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1226.転売屋は骨董品を見に行く
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手に入れた旧王朝のナイフをどうするか。
とりあえずその辺に伝手のありそうなフェルさんに声をかけると、案の定それを専門にしている業者を紹介してもらえた。
この世界でも骨董品的な物は金持ちに人気があるらしく、貴族や商人が好んで蒐集しているのだとか。
正直その辺は全く興味が無いのだが金になるのであれば話は別だ。
これらを好んで転売しようとは思わないけれど相場スキルがあるので偽物をつかまされたり高値で買い付けるなんて言うへまはしないだろう。
そう考えると非常に適しているのだがやっぱり興味が無いんだよなぁ。
興味が無ければ手を出さない。
それがこの手の商売の鉄則だ。
熱量があれば工夫も出来るしそれなりに失敗しても挽回できる、だがそれがなければ大きな痛手を負う事もあるしそこから挫折につながることもある。
全戦全勝とはいかないけれど、負けた時の落ち込みを考えたら慣れないものに手を出すもんじゃない。
ともかくだ、そんな骨董品を換金するべく向かったのは王都の裏路地を進んだ先にある古ぼけた倉庫。
表札無し、看板無し、人気無し。
ないない尽くしのこの建物に本当に業者がいるんだろうか。
でもなぁ、フェルさんが態々嘘を教えるとも思えないしなぁ。
とりあえず言われたとおりに三度、二度、三度倉庫の戸をノックしてから教えてもらった言葉を紡ぐ。
「ラメーンお届けに参りました!」
なんでラメーンなんだよっていうツッコミは無しだ。
この世界でも似たようなものはあるし、デリバリーも考案してから今や国中に広がっている。
なにも変なところはない・・・はずだ。
「デリバリーは頼んでないよ。」
「でもフェルさんから頼まれたんですけどねぇ。」
「あの青二才かい、まったく。さっさと入りな。」
中から聞こえてきた老婆の声に反応するように倉庫の扉が左右に開かれる。
が、中は真っ暗で誰かがいるようにも見えない。
まぁ、大丈夫だろう。
たぶん。
足元に置いた荷物を担ぎなおして中に足を踏み入れると、後ろの戸が静かにしまった。
窓があるはずなのに中は真っ暗で何も見えない。
「ちょいと待ちな、いま明かりをつけるから。」
しばらくすると奥の方でオレンジ色の明かりが灯り、壁の両端に灯った光がこちらに向かって数を増やしながら近づいてきた。
「随分と若い客だね、坊や名前は?」
「シロウだ。」
「あぁ、元名誉男爵の子だね。なるほど、あの青二才が紹介するのもうなずける。坊や、ここがどんな場所かもちろん知っているんだろうねぇ。」
最後の光が灯るとそれに照らされながら正面からやって来たのは、皴皴の老婆。
まるで絵本に出てくる悪い魔法使いのようだ。
フェルさんを青二才扱い、俺はそれ以下の坊やか。
別にそう言われて嫌な気分にはならないが、なんとなくこの人には逆らってはいけないというのだけはわかる。
命が惜しければおとなしくしておこう。
「飛び切り珍しい物を売買している場所だろ?」
「その通り。まずはブツをお出し、ここに見合う物だったら奥に案内してやるよ。そうじゃないのならそれを置いてさっさと帰りな。」
「こいつを頼む。」
どうやら奥に入るためにはこの場に相応しい物を持ってきたか審査されるようだ。
フェルさん曰くおそらく大丈夫だろうという話だったのだが、本当にこのナイフで大丈夫なんだろうか。
「ふむ、旧王朝時代の儀礼用装飾銀ナイフ。錆もないし本数もそれなりにある、悪くないね。」
「本当か。」
「欲を言えばもう一声欲しいところだが、他に何かあるのかい?」
「とりあえず手あたり次第に持ってきた、価値があるかは見てから判断してもらえると助かる。」
「ほぉ、足元の袋全部かい。いいよ、奥でじっくり見てやろうじゃないか。」
どうやらお眼鏡にかなったようだ。
満足そうに笑う老婆からナイフを返してもらい、先を行く老婆を追いかける。
古ぼけた倉庫の奥には階段がありそのまま地下に降りられるようになっていた。
この感じから察するにおそらく下水道へ降りる為の場所の上に倉庫を作ったんだろう。
下水道と言ってもそのまま排水路につながっているわけではなく、保守点検用の部屋がいくつもあるのでそのうちの一つに降りられるようだ。
