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1227.転売屋は携帯用ボトルを考案する
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「今日は店を出しているようだな。」
「お、クーガーさん戻って来たのか。今回は何を退治してきたんだ?」
「パイホーンの群れを殲滅してきたんだが、あいつら肉も皮もないから儲けがいまいちなのが欠点だ。」
「パイホーン・・・確か、鋼鉄の体を持つ牛だったっけか?」
ダンジョン街には出てこなかったので現物を見たことはないが、魔物図鑑に載っていたのを見て覚えている。
まるでブリキの玩具のような見た目だが、中々な速度で走るらしい。
どちらかというとゴーレムに近い魔物らしく痛覚もないので倒すのはなかなか大変なんだとか。
それでいて生きてる牛のように群れて移動するんだから不思議だよなぁ。
唯一の救いは進行方向にいなければ襲ってこないという事であくまでも目の前を邪魔する物を排除するだけのようだ。
「そいつで間違いない。体を持ち帰ろうにも一人じゃ限界があるからな、致し方なくその場に捨ててきたところだ。とはいえ持ち帰っても潰して再形成するところかららしいからあまり歓迎はされないだろうけどな。」
「そりゃ勿体ない話だ。今日はどうする?またすぐ出るのか?」
「いや、明後日に港まで行くからそれまで休養する。消耗品も補充したいし武器も研ぎに出す時期が来た。」
「ん?港まで?」
「何だ聞いてないのか?今度港まで行くからとお前の護衛を頼まれたんだよ。大事な人を迎えに行くんだろ?」
確かに明日はマリーさんとシャルロットを迎えに行く日だが、まさかクーガーさんが護衛についてくれるとは思わなかった。
この人は基本護衛を引き受けたりはしないのだが、アニエスさんに何か言われたんだろうなぁ。
普段受けない仕事を引き受けてもらうわけだし報酬はしっかり出さないと。
「護衛がつくって話は聞いていたが、そうかクーガーさんが来てくれるのか。」
「明後日の朝一番に正門前に集合らしいからしっかり打合せしとくんだぞ。これ、捨てといてくれ。」
「なんだこれ。」
「パイホーンの角だ。討伐証明の為に持ち帰ったんだが、ギルドで要らないと突き返された。ったく、切り取るの大変だったのに適当なこと言いやがって。」
『パイホーンの角。全身が金属で出来た魔導生物の一種。体の中は空洞で意思はなく、ただ群れを成して周囲を走り続ける不思議な生き物。進路を妨害しない限り襲ってくることはないが、進行方向に街や村があっても止まる事はない為危険だと判断される度に駆除される。最近の平均取引価格は銅貨22枚。最安値銅貨15枚最高値銀貨30枚、最終取引日は16日前と記録されています。』
クーガーさんから渡されたのは金属製の筒。
鉄パイプよりも太い感じで、手に持った感じは手持ちタイプの水筒のようだ。
角という割には先は平らで断面が綺麗であればそのまんまカップとしても使えそうな感じ。
あれだ、ステンレスマグがこんな感じだ。
「どうした?」
「いや、手に持つにはいい感じの大きさだと思ってな。」
「確かに水を入れるにはよさそうだが、量が入らないだろ。」
「まぁそうなんだけど。」
冒険者が主に使うのは皮を加工した水袋。
アクアホーンという牛の皮を使っており、こっちはれっきとした生の牛なので肉も美味しくいただかれるので常に需要がある。
食える牛と食えない牛、選ぶならそりゃあ前者だよなぁ。
「とにかく明後日、忘れるなよ。」
そう言い残してクーガーさんはお土産を置いて去っていった。
残されたパイホーンの角は銀色に輝き手のひらから冷たさが伝わってくる。
これ、マジで何かに使えないだろうか。
流石にこのまま使うと口を切ってしまうので、露店でグラインドマンティスの鎌を買ってきてゴリゴリと切断面を研磨していく。
幸い客も来なかったので店そっちのけで削り続けること30分ほど。
ついに断面全てが滑らかになり指で触っても口をつけても問題ないようになった。
大きさは500mlのペットボトル程。
マグカップにしては大きいけれど、水筒にするには蓋がない。
となると同じような物で蓋をしなければならなわけだがそうなるとパイホーンを探しに行かなければならなくなる。
それならいっそティタム鉱を加工して蓋を作るという手もあるが、やはり同素材の方が良いだろう。
とりあえず情報収集だな。
