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1605.転売屋は狼と夜襲をかける
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グレイウルフと狼人族の二人が大勢のシルバーウルフを従える姿は中々に壮観である。
俺はというとシルバーウルフの一番後ろに座り、狼語?の会話をただ聞き流しているだけだ。
ワフワフだのガウガウだのミャウミャウだの、なんとも形容し難いがあれは確実に会話している。
嵐に追われて魔物の群れが北上しているという話を聞いてさっさと帰るはずだったんだが、気づけばそれを殲滅する話になっている。
明日は明日で忙しくなるんだがまいったなぁ。
小さくため息をつきながら草原の向こうに沈み始めた太陽を見つめていると、いつの間にか話し合いは終わっていたようだ。
解散した狼の間を抜けて二人が戻ってきた。
「お待たせしました。」
「ワフ!」
「作戦は決まったみたいだな。」
「一度魔物をやり過ごし闇夜に乗じて背後から襲撃します。そのまま王都方面へ追い立ててやれば後はホリアが何とかするでしょう。」
「放置するという選択肢はないんだな?」
「放置しても問題はありませんが、彼らのテリトリーを手に入れるという意味では戦って勝つしかありません。幸い向こうは夜目が効きませんからから嵐に怯えている今が絶好の機会です。」
何もしなくても勝手に王都へと向かって勝手に駆除されると思うんだがそれでは意味がないそうだ。
実力を持って相手を制してこそ正しくテリトリーを得ることができる、力こそが全ての世界では戦わないという選択肢は残念ながらないらしい。
「口では簡単にいうが相手はあのラウジャだろ?」
「そうですが?」
「シルバーウルフに勝算はあるのか?」
「私たちがいればあります。陽の下では彼等に武があっても闇世は我々の世界です。遅れは取りません。」
そう力強く宣言するアニエスの声に呼応するように狼たちの遠吠えが山彦のように返ってくる。
ラウジャ。
元の世界でいうケンタウロスのような半身半獣の魔物で、四肢はライオンっぽい肉食獣、上はコボレートのような子供程度の体がついている。
子供って言っても筋骨隆々だし見た目はかなり怖い。
強靭な四肢を最大限に利用した素早い動きと安定した上半身から繰り出される攻撃はシルバーウルフでさえも簡単に倒してしまうだろう。
弓矢や剣を巧みに使って獲物を狩る姿は正に草原の王者、あまりの強さに冒険者や聖騎士団でさえ彼らの近くには行かないようキツく指導されているぐらいだ。
これで魔法でも使えたら地上全てが彼らに支配されていただろう、そう言われるぐらいのヤバいやつ。
そんな無敵とも思える彼らにも一応弱点はあるらしく、ズバリ唯一の弱点は夜。
全くっていうほど夜目が効かず日が暮れると集団で眠って翌日を待つ。
とはいえ夜襲をかけても実力はあるので無傷で討伐できるほど甘い相手ではないのでそれならば危険を侵して攻撃せずやり過ごした方がマシというのが一般的な考えだ。
会話ができれば友好的に解決する方法があったかもしれないけれど、残念ながら中身はコボレート程度なのでそれも叶わないのがまた恐ろしい。
そんな相手と事を構えてしかも勝つ気満々とか、一応考えはあるんだろうけど本当に大丈夫なんだろうか。
「なるほど、夜目が使えないところにさらに追い打ちをかけて目を潰すのか。」
「まずは彼らの野営地にボムフラワーの実を打ち込んでいただき、目を覚ましたところでフラッシュバグの光珠を追加していただきます。こうすることで目を奪い更に混乱したところを襲撃してリーダーを討伐。それさえ叶えばあとはどうにでもなるでしょう。」
確かに理には叶っている。
夜目が効かないとはいえ暗順応がすすめば多少は見えるはず、そこに強烈な光をぶつけることで完全に視野を奪おうというわけだ。
話だけ聞けばうまく行くような感じはするけれどまだ気になることはある。
「口で言うのは簡単だが誰がリーダーかなんてすぐわかるのか?」
「リーダーは必ず群れの中心で眠りますしこれまで倒してきた相手の頭蓋骨を集めていますのですぐわかるかと。」
「うーん、例え混乱させたとて相手もなかなかの実力者。倒しきれなかったらどうするんだ?」
「逃げます。」
「シンプルだな。」
「無用な被害が出る前に一気の距離を取れば彼らは追ってくることができません。一度襲撃すれば眠れないでしょうから明日以降の動きはかなり鈍感し、そうすれば嵐に追われてさらに弱体化するのは必至。嵐通過後、王都の最大戦力で叩けば最小限の被害で撃破できます。もっともそうなってしまうと儲けが随分と減ってしまいますが。」
儲けが減る?
