀貨5枚出す。加工上限は無し、冒険者が持ち込めば持ち込んだだけ加工してもらって構わない。悪い話じゃないだろ?」
あまりにも魅力的な提案にブレラが悔しそうな顔をしながら尋ねてくる。
やりたくない、でもアルビノの皮は手に入れたい。
そんな感情が戦いあって、とうとう後者が勝ったようだ。
なんだかんだ言いながら自分の欲望には忠実だよな、ブレラって。
スカイのことを自分勝手だなんだってよく言うけれど、自分も案外そんなもんだぞ。
「ちなみに聞くけどそんなに大量に集めてなににつかうの?」
「企業秘密、と言いたいところだがいい仕事をしてもらうためにも俺達に隠し事は無しだ。実はな・・・。」
ファイアギャロップの革を使って作るカイロ袋。
別に難しいものじゃない、二重か三重に合わせた革を使って袋を作りそこに焔の石を放り込むだけだ。
たったそれだけなのだがこの冬は間違いなく売れるだろう。
革の大きさにもよるが、皮一枚当たり10枚の袋を加工できると想定している。
ブレラに払うのが銀貨5枚に素材の手配に銀貨2枚、加えて袋への加工に日給銀貨1枚払うとしたら原価は銀貨8枚ってところか。
袋を銀貨1枚で売ると皮一枚当たりの儲けは銀貨2枚になるので、ぶっちゃけブレラが頑張れば頑張るだけ俺の儲けも増えていく。
俺はただ素材を右から左に転がしているだけ。
それだけで金が入ってくるんだから安いもんだよなぁ。
売れ行き次第ではもう少し値上げしてもいいかもしれない。
この売り方の欠点は街中に在庫がいきわたると売れなくなることだが、そうなれば別の街に売りに行けばいい。
その時に値段を上げればその分利益が増えるわけで。
革ならさほど重くないのでバーンにお願いしなくても何かの荷物に紛れ込ませれば輸送費も圧縮できる。
要はやり方次第で何とかなるということだ。
いかに自分の手を煩わせずに金儲けができるか、これを考えているときが一番楽しいよなぁ。
金儲け万歳ってね。
最後まで受けるかどうか悩んでいたブレラだったが、やはりアルビノ種と加工賃には勝てなかったようで最後には難しい顔をして加工を了承してくれた。
さぁ、秋最後の大仕事。
冬はもう目の前まで迫っている。
極寒の冬を乗り切るためにも一人一つのカイロ袋はいかがかな?ってね。
悴む手に息を吐きかけながら早朝の大通りを畑へと向かっていた。
ここ最近の日課であるジョギングをするためなのだがここまで寒いとやる気も半減。
とはいえ外出した手前すぐに戻るわけにもいかず、こうして惰性で向かっているというわけだ。
だって寒いんだから仕方ないだろ?
畑に到着するがいつも付き合ってくれるはずのルフも今日は自分の場所で温かい毛布にくるまっている。
俺の気配を感じたのか顔を上げてこちらを見たが今日は俺と同じでやる気を感じない。
気持ちはわかる。
ルフの毛皮は温かいからなぁ、そのよこにすべりこんで眠ってしまいたいがそれをすると噛まれそうな気もする。
あぁ見えてレディだからな、嫌がることはしない主義だ。
「おはようございますシロウ様。」
「アグリか、この寒いのにご苦労さん。」
ルフの頭をなでて挨拶だけしていると、畑の奥からアグリがモコモコの布を抱えながら戻ってきた。
「この冬はいつにもまして冷え込みますので焔の石をカニバフラワー達に用意してやろうと思いまして。」
「あー、最近動きが弱くなっていたのはそのせいか。喜んでいただろ?」
「それはもう。」
カカカカと葉を鳴らして喜ぶ姿が目に浮かぶようだ。
どちらかというと夏のイメージが強く、実際暑い季節の方が元気だったりする。
彼らもこの時期は大人しくしているのだが、さすがに冷え込みすぎると命にかかわるので焔の石を手配してくれたらしい。
ダンジョンで産出される強い熱を帯びた石。
永久に熱を持ち続けるわけで取り換えは必要だが、畑では寒さに弱い植物を雪や冷気から守るために昔から使われている。
最初に使ったのはホワイトベリーを守る為だったか。
そのほかにも懐炉代わりに持ち歩いたりもする。
とはいえそのまま持っていると火傷してしまうのでアグリのように布でぐるぐる巻きにしてだけどな。
