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1610.転売屋は前もって準備をする
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「では確かに。しかしなぜこの時期にコレを?」
薬の材料を箱にしまいながらファマスさんが質問を投げてくる。
なぜこの時期にこんなものを作るのか、そんなの金になるからに決まってるじゃないか。
「夏は食べ物が傷みやすくて腹を壊しやすいだろ?だから今のうちに量産しておくのさ。」
「なるほど、そういうことにしておきましょう。」
「それじゃあ依頼料は契約書通り銀貨20枚、でいいんだよな?」
「この難易度で材料持ち込みですから安いぐらいです。むしろこちらがよろしいのですか?」
「いい仕事にはいい報酬をってのが俺の信条なんでね。それじゃあよろしく頼む。」
これ以上いると根掘り葉掘り聞かれるだけじゃなく例のサプリメントまで提案されそうなので早めに撤退するとしよう。
今回依頼したのは下痢止めと吐き気止め。
それぞれ200個ずつ、材料費がどちらも銀貨10枚ぐらいなので一粒銅貨20枚ってな感じか。
アネットがいれば加工賃もかからないうえにサクッと作ってもらえる程度の薬ではあるのだが、こちらではギルドを頼らないと量産ができない。
その辺が非常に面倒臭いのだが、本来薬はギルドに頼むものなのである意味これが正常なのかもしれないが。
材料の横に銀貨を積み上げて早々にソファーから立ち上がる。
お互いに目配せをしてから応接室の扉まで移動したその時だ。
「シロウ様は次回のオークションには何を出品されるのですか?」
「オークション?そうだな、ここを離れる前にある程度在庫は処分するつもりだから色々と。とはいえ化粧品とか装備関係が多くて素材系は殆どないけどな。」
「そうですか。」
おそらくはオールダートレントの素材を出すかききたいんだろう。
前回も匿名オークションに出したので表向きは誰が出したかわからないはずだが、人の口に戸は立てられないし漏れていると考えるべきだ。
滅多に流通しない素材だけに俺がいるうちに買い占めたいのかもしれない。
「もし気に入ったものがあったら是非入札して競り合ってくれ、期待してる。」
「シロウ様は素晴らしい物をたくさんお持ちですから、出来る限りは。」
「それじゃあ納期通りよろしく、サンプルは早めにあげてくれると助かる。」
「わかりました。ひとまず明日までに納品させていただきます。」
腹の探り合いはこのぐらいにしてボロが出る前にさっさと退散しよう。
出会った頃ほどではないが今でもこの人は苦手なんだ。
「ほい、ただいまっと。」
「あ、ふぉかふぇりなさい。」
「ゆっくり食ってからしゃべる方が良いぞ、バーバラ。」
「ん、すみません。」
「美味いか?」
「はい!」
諭されたのも何のその、その顔を見るだけでどれだけ美味しくて嬉しいかがよく伝わってくる。
カウンターの上には今日熟したばかりのアキーの実、この間持ち帰ったやつが絶賛熟しまくっている。
収穫からおよそ二日、もっと待たないといけないのかと思ったが思ったよりも早く熟してくれるみたいだ。
「中々のペースで熟しているけど、本当に大丈夫か?」
「こちらから手を加えずちゃんと自然に割れるのを待ってから加工しているのでおそらくは。」
バーバラは喜んで食べてくれているようだが一歩間違えれば腹痛に下痢に嘔吐と上から下から大騒ぎになるような食中毒を起こす危険な食べ物でもある。
そうならないために自然に割れるのを待つようにしているのだが、それが守られるかは何とも言えない状況だ。
