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第5話 勝利の後には美味しいデザートを
しおりを挟むさて、ぴぴとぷうの方も終わったみたいだし、ここは合流するかな。
「ぴぴ~、ぷう~、そっちは終わった?」
「ええ、終わったわよ」
「うん。ばっちりだよ」
「そっか、こっちに我輩が連れてきた妖精軍が100機いるから、攻撃しないように気をつけてね」
「ええ、味方の識別信号は出ているのよね?」
「それはもちろん」
「なら大丈夫よ」
「わたしもラジャーだよ~。それより見てみて~」
ぴぴとぷうは通信をしながらこちらにやってきた。ぴぴはなにやら巨大な子鬼型BPSを、ぷうは大きなキラキラ光るクリスタルをそれぞれ持って。
「じゃっじゃ~ん! この子鬼の船にあった、エネルギークリスタルだよ」
「おお~、流石1000m級、大きいね。ぴぴの大きい子鬼型BPSはなになの?」
「これはこの船の艦長専用BPSかしら? 大きくて強そうだから、とりあえず狩ってみたわ」
「おいおい、まじかよ、すげえな。ちょっと見せてくれ」
「ええ、いいわよ」
「いいよ~」
我輩がぴぴとぷうと会話していると、アの3が驚いたように会話に参加してくる。もっとも、BPSに乗っているから、表情なんかはわからないので、声からの推測だが。
「さて、その2つはまあいいとして、このでっかい宇宙船と、2人が倒した子鬼型BPSはどうしようね。戦利品として持ち帰るにも、ちょっと大変だよね」
「じゃあ、うちの部隊に預けてけよ。この船の内部には、まだ生身の子鬼の搭乗員なんかがいるだろうから、当分の間ここを離れられないしな」
「いいの?」
「ああ、かまわないぜ。素材のままほしいならあとでそのまま渡すし、金でほしいならハンターギルドに入金しとくぜ。それに、この強襲揚陸艦の攻撃に関して言やあ、俺達の上司が出した緊急依頼だからな、そのくらいはするさ。な、隊長、いいだろ?」
「ああ、かまわないぞ。戦闘は終わりみたいだしな」
「お、ほんとだな」
「終わったの?」
「ああ、指令本部より連絡があった。この強襲揚陸艦以外にも、前線で敵の1000m級を5隻撃破。子鬼どもは逃げ出したようだな。これから追撃戦を行うらしいが、ここは前線からすこし離れてるし、この人数だ。艦内の残存兵力の排除もあるから、俺達は店じまいだな。恐らくハンターギルド経由での連絡もすぐに行くはずだ」
アの1からそんな話を聞いた直後に、同じような内容の連絡がハンターギルド経由で来た。ん、そういえば、ちょっと口調が乱れていたな。ここは1度ハードボイルドにゃんこモードに戻すとしよう。
「そうか、では、我輩達の仕事もここまでにするか」
「おう、で、どうするよ。持てるだけ持ってくか?」
「いや、預けていいなら全部そうさせてもらえるか?」
「わかったぜ。調査やら査定やら全部終わるのに、そうだな。20日ほどかかると思うが、かまわないか?」
「ああ、かまわない」
「助かるぜ。ところでよ。なんでいきなり口調が変わったんだ?」
「我輩は世界一のハードボイルドにゃんこだからな。アの3に流されてしまっていたが、本来はこちらが素なのだよ」
そう、このしゃべり方こそ我輩の本来のしゃべり方なのだよ。
「ふふ」
「え~、さっきまでのが素だよね」
「ぴぴ、ぷう、し~!」
まったく、この2人は余計なことを言う!