階段の下は小ホールのようになっており奥には別の部屋に通じる扉も見える。
「とりあえず査定品はそこに置きな。少し時間がかかるから待っている間にこの部屋に置いてる商品は好きなように見ていいよ。ただし呪われたからって文句を言うのは大間違いだからね。」
「そんなものもあるのか。」
「そりゃあるさ、古い物なんてのは怨念と執念の塊みたいなものだからね。それと、壊しても弁償してもらうからくれぐれも気を付けるんだよ。」
そういうと老婆は手ぶらで奥の部屋へと消えてしまった。
荷物は・・・、と言おうと思ったらいつの間にか現れた巨漢の男が軽々と荷物を持ち追いかけるようにして奥へと向かう。
うーむ、いつの間に。
突然一人にされてしまったのだが、自由に見て回っていいとのことだったので壁沿いに展示されている商品を順番に見て回る。
骨董品というだけあって壺だの皿だの絵画だの元の世界にもたくさんあった物が並んでいるのだが、突然よくわからない生き物の頭の骨や触ると呪われそうな禍々しいお札なんかも出てきて非常に面白い。
他にも古ぼけた短剣や槍、血糊の付いた斧なんかも飾られている。
この辺が異世界って感じだなぁ。
元の世界ではまずお目にかかれないようなラインナップ。
こういうのを見ると俺が持ってきたものなんて玩具みたいに思えてくるなぁ。
「終わったよ。」
そんなことを考えていると、奥から老婆が戻ってきた。
その後ろにはさっきの巨漢が荷物を持ったまま控えている。
「お眼鏡にかなうものがあったらいいんだが。」
「若いわりに案外悪くなかったよ。説明するからこっちにおいで。」
手招きされた先には二人掛けの小さな机。
向かい合うようにして座ると、品定めをするように老婆が俺をしっかりとみてくる。
「なんだ?」
「気にしないでおくれ。そうだ、自己紹介がまだだったね。私はここの店主オリビア、後ろの大きいのはサンチョス。このなりだがしゃべれなくてね、悪い子じゃないから気にしないでおくれ。とりあえず順番に説明していくから耳かっぽじってよくお聞き、二度は説明しないからね。」
「わかった、よろしく頼む。」
色々聞きたいことはあるがとりあえず今は目の前のことに集中しよう。
今回持参したのはこの間のナイフの他、サーターアンダギーのレシピと引き換えに貴族の奥様方から回収した不用品の中から価値のありそうなものだけをピックアップして持ち込んでみた。
こういう時鑑定スキルだけじゃなく相場スキルもあるとおおよその値段は販売時期がわかるので非常に助かる。
骨董品の定義もわからなかったので、とりあえず鑑定結果で旧王朝時代と出たものやそれに近しい物だけにしぼったはずなのでそこそこ買い取ってもらえるだろう。
そんな風に思っていたのだが、ふたを開ければ買い取れたのは半分だけ。
やっぱり骨董品の定義が俺にはわからない。
「ということで今ので全部だ。質問は?」
「この買い取れなかったものは他所でも価値がないと判断していいのか?」
「私には価値がなかっただけで他の誰かにとって価値があるものかもしれない。とはいえ、クズであることに変わりはないから不要ならさっさと買取屋にでも持ち込むんだね。」
「その買取屋が俺なんだけどなぁ。」
「他所に持ち込めばいいじゃないか。案外高値で引き取ってもらえるかもしれないよ。」
この人が価値はないと判断した物を他の買取屋が価値があると判断する。
人の価値観なんて色々あるのが当たり前だが、こういう品でそれはありなんだろうか。
まぁ、俺は金になればそれでいいんだけどさ。
「とりあえず買い取れる奴はそれで頼む、残りは持って帰ることにする。」
「賢明な判断だね、それに免じてもう金貨1枚追加してあげるよ。」
「そんなにいいのか?」
「さっきのナイフもそうだが旧王朝時代の品は人気が高くてね、状態もいいしこれだけ持ち込んでくれたお礼だよ。」
「なるほど、次回から気を付けて探してみるよ。因みにコインはどうなんだ?」
「それはもうかき集めている坊やが多いからね、そっちで見てもらいな。」
前にかき集めた旧王朝時代のコインはどうやら対象外のようだ。
まぁ、あれはコレクションなので手放すつもりはないので今でも向こうの屋敷で静かに俺の帰りを待っている事だろう。
離婚した時に引き取ってもらえるようにミラにお願いしてあるから売られていないはずだ。
今回の買取金額は金貨12枚。
ナイフが思いのほか高く金貨7枚で買い取ってもらえたのが大きかったな。