持ち帰ったアキーがあまりにも美味しくて熟したやつを知り合いに配りまわったのだが、どうやらそのうわさが広がったらしく翌日には市場にアキーがいくつか並んでいた。
もちろん販売するときには自然に割れるのを待つようにと忠告はしているようだけれど、果たして守られるのだろうか。
「まぁどうなろうが俺の知ったこっちゃないが。バーンはどうした?」
「はて、朝方はお見掛けしましたがここしばらくは見ておりませんな。」
「確か急ぎの仕事が入ったからって明日にはまた向こうに戻るらしい、それと一緒に手紙を出したかったんだが・・・。」
「トト、ただいま!」
どうやらどこかに行っていたようだがタイミングよく戻ってきたようだ。
この間南方に行ってまた向こうにとんぼ返りってのは中々に大変だが、本人も今の仕事にやりがいを持っているようなので好きなようにさせておこう。
元気よく店の扉を開けた息子の後ろには何やら巨大な木箱が見える。
あれが今回運ぶ奴だろうか。
「おかえり、ずいぶんと大きな荷物だな。」
「前食べた木の実が美味しかったから一杯取って来たんだ!」
「木の実って、アキーをか?」
「それ!熟してるのは向こうで食べちゃったけど、そうじゃないのはいっぱい取って来たよ!グランマも大喜びしてたんだ。」
「そりゃよかったな。」
流石に古龍はそのまま食べても腹を壊さないんだろうか。
恐らくは熟したやつをお裾分けしたんだけど、その辺はちょっと気になる。
一度ガルグリンダム様に熟してないやつを持って行って食べてもらうのはどうだろうか。
もしあの姿のまま中毒になるとしたら・・・いや、ないな。
あの人が腹を抑えてもだえ苦しんでいる姿は正直想像ができない。
「それじゃあ僕はもう行くね。」
「それならディーネにこの手紙を渡してもらえるか?」
「カカに?」
「他のみんなへは定期便を使うからとりあえず急ぎの分だけ頼む。」
「わかった!それじゃあトトまた今度ね!」
何とも忙しない感じで息子は再び空へと登って行ってしまった。
残されたのは大量のアキーが入った大型木箱。
正直持ち帰ったやつでも中々食べるのが大変なのに、これだけの量ともなるとさばききれる自信がないぞ。
熟してからは足が早いしその前に売れば責任が付きまとう。
一応説明して売ればこっちに非はないけれど其れでも文句を言ってくるやつがいるんだよなぁ。
まぁそういうやつの為に今回のを仕込んだわけだけども。
折角息子が持ち帰ってくれたのでありがたくそれを露店に並べつつ、横に別の物をそっと置いておく。
「さぁ、今話題のアキーが大量入荷だ。1個銅貨30枚4つで銀貨1枚とお買い得だよ。ただし熟して自然に皮が割れる前に食べると大変なことになるからくれぐれも注意してくれよ。熟した方がうまいからな、マジで我慢しろ。」
「そんなこと言って案外大丈夫だったりするんだよな。」
「そう思うのは結構だが、もしもの為にお守りを買っておくのをお勧めする。」
「おまもり?」
「製薬ギルドが作った下痢と嘔吐止めの薬だ。二つで銀貨1枚、もし使わないのなら買い戻してやるから安心していいぞ。」
チャラい感じの冒険者がちょっかいを出してくるけれどこういう奴ほど痛い目を見るんだよな。
忠告してるってことはそれだけ危険があるってことなんだが、そう言う善意を無視して自分は大丈夫と思っているのがまた残念な感じだ。
「本当に買い戻してくれるのか?」
「もちろん使ってないならな。」
こういう奴ほど結局は買い戻すことなく苦しむことだろう。
一応熟したやつも一個銅貨40枚でいくつか売っているのですぐに食べたい人にはこっちを買ってもらえるようにしたのだが、待てば安く買えるだけに皆熟す前の奴を買っていく。
加えて金が帰って来るならとお守りも半分ぐらいの人が買ってくれるので結構ホクホクな売り上げになってきている。
