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130話 「赤ちゃん教官 その3」

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「にゃにゃーーーーーー!」


 その場にいた全員が、メンテの叫びに警戒した!


 ……が、何も起こることはなかった。そのため、お馬さんごっこに興奮して叫んだだけだろうと思われたという。メンテ教官はまだ赤ちゃん。可愛いところもあるものだ。むしろそれこそ普通なのだろう。

 それよりもさっきの粘土はどういうことなのか。1歳の赤ちゃんが思いつく方法とは思えない程極悪である。本当はものすごく賢い赤ちゃんなのでは? と疑う者も多かったという。後にアーネが猫にやっていたことをただ真似ただけと知り、変な疑いをする者はいなくなったという。


「「「「「「400、401、402……」」」」」」


 そして400回を過ぎた頃、がやって来た。



 どどどどどどどどどどどっどどどどどどどどどどっど!!!!



「「「「「「403……えっ?!」」」」」」
「おや? これはこれは……」←タクシー
「えええええ?! ちょっと待ってください、なんですかあれ?!」←ミスネ



『にゃああああああああああああああああああああああああああああ!』



 その正体は猫。ただし、1匹や2匹なんてものではない。その数は約30匹。突然猫の大群が押しかけてきたのである。


「にゃにゃー!(こっちこっちー!)」
『にゃああああああああああああああああああああああああああああ!』


 メンテの指示により、猫達はいっせいに部下Cに突撃していった。ぴょんぴょんと部下Cの背中に乗っていく。もはや部下Cの姿がほとんど見えない程になっていた。


「うおおおおおおおおおお、なんじゃこりゃあああ?! よ、よんひゃくよおおおおおおん!」
『にゃああああああああああああああああああああああああああああ!』

 急に猫30匹の重さが増えて動けなくなる部下C。1匹の体重がが5キロとすると合計150キロになる。数が数だけにかなり重いのだ。これはたまったもんじゃない。部下Cから余裕の笑みは消え去った。

 なぜ猫達がこんな大量にやってきたのか。それは、たまたまメンテの家に向かって歩いていた数匹の猫を見つけたことから始まる。臨時集会を始めるから全員呼んで来て! とお願いしたところ、猫達が手分けして家や教会の猫達に呼びかけたのだ。集合するまで多少時間が掛かったため、叫んですぐは何も起こらなかったのだ。


「まだだ……、ワイはまだいけるぞおおおおお! 405おおおおおお!!!」


 よく分からない状況になりつつあったが、部下Cは諦めてはいなかった。ゆっくりではあるが腕立て伏せを止めることはなかった。このままでは500回達成してしまうだろう。そこでメンテは猫に新たな指示を出した。


「にゃあ(攻撃開始)」
『にゃおおおおおおおおん!』
「よ、よんひゃくはちじゅう……ぶへっ?!」


 猫30匹が同時に部下Cを襲いだした。ある猫は顔面を思いっきり蹴り、ある猫は思いっきり背中を引っ掻いた。腕や指先を猫パンチしたり、足の裏をこそばしたりとやり方は様々である。そして猫達が最も集中した部位は股間だ。

 男の股間にぶら下がったあれに猫パンチ。それ面白そうだな、混ぜて混ぜてと他の猫達も追撃。まるでサンドバックを殴るかのような容赦のない金的攻めである。いや、猫じゃらしで遊ぶ楽しそうな光景を想像して欲しい。何度も言うがこれは遊びなのである。


「ぎぃやああああああああああああああああ……、ぐふぅう……」


 こうして部下Cは500回目前に白目で倒れ込んだ。メンテの完全勝利である。


「ま、待ってくれ。今のは……」
「にゃあ」
『にゃあああああああああああああ!』
「へぶはああぁ?!」

「おお、素晴らしい!」←タクシー


 部下Cが何か口答えしそうなのを感じ、猫達にボコボコにするように指示するメンテ。その動きはまるで軍隊を思わせるような統率がとれた動きであった。思わずタクシーも感心したという。

 魔法が使えていれば防げたであろう攻撃。だがそれが出来ないとこうなる。これを実際に身を持って経験させた。まさに鬼、いや猫教官である。


「きゃきゃー!」
「ほほっ。やはりメンテ教官には才能があるようです」
「えぐえぐ」指プイ
「メンテく……、いえ教官はまだ遊び足りないんですかね?」
「そのようですな。しかし、このままでは誰もクリア出来そうにありません。仕方がないので、途中で脱落した者だけ罰としましょう。それでよろしいですかメンテ教官?」
「えぐえっぐ!」
「ほほっ。最後ぐらいメンテ教官によいところを見せなさい。情けない姿は見飽きましたぞ!」
「「「「「「イエッサー!」」」」」」


 こうして最後の腕立てが始まった。


「「「「「「1、2、3……」」」」」」
「にゃー」
『にゃあ!』


 始まると同時に猫は部下たち襲い掛かった。狙いはもちろん金的。猫じゃらしで遊んでいいよというメンテ教官の可愛い指示である。


『にゃああああああ!』
「「「「「「ぎゃあああああああああああ」」」」」」


 その可愛い指示のせいで男性の部下からは悲鳴が上がったという。その一方で女性の部下はというと……。


「「「498、499、ご、ごひゃく……。終わりました!」」」


 全員が腕立て伏せ500回を達成出来たという。理由は単純、メンテがやたらと胸やお尻を触って喜んでいるだけだったからである。猫達も不思議と攻撃することはなかった。その理由は察してほしい。こんな赤ちゃんなんだと。


「ほほっ、終了ですぞ。男性陣はあとで全員罰です。何度も失敗しているそこの3人(部下A、B、C)は、罰を1か月続けるように。分かりましたか?」
「「「「「「いえっさあ……」」」」」」


 こうしてメンテ教官は、教官としての役目を果たしたという。


 ◆


「ほほっ。今日は良い物を見させてもらいましたぞ。さすがメンテ様ですな」
「きゃきゃ!」
「ええ。とてもすごい光景でしたね……。教育的にどうかと思う部分もありましたが。それにしてもメンテ様には不思議な力があるのですね」
「そのようですな。ほほっ、将来が楽しみですぞ!」

 わーい。二人に褒められました! そんな僕はお腹が空いたのですよ。

「あくいー」
「どうなさいましたか?」
「おあし。お・あ・し」
「お菓子ですか? メンテ様はお腹が空いたのですね」
「えぐ!」

 僕はニコニコしながら猫達を指差します。手伝ってくれた猫達に褒美をあげるのも僕の役目なのです。

「にゃーにゃー。あおし」
「この猫達もですかな?」
「えっぐ!」
「ほほっ。そうですか。今日は猫達も頑張ってくれましたからな。では行きましょう」
「きゃきゃ!」『にゃあああ!』
「……あ、待ってくださ~い」←ミスネ



 その後、部下たちのトレーニングにちょくちょく顔を出すようになるメンテであった。

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