悪女は黒薔薇を愛でる

バオバブの実

文字の大きさ
4 / 19

夜の真実

しおりを挟む
 その夜
 ルシファンヌは寝室に赤い薔薇を飾っていた。ロイクが後から寝室に入ると
「ロイク!温室を覗いてたでしょう?」
 彼女は鋭く叫んだ。
 ロイクが身体をビクッと震わすと
「今日は致さない・・・・ことにします」
 ルシファンヌが冷たく言った。
「そんなっ!赤い薔薇が飾られてるじゃないか!」
 ロイクが焦った様子である。
「そうよ、今日は素晴らしい夜になったはずがあなたのせいで台無しよ。わたくしを試すようなことをするから、これは罰よ」
 ルシファンヌはそう言うと赤い薔薇を花瓶から2、3本引き抜き、ロイクの顔に向かっておもいきり打ちつけた。
 わざと棘の抜かれていない薔薇たちは容赦なくロイクの頬を傷つけた。頬から血が滲んでいる。
「くっ、うぅ酷いじゃないか、ルーシィ…」
 バシッ!
 もう一回容赦なく打たれた、
「その名前で呼ぶなと言ったはずよ」
 ルシファンヌはロイクの着ていたシャツを破って上半身裸にした。彼の背中は掻き傷だらけだった。
「銀行に客なんて嘘!あの男と2人きりにしてなにが見たかったの?」
「それは…」
「操をたてる新妻の姿?ははっ、おあいにく様。彼とのキスは…」
 彼女は人差し指を唇にあてながら
「とても情熱的だったわ」
 うっとりとして言った。
 だがこれがロイクをキレさせた。
「小娘がっ!」
 男の力を持ってすれば彼女を組み敷くことなど簡単だとロイクは思った。ところが…
 ひらりとルシファンヌが身体をかわしたのである。
 (馬鹿じゃない!ディナーにどれだけワインを飲ましたと思っているの!ほら、足がおぼつかないじゃない!)
「ロイク、わたくしを捕まえてごらんなさい!そしたら考えないでもないわ」
 鬼ごっこはしばらく続いた。ルシファンヌは猫のように素早く逃げる。ロイクは太った身体を揺らしながら追いかけるが息があがりそのまま座り込んでしまった。
「今日の罰はねぇ、ロイク」
 ルシファンヌがロイクのあごをくいっと上げ
「みんなの見えるところに傷をつけたことよ。背中の掻き傷をあなた、みんなになんて言ったの?夜の営みで新妻に引っ掻かれたと言っているのよねぇ。本当は薔薇で打たれた傷なのに!」
 ルシファンヌは新たに薔薇を持ってきて今度はロイクの背を打ちつけた。
「も、もう、やめてくれっ」
 彼はもう泣き声だった。
「顔の傷はみんなになんて言うのかしら?」
 ルシファンヌは薄く笑って
「ハタチそこそこの小娘になぶられる50過ぎの男ってどんな気持ちかしら?」
 あはは、と今度は大声で笑ってみせた。
「そうねぇ、遊んでくれたから足だけ許してあげる」
 彼女はそう言うとベッドの端に座りナイトドレスを引き上げ足を組んでみせた。
 ロイクは目をギラつかせ四つん這いで這ってくると彼女の足指にしゃぶりついた。
「おまえは処女ではなかった!でもそんなこといいんだ!俺のモノになるなら!」
 彼はそういいながら足の甲にキスし、ふくらはぎに頬ずりをし、彼女の太ももの内側に顔を埋め、その奥の深淵へと進もうとした時
「ぐぇっ!」
 この世のものとも思われない声をあげた。
 ルシファンヌがつま先でロイクの喉をおもいきり押したのである。
 ゴホゴホと咳をしながら転げ回るロイクを見て
「今日はしないと言ったでしょう!」
 彼女は冷たく言い放った。
 さらに彼女はロイクの薄くなった髪の毛を鷲掴みにし、ソファのほうへ引きずっていった。ソファの下から鉄の首輪を取り出してロイクの首にはめた。その先には鉄の重りが付いている。
「なんだ⁈これは」
 彼が騒ぐたびジャラジャラと音がした。
「あなたは犬よ、ロイク。犬はおとなしく床で寝ていなさい」
 ロイクがベッドにいこうとしても鎖は重く短い。
「おやすみ、ロイク」
 ルシファンヌはそう言ってナイトドレスを脱ぎ捨て全裸になった。月明かりの中彼女は眩いばかりに美しかった。
「女神様…」
 こんな目にあっているのにロイクは彼女を崇めた。
 ルシファンヌは首輪の鍵をひらひらさせ
「明日の朝外してあげる。それとも今使用人を呼ぶ?そのみっともない姿をさらす?」
 ロイクはブンブンと首を振ると床に伏せた。
「おやすみ、ロイク」
 彼女はもう一度言うとベッドに入った。
 ベッドの中、ルシファンヌはクレマンのことを思い出していた。
 ただロイクを振り回すために呼んだ男だったのに彼女はクレマンのことが気になっていた。
 (あの人・・・に似てるからかしら?)
 うつらうつらしながら彼女は記憶と夢の間にいた。
『ルーシィ、やったよ!』
『見て、黒薔薇が咲いたよ』
 いつしかルシファンヌは深い眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

真実の愛は水晶の中に

立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。 しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。 ※AIイラスト使用 ※「なろう」にも重複投稿しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

あなたの隣は私ではないけれど、それでも好きでいてもいいですか、レオナルド様

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢エリアーナには、三年間ずっと抱えてきた秘密がある。 婚約者であるヴァルフォード公爵・レオナルドへの、誰にも言えない恋心だ。 しかし彼の隣にいるのは、いつも幼馴染の伯爵令嬢・ソフィア。 儚げな笑顔と上目遣いで男性を虜にするあざとい彼女に、レオナルドも例外ではないようで—— 「レオ、私のこと嫌いにならないでね?」 「……そんなことにはならない」 また始まった二人の世界。

遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)

スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」 唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。 四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。 絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。 「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」 明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは? 虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!

氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁

瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。 彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。

処理中です...