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136話 「そんな家訓あるんだね その2」
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”周りの目より暴走”
父がナンス家の家訓を教えてくれました。でも暴走という言葉が入っていたので、全く参考にしたくないです。がっかりというより、もうやだあですよ。僕は暴走という呪縛からは逃れられないのでしょうか?
「ナンス家は暴走して当たり前。暴走を否定することは、生き方を否定されるってことだ。そんなことは気にしちゃいけないってご先祖様は伝えたいんだろう。メンテも何があっても突き進め!」
あれれ? 父が思ったよりもまともなことを言っています。そう解説されると納得する部分があるというね。何よりさ、ご先祖様も暴走で苦労しまくった感がするのよね。まさに今の僕みたいに。
きっと暴走が大変だから生まれた言葉なのでしょう。実はいい家訓なのでは? そう思うと気持ちが楽になりました。まあ多少ですが。
「逆に暴走しない方が悪い。つまり私達が悪いのではない、他人が悪いってことさ。だから何をやってもお咎めないってことさ! はっはっは!」
「そうですぞ。だからメンテ様も何をやってもよいのですな。ほほっ」
ん? 二人揃って変な事を言い出しましたよ。この流れは嫌な予感がします……。
「そうだ。敵対するものには何をやっても問題ないんだ。偉そうなやつはただのオモチャだ。金持ちだろうと、貴族と名乗ろうと、王様だろうとそれはただのオモチャだ! 暴走を否定する輩は暴走でねじ伏せる。それがナンスだ! いっそのことパパの代から家訓を”やっちまえ”に変えてもいいな。はっはっは!」
「おお、さすが旦那様です。ナンスの家訓にぴったりの言葉ですぞ!」
「はっはっは」「ほほっ」
「……(貴族? 王様??)」
2人が何をやってしまったのか気になりますがスルーしましょう。祖代々続く家訓というよりも、父やタクシーの教訓っぽいしさ。
僕なりに家訓についてまとめると、暴走しても他人のせいにしちゃえってことですね。暴走したのはお前のせい。これただの任転換にしか聞こえないよね。気のせい?
あとポンコツ執事が同調してるのは相当ヤバいと思います。今この二人は信用してもいいのか微妙ですもん。大きくなったら母なり祖父母に聞いてみましょう。そっちのほうが正しい家訓を聞けそうだよね。
ん~、でも父みたいに完全に吹っ切れていると生き易そうですね。毎日楽しそうっていうか生き生きとしてるんだよね。あまり悩むなってことでしょうか?
「というわけでオモチャに爆裂魔法を打ち込むぞ! はっはっは。面白そうだろ?」
「ほほっ、いいですかメンテ様。このボタンを押すとオモチャに向かって魔法が発射されるのですぞ」
「きゃきゃー!」
よし、考えるのは後にしてオモチャで遊びましょう。わーい、わーい! 僕はただの赤ちゃん。ボタンがあれば押しちゃうのです。
「まだ何かするのかよ?!」
「しかも赤ん坊にやらせるって聞こえたぞ?!」
「嘘だろ……、なんて奴らだ」
「「「「「ざわざわ」」」」」
父もタクシーも大きい声でしゃべっていたので、近くにいた人達にも内容が聞こえていたみたいですね。でも周りの目は気にしないので、着々と準備が進められます。僕も楽しみなので周りの声はスル―しちゃいましょう。
ん、僕って無意識にこの家訓と同じことしてるような……?
「ぱぱぁ~?」
「はっはっは。もう準備は完了しているぞ」
「ほほっ。すでにオモチャにロックオンしてありますぞ」
「えぐ?!」
おお、準備が早い!
……なぜでしょう。最初こそ家訓に抵抗がありましたが、だんだん悪くない気がしてきました。不思議ですねえ。家訓が正しいというか便利な気がしてきたからかな?
それにさ、人に向かって魔法を使うチャンスだよ? 絶対に面白いじゃん。あ、人じゃなくてオモチャでしたね。えへへ。
よし、やちゃおー。
結界の中に取り残された人達は緊張していた。何も知らない赤ちゃんに魔法を発射させるなんて発想がおかしい。きっとダンディは暴走しているのだろう。これがコノマチ名物、暴走のダンディ。最近は暴走する姿を見る機会が減ったため、初めて見るという人も多かったりするのだ。このときは噂が本当なのかと期待する人もいたという。
「えっぐー!(えいやー!)」
ぽちっ。スバババババババババッ! ドゥゴーーーーーン!!
