転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

文字の大きさ
1,226 / 1,738

1221.転売屋はライトを使ってみる

しおりを挟む
「ってことで夏までに製品化しようと思っているだが、ぶっちゃけどう思う?」

「君のそのお金にかける情熱は嫌いじゃないけれど出来れば相談をしてほしかったっていうのが本音だね。」

フェルさんとマイクさんの前で啖呵を切ってしまった手前なんとしてでも製品化にこぎつけなければならない。

そんなわけで早速カーラの所に行って事情を説明したのだが、帰って来たのは盛大なため息。

まぁ気持ちはわかる、俺が同じ立場ならため息どころか文句の10や20が雨のように降ってきたことだろう。

それをため息だけで済ませるとは流石だな。

「それに関しては申し訳ないと思ってる。だがおおよそその仕組みは解明できたんだろ?」

「おかげさまでおおよそは解読できたかな。実用化目前といえば聞こえはいいけれど、ここからが本当の闘いなんだ。実際何をどれだけ入れたらどうなるのかっていう数値を取っていかないといけないからねぇ。」

「数値化するのは確かに大事なことだが、それを一人でやるのか?」

「今更だと思うよ、化粧品の時も一人でやって来たしそれに他の人がいると自分の思うように仕事がやりにくいからそっちの方が面倒なんだ。」

なんとなく気持ちはわかる。

別に群れるのが苦手というわけではないが、何事にも自分のペースという物がある。

それを他人にかき回されるのは非常に苦痛だしそうなるぐらいなら自分一人でやった方が何倍も気楽だったりする。

もちろん自分一人にかかる負担は大きくなるがそのデメリットを加味しても一人の方が良かったりするものだ。

「まぁ人手が必要になったら声をかけてくれ。それで、どういう仕組みで光ったんだ?」

「ミカールラッケイトの樹液がなんで魔力を含んだ水に反応して光るかっていう根本的な仕組みは正直まだわからない。でも、二つを混ぜ合わせるときに樹液が多いと発光する時間が長くなって、魔力が濃くなると発光量が増えるのは解明できた。あとはその配合量を調べていけば実用化には近づくと思うよ。でも、残念なことに魔灯の代わりにはならなさそうだね。」

「む、そうなのか。」

「近くを照らすには確かに効果的なんだけど、広範囲を光らせるのには向いていないようなんだ。もちろん量を増やしたり入れ物の形を変えたりすれば可能かもしれないけど、費用対効果を考えると量を増やす意味はなさそうだね。」

うーむ、もしかすると世紀の大発見になるかもしれないと期待したのだが世の中そんなに甘くはなかったようだ。

とはいえ、燃料を使わずに光を確保できるのは非常に便利なのは間違いない。

広範囲を照らすことはできなくても手元だけなら十分に実用的だし、むしろ灯りに気付かせたくない状況では重宝するかもしれない。

なにより一番は材料の手軽さだよな。

魔力を含んだ水なら何でもいいので、魔石を水に溶かしても十分効果がある。

樹液を出す木も近郊に自生しているので輸送に時間も費用も掛からない分単価を抑える事も出来るだろう。

とはいえ問題がないわけではない。

「まぁ当初の感じではそこまでできるとは思っていなかったし、原理がわかってコントロールできるだけでも十分な成果だろう。で、もう一つの問題はどうなった?」

「君に言われた通り例の森に所有者がいるのかどうか調べてみたけどありがたいことに誰の所有物でもなかったみたいだ。厳密にいえば国の持ちモノなんだろうけど、この前のように誰でも好きなように出入り出来る状態だね。」

「誰のものでもないからこその問題もあるが、国が所有しているとなればまだ動きやすいか。」

「いくら豊富に樹液が出るとはいえ限度はあるわけだし、森を守るためにも過剰な採取は禁物。それを防ごうと思ったら誰の物かを明確にして保護する必要がある。君に言われなかったら考えもしなかったけど確かにこの結果を見ればあり得る話だね。使い道はたくさんある、それこそ君が今回考え付いたような使い方も面白そうだ。」

「そして何より金になる。金になるとわかれば自分もと思ってしまうのが俺達だからなぁ。いくら製法を秘密にしていてもいつか誰かが同じ結果にたどり着くだろうからそれまでにしっかり管理できる体制を作っておかないと後々大変になるぞ。」