他の品は少額ながら俺が持っているだけではただのごみだったので、金貨5枚になったのなら十分すぎる結果と言えるだろう。
これこそが転売の醍醐味、どれだけ価値のあるものを見つけて売り抜けられるのか。
この瞬間がたまんないんだよなぁ。
サンチョさんが残った荷物を俺の横に置き、オリビアさんが金貨を積み上げる。
これにて買取は終了・・・とはいかないわけで。
「どうだい、めぼしいものはあったかい?」
「とりあえずこの『バジリスクの牙』と『月乞いの鐘』それと『マジカルバブレス』の三つが欲しい。値札がなかったんだがいくらになる?」
「最初の二つはともかくなんで三つ目が欲しいんだい?」
「今俺が一番欲しい物だったんでね。値段次第では牙はあきらめるとして後ろ二つをぜひ買わせてもらいたい。」
「鐘は金貨4枚、もう一つは金貨1枚で譲ってあげるよ。」
「そんなのでいいのか?」
「あの機械は使い道がなくて困ってたんでね、引き取ってもらえると助かるよ。サンチョ、大きいから屋敷まで持って行っておやり。」
怖い人だと思ったんだが、話してみると案外気さくで面倒見もいいというのが今の印象。
しっかし、まさかこんな所で問題を解決する道具が見つかるとは思わなかった。
これで夏に向けて準備ができる。
なにより、あのナイフを含めしっかりと現金化できたのは大きいな。
いい加減片付けないとウィフさんにも迷惑をかけるからさっさと売り切ってしまわないと。
奥様方から押し付けられた・・・いや、頂いた品はまだまだたくさんある。
すぐに現金化できない物ばかりなので根気強く減らしていくしかないわけだけど。
「ほかはいいのかい?」
「あぁ、今日はいい取引をしてもらって感謝してる。」
「言葉遣いがちょいとあれだが若いのに礼儀正しいし持ってきた品も悪くない、今後も期待してるからね。」
「期待しないで待っていてくれ。」
そう簡単に価値のあるものが見つかるとは限らない。
むしろ遺跡やダンジョンに潜った方がそういった品は見つけられそうだが、やはりそれ目当てっていうのは俺の性に合わなさそうだ。
小さなことからコツコツとってね。
オリビアさんも俺と同じく買取屋。
だが、その実力と経験は元の世界を含めても勝てる要素がどこにもない。
上には上がいる、そのステージに立てるまで骨董品には手を出さないでおこう。
そう肝に銘じるのだった。
とりあえずその辺に伝手のありそうなフェルさんに声をかけると、案の定それを専門にしている業者を紹介してもらえた。
この世界でも骨董品的な物は金持ちに人気があるらしく、貴族や商人が好んで蒐集しているのだとか。
正直その辺は全く興味が無いのだが金になるのであれば話は別だ。
これらを好んで転売しようとは思わないけれど相場スキルがあるので偽物をつかまされたり高値で買い付けるなんて言うへまはしないだろう。
そう考えると非常に適しているのだがやっぱり興味が無いんだよなぁ。
興味が無ければ手を出さない。
それがこの手の商売の鉄則だ。
熱量があれば工夫も出来るしそれなりに失敗しても挽回できる、だがそれがなければ大きな痛手を負う事もあるしそこから挫折につながることもある。
全戦全勝とはいかないけれど、負けた時の落ち込みを考えたら慣れないものに手を出すもんじゃない。
ともかくだ、そんな骨董品を換金するべく向かったのは王都の裏路地を進んだ先にある古ぼけた倉庫。
表札無し、看板無し、人気無し。
ないない尽くしのこの建物に本当に業者がいるんだろうか。
でもなぁ、フェルさんが態々嘘を教えるとも思えないしなぁ。
とりあえず言われたとおりに三度、二度、三度倉庫の戸をノックしてから教えてもらった言葉を紡ぐ。
「ラメーンお届けに参りました!」
なんでラメーンなんだよっていうツッコミは無しだ。
この世界でも似たようなものはあるし、デリバリーも考案してから今や国中に広がっている。
なにも変なところはない・・・はずだ。
「デリバリーは頼んでないよ。」
「でもフェルさんから頼まれたんですけどねぇ。」
「あの青二才かい、まったく。さっさと入りな。」
中から聞こえてきた老婆の声に反応するように倉庫の扉が左右に開かれる。
が、中は真っ暗で誰かがいるようにも見えない。
まぁ、大丈夫だろう。
たぶん。
足元に置いた荷物を担ぎなおして中に足を踏み入れると、後ろの戸が静かにしまった。
窓があるはずなのに中は真っ暗で何も見えない。
「ちょいと待ちな、いま明かりをつけるから。」