「お、おう、わかったぜ」
「うむ、情報感謝する。では、我輩達はここで失礼する」
「待て」
おっと、隊長機のアの1が突然会話に入ってきた。う~ん、この人怖いから苦手なんだけどな。
「ん? どうしたんだ、隊長?」
「協力感謝する! 総員敬礼!」
「「「「「はっ!」」」」」
ふむ、なかなか律儀な御仁のようだな。我輩達も敬礼を返して、この場を立ち去る。まあ、ミニぴぴぷちゃ号にしろぴぴとぷうの切り裂き王、噛み付き王にしろ、構造上の問題で敬礼に上手くならず、ただ手をあげただけになってしまったが。
さて、ぴぴとぷうの機体を回収して、惑星αに戻るとしますか。
「ぴぴ、ぷう、ミニぴぴぷちゃ号に着艦してね。帰ろ~」
「「は~い」」
ちなみに着艦ももちろん口からだ。出撃の時とは違い、今度は2人の機体を飲み込むような形で着艦する。
「ん~、終わったね~」
「ちょっと弱すぎて物足りなかったかしら」
「そう? 防衛戦なんてめったにないから、わたしはちょっと楽しめたかな」
おっと、虎のギルマスからの通信が入っていたようだな。再生するか。
『諸君、よくやってくれた。諸君らの活躍もあり、子鬼どもは1000m級の大型宇宙船を5隻も失い、逃げていった! がっはっは、実にめでたい! 本日は本当にご苦労であった。他のハンター支部ではわからんが、俺の軍に参加してくれた者たちには、支部にて慰労会を行いたい。支部の食堂を無料開放するので、是非来てほしい。それと報酬の件だが、基本報酬は3日後に、各々の戦果に対する出来高の部分は、20日後に出る。だが、機体の整備等で至急金が必要なものは申し出てくれ。ギルドの修理工場に頼む分には支払いを保留にするし、外部委託でないとどうしようもないものは、俺の判断で前払いする』
なるほど、慰労会か、虎のギルマスもなかなか粋な虎のようだな。ただ、我輩は騒がしいことを好まないのだがな。
「ぴぴ、ぷう、聞いてた? 慰労会だって」
「私は騒がしいの苦手だからパスね」
「わたしも、ちょっと賑やかなくらいならいいんだけど、派手に騒がしいのはな~。それに、もうお腹ぺこぺこだよ~」
ふむ、聞くまでもなかったか。それに、ぷうの言うように確かにいい時間だな。では、夕食を食べながら帰るとしよう。
「じゃあ、夕食はいますぐ食べるとして、食堂が無料っていうことだし、昼間食べ損ねたデザートだけもらってこようか?」
「「賛成!」」
「了解! じゃあ、さっそくお夕飯にするね」
「「は~い」」
そして、夕食を済まし、無事に惑星αに帰ってきた我輩は、昼間と同じ虎のギルマスのいるギルド支部の駐車場にミニぴぴぷちゃ号を止めて、デザートをもらいに行くことにした。
「じゃあ、デザートもらいに行ってくるね」
すぴ~すか~。
うん、2人ともすっかり寝ちゃったようだな。まあ、いっか。
我輩がミニぴぴぷちゃ号からギルド支部までの地味に長い道のりを歩いていると、ハンター達が続々と帰ってくる。そっか、そんなに急いで帰ってきたつもりは無かったけど、前線に行ってたほかのハンター達と比べると、我輩達のいた場所のほうが惑星αには近かったのか。まあ、なんにせよ我輩の今の任務はデザートの確保だ。
我輩はハンターギルド支部のドアを通り、食堂に向かう。ほう、もう再開しているのか、羊の女性がすでに注文窓口にいた。なかなかの早業だな。
「もう再開しているのか?」
「あら、いらっしゃい。そうよ。私達はシェルターに逃げていただけだからね。戻るのも早いのよ」
「なるほどな。美味しいと噂の新作デザートを3個持ち帰りで頼む。ああ、我輩1人で食べるわけではない、連れが2人いるんでね」
「あいよ。ところでにゃんこさんは、今回の戦いに参加した人かい?」
「ああ、そうだ。これを」
そう言って我輩は虎の22の番号札を見せる。
「なるほど、それじゃあ無料だね! ちょっとまっててね。デザートは全部作り置きだから、すぐ用意出来るからね」
「うむ」
妖精族の女性はそう言って奥に行くと、すぐにデザートを3個持ってきてくれた。
「はい、お待ちどうさま」
「ああ、感謝する」
「ご飯は大丈夫なのかい?」
「そちらは大丈夫だ。夕食は食べながら帰ってきたのでな」
「そうだね。もういい時間だものね」
「では、失礼する」
「ええ、まいどあり」
我輩達の食事は、基本は全て我輩が用意している。だが、今回の新作デザートのように、美味しそうなものに対しては、我輩達の美味しいものレーダーが作動するからな。そういう時だけ食べに出ているのだ。まあ、昼間は食べ損ねたが。
我輩はデザート3個を収納袋に入れて、首から下げ、ギルド支部を立ち去る。すると、入れ替わりでどんどんハンター達がやってくる。ふう、タイミングよく混雑する前にこれたのは運が良かったな。もういい時間だというのに、ハンターの多くはこれから行われる慰労会で、食って飲んでといったところか。まあなんにせよ慰労会が始まる前でよかったな。慰労会の主役は酒と食べ物だろうが、デザートも下手をすると女性ハンターに食べつくされるからな。
さて、帰ったら我輩も寝るとしようかな。
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