早々と店を畳み、向かったのは冒険者ギルド。
つい先ほどクーガーさんが報告したところだったので、すぐに担当した職員が見つかった。
「パイホーンでしたらここから3時間ぐらいの所で退治されたはずです。あのまま進むと穀倉地に突っ込みそうだったので退治してもらったんですよ。作付け前に踏み荒らされたら大変ですからね。」
「だが退治した証明として角がいるはずだが受け取らなかったんだろ?なんでだ?」
「クーガーさんが嘘をつくような人じゃないからですよ。あの人に頼んで失敗したことはありませんし討伐したのを全部回収って大変じゃないですか。」
「つまり楽をしてもらうために断ったと。」
「最初に要らないって言ったはずなんですけど、伝わってなかったみたいで。」
まぁその辺は良くある話だ。
ギルドとしてはクーガーさんに楽をしてほしかったようなので今度会った時にフォローを入れておくとして、メインはパイホーンについて。
残された死骸については後日ギルドが回収するとの事だが、ぶっちゃけ使い道はないそうなので自由に持って行っていいそうだ。
蓋をどうするかは決まっていないものの角の方は何かに使えるかもしれない。
次にいつ手に入るかもわからないのでとりあえず回収する旨だけを伝えて屋敷へと戻った。
「これがパイホーンの角ですか、面白いですね。」
「ウィフさんも見たことはないのか。」
「このような生活をしているとまず目にすることのない魔物ですので。」
「でもこれは面白いですわね、氷を入れても全く溶ける気配がありませんもの。」
「かといって結露するわけでもない。中が二重構造か何かになってるんだろうな。」
屋敷に戻り試しにカップに水を注いで観察していると夕飯時になり皆が食堂に集まって来た。
氷を入れて食事の間も放置していたのだが終わってもなお残っている。
どうやら断熱性が高く更には結露しにくい構造なんだろう。
上から見るだけではあまりわからないのだが、そうだとしか考えられないからそういう事にしておく。
「とはいえこれを使って食事を楽しむには大きすぎますね。」
「そうなんだよなぁ。かといって角を切り取ってるから対になる蓋はないわけで。ティタム鉱を加工して蓋にすることも考えたんだが個体毎に大きさが違うものを改良するとなるとかなりの手間と時間がかかるだろう。そうなると無駄に値段が上がるわけだ。」
「主殿はこれを売るおつもりで?」
「次は暖かい物を入れてみるつもりだが、もし冷めにくいなら外に出ても熱々の香茶を飲めるわけだろ?夏は冷たく冬は暖かい。そんな入れ物があったらどうする?」
「使いますわね。」
「ってことだ。」
保温性の高い水筒なんてこの世界にはまだなかったはず。
冷たい物や温かい物を好きな時に飲めるとなれば間違いなく貴族が食いつくだろう。
いずれ真似されるにせよ誰が考案したかをしっかりと告知しておけばしばらくは俺から買ってくれるはずだ。
なんなら名前や印を彫るという手もある。
とはいえそれをするためには蓋になる物を考えなければいけないわけで。
ひっくり返しても中に入った液体がこぼれることはなく、さらには簡単に開け閉めできる。
そんなすごい素材があればいいんだが・・・。
「ただいま戻りました。」
皆で顔を寄せ合いどうしたもんかと知恵を絞っていると、外出していたアニエスさんが戻ってきた。
どうやら魔物と戦いに行っていたらしい。
「お、アニエスさんお帰り。」
「皆様集まってどうされたんです?」
「パイホーンの角を手に入れたんだが、中に入れた液体がこぼれないように蓋をできないかって考えてるんだ。」
「たしかクーガー様が駆除しにいかれたやつですね。なるほど、それを水筒か何かにするおつもりでしたか。」
「予定ではそうなるはずなんだが、中々難しい。」
こちらにやってきたアニエスさんがおもむろに角を手に取り、興味深そうに色々な角度から覗き見ている。
そして最後に上から見てから二度ほど小さくうなずくと、カバンから何かを取り出し角の飲み口に押し込んだ。
「こうすればひっくり返してもこぼれませんよ。」
「うぉ、マジか。全然こぼれない。」
「多少振るぐらいでははがれたりしません。外すときは端からひっぱってやればこの通り。」
「戻りましたわね、いったい何ですの?」
アニエスさんが張り付けたのは真っ黒い塊。
飲み口よりも少し大きい其れは上部をしっかりと塞ぎ、はみ出た部分がしっかりと角に張り付くのではがれることはないようだ。
試しにシェイカーのように縦横無尽に振ってみても中身がこぼれる感じはなかった。