まぁ薬は買い戻しても別の人が使うだろうし、夏になれば放っておいても売れるだけに何のロスもない。
が、この半数のうちさらに半数はそのまま使ってお守りを買ったことに感謝する事だろう。
無事にバーンが持ち帰ってくれたアキーは完売、薬も仕込んだものの7割が売れたのでまた材料を用意して追加の薬を手配しておこう。
さっきも言ったようにこれからがシーズンだ、夏場に一晩放置したカレーが大変なことになるようにこの時期の食事にはマジで気を付けなければならない。
「主殿は過去に痛い目を見たからこそ、しっかり準備をされるのですな?」
「まぁそういう事にしておいてくれ。」
「して、何をお食べになったのです?」
「まぁ色々とな。」
なんだかんだ長いこと生きてるからな、それまでの間にいろいろ経験してる。
若いころは金がなかったしそれなりに年を取ってからも痛い目に合ってきている。
だからこそ薬の大事さは理解しているし、なによりそういう時になった時にすがりたくなる気持ちもよくわかる。
そういうときほど高い金を出してでも解放してくれと願う物だ、今回の薬はどっちかっていうとアキーの為というよりもそういう時にがっつり見せつけて買わせるためっていう意味合いの方が強いだろう。
食中毒を甘く見ちゃいけない。
マジであれは死ぬ。
つい調子に乗って生牡蠣を食べた自分を何度殺してやろうと思ったか。
美味いのはわかる、だがそのあとは地獄だぞ。
そんなわけでアキーを販売し終え、店に帰って売り上げを勘定していた俺だったのだが突然ドアを激しく叩く音が聞こえてきた。
店はとっくに閉店してるし本来なら相手にすることはないのだが、折角の金づるを逃すのももったいない。
「今日はもう閉店だぞ。」
「頼む、薬をくれ!連れが死にそうなんだ!」
「なんだマジでアキーを食ったのか?」
「こんなことになるなんて思わなかったんだよ、食べてしばらくすると思いっきり吐き出したかと思ったらそこらじゅうでクソしてもだえ苦しんでるんだ。頼むこのままじゃ死んじまう!」
「俺は忠告したしあの時薬を買わなかったのか?」
「こんなにやばいなんて思わなかったんだよ。いいから早く薬出せって、頼むから!」
それが人に物を頼む態度かと言ってやりたかったが、相手はかなり焦っているので下手に刺激をして面倒なことになるのは避けておきたい。
たとえ殴り掛かられても俺は大丈夫なんだがむしろ相手が仲間を助ける前に死ぬかもしれない。
「銀貨2枚な。」
「おい、さっきは銀貨1枚って・・・。」
「あれは一緒に買うから安いんだ、普通は銀貨3枚するのを仕方なく値引きしてやってんだぞ?」
「そんなわけないだろ!銀貨1枚だ。」
「何を勘違いしてるかわからないが薬を持ってるのは俺だ、それに対して文句を言うのならさっさと帰って仲間がもがき苦しむのをクソにまみれて眺めてるんだな。それとも銀貨3枚で買うか?」
「足元見やがって・・・。」
「銀貨4枚。」
「わかった!払う、払うから薬をくれ!頼む!」
「最初からそう言っとけばよかったんだ。銀貨2枚、早く出しな。」
本当は3枚でもよかったんだが倍で売れればまぁいいだろう。
殴りかかるような勢いで差し出された銀貨を受け取り、すぐ横に準備していた薬をそいつに渡す。
「薬は一緒に飲んでも問題ない、その代わり水を山ほど飲ませろ。あと吐いたら意味がないから薬を飲んだら死ぬ気で耐えろよ、120数えると効いてくるからそれまで絶対に吐くな。」
聞こえているかはさておき、とりあえず言うべきことは言っておいたのでまぁ大丈夫だろう。
人の話は最後まで聞く、なにより人の忠告には耳を傾ける。