今回の襲撃はあくまでも狼たちのテリトリーを増やすためで金儲けの要素はどこにもなかったと思うんだがどういうことだろうか。
結果として倒す事がができればテリトリーは増えるわけだし、そこで手に入る素材が増えることに変わりはないと思うんだが。
「どういうことだ?」
「彼らの持つ装備はその危険度から中々流通しておりません。それを山ほど手に入れたとなれば、それはもう各方面から引く手あまたでしょう。少々高い値段を吹っ掛けても十分に売れる、それだけ貴重なものだという事です。」
「俺達だけで倒せば総取り、逃がして王都で倒せば均等割りで儲けはたかが知れてると。なんなら俺が買い取ることになってその分無駄な金が出ていく未来が見えるようだ。」
「ご理解いただけたようで。」
オオカミたちの為にも、なにより俺の懐を温める為にもここでラウジャを仕留める。
そうと決まれば即行動、全員で移動してこの場所をわざと解放し移動してきたラウジャをこの洞窟付近に誘導する。
恐らくリーダーは一番見晴らしのいい場所に陣取るだろうから先ほどの流れで襲撃して撃破する。
それが成功したらすぐさま入り口前に油を撒いて火をつけ中のラウジャを一網打尽にするのだが、それが難しい場合は即座に逃げ出して王都に帰還する。
命あっての物種だからな、わざわざ危険を冒す必要もないだろう。
近くの茂みに油の入った壺を隠しつつ出来るだけ距離を取って様子を伺う。
しばらくすると地平線の向こうから土煙を上げながら無数のラウジャがやってくるのが確認できた。
こっちが風下なので向こうからは俺達の存在はわからないはず、更に距離を取ってからこちらも夜中までしばしの休憩だ。
こんな状況でも仮眠ができるのはそばにいるルフとアニエスのお陰だろう。
戦士は常に休息をとれるようにするべしというのがエリザの教え、気づけば俺もその教えの通りどこでも眠れるようになっていた。
「わふ。」
「ん、そろそろ時間か。」
ルフに頬を舐められぼんやりしていた意識を覚醒させる。
どこでも寝れてすぐに活動できるのが良い冒険者に必要な事、気づけば横のアニエスも大きく伸びをして体をほぐし始めていた。
今日は新月。
ぼんやりとして見えにくいが狼たちも活動を開始したようだ。
「状況は?」
「完全に就寝したようです。見張りはいますがこちらに気付いている様子はありませんし、そもそも気付けません。あとは予定通りに、上手くやってくださいね。」
「ハードルを上げないでくれ。まぁ、やれるだけのことはやるさ。」
狙うは洞窟の上で寝ているであろうリーダーの上。
そこでボムフラワーを炸裂させ、更には合図をしてからフラッシュバグを打ち込んで目を潰す。
個人的にはパームの実を打ち込んでからボムフラワーを炸裂させたい所のなのだが、下手に火がついてそれが灯りになると意味が無いので今回は見送ることにした。
陽の下が彼らの主戦場ならば闇の中は俺達の主戦場だ。
そんなわけで準備が出来次第音を立てずにゆっくりと目的地まで移動、ちょうど洞窟の裏辺りから近づくとかすかに何かがいるのが見える。
「いますね。」
「嘘だろ、見えるのか?」
「このぐらい近づけば。皆、準備はいいですね?」
ブンブン。
声に出さず全員が尻尾で合図を送る。
さぁ、嵐の前の大一番。
これに勝てるかで色々な部分が変わって来る。
正直嵐の前に色々と準備をしたけれど、当てが外れてそこまでの儲けにはならなかった。
上手くいったのは木材やワイルドカウの皮などの防災資材ぐらいだが、それでも大儲けっていうところまではいかないだろう。
食料品の放出は同業の買い占めを嫌った俺がお願いしたことだけども結果として自分の儲けも少なくしてしまったんだよなぁ。
そんなわけで、狼たちのテリトリー拡大よりも自分の儲けの為にも何とかして作戦を成功させなければ。
アニエスに目配せをすると静かに首を縦に動かすのが見えた。
スリングを構え、慣れた手つきでボムフラワーの実を取り出すとそれを番えて力いっぱいゴムを引っ張る。