「「ぎぃゃああああああ!」」
「「「「「――ぶはっ?!」」」」」←様子を見ていた人達
バカ2人はギルドに向かって吹き飛びました。久々の爆裂魔法ですね! なんだか以前より地面のえぐれが減っている気がします。でも人に対して効果抜群なのは変わりません。
「きゃああああああああああああ!」←興奮してるメンテ
「おお、誰も死なない程度に改良したかいがあったな」
「ほほっ、自動でターゲットを追いかける機能もしっかり動いてますぞ。改良は完璧なようです。オモチャもまだ元気そうなので何度も打てますな」
おお、やっぱり少し改良したんだね。何もしなくても勝手にバカ2人をロックオンしています。すごいよこれ! もっとボタンを押したくなってきました。
「ぱぱぁーん?」
「お、気に入ったのかい? はっはっは。もっと押してもいいんだぞ!」
「えぐ?!」←目キラキラ
「ほほっ。ギルドの近くにオモチャが移動してしまいましたな。ですが、何も問題ありません。建物ごとドーンとすればいいだけですぞ! 大きな的が増えて楽しみですな!」
「はっはっは!」「ほほっ!」「きゃきゃきゃ!」
誰も止められる者はいないため、暴走はどんどん加速していく。この3人が揃うとろくなことがないのである。
笑い終えるとメンテはボタンに手をかけた。そして……。
「えぐうううううああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。
スバババババババババッ!!!!!
ドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーン!!!!!!!
「「ぐわあああああっ!」」←バカ2人
「「「「「「ぎゃああああああああああああああああああああ?!」」」」」」
「はっはっは!」「ほほっ!」「きゃきゃきゃきゃああああああああ!」
メンテは一切躊躇せずにボタンを連打した。爆裂魔法を何度も発動させたためギルドが全く見えなくなるほどである。結界内に閉じ込められた人々からは、爆発と轟音による絶叫が止まらない。
爆裂魔法が終息する頃には、皆がこう感じていた。そりゃ何も分からない赤ちゃんにボタンを押させたらこうなるよ。まだ判断力ないし。というかあれの威力おかしくない? もはやベビーカーじゃなくてただの兵器だよ。ナンス家の暴走がヤバすぎるという噂は本当だった。というかあの赤ちゃんすごい笑ってるんだけど……。さすがナンス家の子だなあと。
こうしてギルドおよび周囲の建物は半壊どころか倒壊したという。結界があろうとなかろうと大惨事であった。
「おお、見晴らしがよくなったな!」
「ほほっ。さすがメンテ様です。敵に躊躇しない姿は立派ですぞ」
「きゃきゃー!」
「はっはっは、最後に花火を打ち上げてフィナーレだ!」
「ほほっ。それは最高の考えです」
「はっはっは!」「ほほっ!」「きゃきゃ!」
ぎゅいいいいいいいんとベビーカーの前方に砲台が現れた。以前、危険な魔物を一撃で屠った禁断の兵器である。
「はっはっはー! 破壊魔法でこの結界をぶち抜くぞー!」
「きゃきゃー!」
「ほほっ。危ないので空に向かって打ちますぞ。ではメンテ様……」
「きゅあああああああああああああああああああああああああああああ!」
ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。
タクシーが言い終わる前にボタンを連打するメンテである。誰もこの赤ちゃんを止められない。
結界に取り残された人達は、この様子を静かに眺めていた。最初こそあの大砲は何? とポカーンとした様子だったが、タクシーの危ないという発言を聞いてから慌て出した。さっきの爆裂魔法は何も言わなかったのに今度は危険だと……?! これ当たれば死ぬんじゃないか? 早く逃げなければと必死になった。
「おいおい嘘だろ?!」
「あの赤ちゃんがボタンを押すたびに強くなってないか?!」
「うわあああああ、すごい魔力を感じるうおおおお?!」
「ここから出してくれえええええ!」バンバンバン
「まだ死にたくないよぉ~」
「みんなで結界を破壊するんだ。うおりゃああああああ!」
「「「「うおおおおおおお!」」」」
バシバシバシバシッ! ビューン、ドドーン!
結界を破壊しようと武器や魔法を使う冒険者達。だが結界はビクともしない。その間にどんどんエネルギーが溜まっていく。まるでメンテがボタンを連打するたびにパワーアップしていくように見えた。実際は1度押したら勝手にチャージされるのであるが、誰も知る由もない。
「よし、発射だあああーッ!」「きゃあああああ!」「ほほっ」
ピュイイイイイン、ドゥゴォーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!
バリバリバリ、バリ―ンッ!