翌日、その当たり前のことを守れなかった奴らが開店を待てずに殴りこんできたのは言うまでもない。
もちろん客なんでちゃんと相手にしてやったさ。
早朝料金を合わせて銀貨3枚でな。
薬の材料を箱にしまいながらファマスさんが質問を投げてくる。
なぜこの時期にこんなものを作るのか、そんなの金になるからに決まってるじゃないか。
「夏は食べ物が傷みやすくて腹を壊しやすいだろ?だから今のうちに量産しておくのさ。」
「なるほど、そういうことにしておきましょう。」
「それじゃあ依頼料は契約書通り銀貨20枚、でいいんだよな?」
「この難易度で材料持ち込みですから安いぐらいです。むしろこちらがよろしいのですか?」
「いい仕事にはいい報酬をってのが俺の信条なんでね。それじゃあよろしく頼む。」
これ以上いると根掘り葉掘り聞かれるだけじゃなく例のサプリメントまで提案されそうなので早めに撤退するとしよう。
今回依頼したのは下痢止めと吐き気止め。
それぞれ200個ずつ、材料費がどちらも銀貨10枚ぐらいなので一粒銅貨20枚ってな感じか。
アネットがいれば加工賃もかからないうえにサクッと作ってもらえる程度の薬ではあるのだが、こちらではギルドを頼らないと量産ができない。
その辺が非常に面倒臭いのだが、本来薬はギルドに頼むものなのである意味これが正常なのかもしれないが。
材料の横に銀貨を積み上げて早々にソファーから立ち上がる。
お互いに目配せをしてから応接室の扉まで移動したその時だ。
「シロウ様は次回のオークションには何を出品されるのですか?」
「オークション?そうだな、ここを離れる前にある程度在庫は処分するつもりだから色々と。とはいえ化粧品とか装備関係が多くて素材系は殆どないけどな。」
「そうですか。」
おそらくはオールダートレントの素材を出すかききたいんだろう。
前回も匿名オークションに出したので表向きは誰が出したかわからないはずだが、人の口に戸は立てられないし漏れていると考えるべきだ。
滅多に流通しない素材だけに俺がいるうちに買い占めたいのかもしれない。
「もし気に入ったものがあったら是非入札して競り合ってくれ、期待してる。」
「シロウ様は素晴らしい物をたくさんお持ちですから、出来る限りは。」
「それじゃあ納期通りよろしく、サンプルは早めにあげてくれると助かる。」
「わかりました。ひとまず明日までに納品させていただきます。」
腹の探り合いはこのぐらいにしてボロが出る前にさっさと退散しよう。
出会った頃ほどではないが今でもこの人は苦手なんだ。
「ほい、ただいまっと。」
「あ、ふぉかふぇりなさい。」
「ゆっくり食ってからしゃべる方が良いぞ、バーバラ。」
「ん、すみません。」
「美味いか?」
「はい!」
諭されたのも何のその、その顔を見るだけでどれだけ美味しくて嬉しいかがよく伝わってくる。
カウンターの上には今日熟したばかりのアキーの実、この間持ち帰ったやつが絶賛熟しまくっている。
収穫からおよそ二日、もっと待たないといけないのかと思ったが思ったよりも早く熟してくれるみたいだ。
「中々のペースで熟しているけど、本当に大丈夫か?」
「こちらから手を加えずちゃんと自然に割れるのを待ってから加工しているのでおそらくは。」
バーバラは喜んで食べてくれているようだが一歩間違えれば腹痛に下痢に嘔吐と上から下から大騒ぎになるような食中毒を起こす危険な食べ物でもある。
そうならないために自然に割れるのを待つようにしているのだが、それが守られるかは何とも言えない状況だ。
持ち帰ったアキーがあまりにも美味しくて熟したやつを知り合いに配りまわったのだが、どうやらそのうわさが広がったらしく翌日には市場にアキーがいくつか並んでいた。
