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第13話 ロレンスの葛藤
撤退した共和国軍をしり目に魔王に扮した吸血公ヴァンは、サーレに乗り込むと、総督と冒険者組合長ロレンスを捕えた。
それぞれに尋問したが、総督は何を訊いても冒険者組合の責任で自分は知らないというだけだった。
ヴァンはそんな馬鹿なことがあるかと総督を一喝すると、牢にぶち込んでおけと指示した。
一方、ロレンスは取り調べの最中も共和国への愛国心と自分の考えの間で葛藤していた。
それを察したヴァンは、ロレンスにこう言った。
「お前が何を隠しても言おうと、この戦いはもう一部の冒険者の犯した過ちではなく、魔王領と共和国の問題なのだ。私がお前の言うことで共和国への処分を変えることは無いから言いたいことを言った方が良い。言わねば共和国はサーレの冒険者にすべてを押し付けて、ここを魔族領に差し出して済まそうと考えるはずだ」
「お言葉を返すようですが、そのようなことを共和国がするとは思いません」
魔王に扮したヴァンはそれを聞くとロレンスにこう言った。
「お前の気持ちはわかるが、今ここは占領されている。王国が調停に入り、我が盟友であるヴェルド侯爵に租借地としてサーレを預けてはどうか、と提案したら共和国はどうするかな。共和国が受け入れる可能性はあると思うが」
このヴァンのささやきは、サーレを守りたいロレンスを動揺させた。
「では、私がここでお話すれば、サーレはそのようにならずに済むのでしょうか」
うむ、と魔王に扮したヴァンはそれらしく頷いた。
「ここがどうなるかは、占領している我の気持ち一つにかかっている。これからまた共和国軍が戻ってこようと、わが軍に敵うものではない。今までは魔獣たちに実戦を体験させる訓練をしていたようなものだ」
はっはっとヴァンが笑うのを見て、ロレンスはこれ以上黙っている意味がないことを悟った。
ロレンスは魔王領に行くことを禁じるように国に上申したこと、モランにも行くことを反対したこと、依頼をしたレイズにも依頼契約に問題が起こった時には、依頼人が責任を取ることになると忠告したことを話した。
「しかし、なぜお前は反対したのだ」
「まだ若い時分に私は兵士として国軍に所属し王国に派遣されておりました。その時、侯爵様が大陸では無敵を誇った近衛師団を全滅させた事件について学んでおります。魔王陛下はその侯爵様にお力を与えられたお方、到底、冒険者風情が敵うわけがありません。彼らの命を無為に失わせたくなったのです」
「うむ、お前の判断は正しい。ただ共和国はそうではなかった。お前も辛いだろうが、魔王領を侵した冒険者のことは諦めよ。だが、サーレの処分については約束は守ろう」
ロレンスは、はいと答えてうなだれるしかなかった。
魔王に扮したヴァンはロレンスに命じて書類を押収し、彼には追って処分を決定するので自宅で謹慎するよう命じた。
最後にロレンスを案じたヴァンは、お前が妙なことをすると共和国の冒険者組合は無くなると思えと釘を刺した。
それぞれに尋問したが、総督は何を訊いても冒険者組合の責任で自分は知らないというだけだった。
ヴァンはそんな馬鹿なことがあるかと総督を一喝すると、牢にぶち込んでおけと指示した。
一方、ロレンスは取り調べの最中も共和国への愛国心と自分の考えの間で葛藤していた。
それを察したヴァンは、ロレンスにこう言った。
「お前が何を隠しても言おうと、この戦いはもう一部の冒険者の犯した過ちではなく、魔王領と共和国の問題なのだ。私がお前の言うことで共和国への処分を変えることは無いから言いたいことを言った方が良い。言わねば共和国はサーレの冒険者にすべてを押し付けて、ここを魔族領に差し出して済まそうと考えるはずだ」
「お言葉を返すようですが、そのようなことを共和国がするとは思いません」
魔王に扮したヴァンはそれを聞くとロレンスにこう言った。
「お前の気持ちはわかるが、今ここは占領されている。王国が調停に入り、我が盟友であるヴェルド侯爵に租借地としてサーレを預けてはどうか、と提案したら共和国はどうするかな。共和国が受け入れる可能性はあると思うが」
このヴァンのささやきは、サーレを守りたいロレンスを動揺させた。
「では、私がここでお話すれば、サーレはそのようにならずに済むのでしょうか」
うむ、と魔王に扮したヴァンはそれらしく頷いた。
「ここがどうなるかは、占領している我の気持ち一つにかかっている。これからまた共和国軍が戻ってこようと、わが軍に敵うものではない。今までは魔獣たちに実戦を体験させる訓練をしていたようなものだ」
はっはっとヴァンが笑うのを見て、ロレンスはこれ以上黙っている意味がないことを悟った。
ロレンスは魔王領に行くことを禁じるように国に上申したこと、モランにも行くことを反対したこと、依頼をしたレイズにも依頼契約に問題が起こった時には、依頼人が責任を取ることになると忠告したことを話した。
「しかし、なぜお前は反対したのだ」
「まだ若い時分に私は兵士として国軍に所属し王国に派遣されておりました。その時、侯爵様が大陸では無敵を誇った近衛師団を全滅させた事件について学んでおります。魔王陛下はその侯爵様にお力を与えられたお方、到底、冒険者風情が敵うわけがありません。彼らの命を無為に失わせたくなったのです」
「うむ、お前の判断は正しい。ただ共和国はそうではなかった。お前も辛いだろうが、魔王領を侵した冒険者のことは諦めよ。だが、サーレの処分については約束は守ろう」
ロレンスは、はいと答えてうなだれるしかなかった。
魔王に扮したヴァンはロレンスに命じて書類を押収し、彼には追って処分を決定するので自宅で謹慎するよう命じた。
最後にロレンスを案じたヴァンは、お前が妙なことをすると共和国の冒険者組合は無くなると思えと釘を刺した。
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