負け犬の遠吠えは、これくらいにしておきますわ。背を向けた悪役令嬢は捨て猫(イケメン)と共に。

高城セナ

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翌朝、普段よりゆっくりと目を覚ました私は、まだ昨日の宴の余韻に浸っていた。

頭は少し重いけれど、それはおそらくお酒に弱いわけではなく、ただ単に飲みすぎたからだろう。

「うーん、さすがに気怠い……」

寝室から出ると、廊下には掃除をする使用人たちの姿があるが、いつもより人数が少ないように感じる。

「おはようございます、アデル様。昨夜は盛り上がりましたね」

「ええ、おかげで二日酔い……かも」

メイドがクスリと笑う。

「昨夜、夜更かしされた方が多いので、朝番と夜番を振り分けております。ご心配なく、必要な仕事はしっかり回っていますよ」

「そう。なら安心ね」


食堂へ行くと、コック長が落ち着いた様子でコーヒーを淹れている。

「おはようございます、アデル様。お茶にしますか? それともコーヒー?」

「コーヒーでお願い。なんだか頭がスッキリしそうだし」

「かしこまりました。お身体に優しい朝食メニューも考えておりますので、ちょっと待っててくださいね」

キッチンからいい香りが流れてきて、私はゆっくりと椅子に腰を下ろす。

屋敷でこうしてのんびり朝を迎えるのは、いつ以来だろう。

しばらくして、ドタドタと慌ただしい足音が響く。
扉がバンッと開いて飛び込んできたのは、ギルバートだった。
彼は息を切らせ、何か慌てている様子。

「アデル、大変です!」

「な、何よ……そんなに騒がしく。朝ごはん前に吐き気を誘わないでちょうだい」

「実は今、王家からの使者が屋敷に来ているんです。玄関ホールでお待ちいただいてる」

「王家の使者? また変なご用件かしら」

私はコーヒーを一口飲み、顔をしかめる。
王家の使者と聞くと、最近はロクなことがないイメージがある。レオンが絡む可能性が高いからだ。

「詳しく話を聞いてみないとわかりませんが、どうやらレオンさんの身分確認をしたいとか何とか……」

「レオンの? そんなもの、前に一度話があったじゃない。『お前が戻ってくるなら歓迎する』的なやつ。それを断ったはずよ」

「そうなんですが、今度はもう少し正式な形で、王宮の書類を整えたいとかで、直接会話したいそうです」

ギルバートが困ったように眉をひそめる。
「レオンさんに今すぐ出てきてもらって話を進めるか、あるいは断るか、どうします?」

「うーん……」

頭が痛い。この間の“お忍びの訪問”とかいうレベルじゃなく、正式に王家がレオンを呼んでるとしたら、放置は逆に厄介だ。
私はコーヒーを飲み干し、椅子から立ち上がる。

「とりあえず、お会いしてみるしかないわね。レオンは今どこ?」

「まだ寝ているようです。宴の片付けも手伝って、結構夜遅くまで働いていましたから」

「あの子、妙に真面目だから……仕方ないわね、起こしてきてもらえる? 私は使者の方と話してみるわ」

「了解しました」

ギルバートが足早に部屋を出て行き、私は少し深呼吸して気持ちを整える。

王家に何か新たな動きがあるとしたら、レオンをさらって行こうとしているのか、ただ書類を整えたいのか……。
どっちにしても面倒には違いない。
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