1,104 / 1,738
1099.転売屋はたこ焼きを作る
しおりを挟む
冬の始まりから続いていた雪は一応落ち着き始めたようで、四日遅れで街に荷物が届きだした。
寒さのおかげか積まれていた食べ物の半分以上は問題ないようで、ダメになったのは全体の二割程。
このトラブルにしては最小限の被害だったと言えるだろう。
新しく導入した雪かきも実力を思う存分に発揮してくれているようで、仕事がしやすくなったと喜んでもらっている。
これでもう平常通り・・・と行きたい所なのだが、まだまだ問題は山積みのようだ。
「どうするのよこれ。」
「どうするかなぁ。」
「本来であれば分けて届くはずだったのですが、これは何て言うか予想外でした。」
街に到着した馬車が次々に屋敷の前にやってきては荷物を降ろして去っていく。
屋敷へと向かう車列は昼になってようやく解散、残されたのは堆く積まれた大量の木箱たち。
いやー、一気に日当たりが悪くなったなぁ。
置き場所無くて裏庭に運んでもらうしかなかったわけだが、今度はこれを別の場所に運ばなければならないと思うとげんなりする。
今回届いたのは大量の小麦粉。
戦争を前に早めに買い付けておこうという事で近隣の街から相場の一割増しで買い付けを行ったのだが、本来バラバラで到着するはずだったのに雪の影響で足止めされたせいでまとまって到着してしまったようだ。
代金引換だったので面白いぐらいに金が出て行ってしまい、途中で足りなくなるのではとヒヤヒヤしたが何とか足りたらしい。
「セーラさんこれ全部でいくら分だ?」
「今回お支払いした分で金貨87枚分になります。この街の規模で3か月は食べていける量ですね。」
「粉に加工してもらっているだけ値段も高いわけだが、ぶっちゃけ高いのか安いのかわからんな。」
「時期的な事を考えるとかなり高めですが、今の相場を考えると妥当ではないでしょうか。王都では一割以上値上がりしているという話ですし。」
街でもそのぐらいの備蓄はしているだろうから明らかに在庫過多の状態。
本来であれば随時ピストン輸送で廃鉱山なんかに送るつもりだったのだが、北の街道はあまだ雪に覆われていて廃鉱山までなんて到底運び込むことが出来ない。
とはいえ、このままここに置いておいても非常に邪魔なわけでして。
まいったね、こりゃ。
「こりゃ、見事なもんですね。」
「ハワードか。これだけあればパン焼き放題だけど、どうだ?」
「いやいや、いくらなんでも多すぎですって。どうするんです?」
「とりあえず倉庫に押し込むしかないんだが、それでも流石に全部は無理だな。」
静かになった所で勝手口からハワードが姿を現した。
これだけあれば好きなだけ調理に使えるんだが、流石のハワードでもこれを消費するのは無理だろう。
「ひとまず倉庫に運べるだけ運んで残りはちょっと考える。悪いが輸送用の馬車を手配してもらえるか?」
「畏まりました。」
「どこに行くの?」
「ちょいと何かいい案がないか考えてくる。」
このままここにいても呆気に取られて何も考えられそうにないので少しばかり気分転換だ。
決して現実逃避などではないからな。
なんて言い訳をしつつ街を歩くと、物流が再開したことでいつにもまして活気にあふれていた。
特に市場はやっと商売が出来るとそこかしこでにぎやかな声が聞こえてくる。
いつもならここぞとばかりに買い付けを行うのだが、今はあの小麦の山をどうにかしないといけないわけで・・・。
「ん?」
「いらっしゃい。」
「なんだかおもしろい物を売ってるな、なんだこれ。」
「エッグホールっていうんです、これ私が加工したんじゃないんですよ。」
「ってことは自然にこんな形になるのか?」
「正確にはエッグローヴァーっていう魔物が盗んだ卵を保管するために凹ませているんですけど、あまりにも均等なので石の代わりに鉄板を置いて作らせているんです。すごいですよね、採寸もなしに同じ形でしかもつるつるなんですよ。」
露店に並べられていたのは等間隔で丸いへこみが付けられた鉄の板。
