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美少女幼馴染みをリョナる
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――赤い、赤い、空間。
赤黒い塊に満たされた、異空間。
それが目の前に広がっている。
俺は、その異空間で、ひとりの女の顔を眺めていた。
――…………
――………………
「……お……て」
…………
「…………起きて」
…………
「もう、起きてってば」
…………
「起きないとぉ……」
…………
「キス、しちゃうぞ?」
「…………っ」
耳元でそう囁かれ、俺は飛び起きた。
「ちょっとぉ、しろちゃんってば、飛び起きなくてもいいじゃない!
そんなに私にキスされるのが嫌なんだ?」
「ここあ……」
ベッドの脇に立っていたのは、俺の幼馴染みの愛内ここあ。
家が隣で親同士が仲が良いので、ここあの事は幼稚園に入る前から知っている、俺の一番身近な女の子だ。
俺の事を「しろちゃん」なんて呼んでくる、ちょっと変な奴だ。
ここあは頼んでも居ないのに、何故か毎朝俺を起こしに部屋までやって来る。
今日もいつものように、俺を起こしに来たようだ。
「ま、いいや、許してあげる。
早く着替えて、顔洗って、朝ご飯食べて、学校行こう?」
「……ああ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………おい」
「え?なあに?」
「着替えるから出てけよ」
「にしし、着替え、手伝ってあげる♪」
「……変態、早く出てけよ」
「ちぇ、昔は一緒にお風呂に入ってたんだけどなぁ。
いつから恥ずかしがるようになったんだろー?」
なにやら不満げに、ここあは部屋から出て行った。
俺は急いで、服を着替える事にした。
「はあ……全くここあは……
いや、それよりも、さっき見た夢……」
あれはなんだったんだ?」
少し気になるな……」
制服に着替え、適当に顔を洗い、朝食を済ませる。
母親に「行ってきます」とだけ言って、自宅を後にした。
「あ、やっと来たー」
家の前では、ここあが俺を待っていた。
「もう、遅いぞ!」
「別に待ってなくていいっていつも言ってるだろ」
「えー、だって、一緒に登校したいんだもん!
別に待ってたっていいじゃん……待ってたら、迷惑……?」
ここあが潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
俺はここあのこういう顔には、ちょっとばかし弱いのだ。
「別に、迷惑ではないけど……」
「やったー!じゃ、一緒に行こう!」
先ほどとは打って変わって、ここあはパアッと華やかな笑顔を見せる。
そしてその笑顔のまま俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。
「おい、離せよ」
「いいじゃん、別に、幼馴染みなんだしさ♪」
ここあは、絡ませた腕にぎゅっと力を入れてくる。
俺の肘辺りに、ここあの柔らかい胸が当たっている。
これはわざと当てているのだろうか?
それとも天然で、無意識にやっているのか?
どちらにせよ、厄介な事この上ない。
「…………ッ」
ここあと二人で他愛のない話をしながら、学校への道のりを歩いていた。
その時、突然目眩に襲われた。
視界がぐにゃりと歪み、世界がぐるぐると回る。
――なんだこの目眩は?
目眩はどんどん激しくなり、立っているのも困難だった。
地面に膝を付き、頭を押さえて目眩に耐える。
「うぅ……」
俺はここあに助けを求めようと、彼女の方を見る。
しかし彼女も俺と同じように、頭を押さえて地面に蹲っていた。
――これは一体どういう事だ?
深く考える暇もなく、俺は意識を失った。
――…………
――………………
――赤い、赤い、空間。
赤黒い塊に満たされた、異空間。
それが目の前に広がっている。
「…………っ!!」
ハッとして上体を起こす。
慌てて辺りを見渡す。
しかしいくら見渡しても、赤黒い壁が続いているだけで、何もなかった。
この場所はなんなのだろう。
一体、何処なのだろう。
俺は確か、ここあと学校へ向かう途中で……
その途中で急激な目眩に襲われて、立っていられなくなって……
「はっ、そうだ、ここあは……!?」
もう一度辺りを見渡してみる。
すると、ここあが倒れているのが目に入った。
俺は一目散にここあに駆けよる。
「ここあ!」
「ん……うーん……」
倒れたここあは、俺の予想に反して、安らかに寝息を立てていた。
「…………眠っているのか?」
ここあの寝顔を暫し見つめてみる。
幼馴染みの俺が言うのは何だが、ここあはかなりの美少女だ。
長い睫毛、スッと通った鼻筋、柔らかそうな唇、白い肌……
近くで見ても欠点という欠点が見当たらない。
ここあは、それほどの美形だった。
「ここあ…………」
ここあの綺麗な顔を見ていると、自分の中にある欲望が沸いてくる。
それは、誰にも言えない欲望だ。
誰にも言ってはならない、俺の秘密。
「…………あ……今朝の、あの夢……」
そうだ。
この空間……
眠っているここあと、それを見つめる俺……
今朝見た夢と、同じだ。
夢と同じ、という事は、これも夢なのだろうか。
俺は目眩で意識を失って、それで夢を見ているのだろうか。
「うぅ、ん……」
「ここあ……」
寝息を立てていたここあが目を覚まし、ゆっくりと立ちあがる。
「しろちゃん……此処、は……?
此処は、何?どこなの?」
ここは辺りをきょろきょろと見渡すと、不安そうな表情を浮かべた。
「分からない」
「わ、私達、学校に行く途中だったんだよね?」
「ああ」
「その途中で、私、ちょっと目眩がして……それで気を失って……」
「……俺と同じだ」
「ええ?しろちゃんも!?