狙うは洞窟の上。
俺がどれだけへたくそでも装備の力で命中してくれるので何の心配もなく打ち込む事が出来る。
ギリギリまで絞られたゴムが悲鳴を上げると同時に手を離すと、ヒュン!という音と共に実が発射された。
それからわずか2秒。
轟音と共にオレンジ色の炎が巻き起こり、暗闇の中に洞窟がパッと姿を現した。
それと同時に響き渡る怒号と悲鳴。
会話は出来なくても彼ら独自の言語は持っているようで、よくわからない言葉が暗闇の中飛び交っている。
「次!」
慌てている今こそ好機。
声を合図にフラッシュバグの光珠を打ち込んでこちらに気付く前に目を奪う。
『フラッシュバグの光珠。光蟲との呼び名に相応しく光珠を潰すと5秒後に目が開けられなくなるほどの閃光を発する。目視しすぎると目がつぶれると言われるがあながち間違いではない。一匹から一つの光珠しか取れずさらには扱いが難しい為あまり流通することはない。最近の平均取引価格は銀貨3枚、最安値銀貨3枚、最高値銀貨6枚、最終取引日は本日と記録されています。』
光珠を掌でつぶしてから急いでスリングを構えて再び洞窟の上目がけて発射。
目を閉じて顔を伏せながら心の中でしっかりと数を数えると、5を数えた瞬間に瞼の向こう側が真っ白に染まる。
目を閉じただけでなくしっかり伏せていたのにこの白さ。
見えないなりに目を開けていたやつらからすればたまったもんじゃないだろう。
それはもうさっき以上の悲鳴が響き渡り、それを合図に狼たちが一斉に動き始めた。
「くれぐれも無理するなよ!」
「おまかせください!」
遅れるどころか先陣を切ってアニエスとルフがラウジャの群れに突撃する。
勝負は視界が戻ってくるわずか数分。
果たして夜襲は成功するのか、一人その場に残った俺はただただ皆の無事を祈り続けることしか出来なかった。
俺はというとシルバーウルフの一番後ろに座り、狼語?の会話をただ聞き流しているだけだ。
ワフワフだのガウガウだのミャウミャウだの、なんとも形容し難いがあれは確実に会話している。
嵐に追われて魔物の群れが北上しているという話を聞いてさっさと帰るはずだったんだが、気づけばそれを殲滅する話になっている。
明日は明日で忙しくなるんだがまいったなぁ。
小さくため息をつきながら草原の向こうに沈み始めた太陽を見つめていると、いつの間にか話し合いは終わっていたようだ。
解散した狼の間を抜けて二人が戻ってきた。
「お待たせしました。」
「ワフ!」
「作戦は決まったみたいだな。」
「一度魔物をやり過ごし闇夜に乗じて背後から襲撃します。そのまま王都方面へ追い立ててやれば後はホリアが何とかするでしょう。」
「放置するという選択肢はないんだな?」
「放置しても問題はありませんが、彼らのテリトリーを手に入れるという意味では戦って勝つしかありません。幸い向こうは夜目が効きませんからから嵐に怯えている今が絶好の機会です。」
何もしなくても勝手に王都へと向かって勝手に駆除されると思うんだがそれでは意味がないそうだ。
実力を持って相手を制してこそ正しくテリトリーを得ることができる、力こそが全ての世界では戦わないという選択肢は残念ながらないらしい。
「口では簡単にいうが相手はあのラウジャだろ?」
「そうですが?」
「シルバーウルフに勝算はあるのか?」
「私たちがいればあります。陽の下では彼等に武があっても闇世は我々の世界です。遅れは取りません。」
そう力強く宣言するアニエスの声に呼応するように狼たちの遠吠えが山彦のように返ってくる。
ラウジャ。
元の世界でいうケンタウロスのような半身半獣の魔物で、四肢はライオンっぽい肉食獣、上はコボレートのような子供程度の体がついている。
子供って言っても筋骨隆々だし見た目はかなり怖い。
強靭な四肢を最大限に利用した素早い動きと安定した上半身から繰り出される攻撃はシルバーウルフでさえも簡単に倒してしまうだろう。
弓矢や剣を巧みに使って獲物を狩る姿は正に草原の王者、あまりの強さに冒険者や聖騎士団でさえ彼らの近くには行かないようキツく指導されているぐらいだ。