こんなすごい素材があるなんて全然知らなかったなぁ。
「ブラックスライムの核です。適度に硬くて適度に柔らかく水にも熱にも強い素材ですから蓋代わりにするにはもってこいですよ。」
「冒険者はよく使ってるのか?」
「飲みさしを蓋するのによく使っています。」
「確かにこれなら蓋問題は一気に解決、スライムの核ならそこまで値段は高くないはずだ。」
となると残りはボトルをどれだけ回収できるか、それによって儲けが一気に変わってくる。
とはいえ今日はこの時間だし、明日の朝いちばんで現地に向かって回収するとしよう。
よかった、お迎えが明日じゃなくて。
二人には早く会いたいけれど、金になる物を放置するのは俺の精神衛生上宜しくない。
翌朝、馬車を借りて急ぎパイホーンを退治したと思われる場所へと向かう。
話に聞いていた通り三時間ほど進むと、金属の破片がいたるところに転がっていた。
次第にその間隔が短くなり、破片がだんだんと魔物の形を成していく。
そしてついに目的の角を発見することに成功した。
「てっきり一頭から二本しか取れないと思っていたんだが、案外本数が多いんだな。」
「一説によればこの角から微弱な魔力を放出してお互いの場所を把握しているのだとか。」
「なるほどなぁ。だからいろんな方向を向いているわけか。」
パイホーンの頭に生えるのは二本の角。
だがその角は途中で二股に分かれ全部で四本のボトルを確保できそうだ。
「切り出しはお任せを、シロウ様は飲み口の研磨をお願いします。」
「任された。」
「ジンは向こうのパイホーンを、私はこちら側を受け持ちます。」
「お任せを。アニエス様、せっかくですからどちらが多く回収できるか勝負しようじゃありませんか。」
「望むところです。」
いやいや、競争とかいいからしっかり綺麗にはぎとってくれ。
そんな俺の願いはむなしく、二人が落ち着くまで勝負は続けられた。
残ったのは大量の角たち。
これを研磨していくのにいったいどれだけの時間がかかるんだろうか。
流石にここで全部を削るのは難しいのでキリのいい所で切り上げ屋敷へと戻る。
今日明日で作って売り出したいところだが、明日は大事な用事が待っている。
ってことでとりあえず今日はここまでにしよう。
まずは身内で使用してみてそれから次の段階へと移行する為にも、下準備はしっかりと。
新しい儲けのネタにテンションが上がりながらそれをどうやって売り込むのか思案を重ねるのだった。
「お、クーガーさん戻って来たのか。今回は何を退治してきたんだ?」
「パイホーンの群れを殲滅してきたんだが、あいつら肉も皮もないから儲けがいまいちなのが欠点だ。」
「パイホーン・・・確か、鋼鉄の体を持つ牛だったっけか?」
ダンジョン街には出てこなかったので現物を見たことはないが、魔物図鑑に載っていたのを見て覚えている。
まるでブリキの玩具のような見た目だが、中々な速度で走るらしい。
どちらかというとゴーレムに近い魔物らしく痛覚もないので倒すのはなかなか大変なんだとか。
それでいて生きてる牛のように群れて移動するんだから不思議だよなぁ。
唯一の救いは進行方向にいなければ襲ってこないという事であくまでも目の前を邪魔する物を排除するだけのようだ。
「そいつで間違いない。体を持ち帰ろうにも一人じゃ限界があるからな、致し方なくその場に捨ててきたところだ。とはいえ持ち帰っても潰して再形成するところかららしいからあまり歓迎はされないだろうけどな。」
「そりゃ勿体ない話だ。今日はどうする?またすぐ出るのか?」
「いや、明後日に港まで行くからそれまで休養する。消耗品も補充したいし武器も研ぎに出す時期が来た。」
「ん?港まで?」
「何だ聞いてないのか?今度港まで行くからとお前の護衛を頼まれたんだよ。大事な人を迎えに行くんだろ?」
確かに明日はマリーさんとシャルロットを迎えに行く日だが、まさかクーガーさんが護衛についてくれるとは思わなかった。
この人は基本護衛を引き受けたりはしないのだが、アニエスさんに何か言われたんだろうなぁ。
普段受けない仕事を引き受けてもらうわけだし報酬はしっかり出さないと。
「護衛がつくって話は聞いていたが、そうかクーガーさんが来てくれるのか。」
「明後日の朝一番に正門前に集合らしいからしっかり打合せしとくんだぞ。これ、捨てといてくれ。」
「なんだこれ。」
「パイホーンの角だ。討伐証明の為に持ち帰ったんだが、ギルドで要らないと突き返された。ったく、切り取るの大変だったのに適当なこと言いやがって。」
