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第一章
目覚め
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薄暗く、広い部屋の中で、少年ギフトは目を覚ました。
見覚えのない場所に仰向けに倒れている自分の状況に、まだ覚醒しきっていないぼんやりとした意識の中でも、ギフトは驚いて上体を起こす。
冷たい床に張り付いていた右頬がべリッという音を立てて剥がれ、その痛さに呻きながらも、辺りを見渡す。
そこは学校の体育館くらいの広さの部屋だった。
ギフトはそのちょうど中心にあたる場所に倒れていたらしい。
しかし体育館と明らかに違うと言える所はたくさんあった。
まず一つは〈照明の有無〉である。
ギフトがいる部屋には灯りが無かった。
ここまで大きな部屋だと、普通の部屋より沢山の照明があるのが普通のはずなのだが、この部屋にはライトの一つも無く、ギフトの緑色の目ではせいぜい肉眼でぼんやりと部屋の壁を確認できる程でしかなく、あまりにも薄暗い部屋だ。
次に〈窓〉だ。
この部屋には窓が一つもない。
おかしいじゃないか、とギフトは思って頭を傾げる。
人は物の存在やその色を確認する時、光の反射で確認する。
物が見えるという事はすなわち、光を見ているのと同じである。
したがってこの部屋に照明が無い以上、窓や隙間等から漏れる光によって、ギフトはこの部屋の壁を確認する事ができているはずである。
そう判断しても、何もおかしくないはずなのに、この部屋には窓の一つはおろか、隙間すらない。
少なくともギフトの確認できる範囲では見つからなかった。
そして最後に〈出入りするためのドアの存在〉である。
「いや、流石にこれはおかしい」
ギフトは若干の焦りと苛立ちを覚えながら心の中でそう呟いた。
ここを部屋とする場合(そもそもの話、ここは本当に部屋だろうか?)、どんな理由があろうとも、出入りするためのドアは必要なはずだ。
ドアがないなら、自分はどうやってここに来た?
どうやって入れた?
それに気づいたギフトは、焦りと苛立ちに続き、恐怖も覚え始めていた。
その恐怖を紛らわせる為に、彼はゆっくりと思考を巡らせる。
なんて殺風景な場所なんだ、ここは。いや、殺風景ってレベルじゃない、何の為の場所なんだ、ここは。灯りもない、窓もない、出入り口も存在しない……!
ギフトはそう思いながら辺りをもう一度グルグルと見渡すが、ただ広く、薄暗く、何もない場所という事以外、ギフトの頭の中でこの場所の情報が更新される事は無かった。
知らない場所で突然目覚め、得体のしれない場所に自分がいたら、果たしてどれほどの人間が冷静でいられるのだろう。
こうして文章で情報を得たり、漫画やドラマなどで何度もこのような展開を見てきた人間でも、実際にこのような状況に陥った際には、ただパニックを起こして何もできない人間が大半なのではないだろうか。
彼のように、自分の状況を真っ先に知ろうとする人間も少ないのではないだろうか。
だがそんな彼もただの人間、脱出する為に壁を通り抜けたり、この場所が地球のどの辺にあるか、周りに人間がいるかどうかなんてものを感知する事なんてできやしない。
他人より少し状況を理解する事ができた彼でも、八方塞がりになれば後は焦りと恐怖が脳を完全に支配し、パニックを起こすのも時間の問題である。
背中にじわりと嫌な汗が湧き上がる。
ここは何処だという考えが、まるで消えかかった電球のように、何度も浮かび上がっては消え、浮かび上がっては消える。
ここは一体。
「何の為の場所なんだ?何の為に存在してる?そう思ってるんだろう?」
突然後ろから、自分のものではない声を聞いたギフトはビクッと体を跳ねながらも勢いよく振り返った。
