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翌朝、重苦しい気分が残るまま目を覚ますと、屋敷の廊下にはいつになく慌ただしい足音が響いていた。
「アデル様、ご起床はまだか?」
「アデル様がお目覚めになったらすぐにお声がけを!」
メイドたちの声が微かに聞こえ、私はベッドから体を起こす。ドアを開けると、メイド長のクラリッサが息せき切って飛び込んできた。
「アデル様、おはようございます。大変です。王城からの使者が来ております!」
「また王城から? 昨日の件で何か進展でもあったの?」
私は半ばあきれながら尋ねる。クラリッサの顔は明らかに困惑に満ちていた。
「はい……どうも、先日の事件に関する取り調べに来たらしく、アデル様がお話を伺っていただけないかと」
「取り調べ? まさかまた私が犯人扱いされるのかしら」
げんなりした気分で額を押さえる。寝ても覚めても、あの事件に振り回されるなんて、本当にたまったものではない。
「とにかく、応接室に通してありますので、どうぞ……。お急ぎで着替えを」
「わかったわ。急いで支度する」
メイドたちの手を借りて急いでドレスに着替え、軽く髪を整える。顔を洗い終わるころには、ギルバートが部屋の前に現れた。
「アデル、王城からの使者に僕も同席しますよ。あなた一人で行かせるわけにはいきません」
「レオンは?」
「レオンさんはまだ寝ているか、あるいは寝起きです。起こしてもいいなら呼んできますが……」
「うーん、どうしようかしら」
迷ったが、レオンまで呼び出せば「噂の王族」としてさらに厄介なことになるかもしれない。とりあえず私とギルの二人で対応して状況を把握するほうがいいだろう。
「とりあえず今回は私とギルで行くわ。レオンには、何かあれば後から来てもらおう」
「かしこまりました」
急いで廊下を進み、応接室のドアを開けると、中には王宮の服装を身につけた男性が一人座って待っていた。グレイヴ――以前レオンの書類をどうこうと言っていた人とは別の人物だろうか。
「アデル・フォン・ヴァイゼル様、ですね。お忙しいところ恐縮ですが、先日の式典で起きた事件について、お話を伺えればと参りました」
男は淡々と自己紹介し、名はカーネルだと名乗った。公式の調査官らしく、手元には書類の束を持っている。
「ええ、構いませんわ。昨日は散々嫌な思いをしましたし、むしろ私のほうこそ協力したいくらいです。誰があんな仕掛けをしたのか、わかればいいけど」
「ご協力感謝します。では、失礼ながらいくつか質問を――」
カーネルは書類をちらりと確認してから、私に向けて質問を始める。どんな場所にいたか、何を見ていたか、怪しい人物を見かけなかったか。事件が起きたときの私の居場所はどこか、ギルバートも含めて細かく聞いてくる。
私も面倒ではあるが、正直に答えていく。フローラの取り巻きが転倒したとき、私はフロアの端でギルとレオンと一緒だった。それを見た周囲の証言もあるはずだから、私が犯人でないことはすぐにわかるだろう。
「なるほど。フローラ令嬢との間で何やら言い合いがあったという噂もありましたが、それは事実ですか?」
カーネルが鋭い目でこちらを見る。私はあっさりうなずく。
「ええ、口論はありました。彼女は私を疑っていましたから、反論しただけです。まったく証拠もなく、私が仕掛けたと決めつけるのですもの」
「そうですか。それで、アデル様には心当たりはありませんか? 誰がどうして、あんな仕掛けを……」
「さあ、正直に言って私にもわかりません。あえて言うなら、フローラの自作自演とか、王家の派閥争いに巻き込まれた何かとか……いろいろ考えは浮かぶけれど、どれも憶測に過ぎません」
「なるほど。フローラ令嬢の自作自演、ですか……」
カーネルは何かをメモしながら、小さくため息をつく。
「フローラ令嬢も、あなたが自分の取り巻きを狙ったのではないかと主張しているようで、両者の主張が真っ向から衝突している形ですね」
「だからこそ私のほうこそ困っています。真犯人がさっさと見つかればいいのに」
「わかりました。詳細はまた後日、追加の聞き取りを行うかもしれませんが、ひとまずはありがとうございました」
カーネルはそう言って書類をまとめる。私もギルバートも、やれやれと思いながら立ち上がる。
「もうお帰りですか? せっかく来たのに、これだけじゃ進展なさそうね」
「おっしゃる通りですね。実際、フローラ令嬢のお屋敷や取り巻きの方にも話を伺っているのですが、証言が対立しており、状況は難しい。ですが、王城としては早期解決を望んでいますので、何かわかりましたらぜひご連絡をお願いします」
軽く頭を下げるカーネルを見送り、私とギルは応接室を後にする。廊下を歩きながら、私は腹の底でモヤモヤした思いが膨らんでいくのを感じた。
「まったく、事件の真相は闇の中ってわけね。フローラが私を犯人に仕立てようとしているのは間違いないみたいだし……」
「そうですね。王宮も必死なんでしょうが、証拠がなければどうしようもない。このまま疑いの目が続くと嫌な展開ですね」
ギルバートが疲れた表情で答える。私も同感だった。もし犯人が見つからなければ、フローラは再び私に罪をなすりつけようと蠢くだろう。気が滅入る話だ。