『パイホーンの角。全身が金属で出来た魔導生物の一種。体の中は空洞で意思はなく、ただ群れを成して周囲を走り続ける不思議な生き物。進路を妨害しない限り襲ってくることはないが、進行方向に街や村があっても止まる事はない為危険だと判断される度に駆除される。最近の平均取引価格は銅貨22枚。最安値銅貨15枚最高値銀貨30枚、最終取引日は16日前と記録されています。』
クーガーさんから渡されたのは金属製の筒。
鉄パイプよりも太い感じで、手に持った感じは手持ちタイプの水筒のようだ。
角という割には先は平らで断面が綺麗であればそのまんまカップとしても使えそうな感じ。
あれだ、ステンレスマグがこんな感じだ。
「どうした?」
「いや、手に持つにはいい感じの大きさだと思ってな。」
「確かに水を入れるにはよさそうだが、量が入らないだろ。」
「まぁそうなんだけど。」
冒険者が主に使うのは皮を加工した水袋。
アクアホーンという牛の皮を使っており、こっちはれっきとした生の牛なので肉も美味しくいただかれるので常に需要がある。
食える牛と食えない牛、選ぶならそりゃあ前者だよなぁ。
「とにかく明後日、忘れるなよ。」
そう言い残してクーガーさんはお土産を置いて去っていった。
残されたパイホーンの角は銀色に輝き手のひらから冷たさが伝わってくる。
これ、マジで何かに使えないだろうか。
流石にこのまま使うと口を切ってしまうので、露店でグラインドマンティスの鎌を買ってきてゴリゴリと切断面を研磨していく。
幸い客も来なかったので店そっちのけで削り続けること30分ほど。
ついに断面全てが滑らかになり指で触っても口をつけても問題ないようになった。
大きさは500mlのペットボトル程。
マグカップにしては大きいけれど、水筒にするには蓋がない。
となると同じような物で蓋をしなければならなわけだがそうなるとパイホーンを探しに行かなければならなくなる。
それならいっそティタム鉱を加工して蓋を作るという手もあるが、やはり同素材の方が良いだろう。
とりあえず情報収集だな。
早々と店を畳み、向かったのは冒険者ギルド。
つい先ほどクーガーさんが報告したところだったので、すぐに担当した職員が見つかった。
「パイホーンでしたらここから3時間ぐらいの所で退治されたはずです。あのまま進むと穀倉地に突っ込みそうだったので退治してもらったんですよ。作付け前に踏み荒らされたら大変ですからね。」
「だが退治した証明として角がいるはずだが受け取らなかったんだろ?なんでだ?」
「クーガーさんが嘘をつくような人じゃないからですよ。あの人に頼んで失敗したことはありませんし討伐したのを全部回収って大変じゃないですか。」
「つまり楽をしてもらうために断ったと。」
「最初に要らないって言ったはずなんですけど、伝わってなかったみたいで。」
まぁその辺は良くある話だ。
ギルドとしてはクーガーさんに楽をしてほしかったようなので今度会った時にフォローを入れておくとして、メインはパイホーンについて。
残された死骸については後日ギルドが回収するとの事だが、ぶっちゃけ使い道はないそうなので自由に持って行っていいそうだ。
蓋をどうするかは決まっていないものの角の方は何かに使えるかもしれない。
次にいつ手に入るかもわからないのでとりあえず回収する旨だけを伝えて屋敷へと戻った。
「これがパイホーンの角ですか、面白いですね。」
「ウィフさんも見たことはないのか。」
「このような生活をしているとまず目にすることのない魔物ですので。」
「でもこれは面白いですわね、氷を入れても全く溶ける気配がありませんもの。」
「かといって結露するわけでもない。中が二重構造か何かになってるんだろうな。」
屋敷に戻り試しにカップに水を注いで観察していると夕飯時になり皆が食堂に集まって来た。
氷を入れて食事の間も放置していたのだが終わってもなお残っている。
どうやら断熱性が高く更には結露しにくい構造なんだろう。
上から見るだけではあまりわからないのだが、そうだとしか考えられないからそういう事にしておく。
「とはいえこれを使って食事を楽しむには大きすぎますね。」
「そうなんだよなぁ。かといって角を切り取ってるから対になる蓋はないわけで。ティタム鉱を加工して蓋にすることも考えたんだが個体毎に大きさが違うものを改良するとなるとかなりの手間と時間がかかるだろう。そうなると無駄に値段が上がるわけだ。」
「主殿はこれを売るおつもりで?」
