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第11章
219話
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傍観者side
「下ろせ…下ろしてくれっ!」
「暴れるなって!……うわっ、危ねぇ!」
焦げた硫黄の匂いが鼻を刺し、地面は焼けた鉄板のように熱を帯びている。
黒煙が空を覆い尽くす中、ヤーコプはユリウスを抱えたまま、崩れた建物の合間を縫って必死に海岸を目指していた。
だが、港町の端に差し掛かったその時、激しく身を捩っていたユリウスの身体がヤーコプの腕から抜け出して、地面に転がり落ちた。
「母さん…!母さん…!!」
ユリウスはそのまま地面を這うように再び燃え盛る瓦礫の町へ戻ろうとする。
その目には火に対する、恐怖も、躊躇も、一切なかった。
「馬鹿野郎!何やってんだよっ!?」
ヤーコプはすぐさまユリウスの腕を掴み、力ずくで引き戻す。
だがユリウスは必死に振りほどこうともがき、叫んだ。
「離せ!母さんが、まだあそこに居るんだ!助けに行かないと…!」
「いい加減に…しろっ!」
怒声と共にヤーコプはユリウスを脈打つ地面に押し倒し、その上に馬乗りになった。
焼けた地面の熱が肌を刺す中、ヤーコプの両手はユリウスの胸ぐらを強く掴む。
「お前が戻ったところで、おばさんは助からねぇ!一緒に焼け死ぬだけだ!!」
その言葉に、ユリウスの頭にカッと血が上る。
怒りの衝動のままヤーコプを突き飛ばし、体勢を逆転させたユリウスは、今度は自らがヤーコプの胸ぐらを掴み返して怒鳴った。
「黙れっ…!お前があんなことをしなければ、母さんは今頃助かってたんだっ…!!」
額に青筋を張らせ、翡翠色の瞳を釣り上げたユリウスは、怒りと悔しさを全てヤーコプにぶつける。
だが、ヤーコプも負けじと叫び返した。
「助かってねぇよっ!!!」
ヤーコプの怒声が、焦熱の空気をビリビリと震わす。
「お前だって分かってるだろ!あのとき、どんなに手を尽くしても瓦礫はびくともしなかった!俺たちに、あれをどうにかする力はなかったんだ…!!」
ヤーコプに突き付けられた正論に、ユリウスの顔が歪む。
「冷静になれ、ユリウス。無謀と勇気を履き違えるな。確かに俺たちはおばさんを置いて来た。それは…一生背負うことになる。でもだからこそ、俺たちは何としてでも生きなきゃならねぇんだ。俺らがここで死んだら、おばさんの想いが全部無駄になっちまうだろ…!」
荒い息を吐きながら、2人は睨み合う。
やがて、数秒の沈黙のうち、ユリウスがかすれた声で言った。
「……ごめん…」
その一言には、怒りの果てに残った後悔、悲しみ、そしてどうしようもない無力感が滲んでいた。
ユリウスは分かっていた。
あのとき、マグマが迫る中で、ヤーコプがそうするしかなかったということを。
断腸の思いで、冷静さを失ったユリウスを抱えてあの場から去ったことを。
命を天秤にかけたヤーコプの決断が、どれだけ重く、苦しいものだったかーーー全て分かっていた。
だが、ユリウスはそれを認めたくはなかった。
認めてしまえば、本当に母がもう戻らないことを受け入れたことになる。
母が存在しない世界。
その現実が、何よりも怖かったのだ。
ユリウスはゆっくりとヤーコプの胸ぐらを解放し、力なく手を下ろした。
ヤーコプは黙ってその肩を軽く叩く。
「行くぞ。ここで立ち止まってる暇はねぇ。マグマが、もうすぐそこまで来てる。」
ユリウスは僅かに頷いた。けれど、声は出なかった。
喉の奥がひりつくように詰まり、言葉にならない思いだけが胸の内に渦巻いていた。
それでも、二人は再び立ち上がり、崩れゆく町を背に、海岸を目指して走り出した。
❖❖❖❖❖
ユリウスとヤーコプは、ようやく海岸までたどり着いた。
そこには、先に避難していたはずの港町と丘の上の住民たちが大勢、海小屋の中や砂浜に座り込んでいた。