この寒さなら人間にも焔の石が必要になるだろう。
「この冬は特に冷え込むからなぁ。アグリの家は大丈夫か?必要ならヒーターを追加で入れるぞ?」
「おかげさまでこの前いただいたものがまだ使えますので大丈夫です。それにこの冬は倉庫に干し草を敷くなどして防寒対策をする予定ですのでおそらく大丈夫だと思います。」
「無理はするなよ?特に朝方の作業はかなり冷えるから今みたいに焔の石を懐炉代わりにして作業にあたってくれ。」
「確かに暖かいのですが、少々動きにくいのが欠点でして。」
アグリの手に抱かれた焔の石は分厚い布で何重にも巻かれている。
それぐらいしないと熱が伝わりすぎて火傷をしてしまうからだが、そのせいで持ち歩くのが非常に不便で懐に入れてもぶっちゃけ動きづらいので基本はカバンの中に入れておいて必要なら取り出すって感じだ。
焔の石そのものはさほど大きくないのでそのままの大きさで使えたらありがたいんだけどなぁ。
『フレイムカウの革。フレイムカウ、別名燃え盛る牛は火を身に纏う魔物だが、燃えているのは表面に流れる汗であり皮は非常に高い防火性を有している。耐火装備の他、消火・延焼防止用の防火布にも使用されており、その効果は国中で使用されていることが証明となっている。最近の平均取引価格は銀貨2枚。最安値銅貨89枚、最高値銀貨4枚。最終取引日は59日前と記録されています。』
ちなみに巻かれている布の正体はフレイムカウの革。
防火布として使われているフレイムカウの革は耐火性能だけでなく耐熱性能の面でも優れているため、焔の石を搬出運搬するのに使われている。
火事で傷んだ後タープに流用していたのだが、そこでも傷みが出てしまうので最後はこういった感じで使われるんだとか。
傷んではいるけれど元は革、雑に使うにはまだまだ効果はある。
「せめてもう少し熱伝導率が高かったら使い道もあっただろうに。」
「そうですね、欲を言えばもう少し薄手であれば持ち歩きもしやすいです。」
ダンジョン内に季節は関係ないので中に潜る冒険者にはあまり関係のない話だが、屋外で作業する労働者や商売人、街行く人々にも必須のアイテムになるのは間違いない
懐炉と言えばこれ!っていう物が別にあればいいんだが、生憎とすぐに思い浮かばないわけで。
「ごめんシロウ、遅くなって。」
「あれ、来たのか。」
アグリと話し込んでいると思わぬ人物が慌てた様子で畑にやってきた。
てっきりこの寒さで走る気がないと思っていたのだが、来たからには走らないといけないわけで。
まさに退路は断たれたって感じだ。
「え、来ちゃダメだった?」
「そんなことはないんだが、寒かっただろ?」
「寒いけど走ればあったかくなるし。あ、もしかして焔の石?」
「はい。カニバフラワー達に差し上げてきたところです。」
「これぐらい寒くなると欲しくなるけど、走ると邪魔だし暑いわよ。」
一瞬不安そうな顔をしたエリザだったが、すぐに笑顔に戻り準備運動を始める。
仕方がない、ここまで来たんだからしっかり運動して屋敷に戻るとしよう。
ちらっとルフの方を確認したのだが本人が出てくる気配はない。
代わりにレイが尻尾を振りながら俺達の周りをぐるぐると回りだした。
どうやら母親に代わりお供をしてくれるようだ。
さて、やるからにはしっかり走らないとな。
「ほぉ、そんな素材があるのか。」
「フレイムカウの革は確かに分厚いわよねぇ。それならファイアギャロップの革とかどう?あれなら薄いし耐熱性能もしっかりしてるわよ。」
走りながらフレイムカウの代用品がないか聞いてみたのだが、思ったよりもすんなりと発見できてしまった。
あくまでもエリザの話だが、フレイムカウと同等以上の耐熱性能がある上に皮が薄いので加工しやすいのだとか。
「鬣が燃える馬ねぇ、体が燃えるよりもマシではあるができれば遭遇したくない。」
「後ろに回り込まなきゃ問題ないわよ。でも、間違って移動したら頭を蹴飛ばされて首とおさらばしちゃうかな。」
いやいや、笑って話せる状況じゃないだろう。
おさらばってことは蹴り飛ばされた勢いで首が引きちぎれるって事だろ?
