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1150.転売屋はオークションで話を聞く
感謝祭六日目。
いよいよ感謝祭も残すところあと二日となった。
つまり長かったこの一年もあと二日で終わりというわけだ。
長かったような短か・・・くはないか、長かった。
そして色々あった。
色々あったがその結果が今のこの時間を生み出している。
来年もまたいつものように頑張ってここで同じように一年を振り返られるといいなぁ。
なんて感慨深いことを考えてしまう。
「シロウ、お迎えが来たわよ。」
「はぁ、長い一日になりそうだ。」
「感謝祭最後の大仕事、頑張ってきなさい。」
「了解。何かあったらすぐに行くから呼んでくれ。」
「大丈夫、全部終わったら報告してあげるわ。」
感謝祭最後の大仕事。
それから逃げられるのならば喜んでいこうと思ったのだが、残念ながらそれを許してくれるつもりはないらしい。
オークション。
この間で迎えた貴族や商人達が待ち望んでいたのはまさにこれだ。
いや、歌姫オリガのコンサートもきっかけの一つではあるのだがメインはこっちなんだろうなぁ。
ダンジョン街という特性を生かし、ここでしか手に入らない珍しい物を目当てに集まってきている。
ただ少し残念なのは、この間陛下が来た時にめぼしい物は大方出品されてしまったので今回に至ってはあまりいい物が出される予定はない。
だからやっぱり歌姫目当てだった・・・のかもしれないなぁ。
「待たせたな。」
「今日はよろしくお願いします。」
「わざわざ出迎えなくてもよかったんだぞ。」
「なんだかんだ言って逃げられると困りますので。」
エリザやグレイスたちに見送られながら正面玄関を開けると、立派な馬車がドンと横付けされていた。
その前で羊男が深々と頭を下げる。
はぁ、ここまでされたら逃げることもできやしない。
何か言い訳でも言ってやろうかと思ったが、俺の行動は想定済みってわけか。
「真贋鑑定は済ませてるんだ、別に俺がいなくてもいいだろ?」
「名誉男爵としての立場的にそういうわけにもいきません。初日の挨拶を途中で抜け出したんですからここで逃げたらローランド様になんていわれるかわかりませんよ。」
「別に俺は追い出されてもいいんだが。」
「それにもう一つ、例のマイケルという議会議員ですがあの方からもシロウさんが来ることを確認されました。それも、二度も。」
「あの男か。」
出迎えたときに俺の指をへし折りに来たあのくそイケメン。
その後もマイクさんからも話を聞かせてもらったのだが、不思議と悪い噂はないらしい。
そこが逆に気になるところだ。
「感謝祭の間もしきりに気にされていましたよ。それと、いろいろと聞かれました。」
「何をだ?」
「そうですね、多かったのは西方文化について。醤油や味噌などの調味料に始まり文化などについても色々と。西方の出なのかとも聞かれましたがこれは否定しておきました。」
「戦争しているからとはいえ聞き方が妙だな。」
「個人的な勘ですが何かを企んでいる感じはします。ちなみに前に話した査察の件覚えてますか?」
「あぁ、アニエスさんを見に来るって話だろ?」
確かアニエス監査官を監査しに来るという話だったと記憶している。
その後も羊男やセラフィムさんにいろいろと調べてもらったのだが、全くと言っていいほど情報が出てこなかった。
「それなんですが、どうやら査察の担当っぽいんですよね。」
「マジかよ。ってことはつまり・・・。」
「はい。査察の目的はシロウさんってことになります。」
「なんで俺なんだ?」
「それは本人に聞いてくださいよ。ともかく、西方について聞きまわっていたことと何か関係があるかもしれません。くれぐれも気を付けてください。」
「気をつけろって言われてもなぁ。」