そこには白髪が混じったグレーの髪を後ろに撫で付け、黒いスーツを着たしかめ面の男が壁にもたれるような姿勢で立っていた。
見覚えのない場所に仰向けに倒れている自分の状況に、まだ覚醒しきっていないぼんやりとした意識の中でも、ギフトは驚いて上体を起こす。
冷たい床に張り付いていた右頬がべリッという音を立てて剥がれ、その痛さに呻きながらも、辺りを見渡す。
そこは学校の体育館くらいの広さの部屋だった。
ギフトはそのちょうど中心にあたる場所に倒れていたらしい。
しかし体育館と明らかに違うと言える所はたくさんあった。
まず一つは〈照明の有無〉である。
ギフトがいる部屋には灯りが無かった。
ここまで大きな部屋だと、普通の部屋より沢山の照明があるのが普通のはずなのだが、この部屋にはライトの一つも無く、ギフトの緑色の目ではせいぜい肉眼でぼんやりと部屋の壁を確認できる程でしかなく、あまりにも薄暗い部屋だ。
次に〈窓〉だ。
この部屋には窓が一つもない。
おかしいじゃないか、とギフトは思って頭を傾げる。
人は物の存在やその色を確認する時、光の反射で確認する。
物が見えるという事はすなわち、光を見ているのと同じである。
したがってこの部屋に照明が無い以上、窓や隙間等から漏れる光によって、ギフトはこの部屋の壁を確認する事ができているはずである。
そう判断しても、何もおかしくないはずなのに、この部屋には窓の一つはおろか、隙間すらない。
少なくともギフトの確認できる範囲では見つからなかった。
そして最後に〈出入りするためのドアの存在〉である。
「いや、流石にこれはおかしい」
ギフトは若干の焦りと苛立ちを覚えながら心の中でそう呟いた。
ここを部屋とする場合(そもそもの話、ここは本当に部屋だろうか?)、どんな理由があろうとも、出入りするためのドアは必要なはずだ。
ドアがないなら、自分はどうやってここに来た?
どうやって入れた?
それに気づいたギフトは、焦りと苛立ちに続き、恐怖も覚え始めていた。
その恐怖を紛らわせる為に、彼はゆっくりと思考を巡らせる。
なんて殺風景な場所なんだ、ここは。いや、殺風景ってレベルじゃない、何の為の場所なんだ、ここは。灯りもない、窓もない、出入り口も存在しない……!
ギフトはそう思いながら辺りをもう一度グルグルと見渡すが、ただ広く、薄暗く、何もない場所という事以外、ギフトの頭の中でこの場所の情報が更新される事は無かった。
知らない場所で突然目覚め、得体のしれない場所に自分がいたら、果たしてどれほどの人間が冷静でいられるのだろう。
こうして文章で情報を得たり、漫画やドラマなどで何度もこのような展開を見てきた人間でも、実際にこのような状況に陥った際には、ただパニックを起こして何もできない人間が大半なのではないだろうか。
彼のように、自分の状況を真っ先に知ろうとする人間も少ないのではないだろうか。
だがそんな彼もただの人間、脱出する為に壁を通り抜けたり、この場所が地球のどの辺にあるか、周りに人間がいるかどうかなんてものを感知する事なんてできやしない。
他人より少し状況を理解する事ができた彼でも、八方塞がりになれば後は焦りと恐怖が脳を完全に支配し、パニックを起こすのも時間の問題である。
背中にじわりと嫌な汗が湧き上がる。
ここは何処だという考えが、まるで消えかかった電球のように、何度も浮かび上がっては消え、浮かび上がっては消える。
ここは一体。
「何の為の場所なんだ?何の為に存在してる?そう思ってるんだろう?」
突然後ろから、自分のものではない声を聞いたギフトはビクッと体を跳ねながらも勢いよく振り返った。
そこには白髪が混じったグレーの髪を後ろに撫で付け、黒いスーツを着たしかめ面の男が壁にもたれるような姿勢で立っていた。
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