もちろん販売するときには自然に割れるのを待つようにと忠告はしているようだけれど、果たして守られるのだろうか。
「まぁどうなろうが俺の知ったこっちゃないが。バーンはどうした?」
「はて、朝方はお見掛けしましたがここしばらくは見ておりませんな。」
「確か急ぎの仕事が入ったからって明日にはまた向こうに戻るらしい、それと一緒に手紙を出したかったんだが・・・。」
「トト、ただいま!」
どうやらどこかに行っていたようだがタイミングよく戻ってきたようだ。
この間南方に行ってまた向こうにとんぼ返りってのは中々に大変だが、本人も今の仕事にやりがいを持っているようなので好きなようにさせておこう。
元気よく店の扉を開けた息子の後ろには何やら巨大な木箱が見える。
あれが今回運ぶ奴だろうか。
「おかえり、ずいぶんと大きな荷物だな。」
「前食べた木の実が美味しかったから一杯取って来たんだ!」
「木の実って、アキーをか?」
「それ!熟してるのは向こうで食べちゃったけど、そうじゃないのはいっぱい取って来たよ!グランマも大喜びしてたんだ。」
「そりゃよかったな。」
流石に古龍はそのまま食べても腹を壊さないんだろうか。
恐らくは熟したやつをお裾分けしたんだけど、その辺はちょっと気になる。
一度ガルグリンダム様に熟してないやつを持って行って食べてもらうのはどうだろうか。
もしあの姿のまま中毒になるとしたら・・・いや、ないな。
あの人が腹を抑えてもだえ苦しんでいる姿は正直想像ができない。
「それじゃあ僕はもう行くね。」
「それならディーネにこの手紙を渡してもらえるか?」
「カカに?」
「他のみんなへは定期便を使うからとりあえず急ぎの分だけ頼む。」
「わかった!それじゃあトトまた今度ね!」
何とも忙しない感じで息子は再び空へと登って行ってしまった。
残されたのは大量のアキーが入った大型木箱。
正直持ち帰ったやつでも中々食べるのが大変なのに、これだけの量ともなるとさばききれる自信がないぞ。
熟してからは足が早いしその前に売れば責任が付きまとう。
一応説明して売ればこっちに非はないけれど其れでも文句を言ってくるやつがいるんだよなぁ。
まぁそういうやつの為に今回のを仕込んだわけだけども。
折角息子が持ち帰ってくれたのでありがたくそれを露店に並べつつ、横に別の物をそっと置いておく。
「さぁ、今話題のアキーが大量入荷だ。1個銅貨30枚4つで銀貨1枚とお買い得だよ。ただし熟して自然に皮が割れる前に食べると大変なことになるからくれぐれも注意してくれよ。熟した方がうまいからな、マジで我慢しろ。」
「そんなこと言って案外大丈夫だったりするんだよな。」
「そう思うのは結構だが、もしもの為にお守りを買っておくのをお勧めする。」
「おまもり?」
「製薬ギルドが作った下痢と嘔吐止めの薬だ。二つで銀貨1枚、もし使わないのなら買い戻してやるから安心していいぞ。」
チャラい感じの冒険者がちょっかいを出してくるけれどこういう奴ほど痛い目を見るんだよな。
忠告してるってことはそれだけ危険があるってことなんだが、そう言う善意を無視して自分は大丈夫と思っているのがまた残念な感じだ。
「本当に買い戻してくれるのか?」
「もちろん使ってないならな。」
こういう奴ほど結局は買い戻すことなく苦しむことだろう。
一応熟したやつも一個銅貨40枚でいくつか売っているのですぐに食べたい人にはこっちを買ってもらえるようにしたのだが、待てば安く買えるだけに皆熟す前の奴を買っていく。
加えて金が帰って来るならとお守りも半分ぐらいの人が買ってくれるので結構ホクホクな売り上げになってきている。
まぁ薬は買い戻しても別の人が使うだろうし、夏になれば放っておいても売れるだけに何のロスもない。