別に何か悪いことをしているわけじゃないし、なんなら西方となんて一切関係がない。
確かに西方関係者の知り合いはいるが、誰もが国を捨てているので今はまったく関係がないはずだ。
ケイゴさんもハルカも地位を捨ててここまで来ている。
それはエドワード陛下も知っている話だし今更それを責められてても困るんだが。
とにもかくにも向こうが俺を調べまくっているという事実は間違いないようなので、できる限り気を付けるとしよう。
出来れば近くにいない方がいいんだろうけど、行かなかったら行かなかったで面倒なことになりそうなので逃げる事すらできない。
全く困ったもんだ。
そんな最悪な気分で馬車に乗り込み、オークション会場へと連行される。
幸い俺は関係者用の裏口から中に入ることになっているので、あのイケメン野郎とは出会わなくて済んだ。
あとはオークションが終わるまでここでおとなしくしておけばいいだろう。
目録を見る限り欲しい物はないし、自分のが出品されても姿を見せる必要はない。
まぁ、レイブさんの奴隷はやっぱり気になるのだが西方関係がどうやら地雷みたいな感じなので、なおの事落札するのはやばそうだ。
算術や交渉なども含めて対人関係の技術を持っている奴隷はかなり珍しい。
うちの運営を考えるとぜひとも欲しい人材ではあるのだが・・・、皆には悪いが当分は自前でなんとかするしかないだろう。
しばらくしてオークションが始まり、布の向こうから白熱した競り合いの声が聞こえてくる。
俺の品も予定以上の品で売れているようだ。
ありがたやありがたや。
「シロウ、こんなところにいたのか。」
「ローランド様!どうしてここに。」
オークションの舞台裏でのんびりしていると、突然舞台袖からローランド様が姿を現した。
慌てて立ち上がり頭を下げる。
この前さぼったこともあるので一応頭は下げておかないとな。
「マイケル議員がお前を探していたぞ。」
「あー、どういう理由で?」
「色々と聞きたいことがあるそうだ。お前、何かしたのか?」
「何もしていないのに根掘り葉掘り調べられているんです。」
「ふむ、やはりそうか。」
「やはり?」
どういう事だろうか。
俺のことをかぎまわっている件については羊男は知っているだろうけど、ローランド様まで上がっているとは思えない。
にもかかわらずそれを承知しているという事は、本人もその件について何か感づいているという事だ。
「査察の件はシープから聞いているな。」
「表向きはアニエス監査官の調査だとか。」
「だが実際はお前の西方との関係と取引について調べているそうだ。」
「俺が西方と取引を?何の話です?」
「お前が広めた食べ物や考え方などが気に食わないんだろう。ありもしない話をでっちげてくる可能性だって十分にある。あの男は議会でも有数の愛国派、国外のそれも戦争している西方に関わりの強いお前が利益を上げていることに不満があるような口ぶりだった。一応この街にいる限りは私の権限で多少守ってやれるが、外に出るとその限りではない。くれぐれも気を付けるのだぞ。」
「御忠告感謝します。」
まさかローランド様に注意を促されるとは思っていなかったが、そこまで露骨にやってくるのは気になるところだ。
本当に俺を嵌めたいのならばもっと静かに、気づかれないように何か仕掛けてくるものだろう。
それを態々気づくようにする理由はなんだ?
まったくわからん。
忠告をしたローランド様はそのまま会場へと戻っていった。
オークションはそろそろ後半戦。
そこにはシュウが作った西方ガラスもいくつか出品させてもらっている。
もしやそれもよろしくないのだろうか。
でもなぁ、それを言うのならばレイブさんなんか露骨に西方関係者だしなぁ。
しかもそれを俺に買わせようとしていたわけだし、まさかレイブさんも俺を嵌めようとしているのか?
だがこの世界にきてすぐのころからの知り合いだしあの人がそんなことをするとも思えないし・・・。
だめだ、悪い方にばかり考えが行ってしまう。
こんな時は別の事を考えるのが一番だ。
そう、感謝祭。
明日で長かった感謝祭も終わりを迎えるわけだし、いろいろとやらなければならないことも盛りだくさんだ。
年越しうどんもそうだし、イベントも盛りだくさん。
一年の最後にふさわしい日になるように色々と企画をしている。
もちろんやるからには金儲けにつながるようなことをやるわけで。
今年最後の大儲けとなるかどうかは明日の盛り上がりにかかっている。
クライマックスは打ち上げ花火。
今回は職人も手配しているので空を飛んで落下させる必要もない。
地上からのんびりと堪能させてもらうとしよう。
最後は夜通し遊びまわって、初日の出を拝めば終了だ。
長い長い一日。
うん、それを考えたらオークションなんてどうでもいい話だ。
「ま、なるようにしかならないだろう。こっちにはディーネもいるし、何かあったらバーンの背に乗ってとんずらすればいい。俺のスキルさえあればどこでだって商売していけるんだから。」
そう自分に言い聞かせるように口に出す。
「さぁ、次は西方のガラス職人が作った素晴らしいグラスセット。残念ながら今は戦争の真っ最中ですが、物に罪はありません。この切れ込みは熟練の職人にしか作り出すことができず今ではその技法を守っている職人も数少ないのだとか。このような状況で手に入れる機会は今しかありません、金貨3枚からスタートです!」
どうやら俺の品が出品されたようだ。
司会者の煽りもあり、どんどんと値が吊り上がっていく。
あ、金貨20枚を超えたぞ。
「金貨20枚、20枚以上の方はいませんか?それでは番号札2番、マイケル議員が落札です!」
「おい!」
思わず舞台裏から大きな声を出してしまった。
なんでお前がそれを買うんだよ。
ローランド様の話じゃ議会でも有数の愛国者、そんな人が高い金払って西方国の品を買うなんていったい何を考えているんだろうか。
目録を見れば俺が出品しているという事もわかるはず。
金儲けしていることが気に食わないと言いながら、自分で値を釣り上げてしかも落札までするなんて。
それだけの金を俺に与えていったいどうするつもりなんだろうか。
わからん、奴の考えが全くわからん。
「それでは最後の品です。こちらに用意しましたのはこれまた西方の品、それも今では手に入らない西方国の奴隷です。読み書きをはじめ算術や交渉もお手の物、見た目もよろしく力もありますのでどのような仕事を任せても問題ないでしょう。こちらも今では手に入らない貴重な品、金貨30枚からスタートです!
!」
いよいよ最後の品が出品された。
レイブさんの用意した西方奴隷。
時期的な珍しさと中身のスペックの良さもあって見る見るうちに値段が上がっていく。
早くも金貨100枚に手が届きそう。
白熱した競り合いの末、とうとう大台を超える時が来た。
「番号札二番様、金貨101枚です!ほかにおられませんか?では金貨101枚で番号札二番の方おめでとうございます!それではレイブ様より直接奴隷の所有権を移行していただきましょう。レイブ様、どうぞこちらへ!」
金貨101枚。
俺の予想ではそこまで値段が上がることはないと思っていたのだが、世の中には奇特な人もいるもんだ。
しかもそれが予想していなかった人物だとしたら。
うーん、嫌な予感がする。
一年の最後にふさわしくないこの違和感。
いったいどうしたもんかなぁ。
いよいよ感謝祭も残すところあと二日となった。
つまり長かったこの一年もあと二日で終わりというわけだ。
長かったような短か・・・くはないか、長かった。
そして色々あった。
色々あったがその結果が今のこの時間を生み出している。
来年もまたいつものように頑張ってここで同じように一年を振り返られるといいなぁ。
なんて感慨深いことを考えてしまう。
「シロウ、お迎えが来たわよ。」
「はぁ、長い一日になりそうだ。」
「感謝祭最後の大仕事、頑張ってきなさい。」
「了解。何かあったらすぐに行くから呼んでくれ。」
「大丈夫、全部終わったら報告してあげるわ。」
感謝祭最後の大仕事。
それから逃げられるのならば喜んでいこうと思ったのだが、残念ながらそれを許してくれるつもりはないらしい。
オークション。
この間で迎えた貴族や商人達が待ち望んでいたのはまさにこれだ。
いや、歌姫オリガのコンサートもきっかけの一つではあるのだがメインはこっちなんだろうなぁ。
ダンジョン街という特性を生かし、ここでしか手に入らない珍しい物を目当てに集まってきている。
ただ少し残念なのは、この間陛下が来た時にめぼしい物は大方出品されてしまったので今回に至ってはあまりいい物が出される予定はない。
だからやっぱり歌姫目当てだった・・・のかもしれないなぁ。
「待たせたな。」
「今日はよろしくお願いします。」
「わざわざ出迎えなくてもよかったんだぞ。」
「なんだかんだ言って逃げられると困りますので。」
エリザやグレイスたちに見送られながら正面玄関を開けると、立派な馬車がドンと横付けされていた。
その前で羊男が深々と頭を下げる。
はぁ、ここまでされたら逃げることもできやしない。
何か言い訳でも言ってやろうかと思ったが、俺の行動は想定済みってわけか。
「真贋鑑定は済ませてるんだ、別に俺がいなくてもいいだろ?」
「名誉男爵としての立場的にそういうわけにもいきません。初日の挨拶を途中で抜け出したんですからここで逃げたらローランド様になんていわれるかわかりませんよ。」
「別に俺は追い出されてもいいんだが。」
「それにもう一つ、例のマイケルという議会議員ですがあの方からもシロウさんが来ることを確認されました。それも、二度も。」
「あの男か。」
出迎えたときに俺の指をへし折りに来たあのくそイケメン。
その後もマイクさんからも話を聞かせてもらったのだが、不思議と悪い噂はないらしい。
そこが逆に気になるところだ。
「感謝祭の間もしきりに気にされていましたよ。それと、いろいろと聞かれました。」
「何をだ?」
「そうですね、多かったのは西方文化について。醤油や味噌などの調味料に始まり文化などについても色々と。西方の出なのかとも聞かれましたがこれは否定しておきました。」
「戦争しているからとはいえ聞き方が妙だな。」
「個人的な勘ですが何かを企んでいる感じはします。ちなみに前に話した査察の件覚えてますか?」
「あぁ、アニエスさんを見に来るって話だろ?」
確かアニエス監査官を監査しに来るという話だったと記憶している。
その後も羊男やセラフィムさんにいろいろと調べてもらったのだが、全くと言っていいほど情報が出てこなかった。
「それなんですが、どうやら査察の担当っぽいんですよね。」
「マジかよ。ってことはつまり・・・。」
「はい。査察の目的はシロウさんってことになります。」
「なんで俺なんだ?」
「それは本人に聞いてくださいよ。ともかく、西方について聞きまわっていたことと何か関係があるかもしれません。くれぐれも気を付けてください。」
「気をつけろって言われてもなぁ。」
別に何か悪いことをしているわけじゃないし、なんなら西方となんて一切関係がない。
確かに西方関係者の知り合いはいるが、誰もが国を捨てているので今はまったく関係がないはずだ。
ケイゴさんもハルカも地位を捨ててここまで来ている。
それはエドワード陛下も知っている話だし今更それを責められてても困るんだが。
とにもかくにも向こうが俺を調べまくっているという事実は間違いないようなので、できる限り気を付けるとしよう。
出来れば近くにいない方がいいんだろうけど、行かなかったら行かなかったで面倒なことになりそうなので逃げる事すらできない。
全く困ったもんだ。
そんな最悪な気分で馬車に乗り込み、オークション会場へと連行される。
幸い俺は関係者用の裏口から中に入ることになっているので、あのイケメン野郎とは出会わなくて済んだ。
あとはオークションが終わるまでここでおとなしくしておけばいいだろう。
目録を見る限り欲しい物はないし、自分のが出品されても姿を見せる必要はない。
まぁ、レイブさんの奴隷はやっぱり気になるのだが西方関係がどうやら地雷みたいな感じなので、なおの事落札するのはやばそうだ。
算術や交渉なども含めて対人関係の技術を持っている奴隷はかなり珍しい。
うちの運営を考えるとぜひとも欲しい人材ではあるのだが・・・、皆には悪いが当分は自前でなんとかするしかないだろう。
しばらくしてオークションが始まり、布の向こうから白熱した競り合いの声が聞こえてくる。
俺の品も予定以上の品で売れているようだ。
ありがたやありがたや。
「シロウ、こんなところにいたのか。」
「ローランド様!どうしてここに。」
オークションの舞台裏でのんびりしていると、突然舞台袖からローランド様が姿を現した。
慌てて立ち上がり頭を下げる。
この前さぼったこともあるので一応頭は下げておかないとな。
「マイケル議員がお前を探していたぞ。」
「あー、どういう理由で?」
「色々と聞きたいことがあるそうだ。お前、何かしたのか?」
「何もしていないのに根掘り葉掘り調べられているんです。」
「ふむ、やはりそうか。」
「やはり?」
どういう事だろうか。
俺のことをかぎまわっている件については羊男は知っているだろうけど、ローランド様まで上がっているとは思えない。
にもかかわらずそれを承知しているという事は、本人もその件について何か感づいているという事だ。
「査察の件はシープから聞いているな。」
「表向きはアニエス監査官の調査だとか。」
「だが実際はお前の西方との関係と取引について調べているそうだ。」
「俺が西方と取引を?何の話です?」
「お前が広めた食べ物や考え方などが気に食わないんだろう。ありもしない話をでっちげてくる可能性だって十分にある。あの男は議会でも有数の愛国派、国外のそれも戦争している西方に関わりの強いお前が利益を上げていることに不満があるような口ぶりだった。一応この街にいる限りは私の権限で多少守ってやれるが、外に出るとその限りではない。くれぐれも気を付けるのだぞ。」
「御忠告感謝します。」
まさかローランド様に注意を促されるとは思っていなかったが、そこまで露骨にやってくるのは気になるところだ。
本当に俺を嵌めたいのならばもっと静かに、気づかれないように何か仕掛けてくるものだろう。
それを態々気づくようにする理由はなんだ?
