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それからはほとんどの作業を自分一人でやった。
久しぶりのお菓子作りだったけど、なんとか上手くいった。
出来あがったケーキを、アンヘルがおそるおそる口に運ぶ。
「…………どう?」
「…………! 凄く……美味しい……」
アンヘルがもう一口、小さな口でケーキにかぶり付く。
「へへ、これだけは得意なんだ」
「凄い凄い。本当に美味しいです。
こんなに美味しいもの、初めて食べました!」
「それは大袈裟。お世辞は嬉しくないよ」
「お世辞じゃないです。天界の料理はイギリス並みに美味しくないんですよ」
「え、そうなんだ」
「はい。莉子さん、凄い。見直しました」
あっという間にケーキを食べ終えてくれたアンヘルに、思わず笑みが零れる。
自分の為だけに作ろうという気はなかなか起きない。
私は誰かに喜んで貰う事を含め、お菓子作りが好きなんだ。
「もう一個食べてもいいですか?」
「んー、駄目」
「そ、そうですか……」
「これからラッピングすんの。
実はお母さんとお父さんにあげる為に作ったのさ。アンタにじゃないの」
「…………! 莉子さん……!
きっと、喜んでくれますよ」
「…………うん。そうだといいね」
生地の余りでクッキーを作ったり、アンヘルの傷口を見せて貰ったりしているうちに、すっかり夜になってしまった。
両親は、今日も遅い。
疲れて帰ってくるのだろうし、ケーキを渡すのは明日だ。
ここ最近、まともに顔を合わせていなかったので、今から少し緊張している。
「ふう……」
母の用意してくれた夕食を、二人で半分ずつ食べて、そのあと一緒に風呂に入る。
嫌だと言ったのに、何故かアンヘルが無理やり入って来た。
「ね、なんで一緒にお風呂入りたがったの?」
「だって莉子さん、リストカットしちゃうでしょう」
「ストレートだな、オイ」
「そういうの、あんまり言うもんじゃないよ。やっぱアンタ、人間とは感覚が全然違うわ」
「私、見張ってますからね」
「…………アンタ、ゲームとかは知らない癖にリスカは知ってんだね。
ってかさ、リスカって悪い事なの? しちゃいけないの?」
「それは…………」
「理由なんて人それぞれだと思うけど……
私はね、むしゃくしゃする時とか、死にたい程悲しい時とかに切ると落ち着くの。
ストレス解消みたいなもんなの」
「莉子さん、ごめんなさい……
莉子さんの事、よく知りもしないでいけないなんて言っちゃだめですね。ごめんなさい」
「あ、ううん。こっちこそごめん。別に責めてるわけじゃないよ。
リスカしちゃダメって言われたら、死にたくなった時、どうすればいいのかなって思っただけ」
「またお菓子を作るとか……私に八つ当たりをするとか……どうでしょうか」
「…………」
「いけないとは言いません。
でも、少なくとも、私は……悲しいです」
「…………」
「出会ってたった数日なのに、変ですね。莉子さんのこと、放っておけない」
「不思議だね。私もアンタの事結構気に入ってんだ」
「え……莉子さんが、私を?」
「うん。私、さびしがりなの。
本当はずっと、寂しかったの。誰かと一緒に居たかった」
「莉子さん……」
「はは……ごめんね。いきなり変な事言いだして……」
「いえ、嬉しいです」
「……お風呂って不思議だよね。子供の本音を聞き出すならお風呂とも言うし……
リラックスしてるからなのかな。こんな事言っちゃうの。
いつもこれくらい素直でいられたらいいのに……」
「…………」
「でさ、アンヘル」
「はい」
「話変わるけどさ、アンヘルって胸チョーでかいね」
「…………いくらなんでも変わりすぎでは?」
「触っていい? ってか乳首吸っていい?」
「いいわけないでしょう」
「乳首ピンクで可愛い」
「怒りますよ!?」
「あははっ」
「…………もう、せっかく莉子さんの事、好きになりかけていたのに!」
「そういえば天使って両性具有、みたいな説もあるけどアンヘルは違うね」
「どこ見てるんですか!!」
久しぶりのお菓子作りだったけど、なんとか上手くいった。
出来あがったケーキを、アンヘルがおそるおそる口に運ぶ。
「…………どう?」
「…………! 凄く……美味しい……」
アンヘルがもう一口、小さな口でケーキにかぶり付く。
「へへ、これだけは得意なんだ」
「凄い凄い。本当に美味しいです。
こんなに美味しいもの、初めて食べました!」
「それは大袈裟。お世辞は嬉しくないよ」
「お世辞じゃないです。天界の料理はイギリス並みに美味しくないんですよ」
「え、そうなんだ」
「はい。莉子さん、凄い。見直しました」
あっという間にケーキを食べ終えてくれたアンヘルに、思わず笑みが零れる。
自分の為だけに作ろうという気はなかなか起きない。
私は誰かに喜んで貰う事を含め、お菓子作りが好きなんだ。
「もう一個食べてもいいですか?」
「んー、駄目」
「そ、そうですか……」
「これからラッピングすんの。
実はお母さんとお父さんにあげる為に作ったのさ。アンタにじゃないの」
「…………! 莉子さん……!