これで魔法でも使えたら地上全てが彼らに支配されていただろう、そう言われるぐらいのヤバいやつ。
そんな無敵とも思える彼らにも一応弱点はあるらしく、ズバリ唯一の弱点は夜。
全くっていうほど夜目が効かず日が暮れると集団で眠って翌日を待つ。
とはいえ夜襲をかけても実力はあるので無傷で討伐できるほど甘い相手ではないのでそれならば危険を侵して攻撃せずやり過ごした方がマシというのが一般的な考えだ。
会話ができれば友好的に解決する方法があったかもしれないけれど、残念ながら中身はコボレート程度なのでそれも叶わないのがまた恐ろしい。
そんな相手と事を構えてしかも勝つ気満々とか、一応考えはあるんだろうけど本当に大丈夫なんだろうか。
「なるほど、夜目が使えないところにさらに追い打ちをかけて目を潰すのか。」
「まずは彼らの野営地にボムフラワーの実を打ち込んでいただき、目を覚ましたところでフラッシュバグの光珠を追加していただきます。こうすることで目を奪い更に混乱したところを襲撃してリーダーを討伐。それさえ叶えばあとはどうにでもなるでしょう。」
確かに理には叶っている。
夜目が効かないとはいえ暗順応がすすめば多少は見えるはず、そこに強烈な光をぶつけることで完全に視野を奪おうというわけだ。
話だけ聞けばうまく行くような感じはするけれどまだ気になることはある。
「口で言うのは簡単だが誰がリーダーかなんてすぐわかるのか?」
「リーダーは必ず群れの中心で眠りますしこれまで倒してきた相手の頭蓋骨を集めていますのですぐわかるかと。」
「うーん、例え混乱させたとて相手もなかなかの実力者。倒しきれなかったらどうするんだ?」
「逃げます。」
「シンプルだな。」
「無用な被害が出る前に一気の距離を取れば彼らは追ってくることができません。一度襲撃すれば眠れないでしょうから明日以降の動きはかなり鈍感し、そうすれば嵐に追われてさらに弱体化するのは必至。嵐通過後、王都の最大戦力で叩けば最小限の被害で撃破できます。もっともそうなってしまうと儲けが随分と減ってしまいますが。」
儲けが減る?
今回の襲撃はあくまでも狼たちのテリトリーを増やすためで金儲けの要素はどこにもなかったと思うんだがどういうことだろうか。
結果として倒す事がができればテリトリーは増えるわけだし、そこで手に入る素材が増えることに変わりはないと思うんだが。
「どういうことだ?」
「彼らの持つ装備はその危険度から中々流通しておりません。それを山ほど手に入れたとなれば、それはもう各方面から引く手あまたでしょう。少々高い値段を吹っ掛けても十分に売れる、それだけ貴重なものだという事です。」
「俺達だけで倒せば総取り、逃がして王都で倒せば均等割りで儲けはたかが知れてると。なんなら俺が買い取ることになってその分無駄な金が出ていく未来が見えるようだ。」
「ご理解いただけたようで。」
オオカミたちの為にも、なにより俺の懐を温める為にもここでラウジャを仕留める。
そうと決まれば即行動、全員で移動してこの場所をわざと解放し移動してきたラウジャをこの洞窟付近に誘導する。
恐らくリーダーは一番見晴らしのいい場所に陣取るだろうから先ほどの流れで襲撃して撃破する。
それが成功したらすぐさま入り口前に油を撒いて火をつけ中のラウジャを一網打尽にするのだが、それが難しい場合は即座に逃げ出して王都に帰還する。
命あっての物種だからな、わざわざ危険を冒す必要もないだろう。
近くの茂みに油の入った壺を隠しつつ出来るだけ距離を取って様子を伺う。
しばらくすると地平線の向こうから土煙を上げながら無数のラウジャがやってくるのが確認できた。
こっちが風下なので向こうからは俺達の存在はわからないはず、更に距離を取ってからこちらも夜中までしばしの休憩だ。
こんな状況でも仮眠ができるのはそばにいるルフとアニエスのお陰だろう。