しばらくすると奥の方でオレンジ色の明かりが灯り、壁の両端に灯った光がこちらに向かって数を増やしながら近づいてきた。
「随分と若い客だね、坊や名前は?」
「シロウだ。」
「あぁ、元名誉男爵の子だね。なるほど、あの青二才が紹介するのもうなずける。坊や、ここがどんな場所かもちろん知っているんだろうねぇ。」
最後の光が灯るとそれに照らされながら正面からやって来たのは、皴皴の老婆。
まるで絵本に出てくる悪い魔法使いのようだ。
フェルさんを青二才扱い、俺はそれ以下の坊やか。
別にそう言われて嫌な気分にはならないが、なんとなくこの人には逆らってはいけないというのだけはわかる。
命が惜しければおとなしくしておこう。
「飛び切り珍しい物を売買している場所だろ?」
「その通り。まずはブツをお出し、ここに見合う物だったら奥に案内してやるよ。そうじゃないのならそれを置いてさっさと帰りな。」
「こいつを頼む。」
どうやら奥に入るためにはこの場に相応しい物を持ってきたか審査されるようだ。
フェルさん曰くおそらく大丈夫だろうという話だったのだが、本当にこのナイフで大丈夫なんだろうか。
「ふむ、旧王朝時代の儀礼用装飾銀ナイフ。錆もないし本数もそれなりにある、悪くないね。」
「本当か。」
「欲を言えばもう一声欲しいところだが、他に何かあるのかい?」
「とりあえず手あたり次第に持ってきた、価値があるかは見てから判断してもらえると助かる。」
「ほぉ、足元の袋全部かい。いいよ、奥でじっくり見てやろうじゃないか。」
どうやらお眼鏡にかなったようだ。
満足そうに笑う老婆からナイフを返してもらい、先を行く老婆を追いかける。
古ぼけた倉庫の奥には階段がありそのまま地下に降りられるようになっていた。
この感じから察するにおそらく下水道へ降りる為の場所の上に倉庫を作ったんだろう。
下水道と言ってもそのまま排水路につながっているわけではなく、保守点検用の部屋がいくつもあるのでそのうちの一つに降りられるようだ。
階段の下は小ホールのようになっており奥には別の部屋に通じる扉も見える。
「とりあえず査定品はそこに置きな。少し時間がかかるから待っている間にこの部屋に置いてる商品は好きなように見ていいよ。ただし呪われたからって文句を言うのは大間違いだからね。」
「そんなものもあるのか。」
「そりゃあるさ、古い物なんてのは怨念と執念の塊みたいなものだからね。それと、壊しても弁償してもらうからくれぐれも気を付けるんだよ。」
そういうと老婆は手ぶらで奥の部屋へと消えてしまった。
荷物は・・・、と言おうと思ったらいつの間にか現れた巨漢の男が軽々と荷物を持ち追いかけるようにして奥へと向かう。
うーむ、いつの間に。
突然一人にされてしまったのだが、自由に見て回っていいとのことだったので壁沿いに展示されている商品を順番に見て回る。
骨董品というだけあって壺だの皿だの絵画だの元の世界にもたくさんあった物が並んでいるのだが、突然よくわからない生き物の頭の骨や触ると呪われそうな禍々しいお札なんかも出てきて非常に面白い。
他にも古ぼけた短剣や槍、血糊の付いた斧なんかも飾られている。
この辺が異世界って感じだなぁ。
元の世界ではまずお目にかかれないようなラインナップ。
こういうのを見ると俺が持ってきたものなんて玩具みたいに思えてくるなぁ。
「終わったよ。」
そんなことを考えていると、奥から老婆が戻ってきた。
その後ろにはさっきの巨漢が荷物を持ったまま控えている。
「お眼鏡にかなうものがあったらいいんだが。」
「若いわりに案外悪くなかったよ。説明するからこっちにおいで。」
手招きされた先には二人掛けの小さな机。
向かい合うようにして座ると、品定めをするように老婆が俺をしっかりとみてくる。
「なんだ?」
「気にしないでおくれ。そうだ、自己紹介がまだだったね。私はここの店主オリビア、後ろの大きいのはサンチョス。このなりだがしゃべれなくてね、悪い子じゃないから気にしないでおくれ。とりあえず順番に説明していくから耳かっぽじってよくお聞き、二度は説明しないからね。」
「わかった、よろしく頼む。」
色々聞きたいことはあるがとりあえず今は目の前のことに集中しよう。
今回持参したのはこの間のナイフの他、サーターアンダギーのレシピと引き換えに貴族の奥様方から回収した不用品の中から価値のありそうなものだけをピックアップして持ち込んでみた。
こういう時鑑定スキルだけじゃなく相場スキルもあるとおおよその値段は販売時期がわかるので非常に助かる。