きっと、喜んでくれますよ」
「…………うん。そうだといいね」
生地の余りでクッキーを作ったり、アンヘルの傷口を見せて貰ったりしているうちに、すっかり夜になってしまった。
両親は、今日も遅い。
疲れて帰ってくるのだろうし、ケーキを渡すのは明日だ。
ここ最近、まともに顔を合わせていなかったので、今から少し緊張している。
「ふう……」
母の用意してくれた夕食を、二人で半分ずつ食べて、そのあと一緒に風呂に入る。
嫌だと言ったのに、何故かアンヘルが無理やり入って来た。
「ね、なんで一緒にお風呂入りたがったの?」
「だって莉子さん、リストカットしちゃうでしょう」
「ストレートだな、オイ」
「そういうの、あんまり言うもんじゃないよ。やっぱアンタ、人間とは感覚が全然違うわ」
「私、見張ってますからね」
「…………アンタ、ゲームとかは知らない癖にリスカは知ってんだね。
ってかさ、リスカって悪い事なの? しちゃいけないの?」
「それは…………」
「理由なんて人それぞれだと思うけど……
私はね、むしゃくしゃする時とか、死にたい程悲しい時とかに切ると落ち着くの。
ストレス解消みたいなもんなの」
「莉子さん、ごめんなさい……
莉子さんの事、よく知りもしないでいけないなんて言っちゃだめですね。ごめんなさい」
「あ、ううん。こっちこそごめん。別に責めてるわけじゃないよ。
リスカしちゃダメって言われたら、死にたくなった時、どうすればいいのかなって思っただけ」
「またお菓子を作るとか……私に八つ当たりをするとか……どうでしょうか」
「…………」
「いけないとは言いません。
でも、少なくとも、私は……悲しいです」
「…………」
「出会ってたった数日なのに、変ですね。莉子さんのこと、放っておけない」
「不思議だね。私もアンタの事結構気に入ってんだ」
「え……莉子さんが、私を?」
「うん。私、さびしがりなの。
本当はずっと、寂しかったの。誰かと一緒に居たかった」
「莉子さん……」
「はは……ごめんね。いきなり変な事言いだして……」
「いえ、嬉しいです」
「……お風呂って不思議だよね。子供の本音を聞き出すならお風呂とも言うし……
リラックスしてるからなのかな。こんな事言っちゃうの。
いつもこれくらい素直でいられたらいいのに……」
「…………」
「でさ、アンヘル」
「はい」
「話変わるけどさ、アンヘルって胸チョーでかいね」
「…………いくらなんでも変わりすぎでは?」
「触っていい? ってか乳首吸っていい?」
「いいわけないでしょう」
「乳首ピンクで可愛い」
「怒りますよ!?」
「あははっ」
「…………もう、せっかく莉子さんの事、好きになりかけていたのに!」
「そういえば天使って両性具有、みたいな説もあるけどアンヘルは違うね」
「どこ見てるんですか!!」
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