「次は暖かい物を入れてみるつもりだが、もし冷めにくいなら外に出ても熱々の香茶を飲めるわけだろ?夏は冷たく冬は暖かい。そんな入れ物があったらどうする?」
「使いますわね。」
「ってことだ。」
保温性の高い水筒なんてこの世界にはまだなかったはず。
冷たい物や温かい物を好きな時に飲めるとなれば間違いなく貴族が食いつくだろう。
いずれ真似されるにせよ誰が考案したかをしっかりと告知しておけばしばらくは俺から買ってくれるはずだ。
なんなら名前や印を彫るという手もある。
とはいえそれをするためには蓋になる物を考えなければいけないわけで。
ひっくり返しても中に入った液体がこぼれることはなく、さらには簡単に開け閉めできる。
そんなすごい素材があればいいんだが・・・。
「ただいま戻りました。」
皆で顔を寄せ合いどうしたもんかと知恵を絞っていると、外出していたアニエスさんが戻ってきた。
どうやら魔物と戦いに行っていたらしい。
「お、アニエスさんお帰り。」
「皆様集まってどうされたんです?」
「パイホーンの角を手に入れたんだが、中に入れた液体がこぼれないように蓋をできないかって考えてるんだ。」
「たしかクーガー様が駆除しにいかれたやつですね。なるほど、それを水筒か何かにするおつもりでしたか。」
「予定ではそうなるはずなんだが、中々難しい。」
こちらにやってきたアニエスさんがおもむろに角を手に取り、興味深そうに色々な角度から覗き見ている。
そして最後に上から見てから二度ほど小さくうなずくと、カバンから何かを取り出し角の飲み口に押し込んだ。
「こうすればひっくり返してもこぼれませんよ。」
「うぉ、マジか。全然こぼれない。」
「多少振るぐらいでははがれたりしません。外すときは端からひっぱってやればこの通り。」
「戻りましたわね、いったい何ですの?」
アニエスさんが張り付けたのは真っ黒い塊。
飲み口よりも少し大きい其れは上部をしっかりと塞ぎ、はみ出た部分がしっかりと角に張り付くのではがれることはないようだ。
試しにシェイカーのように縦横無尽に振ってみても中身がこぼれる感じはなかった。
こんなすごい素材があるなんて全然知らなかったなぁ。
「ブラックスライムの核です。適度に硬くて適度に柔らかく水にも熱にも強い素材ですから蓋代わりにするにはもってこいですよ。」
「冒険者はよく使ってるのか?」
「飲みさしを蓋するのによく使っています。」
「確かにこれなら蓋問題は一気に解決、スライムの核ならそこまで値段は高くないはずだ。」
となると残りはボトルをどれだけ回収できるか、それによって儲けが一気に変わってくる。
とはいえ今日はこの時間だし、明日の朝いちばんで現地に向かって回収するとしよう。
よかった、お迎えが明日じゃなくて。
二人には早く会いたいけれど、金になる物を放置するのは俺の精神衛生上宜しくない。
翌朝、馬車を借りて急ぎパイホーンを退治したと思われる場所へと向かう。
話に聞いていた通り三時間ほど進むと、金属の破片がいたるところに転がっていた。
次第にその間隔が短くなり、破片がだんだんと魔物の形を成していく。
そしてついに目的の角を発見することに成功した。
「てっきり一頭から二本しか取れないと思っていたんだが、案外本数が多いんだな。」
「一説によればこの角から微弱な魔力を放出してお互いの場所を把握しているのだとか。」
「なるほどなぁ。だからいろんな方向を向いているわけか。」
パイホーンの頭に生えるのは二本の角。
だがその角は途中で二股に分かれ全部で四本のボトルを確保できそうだ。
「切り出しはお任せを、シロウ様は飲み口の研磨をお願いします。」
「任された。」
「ジンは向こうのパイホーンを、私はこちら側を受け持ちます。」
「お任せを。アニエス様、せっかくですからどちらが多く回収できるか勝負しようじゃありませんか。」
「望むところです。」
いやいや、競争とかいいからしっかり綺麗にはぎとってくれ。
そんな俺の願いはむなしく、二人が落ち着くまで勝負は続けられた。
残ったのは大量の角たち。
これを研磨していくのにいったいどれだけの時間がかかるんだろうか。
流石にここで全部を削るのは難しいのでキリのいい所で切り上げ屋敷へと戻る。
今日明日で作って売り出したいところだが、明日は大事な用事が待っている。
ってことでとりあえず今日はここまでにしよう。
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