骨董品の定義もわからなかったので、とりあえず鑑定結果で旧王朝時代と出たものやそれに近しい物だけにしぼったはずなのでそこそこ買い取ってもらえるだろう。
そんな風に思っていたのだが、ふたを開ければ買い取れたのは半分だけ。
やっぱり骨董品の定義が俺にはわからない。
「ということで今ので全部だ。質問は?」
「この買い取れなかったものは他所でも価値がないと判断していいのか?」
「私には価値がなかっただけで他の誰かにとって価値があるものかもしれない。とはいえ、クズであることに変わりはないから不要ならさっさと買取屋にでも持ち込むんだね。」
「その買取屋が俺なんだけどなぁ。」
「他所に持ち込めばいいじゃないか。案外高値で引き取ってもらえるかもしれないよ。」
この人が価値はないと判断した物を他の買取屋が価値があると判断する。
人の価値観なんて色々あるのが当たり前だが、こういう品でそれはありなんだろうか。
まぁ、俺は金になればそれでいいんだけどさ。
「とりあえず買い取れる奴はそれで頼む、残りは持って帰ることにする。」
「賢明な判断だね、それに免じてもう金貨1枚追加してあげるよ。」
「そんなにいいのか?」
「さっきのナイフもそうだが旧王朝時代の品は人気が高くてね、状態もいいしこれだけ持ち込んでくれたお礼だよ。」
「なるほど、次回から気を付けて探してみるよ。因みにコインはどうなんだ?」
「それはもうかき集めている坊やが多いからね、そっちで見てもらいな。」
前にかき集めた旧王朝時代のコインはどうやら対象外のようだ。
まぁ、あれはコレクションなので手放すつもりはないので今でも向こうの屋敷で静かに俺の帰りを待っている事だろう。
離婚した時に引き取ってもらえるようにミラにお願いしてあるから売られていないはずだ。
今回の買取金額は金貨12枚。
ナイフが思いのほか高く金貨7枚で買い取ってもらえたのが大きかったな。
他の品は少額ながら俺が持っているだけではただのごみだったので、金貨5枚になったのなら十分すぎる結果と言えるだろう。
これこそが転売の醍醐味、どれだけ価値のあるものを見つけて売り抜けられるのか。
この瞬間がたまんないんだよなぁ。
サンチョさんが残った荷物を俺の横に置き、オリビアさんが金貨を積み上げる。
これにて買取は終了・・・とはいかないわけで。
「どうだい、めぼしいものはあったかい?」
「とりあえずこの『バジリスクの牙』と『月乞いの鐘』それと『マジカルバブレス』の三つが欲しい。値札がなかったんだがいくらになる?」
「最初の二つはともかくなんで三つ目が欲しいんだい?」
「今俺が一番欲しい物だったんでね。値段次第では牙はあきらめるとして後ろ二つをぜひ買わせてもらいたい。」
「鐘は金貨4枚、もう一つは金貨1枚で譲ってあげるよ。」
「そんなのでいいのか?」
「あの機械は使い道がなくて困ってたんでね、引き取ってもらえると助かるよ。サンチョ、大きいから屋敷まで持って行っておやり。」
怖い人だと思ったんだが、話してみると案外気さくで面倒見もいいというのが今の印象。
しっかし、まさかこんな所で問題を解決する道具が見つかるとは思わなかった。
これで夏に向けて準備ができる。
なにより、あのナイフを含めしっかりと現金化できたのは大きいな。
いい加減片付けないとウィフさんにも迷惑をかけるからさっさと売り切ってしまわないと。
奥様方から押し付けられた・・・いや、頂いた品はまだまだたくさんある。
すぐに現金化できない物ばかりなので根気強く減らしていくしかないわけだけど。
「ほかはいいのかい?」
「あぁ、今日はいい取引をしてもらって感謝してる。」
「言葉遣いがちょいとあれだが若いのに礼儀正しいし持ってきた品も悪くない、今後も期待してるからね。」
「期待しないで待っていてくれ。」
そう簡単に価値のあるものが見つかるとは限らない。
むしろ遺跡やダンジョンに潜った方がそういった品は見つけられそうだが、やはりそれ目当てっていうのは俺の性に合わなさそうだ。
小さなことからコツコツとってね。
オリビアさんも俺と同じく買取屋。
だが、その実力と経験は元の世界を含めても勝てる要素がどこにもない。
上には上がいる、そのステージに立てるまで骨董品には手を出さないでおこう。
そう肝に銘じるのだった。
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