これはあれだ、どう見てもタコ焼きを焼くためのやつだ。
夏祭りなんかの出店で使われているような奴がずらりと並べられている。
これを魔物が加工したっていう事にも驚きだが、それを作らせているこの人もすごい。
「よくまぁこんなのを作らせようと思ったな。何に使うんだ?」
「職人さんが加工に使ったり、薬師が材料を入れるのに使ったりするんです。」
「なるほどなぁ、確かに擦切り一杯が同じ量になるならいちいち計量しなくて済むし便利なのかもな。うちの薬師にも買って帰ってもいいんだが、デカくないか?」
「他の金属も試したんですけど、凹ますのにこれが一番相性良いみたいで。」
確かに便利かもしれないがアネットなら自分の手でやりますって言うだろうし、なによりデカい。
わざわざこれを設置することを考えると加工場がかなり狭くなってしまうし、いちいち取り出すにも重そうだ。
「いくらだ?」
「一枚銀貨5枚です。」
「そんなもんか。」
「正直ここに運ぶのにかなり時間がかかってるんで、買ってもらえると助かるんですけど・・・だめですかね。」
確かに普通の人は買わないわけで、俺は薬師がいるって言ってしまったしこれを逃す手はないと考えているんだろう。
悪いがそっちの線で使う事は無いと思うが、良い感じの鉄板だしむしろ本来の使いかたをしてやるべきなのかもしれない。
「わかった、四枚くれ。」
「本当ですか!」
「ただし重たいから畑まで運んでもらえると助かる。そこにアグリっていう責任者がいるから預けておいてくれ。」
「わかりました!」
小麦粉をしまう場所がない?
場所が無いのなら使ってしまえばいいじゃないか。
「いい匂いねぇ。」
「溶かすときにダシを多めに入れてるからなっと、後はこれをこうやって・・・。」
「わ!綺麗な丸になりました!」
「後は反対側を焼けば出来上がりだ。まさかこんな所であのポリプスを使う日が来るとは思わなかったが、雪山で冷やしておいてよかった。」
千枚通しが無いので、代わりに二本の暗器を器用に使って先程の鉄板に注ぎ込んだタネをクルクルと回転させていく。
作っているのはもちろんたこ焼き。
だが、肝心のソースが無いので予定を変更して明石焼きとして売り出すことにした。
この間ダンジョンから回収した食材の中にこのポリプス・・・タコが混ざっていたのだが、ぶっちゃけこっちではあまり食べないようで使われないまま雪山の中で半冷凍されていたので腐らせる前に活用できて本当に良かった。
あの商人もまさかこんなことに使われるとは思っていなかっただろうが、俺からしてみればこの使い方しか思いつかなかったんだよなぁ。
石のままだと加熱するのも難しかっただろうけど、良い感じの鉄板にしてくれたおかげで火の通りもすこぶるいい。
反対側も焼けた所で、後は皿の上に乗せて横に出汁の入った入れ物を置けば完成だ。
現地では卵焼きっていうんだったか、本場のに比べるともちろん劣るだろうけど俺はこれでも十分。
あー、たこ焼きソースってどう作るんだろうか。
前に買い付けたソースがあるからまた加工してみないと。
「ほら、先に食べていいぞ。次もすぐ焼けるから順番に食べてみてくれ。」
「え、でも売りものじゃないんですか?」
「味もわからなきゃ売れないだろ?それにこの時間はまだダンジョンの中だし、今から準備すれば一気に売れる。」
「それじゃあ遠慮なく。」
一個の鉄板で20個、今回は二個連結しているので一回で40個作れる計算だ。
火の魔道具を各鉄板の下に入れているので火力調整もお手の物、一人前6個入りで3回転すれば20人前は作れる計算か。
幸い小麦粉は売るほどあるし、出汁もモーリスさんに頼んで到着したばかりの鰹節もどきを譲ってもらったので量は十分。
タコもそれこそ売るほどあるので、後は器さえあればいくらでも商売ができる。
最悪客が多くなりすぎたら鉄板を追加するっていう手もあるだろう。
とりあえず全員分作って味を確認。
うん、寒くなってきたから余計に出汁の温かさが身に染みる。
美味いなぁ。
「やさしい味です。」