製法が解明され量産できるようになったのはいいことだ。

金になるのは間違いないし、発案者特権で誰かが真似をする前にしっかりと儲けを出せるのはありがたい。

だが化粧品なんかと違って材料が少ない上に作り方も簡単となれば誰かが同じように製法に気付く時が来るだろう。

そしてそれが隠されることもなく広がれば我先にと樹液を求めて森に人が殺到するのは目に見えている。

その結果樹は枯れ果て、樹液が手に入ら無くなれば灯りを作ることはできなくなる。

この木が世界中どこにでもあればこんなことをしなくてもいいんだろうけど、王都周辺にしか自生していないのならばなおの事保護しておかなければならない。

もっとも、保護が優先されてしまうと採取そのものが出来なくなってしまうので理想は全体の半分ほどを管理できること。

もしくは所有することができれば何も気にせず金儲けができるのだが、その金をどこから捻出するのかっていうのが問題なんだよなぁ。

「でもいくら所有者がいないとはいえそう簡単に管理させてもらえるかな。」

「わからん。最悪購入できなくても、長期間賃借できればそれだけでも十分だ。」

「森を買う…いったいいくらぐらいになるんだろうねぇ。」

「さぁなぁ。」

価値があるならまだしも食用にもならない上に材木にも加工できないような木だからそこまで価値がつくとは思えないんだけど。

開墾するわけでもないのでそこまでシビアには見られないんじゃないかってのが俺の考えだ。

さっきも言ったように購入できなくても借りる事が出来ればそれだけで十分価値がある。

まずは夏の催しが上演されるまでにしっかりと責任の所在を明確にしておかなければ。

「まぁ私は研究が出来れば文句はないよ。森の方は君に任せて構わないよね。」

「あぁ、そっちは俺の方で何とかしてみる。身分は無くなったが顔はまだまだ利く方なんでね。」

「期待してるよ。」

いざとなったらエドワード陛下に直訴するという手も残されている。

新しい灯りの製造法を開示するという条件なら貸出ぐらいはしてくれるんじゃないだろうか。

だってその方が森が荒れる心配はなくなわけだし、管理ができるようになれば新しい収入も確保できる。

なにより俺の懐が最高に温かくなるのが最高だ。

その為なら喜んで交渉の席についてやろうじゃないか。

「ってことであとは現物の確認だけだな、用意はもうできてるんだろ?」

「もちろんだとも。ちょうど確認しようと思っていたところだからこっちで見てくれるかな。」

難しい話はこれぐらいにしてまずは現物を確認しようじゃないか。

カーラの後ろを追いかけるようにして地下室へと移動する。

8畳ほどの狭い地下室の中央には大きなテーブルが置かれており、その真ん中にミカールラッケイトの樹液が入った入れ物が置かれ、その横には魔石が沈められた水差しが静かにその時を待っていた。

壁沿いの机から試験管が複数本刺さった機材を回収し、樹液を全く同じ量になるように試験管に注いでいく。

「それじゃあこれに水を注いでもらえるかな。」

「どんな量でもいいのか?」

「溢れなければ十分だよ。」

「わかった。」

水差しを手に取り、入れる量を変えながら試験管に魔力水を注いでいく。

最初は光る気配もなかったものの、水を注いだ後試験管を左右に振ると同時に一気に淡い光があふれだした。

「どうだい、なかなかの反応だろ?」

「これは想像以上の反応だ。たったこれっぽっちの量でこれだけ光るとなれば濃くしたときいったいどうなるんだ?」

「それはもうサングラスをかけないと目を開けられないぐらいさ。もっとも、そんなるためにはかなり濃厚な魔力水が必要になるからよっぽどの事じゃないとそこまで光ることはないと思うけど。」

「これだけ光れば十分だと思うが、後はどうやって混ぜるかだな。」

自慢げな顔をするカーラをよそに光を放つ試験管をじっと見つめる。

流石に試験管を持ったままうろうろさせるわけにはいかないし、かといって手軽に使えなければ意味はない。

例えば元の世界のように二つの素材が入った棒を軽く折るだけで勝手に中身が混ぜ合わさって発光するような手軽さが欲しいが、かといってあれを実現するのはさすがに非現実的すぎるのでせめて樹液の入った筒に魔力水を注ぎこむぐらいはしなければならないだろう。

じゃあ演目を見ながらそれが出来るのかという話も出てくるわけで。

出来るだけ簡単かつ確実に混ぜ合わせて発光させる、そんな道具を開発しなければならない。

それもあと一か月以内に。

しかも、それを量産できなければ意味はないわけで。

夏は四カ月も続くんだ、その間ほぼ毎日のように上演されるとなればものすごい量が必要になるのは間違いない。

一公演を300人が見るとしてそれを一日二回となると600個、いや予備を入れても700個は必要だろう。

それが一月に少なくとも20回上演するとなれば14000個必要になり、四カ月ともなれば5.6万個に膨れ上がる。

しかもこれは少なく見積もっての話だ。

マイクさんが言っていた屋外劇場がどのぐらいの収容人数かすらわからないのだが、仮に想定の倍の人数が入るともなればあっという間に10万個を超えてしまった。

まさに途方もない数。

それをあと一か月ちょっとで準備するっていうのは正直現実的じゃない気がしてきた。

「それに関しては君に一任しようと思う。私はできるだけ量産を急ぐからよろしく頼むよ。」

「はぁ、それが一番大変なんだよなぁ。」

「大丈夫さ、いつもなんとかしてきたじゃないか。」

「簡単に言ってくれるぜ全く。」

確かに今までは何とかなってきた。

だがそうならないかもしれない可能性だってある。

でもできないとは言っていられないところまで来てしまったんだよなぁ。

もう告知はされてしまったし、あそこまで言い切ってしまった以上覚悟を決めなければ。

手軽に量産出来て更には簡単に使えるようなもの。

そんなものが短時間で見つかるだろうか。

いや、見つけて見せる。

そうじゃないと金貨3000枚なんて金額を稼ぐことはできないんだから。

目の前で光るミカールラッケイトの光に勇気づけられるように、俺は小さくうなずくのだった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...