子供を抱いた母親、負傷した老人、唖然と空を見上げる者……皆、生き延びはしたが、その表情には酷く憔悴しきっていた。
ユリウスたちは先に避難していた父とゾフィーを見つけた。
「父さん!ゾフィー!」
駆け寄ると、2人はほっとした表情を浮かべるが、その目には安堵の色とともに、なにか重いものが見え隠れしていた。
「…母さんは?」
ゾフィーが不安そうに尋ねると、ユリウスは思わず俯き、何も言えなかった。
その様子を見たヤーコプは、ユリウスの代わりに力なく首を横に振り、無言で答えた。
「そんな…」
全てを察したゾフィーは顔を覆い、膝から崩れ落ちる。
そんなゾフィーの傍らに膝を着いた父は、彼女の肩を抱きしめた。
「……ごめん。」
ユリウスはぽつりと、それだけを絞り出した。
現実を受け入れられていないユリウスの呟きは、痛々しく、どこか空虚だった。
「…。」
ヤーコプは何も言わず、ユリウスの肩に手を置いた。
だが――そのときだった。
「う、嘘だろ…!」
誰かが叫んだ。
振り返ると、海岸の遥か後方――ユリウスの村があったはずの丘の方角から、真っ赤なマグマがうねりを上げながら、じわじわと迫ってきていた。
「…マグマが、海岸まで来るぞッ!!」
「なんでだよ!海には来ないって……言ってたじゃないか!!」
人々が一斉に立ち上がり、逃げ場を探して右往左往し始めた。
港には、奇跡的に残された数隻の小型船があった。
「船だ!乗れ、早く!!」
人々は我先にと船に殺到し、避難船はあっという間に奪い合いの場となった。
怒号、叫び声、子どもの泣き声が入り混じる中、群衆は押し潰され、踏み潰され、海に突き落とされる者もいた。
ユリウスたちも船に近づこうとしたが、あまりの混乱に近づくことすらできない。
「……くそっ、間に合わない!」
ヤーコプが舌打ちする。
そのとき、ユリウスが何かを見つけて走り出した。
「これだ!! ヤーコプ、手伝ってくれ!!」
彼が見つけたのは、岸に流れ着いた分厚い木の板だった。
おそらく、壊れた桟橋の一部だったのだろう。
「これなら、浮かべる!」
すぐさまゾフィーと父親をその上に乗せ、ユリウスは板を押しながら冷たい海へと飛び込んだ。
「僕らは泳ぐしかない!!」
「おう!行くぞ、ユリウス!!」
二人は必死に板を押しながら、波に向かって進み始めた。
背後では、地鳴りと共に灼熱のマグマが海岸を焼き尽くす音が響き渡る。
空が赤く染まり、波が蒸気をあげて煮えたぎる。
そのとき――
ズゴォォォオオオオンッ!!!
耳をつんざくような轟音を響かせて、マグマがついに海へと達した。
水と火が激しくぶつかり合い、爆音とともに水蒸気が天へと噴き上がり、空を裂いた。
瞬く間に巨大な白い霧が周囲を包み込み、視界は真っ白に閉ざされた。
その衝撃で、ユリウスたちは海上から吹き飛ばされた。
爆風にあおられ、板を押して泳いでいたユリウスの体が宙に浮き、そのまま板の上へ叩きつけられる。
吹き飛ばされまいと、ユリウスはゾフィーと父を庇いながら必死にその板にしがみついた。
❖❖❖❖❖
――どれほどの時間が過ぎたのだろう。
ようやく霧が晴れると、そこには見慣れぬ真新しい黒い大地―――巨大な大陸が、海に張り出すようにして現れていた。
ユリウスたちが暮らしていた島は、赤黒いマグマに呑み込まれ、その姿を大きく変えていた。
かつての緑あふれる小さな島の面影は、どこを探しても見つからなかった。
「…全部…なくなっちまった…。」
海に体を預け、板にしがみついたまま、ヤーコプが呆然とつぶやいた。
ユリウスも、言葉を失っていた。
ただ、板の上で震えるゾフィーと父親の肩を抱きしめながら、遠くに聳え立つ、変わり果てた島の姿を見つめ続けていた。
あの場所に、母がいた。
村があった。
代々受け継がれてきた林檎の木があった。
ユリウスの全てが、そこにあった。