「これを肴に清酒をきゅってやるのも美味しそうね。」
「あー、いいねぇ。だが客に出すのはいつものエールだけどな。」
「ちなみにいくらで販売しますか?」
「そうだな、一皿銅貨5枚でも十分元は取れるんだが、10枚でも売れると思うか?」
「ふへふ!」
口の中に入れた明石焼きをハフハフさせながらエリザが売れると断言する。
いくら小麦粉が高騰しているとはいえこれで使う量なんてたかが知れてるし、出汁も嵩増しするのでさほど高くない。
タコに至ってはほぼ捨て値みたいなものだったので、銅貨10枚で売ろうものなら大儲け出来ること間違いなしだ。
とはいえわざわざ安売りする必要もないわけで。
エリザが売れるって言ったんだから売れるんだろう。
多分。
「あれ?この匂いは・・・やっぱりシロウさんでしたか。」
「お、シープさんもちろん買って行くよな?」
「押し売りが過ぎません?」
「こんな時間にこんな所に来ている時点でサボりだろ?」
夕方とはいえまだまだ仕事中のはず。
畑しかないここにわざわざ来ている時点でサボり確定だ。
「あったかそうですね、中身は何ですか?」
「ポリプスっていったらどうする?」
「またまた、あんなグロテスクな物・・・マジですか?」
「さぁ、食べてみたらわかるんじゃないか?」
「でも皆さんあんなに美味しそうに食べてるのに、え、どっちですか?」
ニヤリと笑った俺だけでなく、出汁の入った入れ物を手にした女達を順番に見て不安そうな顔をする羊男。
そんなに怯えるともっとからかいたくなるじゃないか、
「一皿銅貨15枚だ。どうする?男を見せるか、尻尾撒いて逃げるか。」
「わかりました、食べましょう。」
「お、男だねぇ。」
「そこまで言われて逃げるわけにいかないじゃないですか。」
そうこなくっちゃ。
丁度一人前残っていたのでそれを皿の上に乗せ、出汁の入った器と一緒に手渡す。
ちょうどエリザが座っていた場所が空いたのでそこに誘導して、皆で戦いの結末を見守る事にした。
「そんなに見ないでくださいよ。」
「仕方ないだろ、皆食べ終わったんだから。ほら、早く食べろって。」
「そんなに急かさないで下さい。」
ビビりながらも一つ器に入れ、出汁と共に一気に口の中へ。
その思い切りは嫌いじゃないぞ。
そのまま咀嚼していくと見る見るうちに表情が変わっていく。
そのリアクション後でニアに教えてやるとしよう。
ちゃんと食べきったのは褒めてやらないとな。
その後、ダンジョンから戻って来た冒険者達が匂いにつられて畑に集まり、寒さに負けず夜遅くまでタコパを楽しんだのだった。
もちろん大儲けしたのは言うまでもない。
寒さのおかげか積まれていた食べ物の半分以上は問題ないようで、ダメになったのは全体の二割程。
このトラブルにしては最小限の被害だったと言えるだろう。
新しく導入した雪かきも実力を思う存分に発揮してくれているようで、仕事がしやすくなったと喜んでもらっている。
これでもう平常通り・・・と行きたい所なのだが、まだまだ問題は山積みのようだ。
「どうするのよこれ。」
「どうするかなぁ。」
「本来であれば分けて届くはずだったのですが、これは何て言うか予想外でした。」
街に到着した馬車が次々に屋敷の前にやってきては荷物を降ろして去っていく。
屋敷へと向かう車列は昼になってようやく解散、残されたのは堆く積まれた大量の木箱たち。
いやー、一気に日当たりが悪くなったなぁ。
置き場所無くて裏庭に運んでもらうしかなかったわけだが、今度はこれを別の場所に運ばなければならないと思うとげんなりする。
今回届いたのは大量の小麦粉。
戦争を前に早めに買い付けておこうという事で近隣の街から相場の一割増しで買い付けを行ったのだが、本来バラバラで到着するはずだったのに雪の影響で足止めされたせいでまとまって到着してしまったようだ。
代金引換だったので面白いぐらいに金が出て行ってしまい、途中で足りなくなるのではとヒヤヒヤしたが何とか足りたらしい。
「セーラさんこれ全部でいくら分だ?」
