悪役推し令嬢はこじらせ男子を攻略したい

福北ヒトデ

文字の大きさ
60 / 63
第三章 ヴィンセント攻略

神属性と魔族の血

しおりを挟む
「アレクのお母様の話ですか?」

 急な話題転換に私は驚いたが、アレクシスはうなずく。

「俺が魔族の血を引いているのは知っているだろう。それは母が魔族の姫君だからだ」

 知っているだろう、とアレクシスに言われて、私は曖昧にうなずいた。
 たしかにそういった設定をどこかで聞いたことがあるような気はしたが、アレクシスは『聖戦のステラ』における悪役で、正直ヒロインやヒーローに比べてかなり描写が少ない。

 この世界に転生してから、アレクシスに直接聞いた覚えもないのに、さも知っている前提で話しているのは、おそらくこの世界の常識として広く知られている事なのだろう。
 ならばわざわざ聞き返して、話を遮る必要はない。私はなんでもない顔をして、話の続きを聞いた。

「母は王家に魔族の血を入れるためだけに、隣国から嫁いできた。魔族の血を引く者でないと神属性を得ることができないからだ」
「え、神属性って魔族じゃないと出ないんですか?」

 アレクシスがうなずく。

「唯一、聖女だけは生まれつき光属性を有していると言われているが、それ以外は魔族の血が流れていないとあり得ない。王族に神属性持ちが多いのは、定期的に魔族の姫君を受け入れているからだ」
「あれ? でも私、王族でもないし、魔族でもないですよ? なのに、なんで神属性があるんですか?」

 ルシールはただの辺境侯爵家の娘だ。
 王家の隠し子だとか、魔族の血を引いているなんて設定はついていなかったはずだが。

 そう不思議に思っていると、アレクシスが彼なりの予想を教えてくれた。

「この国の上級貴族なら、王族と婚姻を結ぶことはままある。魔族の血が薄くなればなるほど出にくくはなるが……まれに、数代後の子に神属性が出ることもあるそうだ。アンタはそのケースだろう」

 ふむ、隔世遺伝のようなものだろうか。あるいは突然変異?
 もしかしたら転生したことが関係あるのかもしれないが、判断するには情報が足りなすぎる。
 私は疑問を、頭の片隅に放り投げることにした。
 必要があれば、いつか思い出そう。

「わかりました。それで、アレクのお母様がどうされたのですか?」

 アレクシスがうなずいて、続ける。

「母と父の婚姻は、お世辞にも喜ばしいものとは言えなかった。我が国と魔国は現在停戦しているが、元々は対立し、争っていた国の姫だ」

 アレクシスの口から、さらっとネタバレが行われる。『聖戦のステラ』は、アレクシスのクーデター編の後、魔国編が始まるといった予告がされていた。だが私は魔国が始まる前に転生してしまったので、正直その辺りの知識はまるでない。

 この先はちゃんと聞いておいた方がいいだろう。
 私がそう思って身を乗り出すと、アレクシスの口から衝撃的な言葉が飛び出した。

「城における母の立場は非常に弱い。……いや、弱いどころではない。今もなおクリスティアン兄上の母君から、迫害を受けているのだ。もちろん、その息子である俺も」
「それは……」

 私は言葉を失った。
 クリスティアンの母ということは、国王の第一正妃だ。王に次ぐ権力の持ち主であり、城で彼女ににらまれたのなら、お世辞にも快適な暮らしは送れないだろう。

 そして同時に、母親同士がそんな関係性であるにもかかわらず、アレクシスとクリスティアンがよくあそこまで仲良くなれたものだとも思った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...