すると、遠くのほうでドタドタと足音が聞こえる。今度はレオンが急ぎ足でこちらへやって来たようだ。
「アデル様、ご起床はまだか?」
「アデル様がお目覚めになったらすぐにお声がけを!」
メイドたちの声が微かに聞こえ、私はベッドから体を起こす。ドアを開けると、メイド長のクラリッサが息せき切って飛び込んできた。
「アデル様、おはようございます。大変です。王城からの使者が来ております!」
「また王城から? 昨日の件で何か進展でもあったの?」
私は半ばあきれながら尋ねる。クラリッサの顔は明らかに困惑に満ちていた。
「はい……どうも、先日の事件に関する取り調べに来たらしく、アデル様がお話を伺っていただけないかと」
「取り調べ? まさかまた私が犯人扱いされるのかしら」
げんなりした気分で額を押さえる。寝ても覚めても、あの事件に振り回されるなんて、本当にたまったものではない。
「とにかく、応接室に通してありますので、どうぞ……。お急ぎで着替えを」
「わかったわ。急いで支度する」
メイドたちの手を借りて急いでドレスに着替え、軽く髪を整える。顔を洗い終わるころには、ギルバートが部屋の前に現れた。
「アデル、王城からの使者に僕も同席しますよ。あなた一人で行かせるわけにはいきません」
「レオンは?」
「レオンさんはまだ寝ているか、あるいは寝起きです。起こしてもいいなら呼んできますが……」
「うーん、どうしようかしら」
迷ったが、レオンまで呼び出せば「噂の王族」としてさらに厄介なことになるかもしれない。とりあえず私とギルの二人で対応して状況を把握するほうがいいだろう。
「とりあえず今回は私とギルで行くわ。レオンには、何かあれば後から来てもらおう」
「かしこまりました」
急いで廊下を進み、応接室のドアを開けると、中には王宮の服装を身につけた男性が一人座って待っていた。グレイヴ――以前レオンの書類をどうこうと言っていた人とは別の人物だろうか。
「アデル・フォン・ヴァイゼル様、ですね。お忙しいところ恐縮ですが、先日の式典で起きた事件について、お話を伺えればと参りました」
男は淡々と自己紹介し、名はカーネルだと名乗った。公式の調査官らしく、手元には書類の束を持っている。
「ええ、構いませんわ。昨日は散々嫌な思いをしましたし、むしろ私のほうこそ協力したいくらいです。誰があんな仕掛けをしたのか、わかればいいけど」
「ご協力感謝します。では、失礼ながらいくつか質問を――」
カーネルは書類をちらりと確認してから、私に向けて質問を始める。どんな場所にいたか、何を見ていたか、怪しい人物を見かけなかったか。事件が起きたときの私の居場所はどこか、ギルバートも含めて細かく聞いてくる。
私も面倒ではあるが、正直に答えていく。フローラの取り巻きが転倒したとき、私はフロアの端でギルとレオンと一緒だった。それを見た周囲の証言もあるはずだから、私が犯人でないことはすぐにわかるだろう。
「なるほど。フローラ令嬢との間で何やら言い合いがあったという噂もありましたが、それは事実ですか?」
カーネルが鋭い目でこちらを見る。私はあっさりうなずく。
「ええ、口論はありました。彼女は私を疑っていましたから、反論しただけです。まったく証拠もなく、私が仕掛けたと決めつけるのですもの」
「そうですか。それで、アデル様には心当たりはありませんか? 誰がどうして、あんな仕掛けを……」
「さあ、正直に言って私にもわかりません。あえて言うなら、フローラの自作自演とか、王家の派閥争いに巻き込まれた何かとか……いろいろ考えは浮かぶけれど、どれも憶測に過ぎません」
「なるほど。フローラ令嬢の自作自演、ですか……」
カーネルは何かをメモしながら、小さくため息をつく。
「フローラ令嬢も、あなたが自分の取り巻きを狙ったのではないかと主張しているようで、両者の主張が真っ向から衝突している形ですね」
「だからこそ私のほうこそ困っています。真犯人がさっさと見つかればいいのに」
「わかりました。詳細はまた後日、追加の聞き取りを行うかもしれませんが、ひとまずはありがとうございました」
カーネルはそう言って書類をまとめる。私もギルバートも、やれやれと思いながら立ち上がる。
「もうお帰りですか? せっかく来たのに、これだけじゃ進展なさそうね」
「おっしゃる通りですね。実際、フローラ令嬢のお屋敷や取り巻きの方にも話を伺っているのですが、証言が対立しており、状況は難しい。ですが、王城としては早期解決を望んでいますので、何かわかりましたらぜひご連絡をお願いします」
軽く頭を下げるカーネルを見送り、私とギルは応接室を後にする。廊下を歩きながら、私は腹の底でモヤモヤした思いが膨らんでいくのを感じた。
「まったく、事件の真相は闇の中ってわけね。フローラが私を犯人に仕立てようとしているのは間違いないみたいだし……」
「そうですね。王宮も必死なんでしょうが、証拠がなければどうしようもない。このまま疑いの目が続くと嫌な展開ですね」
ギルバートが疲れた表情で答える。私も同感だった。もし犯人が見つからなければ、フローラは再び私に罪をなすりつけようと蠢くだろう。気が滅入る話だ。
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