転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

文字の大きさ
1,155 / 1,738

1150.転売屋はオークションで話を聞く

感謝祭六日目。

いよいよ感謝祭も残すところあと二日となった。

つまり長かったこの一年もあと二日で終わりというわけだ。

長かったような短か・・・くはないか、長かった。

そして色々あった。

色々あったがその結果が今のこの時間を生み出している。

来年もまたいつものように頑張ってここで同じように一年を振り返られるといいなぁ。

なんて感慨深いことを考えてしまう。

「シロウ、お迎えが来たわよ。」

「はぁ、長い一日になりそうだ。」

「感謝祭最後の大仕事、頑張ってきなさい。」

「了解。何かあったらすぐに行くから呼んでくれ。」

「大丈夫、全部終わったら報告してあげるわ。」

感謝祭最後の大仕事。

それから逃げられるのならば喜んでいこうと思ったのだが、残念ながらそれを許してくれるつもりはないらしい。

オークション。

この間で迎えた貴族や商人達が待ち望んでいたのはまさにこれだ。

いや、歌姫オリガのコンサートもきっかけの一つではあるのだがメインはこっちなんだろうなぁ。

ダンジョン街という特性を生かし、ここでしか手に入らない珍しい物を目当てに集まってきている。

ただ少し残念なのは、この間陛下が来た時にめぼしい物は大方出品されてしまったので今回に至ってはあまりいい物が出される予定はない。

だからやっぱり歌姫目当てだった・・・のかもしれないなぁ。

「待たせたな。」

「今日はよろしくお願いします。」

「わざわざ出迎えなくてもよかったんだぞ。」

「なんだかんだ言って逃げられると困りますので。」

エリザやグレイスたちに見送られながら正面玄関を開けると、立派な馬車がドンと横付けされていた。

その前で羊男が深々と頭を下げる。

はぁ、ここまでされたら逃げることもできやしない。

何か言い訳でも言ってやろうかと思ったが、俺の行動は想定済みってわけか。

「真贋鑑定は済ませてるんだ、別に俺がいなくてもいいだろ?」

「名誉男爵としての立場的にそういうわけにもいきません。初日の挨拶を途中で抜け出したんですからここで逃げたらローランド様になんていわれるかわかりませんよ。」

「別に俺は追い出されてもいいんだが。」

「それにもう一つ、例のマイケルという議会議員ですがあの方からもシロウさんが来ることを確認されました。それも、二度も。」

「あの男か。」

出迎えたときに俺の指をへし折りに来たあのくそイケメン。

その後もマイクさんからも話を聞かせてもらったのだが、不思議と悪い噂はないらしい。

そこが逆に気になるところだ。

「感謝祭の間もしきりに気にされていましたよ。それと、いろいろと聞かれました。」

「何をだ?」

「そうですね、多かったのは西方文化について。醤油や味噌などの調味料に始まり文化などについても色々と。西方の出なのかとも聞かれましたがこれは否定しておきました。」

「戦争しているからとはいえ聞き方が妙だな。」

「個人的な勘ですが何かを企んでいる感じはします。ちなみに前に話した査察の件覚えてますか?」

「あぁ、アニエスさんを見に来るって話だろ?」

確かアニエス監査官を監査しに来るという話だったと記憶している。

その後も羊男やセラフィムさんにいろいろと調べてもらったのだが、全くと言っていいほど情報が出てこなかった。

「それなんですが、どうやら査察の担当っぽいんですよね。」

「マジかよ。ってことはつまり・・・。」

「はい。査察の目的はシロウさんってことになります。」

「なんで俺なんだ?」

「それは本人に聞いてくださいよ。ともかく、西方について聞きまわっていたことと何か関係があるかもしれません。くれぐれも気を付けてください。」

「気をつけろって言われてもなぁ。」

別に何か悪いことをしているわけじゃないし、なんなら西方となんて一切関係がない。

確かに西方関係者の知り合いはいるが、誰もが国を捨てているので今はまったく関係がないはずだ。

ケイゴさんもハルカも地位を捨ててここまで来ている。

それはエドワード陛下も知っている話だし今更それを責められてても困るんだが。

とにもかくにも向こうが俺を調べまくっているという事実は間違いないようなので、できる限り気を付けるとしよう。

出来れば近くにいない方がいいんだろうけど、行かなかったら行かなかったで面倒なことになりそうなので逃げる事すらできない。

全く困ったもんだ。

そんな最悪な気分で馬車に乗り込み、オークション会場へと連行される。

幸い俺は関係者用の裏口から中に入ることになっているので、あのイケメン野郎とは出会わなくて済んだ。

あとはオークションが終わるまでここでおとなしくしておけばいいだろう。

目録を見る限り欲しい物はないし、自分のが出品されても姿を見せる必要はない。

まぁ、レイブさんの奴隷はやっぱり気になるのだが西方関係がどうやら地雷みたいな感じなので、なおの事落札するのはやばそうだ。

算術や交渉なども含めて対人関係の技術を持っている奴隷はかなり珍しい。

うちの運営を考えるとぜひとも欲しい人材ではあるのだが・・・、皆には悪いが当分は自前でなんとかするしかないだろう。

しばらくしてオークションが始まり、布の向こうから白熱した競り合いの声が聞こえてくる。

俺の品も予定以上の品で売れているようだ。

ありがたやありがたや。

「シロウ、こんなところにいたのか。」

「ローランド様!どうしてここに。」

オークションの舞台裏でのんびりしていると、突然舞台袖からローランド様が姿を現した。

慌てて立ち上がり頭を下げる。

この前さぼったこともあるので一応頭は下げておかないとな。

「マイケル議員がお前を探していたぞ。」

「あー、どういう理由で?」

「色々と聞きたいことがあるそうだ。お前、何かしたのか?」

「何もしていないのに根掘り葉掘り調べられているんです。」

「ふむ、やはりそうか。」

「やはり?」

どういう事だろうか。

俺のことをかぎまわっている件については羊男は知っているだろうけど、ローランド様まで上がっているとは思えない。

にもかかわらずそれを承知しているという事は、本人もその件について何か感づいているという事だ。

「査察の件はシープから聞いているな。」

「表向きはアニエス監査官の調査だとか。」

「だが実際はお前の西方との関係と取引について調べているそうだ。」

「俺が西方と取引を?何の話です?」

「お前が広めた食べ物や考え方などが気に食わないんだろう。ありもしない話をでっちげてくる可能性だって十分にある。あの男は議会でも有数の愛国派、国外のそれも戦争している西方に関わりの強いお前が利益を上げていることに不満があるような口ぶりだった。一応この街にいる限りは私の権限で多少守ってやれるが、外に出るとその限りではない。くれぐれも気を付けるのだぞ。」

「御忠告感謝します。」

まさかローランド様に注意を促されるとは思っていなかったが、そこまで露骨にやってくるのは気になるところだ。

本当に俺を嵌めたいのならばもっと静かに、気づかれないように何か仕掛けてくるものだろう。

それを態々気づくようにする理由はなんだ?

まったくわからん。

忠告をしたローランド様はそのまま会場へと戻っていった。

オークションはそろそろ後半戦。

そこにはシュウが作った西方ガラスもいくつか出品させてもらっている。

もしやそれもよろしくないのだろうか。

でもなぁ、それを言うのならばレイブさんなんか露骨に西方関係者だしなぁ。

しかもそれを俺に買わせようとしていたわけだし、まさかレイブさんも俺を嵌めようとしているのか?

だがこの世界にきてすぐのころからの知り合いだしあの人がそんなことをするとも思えないし・・・。

だめだ、悪い方にばかり考えが行ってしまう。

こんな時は別の事を考えるのが一番だ。

そう、感謝祭。

明日で長かった感謝祭も終わりを迎えるわけだし、いろいろとやらなければならないことも盛りだくさんだ。

年越しうどんもそうだし、イベントも盛りだくさん。

一年の最後にふさわしい日になるように色々と企画をしている。

もちろんやるからには金儲けにつながるようなことをやるわけで。

今年最後の大儲けとなるかどうかは明日の盛り上がりにかかっている。

クライマックスは打ち上げ花火。

今回は職人も手配しているので空を飛んで落下させる必要もない。

地上からのんびりと堪能させてもらうとしよう。

最後は夜通し遊びまわって、初日の出を拝めば終了だ。

長い長い一日。

うん、それを考えたらオークションなんてどうでもいい話だ。

「ま、なるようにしかならないだろう。こっちにはディーネもいるし、何かあったらバーンの背に乗ってとんずらすればいい。俺のスキルさえあればどこでだって商売していけるんだから。」

そう自分に言い聞かせるように口に出す。

「さぁ、次は西方のガラス職人が作った素晴らしいグラスセット。残念ながら今は戦争の真っ最中ですが、物に罪はありません。この切れ込みは熟練の職人にしか作り出すことができず今ではその技法を守っている職人も数少ないのだとか。このような状況で手に入れる機会は今しかありません、金貨3枚からスタートです!」

どうやら俺の品が出品されたようだ。

司会者の煽りもあり、どんどんと値が吊り上がっていく。

あ、金貨20枚を超えたぞ。

「金貨20枚、20枚以上の方はいませんか?それでは番号札2番、マイケル議員が落札です!」

「おい!」

思わず舞台裏から大きな声を出してしまった。

なんでお前がそれを買うんだよ。

ローランド様の話じゃ議会でも有数の愛国者、そんな人が高い金払って西方国の品を買うなんていったい何を考えているんだろうか。

目録を見れば俺が出品しているという事もわかるはず。

金儲けしていることが気に食わないと言いながら、自分で値を釣り上げてしかも落札までするなんて。

それだけの金を俺に与えていったいどうするつもりなんだろうか。

わからん、奴の考えが全くわからん。

「それでは最後の品です。こちらに用意しましたのはこれまた西方の品、それも今では手に入らない西方国の奴隷です。読み書きをはじめ算術や交渉もお手の物、見た目もよろしく力もありますのでどのような仕事を任せても問題ないでしょう。こちらも今では手に入らない貴重な品、金貨30枚からスタートです!
!」

いよいよ最後の品が出品された。

レイブさんの用意した西方奴隷。

時期的な珍しさと中身のスペックの良さもあって見る見るうちに値段が上がっていく。

早くも金貨100枚に手が届きそう。

白熱した競り合いの末、とうとう大台を超える時が来た。

「番号札二番様、金貨101枚です!ほかにおられませんか?では金貨101枚で番号札二番の方おめでとうございます!それではレイブ様より直接奴隷の所有権を移行していただきましょう。レイブ様、どうぞこちらへ!」

金貨101枚。

俺の予想ではそこまで値段が上がることはないと思っていたのだが、世の中には奇特な人もいるもんだ。

しかもそれが予想していなかった人物だとしたら。

うーん、嫌な予感がする。

一年の最後にふさわしくないこの違和感。

いったいどうしたもんかなぁ。
感想 41

あなたにおすすめの小説

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!

音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ 生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界 ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生 一緒に死んだマヤは王女アイルに転生 「また一緒だねミキちゃん♡」 ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差 アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます