負け犬の遠吠えは、これくらいにしておきますわ。背を向けた悪役令嬢は捨て猫(イケメン)と共に。

高城セナ

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「はあー疲れた」

応接室に戻ると、思わずソファに沈み込む
ギルバートが隣で同じようにため息をついた。

「まったく、何しに来たんでしょうね。二人そろって」

「アルトはまだしも、フローラがいるだけで疲労感が増すのよ。あの笑顔、腹の中は何を考えていることか」

私が頭を抱えていると、ドアが開いてレオンがこそっと顔をのぞかせた。

「もういいですか?なんだかピリピリした声が聞こえて怖かった」

「ああ、ごめんなさい。あなたを巻き込むわけにはいかなかったの」

レオンは「そっか」とうなずきつつ、部屋に入ってくる。

「アルト様って人、実はアデルのことが未練たらたらなんじゃない?態度とか目つきとか、聞こえた声から察するに」

「そんなこと…」

言いかけてやめる。否定しきれない気持ちが少しだけある。

ギルバートが複雑そうに肩をすくめる。

「まあ、未練があってもこちらには関係ありませんよ。アデルを捨てたのは向こうなんですから」

「そうだけど、それがすんなりと受け入れられない部分もあるのかもしれない」

自分で言いながら何だかもやもやする。レオンは小さく苦笑して。私の肩をぽんぽんと叩く。

「大丈夫。アデルはアデルの道を歩けばいい。僕もいるしギルバートもいるし」

その言葉に救われる思いで私は小さくうなずいた。

「そうね、ありがとう。二人がいてくれて本当に助かるわ」

「むしろ僕は助けられてる側だけど」

レオンは少し照れながら笑う
ギルバートも「そうですよ
僕だって」と言いたげだ



それからしばらく経って、私は自室に戻り
着替えをしながら考えていた。

噂は絶えない。悪役令嬢と呼ばれ、負け犬扱いされ、今度は王家の血筋を誘惑しているだなんて勝手に言われ放題。

でも、それでいいのかもしれない。
私が否定すればするほど、相手は面白がって噂を大きくしていく。だったらもう
開き直って見せるしかない。

「私が悪役令嬢だって、負け犬だって、だから何よ」

鏡を見ながらそう小さく呟いてみる。少しだけ心が楽になる。

レオンの存在が支えになるのは意外と悪くない。
ギルバートも昔から私を慕ってくれて、時に鬱陶しいほど付きまとってくれるがそれがまた心強い。

私には仲間がいる。それだけで十分。

「ああ、でもちょっとは女性らしくドレスでも眺めたいわね。新調してみようかしら
せっかくだし、ゴージャスなやつを」

アデル・フォン・ヴァイゼル伯爵令嬢が、悪役という看板を掲げながら堂々と華麗なドレスを着て周りを圧倒する姿を想像する。すると、なんだか元気が湧いてくる。

そうよ、負け犬の遠吠えはほどほどに。
でも、どうせなら派手に吠えて見せよう。

捨て猫と共に、好き勝手に生きていくのだ。

窓の外は明るい日差し。
新しい一日が始まったばかり、ゴシップなんかに振り回されず今日も私らしく過ごしてやろうと思う。
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