ネオンサインとサイコパシー

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番外編1

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「デートに行くよ」

れんの家で過ごすようになって一ヶ月程度が経ったある日、
異常な恋との非日常が当たり前になって来たころ、
恋からそんな事を言われた。


「行かねーよ。俺達そんな仲じゃないだろ」

「だめ。行くの。ボクもうお洒落しちゃったし」

「それお洒落のつもりなのか」

「もう絶対行く気分になってるから、今から予定は変更できないよ。
 どうせキミはニートでうちでだらだらしてるだけなんだから、
 たまにはボクに付き合ってくれたっていいじゃないか」

「いや、だって金ねーんだもん……」

俺が恋と出掛けるのが嫌なのは、恋に奢られるのが嫌だからだ。
デートというくらいなのだから、何処か店へ入ったりもする気なのだろう。
そうなると当然お金は必要だ。
だけど俺はほとんど金を持ってない。
生活の面倒を恋に見て貰って、その上で更に何かを奢って貰いたくはない。

「お金欲しいの? いくら?」

「いやそうじゃない! いい! 要らない!」

「キミにギターを買ってあげようと思ってたの。
 好きだろ、ギター。高校の時べんべんやってたじゃないか」

「ギター!?」

――うう! ギターは喉から手が出るくらい欲しい!!
生活の為に、愛用していたギターを売ってしまった。
最後にギターを弾いたのは、もう随分前な気がする。
プロになることは諦めたけど、音楽は趣味としてでいいからまたやりたい。


「いやでもギターは…… 高い……」

「へえ、そうなんだ?
 ボク、音楽詳しくないから分からないよ。
 でもボクとデートしてくれるなら好きなギター買ってあげるよ。
 デートは援助交際みたいなもんだと思えばいいよ」


1万円程度で買えるギターもあるけど、今の俺にとってはそれすら大金に思えた。
俺は恋に何かを買い与えて貰える立ち場なんだろうか。
恋からしたらペットの猫にねこじゃらしを買ってやるくらいの感覚なのかな。
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