極太の白いレーザーが一瞬で結界を貫通した。さらにレーザーは上空の雲に届いて大きな穴を開けたという。この衝撃と余波で結界は崩壊。まるで花火のようにパラパラと散っていく。
「おお、綺麗だ」
「きゃきゃ!」
「ほほっ、素晴らしい」
ベビーカーの周囲に展開されていた車ボディは崩壊し消えていく。破壊魔法の威力に耐えられなかったのである。
「今回も防犯システムは耐えられなかったか。だがベビーカーは安全で何よりだな」
「そうですなあ……」
「きゃきゃああああああ!」
タクシーが周りを見ると、結界の中にいた人々があちこちに吹き飛ばされていた。悲鳴がなかったのはあまりの衝撃で全員気絶したからだ。無事だったのはメンテ、ダンディ、タクシーの3人だけであった。
もし防犯システムの防御魔法(車みたいな立体ボディ)がなければ、ベビーカーごと吹き飛んでいたであろう。恐ろしい一発であった。そんな中でボタンを押した赤ちゃんだけは最高の笑顔を見せていた。
「はっはっは、楽しかったな。そろそろ帰るぞメンテ」
「ほほっ。またオモチャで遊びましょうな」
「きゃきゃ!」
こうして久しぶりの町を楽しんだメンテであった。そして、ナンス家に絶対手を出さないようにと町中に拡散されたという。
ふむふむ、そういうことですか。案外この”周りの目より暴走”という家訓は、ナンス家の人間にぴったりなのかもしれません。暴走のスキルは気にせず使えばいいのですね。まあ僕って一度も暴走したことないし、する気もないけどね。
※何度も暴走していますが、本人にその自覚はありません。
なんだかすごく気が楽になりましたよ。暴走スキルはむやみに使っちゃダメだと思ってたもん。デメリットの事しか考えてなかったしね。暴走したっていいじゃない、だってそういうスキルを持ってるんだもん。これがスキルのある世界の常識ってやつなのかな?
……今まで僕は間違っていました。ここは日本とは異なる世界。前世の知識だけでは役立たない部分もあるのです。だから変な偏見を持っちゃダメってことだね。今日実感しました!
もっとこの世界について知りたくなりましたよ。パパ、タクシー、もっと教えてー!
この世界で最も参考にしてはいけないダンディとタクシーによる英才教育を受け続け、メンテはとんでもない子供に育つのです。
父がナンス家の家訓を教えてくれました。でも暴走という言葉が入っていたので、全く参考にしたくないです。がっかりというより、もうやだあですよ。僕は暴走という呪縛からは逃れられないのでしょうか?
「ナンス家は暴走して当たり前。暴走を否定することは、生き方を否定されるってことだ。そんなことは気にしちゃいけないってご先祖様は伝えたいんだろう。メンテも何があっても突き進め!」
あれれ? 父が思ったよりもまともなことを言っています。そう解説されると納得する部分があるというね。何よりさ、ご先祖様も暴走で苦労しまくった感がするのよね。まさに今の僕みたいに。
きっと暴走が大変だから生まれた言葉なのでしょう。実はいい家訓なのでは? そう思うと気持ちが楽になりました。まあ多少ですが。
「逆に暴走しない方が悪い。つまり私達が悪いのではない、他人が悪いってことさ。だから何をやってもお咎めないってことさ! はっはっは!」
「そうですぞ。だからメンテ様も何をやってもよいのですな。ほほっ」
ん? 二人揃って変な事を言い出しましたよ。この流れは嫌な予感がします……。
「そうだ。敵対するものには何をやっても問題ないんだ。偉そうなやつはただのオモチャだ。金持ちだろうと、貴族と名乗ろうと、王様だろうとそれはただのオモチャだ! 暴走を否定する輩は暴走でねじ伏せる。それがナンスだ! いっそのことパパの代から家訓を”やっちまえ”に変えてもいいな。はっはっは!」
「おお、さすが旦那様です。ナンスの家訓にぴったりの言葉ですぞ!」
「はっはっは」「ほほっ」
「……(貴族? 王様??)」
2人が何をやってしまったのか気になりますがスルーしましょう。祖代々続く家訓というよりも、父やタクシーの教訓っぽいしさ。
僕なりに家訓についてまとめると、暴走しても他人のせいにしちゃえってことですね。暴走したのはお前のせい。これただの任転換にしか聞こえないよね。気のせい?