まったくわからん。
忠告をしたローランド様はそのまま会場へと戻っていった。
オークションはそろそろ後半戦。
そこにはシュウが作った西方ガラスもいくつか出品させてもらっている。
もしやそれもよろしくないのだろうか。
でもなぁ、それを言うのならばレイブさんなんか露骨に西方関係者だしなぁ。
しかもそれを俺に買わせようとしていたわけだし、まさかレイブさんも俺を嵌めようとしているのか?
だがこの世界にきてすぐのころからの知り合いだしあの人がそんなことをするとも思えないし・・・。
だめだ、悪い方にばかり考えが行ってしまう。
こんな時は別の事を考えるのが一番だ。
そう、感謝祭。
明日で長かった感謝祭も終わりを迎えるわけだし、いろいろとやらなければならないことも盛りだくさんだ。
年越しうどんもそうだし、イベントも盛りだくさん。
一年の最後にふさわしい日になるように色々と企画をしている。
もちろんやるからには金儲けにつながるようなことをやるわけで。
今年最後の大儲けとなるかどうかは明日の盛り上がりにかかっている。
クライマックスは打ち上げ花火。
今回は職人も手配しているので空を飛んで落下させる必要もない。
地上からのんびりと堪能させてもらうとしよう。
最後は夜通し遊びまわって、初日の出を拝めば終了だ。
長い長い一日。
うん、それを考えたらオークションなんてどうでもいい話だ。
「ま、なるようにしかならないだろう。こっちにはディーネもいるし、何かあったらバーンの背に乗ってとんずらすればいい。俺のスキルさえあればどこでだって商売していけるんだから。」
そう自分に言い聞かせるように口に出す。
「さぁ、次は西方のガラス職人が作った素晴らしいグラスセット。残念ながら今は戦争の真っ最中ですが、物に罪はありません。この切れ込みは熟練の職人にしか作り出すことができず今ではその技法を守っている職人も数少ないのだとか。このような状況で手に入れる機会は今しかありません、金貨3枚からスタートです!」
どうやら俺の品が出品されたようだ。
司会者の煽りもあり、どんどんと値が吊り上がっていく。
あ、金貨20枚を超えたぞ。
「金貨20枚、20枚以上の方はいませんか?それでは番号札2番、マイケル議員が落札です!」
「おい!」
思わず舞台裏から大きな声を出してしまった。
なんでお前がそれを買うんだよ。
ローランド様の話じゃ議会でも有数の愛国者、そんな人が高い金払って西方国の品を買うなんていったい何を考えているんだろうか。
目録を見れば俺が出品しているという事もわかるはず。
金儲けしていることが気に食わないと言いながら、自分で値を釣り上げてしかも落札までするなんて。
それだけの金を俺に与えていったいどうするつもりなんだろうか。
わからん、奴の考えが全くわからん。
「それでは最後の品です。こちらに用意しましたのはこれまた西方の品、それも今では手に入らない西方国の奴隷です。読み書きをはじめ算術や交渉もお手の物、見た目もよろしく力もありますのでどのような仕事を任せても問題ないでしょう。こちらも今では手に入らない貴重な品、金貨30枚からスタートです!
!」
いよいよ最後の品が出品された。
レイブさんの用意した西方奴隷。
時期的な珍しさと中身のスペックの良さもあって見る見るうちに値段が上がっていく。
早くも金貨100枚に手が届きそう。
白熱した競り合いの末、とうとう大台を超える時が来た。
「番号札二番様、金貨101枚です!ほかにおられませんか?では金貨101枚で番号札二番の方おめでとうございます!それではレイブ様より直接奴隷の所有権を移行していただきましょう。レイブ様、どうぞこちらへ!」
金貨101枚。
俺の予想ではそこまで値段が上がることはないと思っていたのだが、世の中には奇特な人もいるもんだ。
しかもそれが予想していなかった人物だとしたら。
うーん、嫌な予感がする。
一年の最後にふさわしくないこの違和感。
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