「今回お支払いした分で金貨87枚分になります。この街の規模で3か月は食べていける量ですね。」
「粉に加工してもらっているだけ値段も高いわけだが、ぶっちゃけ高いのか安いのかわからんな。」
「時期的な事を考えるとかなり高めですが、今の相場を考えると妥当ではないでしょうか。王都では一割以上値上がりしているという話ですし。」
街でもそのぐらいの備蓄はしているだろうから明らかに在庫過多の状態。
本来であれば随時ピストン輸送で廃鉱山なんかに送るつもりだったのだが、北の街道はあまだ雪に覆われていて廃鉱山までなんて到底運び込むことが出来ない。
とはいえ、このままここに置いておいても非常に邪魔なわけでして。
まいったね、こりゃ。
「こりゃ、見事なもんですね。」
「ハワードか。これだけあればパン焼き放題だけど、どうだ?」
「いやいや、いくらなんでも多すぎですって。どうするんです?」
「とりあえず倉庫に押し込むしかないんだが、それでも流石に全部は無理だな。」
静かになった所で勝手口からハワードが姿を現した。
これだけあれば好きなだけ調理に使えるんだが、流石のハワードでもこれを消費するのは無理だろう。
「ひとまず倉庫に運べるだけ運んで残りはちょっと考える。悪いが輸送用の馬車を手配してもらえるか?」
「畏まりました。」
「どこに行くの?」
「ちょいと何かいい案がないか考えてくる。」
このままここにいても呆気に取られて何も考えられそうにないので少しばかり気分転換だ。
決して現実逃避などではないからな。
なんて言い訳をしつつ街を歩くと、物流が再開したことでいつにもまして活気にあふれていた。
特に市場はやっと商売が出来るとそこかしこでにぎやかな声が聞こえてくる。
いつもならここぞとばかりに買い付けを行うのだが、今はあの小麦の山をどうにかしないといけないわけで・・・。
「ん?」
「いらっしゃい。」
「なんだかおもしろい物を売ってるな、なんだこれ。」
「エッグホールっていうんです、これ私が加工したんじゃないんですよ。」
「ってことは自然にこんな形になるのか?」
「正確にはエッグローヴァーっていう魔物が盗んだ卵を保管するために凹ませているんですけど、あまりにも均等なので石の代わりに鉄板を置いて作らせているんです。すごいですよね、採寸もなしに同じ形でしかもつるつるなんですよ。」
露店に並べられていたのは等間隔で丸いへこみが付けられた鉄の板。
これはあれだ、どう見てもタコ焼きを焼くためのやつだ。
夏祭りなんかの出店で使われているような奴がずらりと並べられている。
これを魔物が加工したっていう事にも驚きだが、それを作らせているこの人もすごい。
「よくまぁこんなのを作らせようと思ったな。何に使うんだ?」
「職人さんが加工に使ったり、薬師が材料を入れるのに使ったりするんです。」
「なるほどなぁ、確かに擦切り一杯が同じ量になるならいちいち計量しなくて済むし便利なのかもな。うちの薬師にも買って帰ってもいいんだが、デカくないか?」
「他の金属も試したんですけど、凹ますのにこれが一番相性良いみたいで。」
確かに便利かもしれないがアネットなら自分の手でやりますって言うだろうし、なによりデカい。
わざわざこれを設置することを考えると加工場がかなり狭くなってしまうし、いちいち取り出すにも重そうだ。
「いくらだ?」
「一枚銀貨5枚です。」
「そんなもんか。」
「正直ここに運ぶのにかなり時間がかかってるんで、買ってもらえると助かるんですけど・・・だめですかね。」
確かに普通の人は買わないわけで、俺は薬師がいるって言ってしまったしこれを逃す手はないと考えているんだろう。
悪いがそっちの線で使う事は無いと思うが、良い感じの鉄板だしむしろ本来の使いかたをしてやるべきなのかもしれない。
「わかった、四枚くれ。」
「本当ですか!」
「ただし重たいから畑まで運んでもらえると助かる。そこにアグリっていう責任者がいるから預けておいてくれ。」
「わかりました!」
小麦粉をしまう場所がない?