だが今は――
ユリウスたちは、変わり果てた島を、ただ茫然と見つめ続けていた。
「下ろせ…下ろしてくれっ!」
「暴れるなって!……うわっ、危ねぇ!」
焦げた硫黄の匂いが鼻を刺し、地面は焼けた鉄板のように熱を帯びている。
黒煙が空を覆い尽くす中、ヤーコプはユリウスを抱えたまま、崩れた建物の合間を縫って必死に海岸を目指していた。
だが、港町の端に差し掛かったその時、激しく身を捩っていたユリウスの身体がヤーコプの腕から抜け出して、地面に転がり落ちた。
「母さん…!母さん…!!」
ユリウスはそのまま地面を這うように再び燃え盛る瓦礫の町へ戻ろうとする。
その目には火に対する、恐怖も、躊躇も、一切なかった。
「馬鹿野郎!何やってんだよっ!?」
ヤーコプはすぐさまユリウスの腕を掴み、力ずくで引き戻す。
だがユリウスは必死に振りほどこうともがき、叫んだ。
「離せ!母さんが、まだあそこに居るんだ!助けに行かないと…!」
「いい加減に…しろっ!」
怒声と共にヤーコプはユリウスを脈打つ地面に押し倒し、その上に馬乗りになった。
焼けた地面の熱が肌を刺す中、ヤーコプの両手はユリウスの胸ぐらを強く掴む。
「お前が戻ったところで、おばさんは助からねぇ!一緒に焼け死ぬだけだ!!」
その言葉に、ユリウスの頭にカッと血が上る。
怒りの衝動のままヤーコプを突き飛ばし、体勢を逆転させたユリウスは、今度は自らがヤーコプの胸ぐらを掴み返して怒鳴った。
「黙れっ…!お前があんなことをしなければ、母さんは今頃助かってたんだっ…!!」
額に青筋を張らせ、翡翠色の瞳を釣り上げたユリウスは、怒りと悔しさを全てヤーコプにぶつける。
だが、ヤーコプも負けじと叫び返した。
「助かってねぇよっ!!!」
ヤーコプの怒声が、焦熱の空気をビリビリと震わす。
「お前だって分かってるだろ!あのとき、どんなに手を尽くしても瓦礫はびくともしなかった!俺たちに、あれをどうにかする力はなかったんだ…!!」
ヤーコプに突き付けられた正論に、ユリウスの顔が歪む。
「冷静になれ、ユリウス。無謀と勇気を履き違えるな。確かに俺たちはおばさんを置いて来た。それは…一生背負うことになる。でもだからこそ、俺たちは何としてでも生きなきゃならねぇんだ。俺らがここで死んだら、おばさんの想いが全部無駄になっちまうだろ…!」
荒い息を吐きながら、2人は睨み合う。
やがて、数秒の沈黙のうち、ユリウスがかすれた声で言った。
「……ごめん…」
その一言には、怒りの果てに残った後悔、悲しみ、そしてどうしようもない無力感が滲んでいた。
ユリウスは分かっていた。
あのとき、マグマが迫る中で、ヤーコプがそうするしかなかったということを。
断腸の思いで、冷静さを失ったユリウスを抱えてあの場から去ったことを。
命を天秤にかけたヤーコプの決断が、どれだけ重く、苦しいものだったかーーー全て分かっていた。
だが、ユリウスはそれを認めたくはなかった。
認めてしまえば、本当に母がもう戻らないことを受け入れたことになる。
母が存在しない世界。
その現実が、何よりも怖かったのだ。
ユリウスはゆっくりとヤーコプの胸ぐらを解放し、力なく手を下ろした。
ヤーコプは黙ってその肩を軽く叩く。
「行くぞ。ここで立ち止まってる暇はねぇ。マグマが、もうすぐそこまで来てる。」
ユリウスは僅かに頷いた。けれど、声は出なかった。
喉の奥がひりつくように詰まり、言葉にならない思いだけが胸の内に渦巻いていた。
それでも、二人は再び立ち上がり、崩れゆく町を背に、海岸を目指して走り出した。
❖❖❖❖❖
ユリウスとヤーコプは、ようやく海岸までたどり着いた。
そこには、先に避難していたはずの港町と丘の上の住民たちが大勢、海小屋の中や砂浜に座り込んでいた。
子供を抱いた母親、負傷した老人、唖然と空を見上げる者……皆、生き延びはしたが、その表情には酷く憔悴しきっていた。