が、この半数のうちさらに半数はそのまま使ってお守りを買ったことに感謝する事だろう。
無事にバーンが持ち帰ってくれたアキーは完売、薬も仕込んだものの7割が売れたのでまた材料を用意して追加の薬を手配しておこう。
さっきも言ったようにこれからがシーズンだ、夏場に一晩放置したカレーが大変なことになるようにこの時期の食事にはマジで気を付けなければならない。
「主殿は過去に痛い目を見たからこそ、しっかり準備をされるのですな?」
「まぁそういう事にしておいてくれ。」
「して、何をお食べになったのです?」
「まぁ色々とな。」
なんだかんだ長いこと生きてるからな、それまでの間にいろいろ経験してる。
若いころは金がなかったしそれなりに年を取ってからも痛い目に合ってきている。
だからこそ薬の大事さは理解しているし、なによりそういう時になった時にすがりたくなる気持ちもよくわかる。
そういうときほど高い金を出してでも解放してくれと願う物だ、今回の薬はどっちかっていうとアキーの為というよりもそういう時にがっつり見せつけて買わせるためっていう意味合いの方が強いだろう。
食中毒を甘く見ちゃいけない。
マジであれは死ぬ。
つい調子に乗って生牡蠣を食べた自分を何度殺してやろうと思ったか。
美味いのはわかる、だがそのあとは地獄だぞ。
そんなわけでアキーを販売し終え、店に帰って売り上げを勘定していた俺だったのだが突然ドアを激しく叩く音が聞こえてきた。
店はとっくに閉店してるし本来なら相手にすることはないのだが、折角の金づるを逃すのももったいない。
「今日はもう閉店だぞ。」
「頼む、薬をくれ!連れが死にそうなんだ!」
「なんだマジでアキーを食ったのか?」
「こんなことになるなんて思わなかったんだよ、食べてしばらくすると思いっきり吐き出したかと思ったらそこらじゅうでクソしてもだえ苦しんでるんだ。頼むこのままじゃ死んじまう!」
「俺は忠告したしあの時薬を買わなかったのか?」
「こんなにやばいなんて思わなかったんだよ。いいから早く薬出せって、頼むから!」
それが人に物を頼む態度かと言ってやりたかったが、相手はかなり焦っているので下手に刺激をして面倒なことになるのは避けておきたい。
たとえ殴り掛かられても俺は大丈夫なんだがむしろ相手が仲間を助ける前に死ぬかもしれない。
「銀貨2枚な。」
「おい、さっきは銀貨1枚って・・・。」
「あれは一緒に買うから安いんだ、普通は銀貨3枚するのを仕方なく値引きしてやってんだぞ?」
「そんなわけないだろ!銀貨1枚だ。」
「何を勘違いしてるかわからないが薬を持ってるのは俺だ、それに対して文句を言うのならさっさと帰って仲間がもがき苦しむのをクソにまみれて眺めてるんだな。それとも銀貨3枚で買うか?」
「足元見やがって・・・。」
「銀貨4枚。」
「わかった!払う、払うから薬をくれ!頼む!」
「最初からそう言っとけばよかったんだ。銀貨2枚、早く出しな。」
本当は3枚でもよかったんだが倍で売れればまぁいいだろう。
殴りかかるような勢いで差し出された銀貨を受け取り、すぐ横に準備していた薬をそいつに渡す。
「薬は一緒に飲んでも問題ない、その代わり水を山ほど飲ませろ。あと吐いたら意味がないから薬を飲んだら死ぬ気で耐えろよ、120数えると効いてくるからそれまで絶対に吐くな。」
聞こえているかはさておき、とりあえず言うべきことは言っておいたのでまぁ大丈夫だろう。
人の話は最後まで聞く、なにより人の忠告には耳を傾ける。
翌日、その当たり前のことを守れなかった奴らが開店を待てずに殴りこんできたのは言うまでもない。
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