戦士は常に休息をとれるようにするべしというのがエリザの教え、気づけば俺もその教えの通りどこでも眠れるようになっていた。
「わふ。」
「ん、そろそろ時間か。」
ルフに頬を舐められぼんやりしていた意識を覚醒させる。
どこでも寝れてすぐに活動できるのが良い冒険者に必要な事、気づけば横のアニエスも大きく伸びをして体をほぐし始めていた。
今日は新月。
ぼんやりとして見えにくいが狼たちも活動を開始したようだ。
「状況は?」
「完全に就寝したようです。見張りはいますがこちらに気付いている様子はありませんし、そもそも気付けません。あとは予定通りに、上手くやってくださいね。」
「ハードルを上げないでくれ。まぁ、やれるだけのことはやるさ。」
狙うは洞窟の上で寝ているであろうリーダーの上。
そこでボムフラワーを炸裂させ、更には合図をしてからフラッシュバグを打ち込んで目を潰す。
個人的にはパームの実を打ち込んでからボムフラワーを炸裂させたい所のなのだが、下手に火がついてそれが灯りになると意味が無いので今回は見送ることにした。
陽の下が彼らの主戦場ならば闇の中は俺達の主戦場だ。
そんなわけで準備が出来次第音を立てずにゆっくりと目的地まで移動、ちょうど洞窟の裏辺りから近づくとかすかに何かがいるのが見える。
「いますね。」
「嘘だろ、見えるのか?」
「このぐらい近づけば。皆、準備はいいですね?」
ブンブン。
声に出さず全員が尻尾で合図を送る。
さぁ、嵐の前の大一番。
これに勝てるかで色々な部分が変わって来る。
正直嵐の前に色々と準備をしたけれど、当てが外れてそこまでの儲けにはならなかった。
上手くいったのは木材やワイルドカウの皮などの防災資材ぐらいだが、それでも大儲けっていうところまではいかないだろう。
食料品の放出は同業の買い占めを嫌った俺がお願いしたことだけども結果として自分の儲けも少なくしてしまったんだよなぁ。
そんなわけで、狼たちのテリトリー拡大よりも自分の儲けの為にも何とかして作戦を成功させなければ。
アニエスに目配せをすると静かに首を縦に動かすのが見えた。
スリングを構え、慣れた手つきでボムフラワーの実を取り出すとそれを番えて力いっぱいゴムを引っ張る。
狙うは洞窟の上。
俺がどれだけへたくそでも装備の力で命中してくれるので何の心配もなく打ち込む事が出来る。
ギリギリまで絞られたゴムが悲鳴を上げると同時に手を離すと、ヒュン!という音と共に実が発射された。
それからわずか2秒。
轟音と共にオレンジ色の炎が巻き起こり、暗闇の中に洞窟がパッと姿を現した。
それと同時に響き渡る怒号と悲鳴。
会話は出来なくても彼ら独自の言語は持っているようで、よくわからない言葉が暗闇の中飛び交っている。
「次!」
慌てている今こそ好機。
声を合図にフラッシュバグの光珠を打ち込んでこちらに気付く前に目を奪う。
『フラッシュバグの光珠。光蟲との呼び名に相応しく光珠を潰すと5秒後に目が開けられなくなるほどの閃光を発する。目視しすぎると目がつぶれると言われるがあながち間違いではない。一匹から一つの光珠しか取れずさらには扱いが難しい為あまり流通することはない。最近の平均取引価格は銀貨3枚、最安値銀貨3枚、最高値銀貨6枚、最終取引日は本日と記録されています。』
光珠を掌でつぶしてから急いでスリングを構えて再び洞窟の上目がけて発射。
目を閉じて顔を伏せながら心の中でしっかりと数を数えると、5を数えた瞬間に瞼の向こう側が真っ白に染まる。
目を閉じただけでなくしっかり伏せていたのにこの白さ。
見えないなりに目を開けていたやつらからすればたまったもんじゃないだろう。
それはもうさっき以上の悲鳴が響き渡り、それを合図に狼たちが一斉に動き始めた。
「くれぐれも無理するなよ!」
「おまかせください!」
遅れるどころか先陣を切ってアニエスとルフがラウジャの群れに突撃する。
勝負は視界が戻ってくるわずか数分。
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