二人して目眩で倒れたって事?そんな事ってある!?」
「さあな……」
「そんな偶然有り得ないよ~!」
「偶然じゃなく、誰かに眠らされたのかもな」
「ええ!?」
「だって目が覚めたらこの空間だぞ?」
「もしかして、誰かに拉致されたんじゃないのか?」
「そ、そんな……!
ど、どうしよう、私……怖い!」
「…………っ!」
ここあが怯えた様子で、俺の胸に飛び込んで来た。
そのまま腕を背中に回され、ぎゅっと身体が密着する。
また、ここあの柔らかく豊かな胸が当たっている。
「ここあ、離れろ」
「あ、ごめん……つい……」
嫌だと駄々を捏ねるかと思ったが、予想に反してここあは素直に離れてくれた。
「これからどうしよう?」
「とりあえず、少し歩いてみるか。出口がないか見てみよう」
「うん、そうだね」
――そして五分程、謎の空間を歩き回った。
どんなに歩いても辺りは赤黒い壁ばかりで、出口らしきものは見つからなかった。
しかし、その代わりに……
「し、しろちゃん、コレ……!」
「これは…………」
斧や鎌、鉈、鍬、鋸といった武器にもなりそうな農具。
それらが大量に赤黒い床に放置されているのを発見した。
「うーん、これで壁を壊せないかな?」
「どうだろうな」
「やってみよう!」
ここあは鍬を手に取り、壁に向かって構える。
そして、
「えい!!」
掛け声を出して、鍬を壁に勢いよくぶつけた。
ガァン、と大きな音が鳴るが、壁には傷一つ付いていない。
「えーい!!」
「おりゃー!!」
「それっ!!」
壁に向かってもう何度か、ここあが攻撃を加える。
しかし壁はビクともしなかった。
「駄目だ、全然壊れないよー」
「疲れるだけだ、諦めろ」
「う、うん……」
ここあはしょんぼりとした様子で、持っていた鍬を元の位置に戻した。
「はあ……本当にどうしよう。
これじゃあ学校、遅刻しちゃうじゃない!」
「こんな訳の分からない空間に閉じ込められて、遅刻の心配かよ?呑気な奴だな」
「あはは、なんかね、私今はそんなに怖くないんだ」
「怖いって言ってなかったか?」
「うん最初は怖かったよ」
「でも、なんでだろ、今はそんなに怖くないの。
きっと、しろちゃんと一緒だからだね♪」
ここあは優しく微笑んで、語り始めた。
「一人だったら多分、心細くて泣いてたと思う。
でも、しろちゃんが居れば、私は大丈夫なの。
何も怖くないの……」
「ふーん……」
「しろちゃん……」
ここあが上目遣いで、俺を見つめてくる。
俺の心臓がドクン、と跳ねる。
決して沸いてはいけない欲望が、沸いてくる。
「しろちゃん、あのね、私…………
しろちゃんの事が…………
…………大好き」
真っ直ぐに俺を見つめ、そう言った。
ここあの頬はほんのりと赤く染まっていて、とても色っぽい。
「しろちゃんの事、幼稚園の頃から……
ううん、きっと、幼稚園に入る前から、ずっと……
ずっと、好きだった」
頬を染めて、俺への愛を語る。
「出会った時から、今日までずっと……
しろちゃんが好き。大好き」
ここあの真剣で、真っ直ぐな告白。
俺の胸の鼓動が、苦しいくらいに早くなる。
「そんなに……俺が好き?」
「うん、大好き」
「…………そうか」
「しろちゃん……」
ここあが、目を閉じる。
「キス、して。
告白の返事の代わりに、キスして」
ここあは目を瞑り、俺からのキスを待っている。
俺はそんなここあに歩み寄って……
ここあの柔らかい頬に…………
平手打ちをした。
パーン、という大きな音が、赤黒い空間に響き渡る。
「………………え?」
ここあは何が起こったのか分からない、と言った感じにきょとんとしている。
ほんのりと赤く染まった、ここあの白い頬。
俺はそれに、異常なまでの興奮を覚えた。
「し、しろちゃん……?ど、どうしたの?」
――パンッ!
もう一発、ここあの頬に平手打ちを食らわしてやる。
「やっ……!?」
ここあは腫れた頬を抑え、怯えた様子を見せる。
「な、何……!?
どうしたの、しろちゃん!?」
「俺が好きか?ここあ」
「す、好きだよ……大好き……」
「そうか……なら…………」
「あぐっ!?」
今度はグーで、ここあの顔面を殴る。
ここあはバランスを崩し、その場に倒れた。
「俺の事が好きなら、耐えられるよな?」
「あ……え………?」
「俺の事が本当に好きなら、愛しているなら、何をされても嬉しい筈だ。
なあ、そうだろ?ここあ」
「ひっ……!?」
もう一度拳を振り上げてみせると、ここは怯えて蹲り頭を抱えた。
そんなここあの腕を乱暴に掴み、無理やり立たせる。
「やっ、やめてぇ!乱暴しないで!」
「ぐふっ!?」
今度は腹に、思いっきり強く膝蹴りを食らわす。
ここあは蹲り、表情を歪め、口と腹を抑えた。
「うっ、ぶ、おえっ、おえぇっ!」
ここあの口から嘔吐物が溢れ出す。
溢れだした汚物はここあの服や、赤黒い床にびちゃびちゃとぶちまけられる。
吐瀉物特有の悪臭が、周囲に漂う。
「うぅっ、げほっ、ごほっ……ッ」
顔を真っ青にし、吐瀉物に塗れるここあは……
とても、魅力的に思えた。
悲惨な光景だが、それが良い。
自分の欲望が満たされていくのを感じる。
俺は、ずっと前からここあに暴行を加えたいと、そう思っていた。
誰もが認める美少女で、俺の事を慕ってくれているここあ。
そんなここあに理不尽に暴力を振るい、壊してみたい。
ずっとずっと、そう思っていた。
今までその欲望は、理性で抑えつけて来た。
やってはいけない事だから、
犯罪だから、
非道徳的な行為だから……
だから、俺は……
「はぁ、はぁ、うぅ……うっ」
ここあは未だ腹と口を押さえ、苦しそうに肩で息をしている。
俺は再び、辺りを見渡す。
相変わらず、赤黒い塊に満たされているだけの意味の分からない空間だった。
だけど、此処なら……
此処なら誰にもバレずに、誰にも邪魔されずに、ここあに暴行を加える事ができるのではないだろうか。
我ながら恐ろしい考えだとは思う。
しかし、俺の暴走し始めた加虐心は、もう理性では抑えられなくなっていた。
それほどまでに、ここあの惨めな姿に興奮していたのだ。
「ここあ」
「ひっ!?」
名前を呼ぶと、ここあは大袈裟に肩をビクつかせた。
「やっ、やめて……!もう殴らないで!
なんでもする、なんでもするから……だからッ!!」
「怯えるここあは、可愛いな」
「い、いやっ!」
ここあは素早く立つと、よろよろとした足取りで逃げ出した。
赤い壁に手を付き、今にも倒れそうになりながら歩いて行く。
俺は近くに放置された農具の中から、斧を手に取り、ここあに向かって構え、
そして、勢いよく振り下ろした。
「あぁああぁああぁあっ!!!?」
斧は、ここあの右肩に深く突き刺さった。
ここあの甲高い悲鳴が上がる。
俺は今まで感じた事のない程の凄まじい快感に、絶頂を迎えてしまいそうだった。
ああ、なんて楽しいのだろう。
ああ、なんて気持ちいいのだろう。
「あ゛がっ、ぐあぁッ!?」
深く突き刺さった斧を抜けば、ここあの華奢な肩から鮮血が溢れ出す。
俺はもう一発、ここあの肩に向かって斧を振り落とす事にした。
「ガア゛アア゛ァッ!!?」
同じ場所にもう一度斧を突き刺せば、ここあの口から女とは思えない程汚らしい悲鳴が上がる。
ここあは肩を逆の手で抑え、その場に倒れた。
「ここあ、逃げろよ、逃げないと殺されちまうぞ」
「あっ……あ……あぅうっ!」
俺がそう言うと、ここあは地面を這い出した。
腰が抜けて立てないのだろうか。
ずるずるともがくように地面を這っている。
しかしその努力もむなしく、ほとんど移動できていない。
これじゃあ面白くない。
そう思った俺は、脅すのを目的に、ここあの目の前の床に斧を突き刺した。
「ひぃっ!?
あっ、あ……やああっ、ひっ、く、うぅッ」
完全にパニック状態のここあが、ついに幼児のように泣き出した。
長い睫毛に縁取られた大きな瞳から、涙が溢れ出す。
「う、うああぁっ、い、痛いよぉ、痛いよおぉっ!」
「何を泣いているんだ?
俺の事が好きなんだろう?
それなら、何をされたって嬉しい筈だ」
俺は、ここあへ向けて語る。
「俺への愛は、所詮その程度か?そんな物なのか?
愛があるなら耐えられる筈だぞ、ここあ」
「ひっ、ひっく、し、しろちゃ……
た、助けて、しろちゃんっ、怖いよぉ……」
「俺が怖いか?」
「ひっく、ううぅ」
「俺の事が嫌いになったか?」
「な、ならないッ……!ならない!好き!好きだよぉ!」
「そうか……」
「ウアアアアァアアァアッ!!!!」
――グチャア!!
肩を目掛けて、再び斧を振り落とした。
ここあの右肩は、肉がぐちゃぐちゃになり切断されかけていた。
かろうじて骨が胴と腕を繋いでいる。
そんな状態だった。
「これでも俺が好きか?」
「ア゛ッ、あぐっ、があっ、くっ」
「なあ、オイ、これでもまだ俺が好きなのか?」
「ぐ、あ゛……ッ、す、好き……好きィ……ッ」
「ふふ、ここあは一途だな」
「好き、だよ……しろ、ちゃ……ッ、うっ、だい、す、き」
「そうか、ありがとう、ここあ。嬉しいよ」
俺は数ある農具の中から、鋸を手に取る。
そしてうつ伏せに倒れたここあの背中に乗り、鋸の刃を切断しかけた肩に宛がう。
「行くぞ、ここあ。俺の愛を受け止めてくれ!」
「え、あ、な、何、を……っ」
「あっ、アアアアアアアアァアァッ!!!」
――ぎ、ぎぎぎぎ、ぎち、ぎちっ!!
鋸の刃を肩の骨に当て、ぎこぎこと鋸を動かす。
血で染まった骨が徐々に削られていく。
「あああああっ、やめてぇえぇ!!痛い!!痛いいいぃ!!」
骨を削られるのはとても痛いらしく、ここあが手足をバタつかせて暴れ出す。
暴れるここあを抑えつけて、容赦なく骨をごりごり削って行く。
なんだか、小学校の時の図工を思い出す。
鋸なんて使ったのは何年ぶりだろう。
そういえば小学校の図工の時間、ここあが鋸で指を切って大泣きした……なんて事もあったな。
あの時も怪我をして泣いているここあに妙な興奮を覚えていた。
今思えばあれが俺の性の目覚めだったような気もする。
懐かしい記憶だ。
「頑張れここあ!もう少しで切れるぞ!」
「いぎぃい!無理ぃいぃいい!!アアアッ!」
「出来る出来る!お前なら出来る!諦めるな!」
「あがあ゛ああ゛あっ!!!」
昔の事を思い出しながら手を動かして、ここあの腕を完全に切断した。
俺は切断した腕をここあの目の前に持って行き、彼女に見せつけた。
「い、いや!いやああああぁああぁあ!!!
返して!私の腕!返してよおおぉおぉ!!!」
「ははははっ、さあ次は左腕だ!」
「いやあああああああああっ!!!」
――俺は左肩も同じように、
まず最初に斧で攻撃してから鋸で骨を切った。
最初暴れ叫んでいたここあだったが、
やっているうちに感覚がなくなったのか反応が薄くなってしまった。
「あ……あぅ……うぅ……」
今はもう、僅かに開いた口から、
言葉にならないうめき声を漏らすだけだ。
両腕がなくなったここあは、とても魅力的に思える。
「う……うぅ、しろちゃ……しろ、ちゃん……」
反応が薄くなっては面白くない。
この玩具ではもう遊べない。
それならば、後はもう止めを刺すだけだ。
「フィナーレだ、ここあ」
「あ……あ……」
「さあ、感動のクライマックスだ!」
「わ、私を……
こ、殺す、の…………?」
「ああ、そうだ」
「し、ろ、ちゃ……は、はあ、ハァ……」
息を荒くしながら、途切れ途切れに言う。
「はっ、私のこと、好き……?」
ここあの瞳から涙がぶわっと溢れだす。
「しろちゃ、お願い、おしえ、て……
私のこと、すき?
き、らい、だから、こんな事する、の……?」
「それは違う……俺は…………」
「おねがッ、殺す前に……
告白の、返事、ちょ……だ、い……?」
虫の息のここあは、必死に言葉を振り絞る。
「わ、私、私ね……
しろちゃんが、すき、だいすき……
こんな事、されても、やっぱり、好きなの……
嫌いに、なれないよ……」
「俺は…………」
「しろ、ちゃ…………」
「…………」
――俺は仰向けに横たわるここあに、
そっと顔を近づけて、頬に触れ、顎を掴み、
そして、ゆっくりと唇を重ねた。
ここあの唇を割って、舌を差し入れる。
「んん……っ」
ここあの舌と己の舌を絡ませる。
くちゅくちゅ、という唾液のいやらしい音をわざと鳴らしながらここあの舌を堪能する。
ここあの口内は、先程吐いたせいで胃液の味だった。
ああ、なんてロマンの欠片もないキスなのだろう。
ファーストキスがレモンの味だなんて嘘っぱちだ。
「はっ……」
唇を離せば、唾液の糸が俺達二人を繋ぐ。
ここあの口の端からは、飲みきれなかった唾液が伝っている。
「ふ、ふふ……嬉しい……
しろちゃんが告白の返事くれた。
嬉しい、嬉しいよぉ……
私、きっと今が人生で一番幸せ。
しろちゃんとキスをして、その幸せの中で死ねるなら構わないよ……
殺していいよ、しろちゃん」
そう言うと、彼女は柔らかく微笑んで見せた。
いつものような小悪魔的な笑い方とは違う、女らしくふわりと柔らかい笑みだった。
この女は何故、こんな状況で笑えるのだろう。
好きだった幼なじみに理不尽に危害を加えられ、腕を切断されても、それでも尚、笑っていられるなんて。
俺の事が好きだと、そう言えるなんて……
「ここあ……さよならだ」
斧を持った腕を、ゆっくりと振り上げる。
喉を狙おう。
この一発で終わりにしよう。
「…………」
ここあは覚悟を決めたように、目を伏せた。
「しろちゃん……」
「…………」
「あいしてる……」
その言葉を聞くや否や、重力に任せて、斧を振り下ろした。
斧はゴチュ、という音を鳴らして、ここあの喉に突き刺さった。
斧が喉に突き刺さると、ここあの身体がビクビクと跳ねる。
手足を痙攣させ、口から血と泡をゴプゴプと吐き出し、ここあは死んだ。
斧を引き抜くと、血がまるで噴水のように勢いよく噴き出した。
俺は鋸を手に取り、腕と同じ手順でここあの頭部を切断する。
――ぶちゅ、ぎぎ、ぎち、ぎぎぎ……
腕よりも出血が多く、大変な作業だった。
手や服がここあの汚い血でびしょびしょだ。
これでは制服を新調しなければならない。
切断したここあの首を自分の顔の前まで持って来て、耳元で囁いてやる。
「ここあ……俺も……
…………俺も、愛してるよ」
そしてここあの唇に、再び口付けた。
今度は胃液の味ではなく、血の味がするキスだった。
赤黒い塊に満たされた、異空間。
それが目の前に広がっている。
俺は、その異空間で、ひとりの女の顔を眺めていた。
――…………
――………………
「……お……て」
…………
「…………起きて」
…………
「もう、起きてってば」
…………
「起きないとぉ……」
…………
「キス、しちゃうぞ?」
「…………っ」
耳元でそう囁かれ、俺は飛び起きた。
「ちょっとぉ、しろちゃんってば、飛び起きなくてもいいじゃない!
そんなに私にキスされるのが嫌なんだ?」
「ここあ……」
ベッドの脇に立っていたのは、俺の幼馴染みの愛内ここあ。
家が隣で親同士が仲が良いので、ここあの事は幼稚園に入る前から知っている、俺の一番身近な女の子だ。
俺の事を「しろちゃん」なんて呼んでくる、ちょっと変な奴だ。
ここあは頼んでも居ないのに、何故か毎朝俺を起こしに部屋までやって来る。
今日もいつものように、俺を起こしに来たようだ。
「ま、いいや、許してあげる。
早く着替えて、顔洗って、朝ご飯食べて、学校行こう?」
「……ああ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………おい」
「え?なあに?」
「着替えるから出てけよ」
「にしし、着替え、手伝ってあげる♪」
「……変態、早く出てけよ」
「ちぇ、昔は一緒にお風呂に入ってたんだけどなぁ。
いつから恥ずかしがるようになったんだろー?」
なにやら不満げに、ここあは部屋から出て行った。
俺は急いで、服を着替える事にした。
「はあ……全くここあは……
いや、それよりも、さっき見た夢……」
あれはなんだったんだ?」
少し気になるな……」
制服に着替え、適当に顔を洗い、朝食を済ませる。
母親に「行ってきます」とだけ言って、自宅を後にした。
「あ、やっと来たー」
家の前では、ここあが俺を待っていた。
「もう、遅いぞ!」
「別に待ってなくていいっていつも言ってるだろ」
「えー、だって、一緒に登校したいんだもん!
別に待ってたっていいじゃん……待ってたら、迷惑……?」
ここあが潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
俺はここあのこういう顔には、ちょっとばかし弱いのだ。
「別に、迷惑ではないけど……」
「やったー!じゃ、一緒に行こう!」
先ほどとは打って変わって、ここあはパアッと華やかな笑顔を見せる。
そしてその笑顔のまま俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。
「おい、離せよ」
「いいじゃん、別に、幼馴染みなんだしさ♪」
ここあは、絡ませた腕にぎゅっと力を入れてくる。
俺の肘辺りに、ここあの柔らかい胸が当たっている。
これはわざと当てているのだろうか?
それとも天然で、無意識にやっているのか?
どちらにせよ、厄介な事この上ない。
「…………ッ」
ここあと二人で他愛のない話をしながら、学校への道のりを歩いていた。
その時、突然目眩に襲われた。
視界がぐにゃりと歪み、世界がぐるぐると回る。
――なんだこの目眩は?
目眩はどんどん激しくなり、立っているのも困難だった。
地面に膝を付き、頭を押さえて目眩に耐える。
「うぅ……」
俺はここあに助けを求めようと、彼女の方を見る。
しかし彼女も俺と同じように、頭を押さえて地面に蹲っていた。
――これは一体どういう事だ?
深く考える暇もなく、俺は意識を失った。
――…………
――………………
――赤い、赤い、空間。
赤黒い塊に満たされた、異空間。
それが目の前に広がっている。
「…………っ!!」
ハッとして上体を起こす。
慌てて辺りを見渡す。
しかしいくら見渡しても、赤黒い壁が続いているだけで、何もなかった。
この場所はなんなのだろう。
一体、何処なのだろう。
俺は確か、ここあと学校へ向かう途中で……
その途中で急激な目眩に襲われて、立っていられなくなって……
「はっ、そうだ、ここあは……!?」
もう一度辺りを見渡してみる。
すると、ここあが倒れているのが目に入った。
俺は一目散にここあに駆けよる。
「ここあ!」
「ん……うーん……」
倒れたここあは、俺の予想に反して、安らかに寝息を立てていた。
「…………眠っているのか?」
ここあの寝顔を暫し見つめてみる。
幼馴染みの俺が言うのは何だが、ここあはかなりの美少女だ。
長い睫毛、スッと通った鼻筋、柔らかそうな唇、白い肌……
近くで見ても欠点という欠点が見当たらない。
ここあは、それほどの美形だった。
「ここあ…………」
ここあの綺麗な顔を見ていると、自分の中にある欲望が沸いてくる。
それは、誰にも言えない欲望だ。
誰にも言ってはならない、俺の秘密。
「…………あ……今朝の、あの夢……」
そうだ。
この空間……
眠っているここあと、それを見つめる俺……
今朝見た夢と、同じだ。
夢と同じ、という事は、これも夢なのだろうか。
俺は目眩で意識を失って、それで夢を見ているのだろうか。
「うぅ、ん……」
「ここあ……」
寝息を立てていたここあが目を覚まし、ゆっくりと立ちあがる。
「しろちゃん……此処、は……?
此処は、何?どこなの?」
ここは辺りをきょろきょろと見渡すと、不安そうな表情を浮かべた。
「分からない」
「わ、私達、学校に行く途中だったんだよね?」
「ああ」
「その途中で、私、ちょっと目眩がして……それで気を失って……」
「……俺と同じだ」
「ええ?しろちゃんも!?
二人して目眩で倒れたって事?そんな事ってある!?」
「さあな……」
「そんな偶然有り得ないよ~!」
「偶然じゃなく、誰かに眠らされたのかもな」
「ええ!?」
「だって目が覚めたらこの空間だぞ?」
「もしかして、誰かに拉致されたんじゃないのか?」
「そ、そんな……!
ど、どうしよう、私……怖い!」
「…………っ!」
ここあが怯えた様子で、俺の胸に飛び込んで来た。
そのまま腕を背中に回され、ぎゅっと身体が密着する。
また、ここあの柔らかく豊かな胸が当たっている。
「ここあ、離れろ」
「あ、ごめん……つい……」
嫌だと駄々を捏ねるかと思ったが、予想に反してここあは素直に離れてくれた。
「これからどうしよう?」
「とりあえず、少し歩いてみるか。出口がないか見てみよう」
「うん、そうだね」
――そして五分程、謎の空間を歩き回った。
どんなに歩いても辺りは赤黒い壁ばかりで、出口らしきものは見つからなかった。
しかし、その代わりに……
「し、しろちゃん、コレ……!」
「これは…………」
斧や鎌、鉈、鍬、鋸といった武器にもなりそうな農具。
それらが大量に赤黒い床に放置されているのを発見した。
「うーん、これで壁を壊せないかな?」
「どうだろうな」
「やってみよう!」
ここあは鍬を手に取り、壁に向かって構える。
そして、
「えい!!」
掛け声を出して、鍬を壁に勢いよくぶつけた。
ガァン、と大きな音が鳴るが、壁には傷一つ付いていない。
「えーい!!」
「おりゃー!!」
「それっ!!」
壁に向かってもう何度か、ここあが攻撃を加える。
しかし壁はビクともしなかった。
「駄目だ、全然壊れないよー」
「疲れるだけだ、諦めろ」
「う、うん……」
ここあはしょんぼりとした様子で、持っていた鍬を元の位置に戻した。
「はあ……本当にどうしよう。
これじゃあ学校、遅刻しちゃうじゃない!」
「こんな訳の分からない空間に閉じ込められて、遅刻の心配かよ?呑気な奴だな」
「あはは、なんかね、私今はそんなに怖くないんだ」
「怖いって言ってなかったか?」
「うん最初は怖かったよ」
「でも、なんでだろ、今はそんなに怖くないの。
きっと、しろちゃんと一緒だからだね♪」
ここあは優しく微笑んで、語り始めた。
「一人だったら多分、心細くて泣いてたと思う。
でも、しろちゃんが居れば、私は大丈夫なの。
何も怖くないの……」
「ふーん……」
「しろちゃん……」
ここあが上目遣いで、俺を見つめてくる。
俺の心臓がドクン、と跳ねる。
決して沸いてはいけない欲望が、沸いてくる。
「しろちゃん、あのね、私…………
しろちゃんの事が…………
…………大好き」
真っ直ぐに俺を見つめ、そう言った。
ここあの頬はほんのりと赤く染まっていて、とても色っぽい。
「しろちゃんの事、幼稚園の頃から……
ううん、きっと、幼稚園に入る前から、ずっと……
ずっと、好きだった」
頬を染めて、俺への愛を語る。
「出会った時から、今日までずっと……
しろちゃんが好き。大好き」
ここあの真剣で、真っ直ぐな告白。
俺の胸の鼓動が、苦しいくらいに早くなる。
「そんなに……俺が好き?」
「うん、大好き」
「…………そうか」
「しろちゃん……」
ここあが、目を閉じる。
「キス、して。
告白の返事の代わりに、キスして」
ここあは目を瞑り、俺からのキスを待っている。
俺はそんなここあに歩み寄って……
ここあの柔らかい頬に…………
平手打ちをした。
パーン、という大きな音が、赤黒い空間に響き渡る。
「………………え?」
ここあは何が起こったのか分からない、と言った感じにきょとんとしている。
ほんのりと赤く染まった、ここあの白い頬。
俺はそれに、異常なまでの興奮を覚えた。
「し、しろちゃん……?ど、どうしたの?」
――パンッ!
もう一発、ここあの頬に平手打ちを食らわしてやる。
「やっ……!?」
ここあは腫れた頬を抑え、怯えた様子を見せる。
「な、何……!?
どうしたの、しろちゃん!?」
「俺が好きか?ここあ」
「す、好きだよ……大好き……」
「そうか……なら…………」
「あぐっ!?」
今度はグーで、ここあの顔面を殴る。
ここあはバランスを崩し、その場に倒れた。
「俺の事が好きなら、耐えられるよな?」
「あ……え………?」
「俺の事が本当に好きなら、愛しているなら、何をされても嬉しい筈だ。
なあ、そうだろ?ここあ」
「ひっ……!?」
もう一度拳を振り上げてみせると、ここは怯えて蹲り頭を抱えた。
そんなここあの腕を乱暴に掴み、無理やり立たせる。
「やっ、やめてぇ!乱暴しないで!」
「ぐふっ!?」
今度は腹に、思いっきり強く膝蹴りを食らわす。
ここあは蹲り、表情を歪め、口と腹を抑えた。
「うっ、ぶ、おえっ、おえぇっ!」
ここあの口から嘔吐物が溢れ出す。
溢れだした汚物はここあの服や、赤黒い床にびちゃびちゃとぶちまけられる。
吐瀉物特有の悪臭が、周囲に漂う。
「うぅっ、げほっ、ごほっ……ッ」
顔を真っ青にし、吐瀉物に塗れるここあは……
とても、魅力的に思えた。
悲惨な光景だが、それが良い。
自分の欲望が満たされていくのを感じる。
俺は、ずっと前からここあに暴行を加えたいと、そう思っていた。
誰もが認める美少女で、俺の事を慕ってくれているここあ。
そんなここあに理不尽に暴力を振るい、壊してみたい。
ずっとずっと、そう思っていた。
今までその欲望は、理性で抑えつけて来た。
やってはいけない事だから、
犯罪だから、
非道徳的な行為だから……
だから、俺は……
「はぁ、はぁ、うぅ……うっ」
ここあは未だ腹と口を押さえ、苦しそうに肩で息をしている。
俺は再び、辺りを見渡す。
相変わらず、赤黒い塊に満たされているだけの意味の分からない空間だった。
だけど、此処なら……
此処なら誰にもバレずに、誰にも邪魔されずに、ここあに暴行を加える事ができるのではないだろうか。
我ながら恐ろしい考えだとは思う。
しかし、俺の暴走し始めた加虐心は、もう理性では抑えられなくなっていた。
それほどまでに、ここあの惨めな姿に興奮していたのだ。
「ここあ」
「ひっ!?」
名前を呼ぶと、ここあは大袈裟に肩をビクつかせた。
「やっ、やめて……!もう殴らないで!
なんでもする、なんでもするから……だからッ!!」
「怯えるここあは、可愛いな」
「い、いやっ!」
ここあは素早く立つと、よろよろとした足取りで逃げ出した。
赤い壁に手を付き、今にも倒れそうになりながら歩いて行く。
俺は近くに放置された農具の中から、斧を手に取り、ここあに向かって構え、
そして、勢いよく振り下ろした。
「あぁああぁああぁあっ!!!?」
斧は、ここあの右肩に深く突き刺さった。
ここあの甲高い悲鳴が上がる。
俺は今まで感じた事のない程の凄まじい快感に、絶頂を迎えてしまいそうだった。
ああ、なんて楽しいのだろう。
ああ、なんて気持ちいいのだろう。
「あ゛がっ、ぐあぁッ!?」
深く突き刺さった斧を抜けば、ここあの華奢な肩から鮮血が溢れ出す。
俺はもう一発、ここあの肩に向かって斧を振り落とす事にした。
「ガア゛アア゛ァッ!!?」
同じ場所にもう一度斧を突き刺せば、ここあの口から女とは思えない程汚らしい悲鳴が上がる。
ここあは肩を逆の手で抑え、その場に倒れた。
「ここあ、逃げろよ、逃げないと殺されちまうぞ」
「あっ……あ……あぅうっ!」
俺がそう言うと、ここあは地面を這い出した。
腰が抜けて立てないのだろうか。
ずるずるともがくように地面を這っている。
しかしその努力もむなしく、ほとんど移動できていない。
これじゃあ面白くない。
そう思った俺は、脅すのを目的に、ここあの目の前の床に斧を突き刺した。
「ひぃっ!?
あっ、あ……やああっ、ひっ、く、うぅッ」
完全にパニック状態のここあが、ついに幼児のように泣き出した。
長い睫毛に縁取られた大きな瞳から、涙が溢れ出す。
「う、うああぁっ、い、痛いよぉ、痛いよおぉっ!」
「何を泣いているんだ?
俺の事が好きなんだろう?
それなら、何をされたって嬉しい筈だ」
俺は、ここあへ向けて語る。
「俺への愛は、所詮その程度か?そんな物なのか?
愛があるなら耐えられる筈だぞ、ここあ」
「ひっ、ひっく、し、しろちゃ……
た、助けて、しろちゃんっ、怖いよぉ……」
「俺が怖いか?」
「ひっく、ううぅ」
「俺の事が嫌いになったか?」
「な、ならないッ……!ならない!好き!好きだよぉ!」
「そうか……」
「ウアアアアァアアァアッ!!!!」
――グチャア!!
肩を目掛けて、再び斧を振り落とした。
ここあの右肩は、肉がぐちゃぐちゃになり切断されかけていた。
かろうじて骨が胴と腕を繋いでいる。
そんな状態だった。
「これでも俺が好きか?」
「ア゛ッ、あぐっ、があっ、くっ」
「なあ、オイ、これでもまだ俺が好きなのか?」
「ぐ、あ゛……ッ、す、好き……好きィ……ッ」
「ふふ、ここあは一途だな」
「好き、だよ……しろ、ちゃ……ッ、うっ、だい、す、き」
「そうか、ありがとう、ここあ。嬉しいよ」
俺は数ある農具の中から、鋸を手に取る。
そしてうつ伏せに倒れたここあの背中に乗り、鋸の刃を切断しかけた肩に宛がう。
「行くぞ、ここあ。俺の愛を受け止めてくれ!」
「え、あ、な、何、を……っ」
「あっ、アアアアアアアアァアァッ!!!」
――ぎ、ぎぎぎぎ、ぎち、ぎちっ!!
鋸の刃を肩の骨に当て、ぎこぎこと鋸を動かす。
血で染まった骨が徐々に削られていく。
「あああああっ、やめてぇえぇ!!痛い!!痛いいいぃ!!」
骨を削られるのはとても痛いらしく、ここあが手足をバタつかせて暴れ出す。
暴れるここあを抑えつけて、容赦なく骨をごりごり削って行く。
なんだか、小学校の時の図工を思い出す。
鋸なんて使ったのは何年ぶりだろう。
そういえば小学校の図工の時間、ここあが鋸で指を切って大泣きした……なんて事もあったな。
あの時も怪我をして泣いているここあに妙な興奮を覚えていた。
今思えばあれが俺の性の目覚めだったような気もする。
懐かしい記憶だ。
「頑張れここあ!もう少しで切れるぞ!」
「いぎぃい!無理ぃいぃいい!!アアアッ!」
「出来る出来る!お前なら出来る!諦めるな!」
「あがあ゛ああ゛あっ!!!」
昔の事を思い出しながら手を動かして、ここあの腕を完全に切断した。
俺は切断した腕をここあの目の前に持って行き、彼女に見せつけた。
「い、いや!いやああああぁああぁあ!!!
返して!私の腕!返してよおおぉおぉ!!!」
「ははははっ、さあ次は左腕だ!」
「いやあああああああああっ!!!」
――俺は左肩も同じように、
まず最初に斧で攻撃してから鋸で骨を切った。
最初暴れ叫んでいたここあだったが、
やっているうちに感覚がなくなったのか反応が薄くなってしまった。
「あ……あぅ……うぅ……」
今はもう、僅かに開いた口から、
言葉にならないうめき声を漏らすだけだ。
両腕がなくなったここあは、とても魅力的に思える。
「う……うぅ、しろちゃ……しろ、ちゃん……」
反応が薄くなっては面白くない。
この玩具ではもう遊べない。
それならば、後はもう止めを刺すだけだ。
「フィナーレだ、ここあ」
「あ……あ……」
「さあ、感動のクライマックスだ!」
「わ、私を……
こ、殺す、の…………?」
「ああ、そうだ」
「し、ろ、ちゃ……は、はあ、ハァ……」
息を荒くしながら、途切れ途切れに言う。
「はっ、私のこと、好き……?」
ここあの瞳から涙がぶわっと溢れだす。
「しろちゃ、お願い、おしえ、て……
私のこと、すき?
き、らい、だから、こんな事する、の……?」
「それは違う……俺は…………」
「おねがッ、殺す前に……
告白の、返事、ちょ……だ、い……?」
虫の息のここあは、必死に言葉を振り絞る。
「わ、私、私ね……
しろちゃんが、すき、だいすき……
こんな事、されても、やっぱり、好きなの……
嫌いに、なれないよ……」
「俺は…………」
「しろ、ちゃ…………」
「…………」
――俺は仰向けに横たわるここあに、
そっと顔を近づけて、頬に触れ、顎を掴み、
そして、ゆっくりと唇を重ねた。
ここあの唇を割って、舌を差し入れる。
「んん……っ」
ここあの舌と己の舌を絡ませる。
くちゅくちゅ、という唾液のいやらしい音をわざと鳴らしながらここあの舌を堪能する。
ここあの口内は、先程吐いたせいで胃液の味だった。
ああ、なんてロマンの欠片もないキスなのだろう。
ファーストキスがレモンの味だなんて嘘っぱちだ。
「はっ……」
唇を離せば、唾液の糸が俺達二人を繋ぐ。
ここあの口の端からは、飲みきれなかった唾液が伝っている。
「ふ、ふふ……嬉しい……
しろちゃんが告白の返事くれた。
嬉しい、嬉しいよぉ……
私、きっと今が人生で一番幸せ。
しろちゃんとキスをして、その幸せの中で死ねるなら構わないよ……
殺していいよ、しろちゃん」
そう言うと、彼女は柔らかく微笑んで見せた。
いつものような小悪魔的な笑い方とは違う、女らしくふわりと柔らかい笑みだった。
この女は何故、こんな状況で笑えるのだろう。
好きだった幼なじみに理不尽に危害を加えられ、腕を切断されても、それでも尚、笑っていられるなんて。
俺の事が好きだと、そう言えるなんて……
「ここあ……さよならだ」
斧を持った腕を、ゆっくりと振り上げる。
喉を狙おう。
この一発で終わりにしよう。
「…………」
ここあは覚悟を決めたように、目を伏せた。
「しろちゃん……」
「…………」
「あいしてる……」
その言葉を聞くや否や、重力に任せて、斧を振り下ろした。
斧はゴチュ、という音を鳴らして、ここあの喉に突き刺さった。
斧が喉に突き刺さると、ここあの身体がビクビクと跳ねる。
手足を痙攣させ、口から血と泡をゴプゴプと吐き出し、ここあは死んだ。
斧を引き抜くと、血がまるで噴水のように勢いよく噴き出した。
俺は鋸を手に取り、腕と同じ手順でここあの頭部を切断する。
――ぶちゅ、ぎぎ、ぎち、ぎぎぎ……
腕よりも出血が多く、大変な作業だった。
手や服がここあの汚い血でびしょびしょだ。
これでは制服を新調しなければならない。
切断したここあの首を自分の顔の前まで持って来て、耳元で囁いてやる。
「ここあ……俺も……
…………俺も、愛してるよ」
そしてここあの唇に、再び口付けた。
今度は胃液の味ではなく、血の味がするキスだった。
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