あとポンコツ執事が同調してるのは相当ヤバいと思います。今この二人は信用してもいいのか微妙ですもん。大きくなったら母なり祖父母に聞いてみましょう。そっちのほうが正しい家訓を聞けそうだよね。
ん~、でも父みたいに完全に吹っ切れていると生き易そうですね。毎日楽しそうっていうか生き生きとしてるんだよね。あまり悩むなってことでしょうか?
「というわけでオモチャに爆裂魔法を打ち込むぞ! はっはっは。面白そうだろ?」
「ほほっ、いいですかメンテ様。このボタンを押すとオモチャに向かって魔法が発射されるのですぞ」
「きゃきゃー!」
よし、考えるのは後にしてオモチャで遊びましょう。わーい、わーい! 僕はただの赤ちゃん。ボタンがあれば押しちゃうのです。
「まだ何かするのかよ?!」
「しかも赤ん坊にやらせるって聞こえたぞ?!」
「嘘だろ……、なんて奴らだ」
「「「「「ざわざわ」」」」」
父もタクシーも大きい声でしゃべっていたので、近くにいた人達にも内容が聞こえていたみたいですね。でも周りの目は気にしないので、着々と準備が進められます。僕も楽しみなので周りの声はスル―しちゃいましょう。
ん、僕って無意識にこの家訓と同じことしてるような……?
「ぱぱぁ~?」
「はっはっは。もう準備は完了しているぞ」
「ほほっ。すでにオモチャにロックオンしてありますぞ」
「えぐ?!」
おお、準備が早い!
……なぜでしょう。最初こそ家訓に抵抗がありましたが、だんだん悪くない気がしてきました。不思議ですねえ。家訓が正しいというか便利な気がしてきたからかな?
それにさ、人に向かって魔法を使うチャンスだよ? 絶対に面白いじゃん。あ、人じゃなくてオモチャでしたね。えへへ。
よし、やちゃおー。
結界の中に取り残された人達は緊張していた。何も知らない赤ちゃんに魔法を発射させるなんて発想がおかしい。きっとダンディは暴走しているのだろう。これがコノマチ名物、暴走のダンディ。最近は暴走する姿を見る機会が減ったため、初めて見るという人も多かったりするのだ。このときは噂が本当なのかと期待する人もいたという。
「えっぐー!(えいやー!)」
ぽちっ。スバババババババババッ! ドゥゴーーーーーン!!
「「ぎぃゃああああああ!」」
「「「「「――ぶはっ?!」」」」」←様子を見ていた人達
バカ2人はギルドに向かって吹き飛びました。久々の爆裂魔法ですね! なんだか以前より地面のえぐれが減っている気がします。でも人に対して効果抜群なのは変わりません。
「きゃああああああああああああ!」←興奮してるメンテ
「おお、誰も死なない程度に改良したかいがあったな」
「ほほっ、自動でターゲットを追いかける機能もしっかり動いてますぞ。改良は完璧なようです。オモチャもまだ元気そうなので何度も打てますな」
おお、やっぱり少し改良したんだね。何もしなくても勝手にバカ2人をロックオンしています。すごいよこれ! もっとボタンを押したくなってきました。
「ぱぱぁーん?」
「お、気に入ったのかい? はっはっは。もっと押してもいいんだぞ!」
「えぐ?!」←目キラキラ
「ほほっ。ギルドの近くにオモチャが移動してしまいましたな。ですが、何も問題ありません。建物ごとドーンとすればいいだけですぞ! 大きな的が増えて楽しみですな!」
「はっはっは!」「ほほっ!」「きゃきゃきゃ!」
誰も止められる者はいないため、暴走はどんどん加速していく。この3人が揃うとろくなことがないのである。
笑い終えるとメンテはボタンに手をかけた。そして……。
「えぐうううううああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。
スバババババババババッ!!!!!
ドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴドゥゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーン!!!!!!!