ユリウスたちは先に避難していた父とゾフィーを見つけた。
「父さん!ゾフィー!」
駆け寄ると、2人はほっとした表情を浮かべるが、その目には安堵の色とともに、なにか重いものが見え隠れしていた。
「…母さんは?」
ゾフィーが不安そうに尋ねると、ユリウスは思わず俯き、何も言えなかった。
その様子を見たヤーコプは、ユリウスの代わりに力なく首を横に振り、無言で答えた。
「そんな…」
全てを察したゾフィーは顔を覆い、膝から崩れ落ちる。
そんなゾフィーの傍らに膝を着いた父は、彼女の肩を抱きしめた。
「……ごめん。」
ユリウスはぽつりと、それだけを絞り出した。
現実を受け入れられていないユリウスの呟きは、痛々しく、どこか空虚だった。
「…。」
ヤーコプは何も言わず、ユリウスの肩に手を置いた。
だが――そのときだった。
「う、嘘だろ…!」
誰かが叫んだ。
振り返ると、海岸の遥か後方――ユリウスの村があったはずの丘の方角から、真っ赤なマグマがうねりを上げながら、じわじわと迫ってきていた。
「…マグマが、海岸まで来るぞッ!!」
「なんでだよ!海には来ないって……言ってたじゃないか!!」
人々が一斉に立ち上がり、逃げ場を探して右往左往し始めた。
港には、奇跡的に残された数隻の小型船があった。
「船だ!乗れ、早く!!」
人々は我先にと船に殺到し、避難船はあっという間に奪い合いの場となった。
怒号、叫び声、子どもの泣き声が入り混じる中、群衆は押し潰され、踏み潰され、海に突き落とされる者もいた。
ユリウスたちも船に近づこうとしたが、あまりの混乱に近づくことすらできない。
「……くそっ、間に合わない!」
ヤーコプが舌打ちする。
そのとき、ユリウスが何かを見つけて走り出した。
「これだ!! ヤーコプ、手伝ってくれ!!」
彼が見つけたのは、岸に流れ着いた分厚い木の板だった。
おそらく、壊れた桟橋の一部だったのだろう。
「これなら、浮かべる!」
すぐさまゾフィーと父親をその上に乗せ、ユリウスは板を押しながら冷たい海へと飛び込んだ。
「僕らは泳ぐしかない!!」
「おう!行くぞ、ユリウス!!」
二人は必死に板を押しながら、波に向かって進み始めた。
背後では、地鳴りと共に灼熱のマグマが海岸を焼き尽くす音が響き渡る。
空が赤く染まり、波が蒸気をあげて煮えたぎる。
そのとき――
ズゴォォォオオオオンッ!!!
耳をつんざくような轟音を響かせて、マグマがついに海へと達した。
水と火が激しくぶつかり合い、爆音とともに水蒸気が天へと噴き上がり、空を裂いた。
瞬く間に巨大な白い霧が周囲を包み込み、視界は真っ白に閉ざされた。
その衝撃で、ユリウスたちは海上から吹き飛ばされた。
爆風にあおられ、板を押して泳いでいたユリウスの体が宙に浮き、そのまま板の上へ叩きつけられる。
吹き飛ばされまいと、ユリウスはゾフィーと父を庇いながら必死にその板にしがみついた。
❖❖❖❖❖
――どれほどの時間が過ぎたのだろう。
ようやく霧が晴れると、そこには見慣れぬ真新しい黒い大地―――巨大な大陸が、海に張り出すようにして現れていた。
ユリウスたちが暮らしていた島は、赤黒いマグマに呑み込まれ、その姿を大きく変えていた。
かつての緑あふれる小さな島の面影は、どこを探しても見つからなかった。
「…全部…なくなっちまった…。」
海に体を預け、板にしがみついたまま、ヤーコプが呆然とつぶやいた。
ユリウスも、言葉を失っていた。
ただ、板の上で震えるゾフィーと父親の肩を抱きしめながら、遠くに聳え立つ、変わり果てた島の姿を見つめ続けていた。
あの場所に、母がいた。
村があった。
代々受け継がれてきた林檎の木があった。
ユリウスの全てが、そこにあった。
だが今は――
ユリウスたちは、変わり果てた島を、ただ茫然と見つめ続けていた。
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