馬の後ろには立つなとよく言われてはいるが、その勢いが半端なさすぎる。
そんなのを軽く当てられただけでも内臓が破裂とかするんじゃなかろうか。
「つまり討伐にはかなり気を付けないといけないわけか。」
「そうね、魔物自体はそうでもないんだけど場所が場所な上に他の魔物も多いから周りに気を取られてっていうのは良くある話よ。でも対処さえ間違えなければそんなに狩りにくい魔物じゃないわね。」
「つまり依頼を出せば手に入ると。」
「焔の石の産出場所と近いからついでに募集をかければ勝手に集めてくれるわよ。」
「いいことを聞いた。とりあえず走り終わったら冒険者ギルドに言って依頼を出してみるとしよう。それと倉庫に在庫が残ってないかのチェックだな。」
思い立ったらなんとやら、いつものように城壁周りをぐるっと回り焔の石で大喜びをするカニバフラワー達の横を通って北の倉庫へと足を運び、入り口に置かれた目録を見ると少量ではあるが目的の革が眠っていたのでそれを回収してアグリから余った焔の石を回してもらう。
『ファイアギャロップの皮。鬣の代わりに燃え続ける火は命が消えるまで燃え続けるといわれており、その火から身を守るために皮は非常に高い耐熱性を持っている。足の力が強く誤って後ろに回ったが最後命を失うともいわれている。水に濡れても火は消えないため雨の日などは蒸気を上げながら走るのでスチームギャロップともいわれることがある。最近の平均取引価格は銀貨3枚。最安値銀貨1枚、最高値銀貨5枚、最終取引日は17日前と記録されています。』
思っていた以上に薄い革なのだが、石を三重位に巻いてやると我慢すれば持てるぐらいの熱さまでしっかりと熱を防いでくれている。
それでいて厚みはさほど感じないので、これなら十分使えそうだ。
「ってことで革は手配してるから届き次第いい感じに処理してくれ。ガンガン届くからな、頑張れ。」
「ちょっとがんばれっていきなり来て何なのよ!」
「なんなのって言われても、仕事だよ仕事。」
ファイアギャロップの皮に関してはエリザに頼んで手配してもらったので問題はないだろう。
一緒にギルドに言ったらちょうど焔の石を追加発注していたところなのでそのついでに狩ってきてもらえるはずだ。
手に入れる算段が整ったので満を持してブレラの所に仕事を依頼しに来たわけなのだが、なぜか本人はあまり乗り気じゃない様子。
この時期は仕事が少ないんだしむしろ喜んでくれるはずなんだが、どうしてだろうか。
「私この前気がおかしくなるぐらいにディヒーアの革を処理したんだけど?」
「大丈夫だ全くおかしくなってない。ってことはまだまだ頑張れるって事だろ?」
「全然違うわよ!」
「そうか、折角美味い儲け話を持ってきたつもりだったんだが・・・。」
「どういう事?」
「今度の感謝祭、その時に開かれるオークションにアルビノ種の皮が出品されるらしい。何の種類かまではまだわかっていないが、中々お目にかかれないっていう噂だ。かなりの金額になるのは間違いないが、それを加工して売ればかなりの儲けになると思う。ただし条件があってな、落札できるのはそれを加工できるだけの技術者だけだって話なんだが・・・。そうか、軍資金を援助しようと思っていたんだが余計なお世話だったみたいだな。」
わざと大げさな言い方をして盛大なため息をつく。
向こうからしてみればへたくそな演技をして、と思うかもしれないがオークションの件は確かな筋の情報だ。
アルビノ種はめったに出てこない希少な皮素材だし、それを加工できるのはまたとない機会な上になにより高く売れる。
もちろん俺も狙っているのだが、結局はブレラの所に持ち込むことになるんだよなぁ。
それなら本人が買い付けて加工しても同じこと。
「い、いくら出すつもりなの?」
「大至急仕上げてほしいから一枚につき銀貨5枚出す。加工上限は無し、冒険者が持ち込めば持ち込んだだけ加工してもらって構わない。悪い話じゃないだろ?」
あまりにも魅力的な提案にブレラが悔しそうな顔をしながら尋ねてくる。
やりたくない、でもアルビノの皮は手に入れたい。
そんな感情が戦いあって、とうとう後者が勝ったようだ。
なんだかんだ言いながら自分の欲望には忠実だよな、ブレラって。
スカイのことを自分勝手だなんだってよく言うけれど、自分も案外そんなもんだぞ。
「ちなみに聞くけどそんなに大量に集めてなににつかうの?」
「企業秘密、と言いたいところだがいい仕事をしてもらうためにも俺達に隠し事は無しだ。実はな・・・。」
ファイアギャロップの革を使って作るカイロ袋。
別に難しいものじゃない、二重か三重に合わせた革を使って袋を作りそこに焔の石を放り込むだけだ。
たったそれだけなのだがこの冬は間違いなく売れるだろう。
革の大きさにもよるが、皮一枚当たり10枚の袋を加工できると想定している。
ブレラに払うのが銀貨5枚に素材の手配に銀貨2枚、加えて袋への加工に日給銀貨1枚払うとしたら原価は銀貨8枚ってところか。
袋を銀貨1枚で売ると皮一枚当たりの儲けは銀貨2枚になるので、ぶっちゃけブレラが頑張れば頑張るだけ俺の儲けも増えていく。
俺はただ素材を右から左に転がしているだけ。
それだけで金が入ってくるんだから安いもんだよなぁ。
売れ行き次第ではもう少し値上げしてもいいかもしれない。
この売り方の欠点は街中に在庫がいきわたると売れなくなることだが、そうなれば別の街に売りに行けばいい。
その時に値段を上げればその分利益が増えるわけで。
革ならさほど重くないのでバーンにお願いしなくても何かの荷物に紛れ込ませれば輸送費も圧縮できる。
要はやり方次第で何とかなるということだ。
いかに自分の手を煩わせずに金儲けができるか、これを考えているときが一番楽しいよなぁ。
金儲け万歳ってね。
最後まで受けるかどうか悩んでいたブレラだったが、やはりアルビノ種と加工賃には勝てなかったようで最後には難しい顔をして加工を了承してくれた。
さぁ、秋最後の大仕事。
冬はもう目の前まで迫っている。
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いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
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