場所が無いのなら使ってしまえばいいじゃないか。
「いい匂いねぇ。」
「溶かすときにダシを多めに入れてるからなっと、後はこれをこうやって・・・。」
「わ!綺麗な丸になりました!」
「後は反対側を焼けば出来上がりだ。まさかこんな所であのポリプスを使う日が来るとは思わなかったが、雪山で冷やしておいてよかった。」
千枚通しが無いので、代わりに二本の暗器を器用に使って先程の鉄板に注ぎ込んだタネをクルクルと回転させていく。
作っているのはもちろんたこ焼き。
だが、肝心のソースが無いので予定を変更して明石焼きとして売り出すことにした。
この間ダンジョンから回収した食材の中にこのポリプス・・・タコが混ざっていたのだが、ぶっちゃけこっちではあまり食べないようで使われないまま雪山の中で半冷凍されていたので腐らせる前に活用できて本当に良かった。
あの商人もまさかこんなことに使われるとは思っていなかっただろうが、俺からしてみればこの使い方しか思いつかなかったんだよなぁ。
石のままだと加熱するのも難しかっただろうけど、良い感じの鉄板にしてくれたおかげで火の通りもすこぶるいい。
反対側も焼けた所で、後は皿の上に乗せて横に出汁の入った入れ物を置けば完成だ。
現地では卵焼きっていうんだったか、本場のに比べるともちろん劣るだろうけど俺はこれでも十分。
あー、たこ焼きソースってどう作るんだろうか。
前に買い付けたソースがあるからまた加工してみないと。
「ほら、先に食べていいぞ。次もすぐ焼けるから順番に食べてみてくれ。」
「え、でも売りものじゃないんですか?」
「味もわからなきゃ売れないだろ?それにこの時間はまだダンジョンの中だし、今から準備すれば一気に売れる。」
「それじゃあ遠慮なく。」
一個の鉄板で20個、今回は二個連結しているので一回で40個作れる計算だ。
火の魔道具を各鉄板の下に入れているので火力調整もお手の物、一人前6個入りで3回転すれば20人前は作れる計算か。
幸い小麦粉は売るほどあるし、出汁もモーリスさんに頼んで到着したばかりの鰹節もどきを譲ってもらったので量は十分。
タコもそれこそ売るほどあるので、後は器さえあればいくらでも商売ができる。
最悪客が多くなりすぎたら鉄板を追加するっていう手もあるだろう。
とりあえず全員分作って味を確認。
うん、寒くなってきたから余計に出汁の温かさが身に染みる。
美味いなぁ。
「やさしい味です。」
「これを肴に清酒をきゅってやるのも美味しそうね。」
「あー、いいねぇ。だが客に出すのはいつものエールだけどな。」
「ちなみにいくらで販売しますか?」
「そうだな、一皿銅貨5枚でも十分元は取れるんだが、10枚でも売れると思うか?」
「ふへふ!」
口の中に入れた明石焼きをハフハフさせながらエリザが売れると断言する。
いくら小麦粉が高騰しているとはいえこれで使う量なんてたかが知れてるし、出汁も嵩増しするのでさほど高くない。
タコに至ってはほぼ捨て値みたいなものだったので、銅貨10枚で売ろうものなら大儲け出来ること間違いなしだ。
とはいえわざわざ安売りする必要もないわけで。
エリザが売れるって言ったんだから売れるんだろう。
多分。
「あれ?この匂いは・・・やっぱりシロウさんでしたか。」
「お、シープさんもちろん買って行くよな?」
「押し売りが過ぎません?」
「こんな時間にこんな所に来ている時点でサボりだろ?」
夕方とはいえまだまだ仕事中のはず。
畑しかないここにわざわざ来ている時点でサボり確定だ。
「あったかそうですね、中身は何ですか?」
「ポリプスっていったらどうする?」
「またまた、あんなグロテスクな物・・・マジですか?」
「さぁ、食べてみたらわかるんじゃないか?」
「でも皆さんあんなに美味しそうに食べてるのに、え、どっちですか?」
ニヤリと笑った俺だけでなく、出汁の入った入れ物を手にした女達を順番に見て不安そうな顔をする羊男。
そんなに怯えるともっとからかいたくなるじゃないか、
「一皿銅貨15枚だ。どうする?男を見せるか、尻尾撒いて逃げるか。」
「わかりました、食べましょう。」
「お、男だねぇ。」
「そこまで言われて逃げるわけにいかないじゃないですか。」
そうこなくっちゃ。
丁度一人前残っていたのでそれを皿の上に乗せ、出汁の入った器と一緒に手渡す。
ちょうどエリザが座っていた場所が空いたのでそこに誘導して、皆で戦いの結末を見守る事にした。
「そんなに見ないでくださいよ。」
「仕方ないだろ、皆食べ終わったんだから。ほら、早く食べろって。」
「そんなに急かさないで下さい。」
ビビりながらも一つ器に入れ、出汁と共に一気に口の中へ。
その思い切りは嫌いじゃないぞ。
そのまま咀嚼していくと見る見るうちに表情が変わっていく。
そのリアクション後でニアに教えてやるとしよう。
ちゃんと食べきったのは褒めてやらないとな。
その後、ダンジョンから戻って来た冒険者達が匂いにつられて畑に集まり、寒さに負けず夜遅くまでタコパを楽しんだのだった。
もちろん大儲けしたのは言うまでもない。
23
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる