3 翡翠とセキレイさん、うっかり双子に転生してしまう

華山富士鷹

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翡翠の真実

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 どっかの国では前世で結ばれなかった悲運の男女は、神様の計らいで男女の双子に転生させるらしい。
 そんな話を私(翡翠)が知ったのは、遥か昔の事──

 私は物心ついた時からずっと母親と二人だけで生きてきて、そんな母も、流行りの感染症に感染し、最後に大事な言葉だけを遺してあっと言う間に亡くなってしまった。
 私は遺品整理で見つけた父親の連絡先に連絡をするか迷ったが、天涯孤独となっった心細さから父に連絡し、同居する事を決めた。
 そこに、前世で一緒になれなかったセキレイさんが兄として暮らしていると知った上で。

 そう、私には転生する前の前世の記憶がある。 

 セキレイさんと再会した日、私は目の前にいる男が本当にセキレイさんである事に物凄く感動し、自分を見失うかと思った。
 あの、寝癖かヘアセットか判別出来ない無造作な髪も、シベリアンハスキーみたいな不穏な目つきも、日本人離れした高い鼻や彫りの深さも、セキレイさんはだいぶ若いが前世のセキレイさんのまんまで、私は思わず前世の時のようにその胸に飛び込みそうになる。
 けれどそんな気持ちをグッと押さえ、私は、同じく前世の記憶があるセキレイさんを断固拒絶した。
 セキレイさんは、私に前世の記憶が無いから拒絶されたのだと誤解しているようだったが、これには深い訳があった。
 私とセキレイさんが双子の兄妹だから──ではなく、話は私が亡くなった時に遡る。

 私は愛する子供達を愛する夫(風斗)に託し、早すぎる半生に幕を閉じた。
 生前は家事に育児、政治や慈善活動にと慌ただしく駆け抜けた。そして愛する人達に看取られながら亡くなり、ふと、立ち止まって思い出したのは、私をここまで育て上げてくれた恩師、セキレイさんだ。
 何故、今になってセキレイさんを思い出すのかと言うと、彼とは志半ばにして一緒になれなかったので気持ちがその時のまま、完結していなかったからだ。勿論、生涯を共にした風斗さんの事も愛していたが、セキレイさんを愛していた気持ちも風化されないままずっと胸にあった。
 だから私があの世へ逝って神様にお会いした時、神様から『もう一度、生きて再びセキレイに会いたいか?』と尋ねられ、私は『どんな形でもいいので会いたいです』と言った。すると神様は『ならばお前達にもう一度チャンスをやろう』と言ってくれて、私は転生するその時まで天国で愛する人達を見守り続けた。
 そしていざ転生の時、神様は私にこう言った。

『前世で一緒になれなかったお前達を双子に転生させてやる。だが、もし禁忌を犯したら、その時はセキレイを地獄に落とす』

 ──と。
 きっと神様は、私達が禁忌を犯す事を見越していたのだと思う。
 だって、もしその言葉がなかったら、間違いなく、私は双子の兄であるセキレイさんと禁忌を犯していた。
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