「「ぐわあああああっ!」」←バカ2人
「「「「「「ぎゃああああああああああああああああああああ?!」」」」」」
「はっはっは!」「ほほっ!」「きゃきゃきゃきゃああああああああ!」
メンテは一切躊躇せずにボタンを連打した。爆裂魔法を何度も発動させたためギルドが全く見えなくなるほどである。結界内に閉じ込められた人々からは、爆発と轟音による絶叫が止まらない。
爆裂魔法が終息する頃には、皆がこう感じていた。そりゃ何も分からない赤ちゃんにボタンを押させたらこうなるよ。まだ判断力ないし。というかあれの威力おかしくない? もはやベビーカーじゃなくてただの兵器だよ。ナンス家の暴走がヤバすぎるという噂は本当だった。というかあの赤ちゃんすごい笑ってるんだけど……。さすがナンス家の子だなあと。
こうしてギルドおよび周囲の建物は半壊どころか倒壊したという。結界があろうとなかろうと大惨事であった。
「おお、見晴らしがよくなったな!」
「ほほっ。さすがメンテ様です。敵に躊躇しない姿は立派ですぞ」
「きゃきゃー!」
「はっはっは、最後に花火を打ち上げてフィナーレだ!」
「ほほっ。それは最高の考えです」
「はっはっは!」「ほほっ!」「きゃきゃ!」
ぎゅいいいいいいいんとベビーカーの前方に砲台が現れた。以前、危険な魔物を一撃で屠った禁断の兵器である。
「はっはっはー! 破壊魔法でこの結界をぶち抜くぞー!」
「きゃきゃー!」
「ほほっ。危ないので空に向かって打ちますぞ。ではメンテ様……」
「きゅあああああああああああああああああああああああああああああ!」
ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。ぽちっ。
タクシーが言い終わる前にボタンを連打するメンテである。誰もこの赤ちゃんを止められない。
結界に取り残された人達は、この様子を静かに眺めていた。最初こそあの大砲は何? とポカーンとした様子だったが、タクシーの危ないという発言を聞いてから慌て出した。さっきの爆裂魔法は何も言わなかったのに今度は危険だと……?! これ当たれば死ぬんじゃないか? 早く逃げなければと必死になった。
「おいおい嘘だろ?!」
「あの赤ちゃんがボタンを押すたびに強くなってないか?!」
「うわあああああ、すごい魔力を感じるうおおおお?!」
「ここから出してくれえええええ!」バンバンバン
「まだ死にたくないよぉ~」
「みんなで結界を破壊するんだ。うおりゃああああああ!」
「「「「うおおおおおおお!」」」」
バシバシバシバシッ! ビューン、ドドーン!
結界を破壊しようと武器や魔法を使う冒険者達。だが結界はビクともしない。その間にどんどんエネルギーが溜まっていく。まるでメンテがボタンを連打するたびにパワーアップしていくように見えた。実際は1度押したら勝手にチャージされるのであるが、誰も知る由もない。
「よし、発射だあああーッ!」「きゃあああああ!」「ほほっ」
ピュイイイイイン、ドゥゴォーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!
バリバリバリ、バリ―ンッ!
極太の白いレーザーが一瞬で結界を貫通した。さらにレーザーは上空の雲に届いて大きな穴を開けたという。この衝撃と余波で結界は崩壊。まるで花火のようにパラパラと散っていく。
「おお、綺麗だ」
「きゃきゃ!」
「ほほっ、素晴らしい」
ベビーカーの周囲に展開されていた車ボディは崩壊し消えていく。破壊魔法の威力に耐えられなかったのである。
「今回も防犯システムは耐えられなかったか。だがベビーカーは安全で何よりだな」
「そうですなあ……」
「きゃきゃああああああ!」
タクシーが周りを見ると、結界の中にいた人々があちこちに吹き飛ばされていた。悲鳴がなかったのはあまりの衝撃で全員気絶したからだ。無事だったのはメンテ、ダンディ、タクシーの3人だけであった。
もし防犯システムの防御魔法(車みたいな立体ボディ)がなければ、ベビーカーごと吹き飛んでいたであろう。恐ろしい一発であった。そんな中でボタンを押した赤ちゃんだけは最高の笑顔を見せていた。
「はっはっは、楽しかったな。そろそろ帰るぞメンテ」
「ほほっ。またオモチャで遊びましょうな」
「きゃきゃ!」
こうして久しぶりの町を楽しんだメンテであった。そして、ナンス家に絶対手を出さないようにと町中に拡散されたという。
ふむふむ、そういうことですか。案外この”周りの目より暴走”という家訓は、ナンス家の人間にぴったりなのかもしれません。暴走のスキルは気にせず使えばいいのですね。まあ僕って一度も暴走したことないし、する気もないけどね。
※何度も暴走していますが、本人にその自覚はありません。
なんだかすごく気が楽になりましたよ。暴走スキルはむやみに使っちゃダメだと思ってたもん。デメリットの事しか考えてなかったしね。暴走したっていいじゃない、だってそういうスキルを持ってるんだもん。これがスキルのある世界の常識ってやつなのかな?
……今まで僕は間違っていました。ここは日本とは異なる世界。前世の知識だけでは役立たない部分もあるのです。だから変な偏見を持っちゃダメってことだね。今日実感しました!
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
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