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――5月18日
「くーちゃん、見て! 可愛いよ!」
「ああ」
この日は、朝から浬と一緒に遊んでいた。
浬が何故か突然、動物園に行きたいと言い出したので付き合う事にした。
ついこの間街でちょっとした喧嘩になった事は、浬はもう忘れてしまったようで、今日はとても機嫌がよさそうだ。
「あはは、猿だって!可愛いっ」
今日は平日なので、動物園も空いている。気温も丁度良くて快適だ。
浬も学校の筈だが、こいつは普段からこういう事がよくあった。
いじめられているという訳ではないらしいが、馴染めてはいないのだろう。
まず性格に問題があるし、綺麗すぎる容姿も、田舎の中学では浮いてしまうに違いない。
行きたくなければ無理に行く必要はないと考えているので、俺は学校については何も言わない。
「オレも動物飼いたいな。ライオンとか飼いたい!」
「強そうだな」
「ボケたんだけど……」
「…………」
「本当は蛇とかカメレオンとか飼いたいの。ウーパールーパーとかクリオネも可愛いよね。
まあオレにはくーちゃんが一匹居るから飼わないけどね。くーちゃん、嫉妬しそうだし」
「うん」
「なんなのさっきから!?
またボケたんだよ、ツッコめよ!」
「わ、わかんないよ……」
「も~、ノリ悪いなっ」
本気でペットだと思われていても、俺は別に驚かない。
寧ろ冗談であった事のほうが驚きだ。
「動物はさ、喋んないから可愛いんだよ。
くーちゃんは喋るから、たまに可愛くないの。
一層の事、喉でも潰してやろうかな。それとも舌切って、歯、全部抜いちゃう?どっちのほうが楽かな」
「喉のほうがいいな……
舌がなくなったら浬をぺろぺろ出来なくなる……」
「そっかー……そうだよねー……」
――これは冗談じゃないのか……?
「あ、でも、エッチの時、声出してくれなくなるのは嫌だな。
オレ、くーちゃんに隠語連発おねだりさせるのが好きなのに……」
「…………」
「あ、普段は糸で口を縫っといて、セックスの時に外せばいいのか。
でもそれだと、キスの時に血の味がしそうだなぁ。あーあ、なんか良い方法ないかなー」
「…………」
俺、喋んないほうがいいのかな……。
浬はそれからずっと帰りまで、独りごとのように恐ろしい事を呟いていた。
本気なのか冗談なのか、俺の反応を見て遊んでいるのか、全く区別がつかない。
常識がぶっ壊れた浬なら、本気でやり兼ねないと思った。
だけど、浬がそうしたいならすればいいなんて思ってしまう俺も、相当イカレている。
そういう意味じゃ、俺と浬はお似合いのカップルだ。
動物園を一通り周り終わった時には、夕方になっていた。
「結構楽しかったね~。
くーちゃん、付き合ってくれてありがと!」
「うん」
「オレね、あんまり母さんにこういうトコ連れてって貰ったコトとかないから……
ほら、結構昔からほったらかしにされてたじゃん?」
「…………ああ、うん」
「だから今日はすっごく楽しかったよ。また来ようね」
「ああ。俺でよければいつでも付き合うよ」
「やった! じゃあ今度は水族館ね。遊園地もいいなぁ」
「うん」
そう言って無邪気に笑う浬は、とても可愛らしかった。
こうして笑っていると、年齢よりも幼く見える。
「くーちゃん、見て! 可愛いよ!」
「ああ」
この日は、朝から浬と一緒に遊んでいた。
浬が何故か突然、動物園に行きたいと言い出したので付き合う事にした。
ついこの間街でちょっとした喧嘩になった事は、浬はもう忘れてしまったようで、今日はとても機嫌がよさそうだ。
「あはは、猿だって!可愛いっ」
今日は平日なので、動物園も空いている。気温も丁度良くて快適だ。
浬も学校の筈だが、こいつは普段からこういう事がよくあった。
いじめられているという訳ではないらしいが、馴染めてはいないのだろう。
まず性格に問題があるし、綺麗すぎる容姿も、田舎の中学では浮いてしまうに違いない。
行きたくなければ無理に行く必要はないと考えているので、俺は学校については何も言わない。
「オレも動物飼いたいな。ライオンとか飼いたい!」
「強そうだな」
「ボケたんだけど……」
「…………」
「本当は蛇とかカメレオンとか飼いたいの。ウーパールーパーとかクリオネも可愛いよね。
まあオレにはくーちゃんが一匹居るから飼わないけどね。くーちゃん、嫉妬しそうだし」
「うん」
「なんなのさっきから!?
またボケたんだよ、ツッコめよ!」
「わ、わかんないよ……」
「も~、ノリ悪いなっ」
本気でペットだと思われていても、俺は別に驚かない。
寧ろ冗談であった事のほうが驚きだ。
「動物はさ、喋んないから可愛いんだよ。
くーちゃんは喋るから、たまに可愛くないの。
一層の事、喉でも潰してやろうかな。それとも舌切って、歯、全部抜いちゃう?どっちのほうが楽かな」
「喉のほうがいいな……
舌がなくなったら浬をぺろぺろ出来なくなる……」
「そっかー……そうだよねー……」
――これは冗談じゃないのか……?
「あ、でも、エッチの時、声出してくれなくなるのは嫌だな。
オレ、くーちゃんに隠語連発おねだりさせるのが好きなのに……」
「…………」
「あ、普段は糸で口を縫っといて、セックスの時に外せばいいのか。
でもそれだと、キスの時に血の味がしそうだなぁ。あーあ、なんか良い方法ないかなー」
「…………」
俺、喋んないほうがいいのかな……。
浬はそれからずっと帰りまで、独りごとのように恐ろしい事を呟いていた。
本気なのか冗談なのか、俺の反応を見て遊んでいるのか、全く区別がつかない。
常識がぶっ壊れた浬なら、本気でやり兼ねないと思った。
だけど、浬がそうしたいならすればいいなんて思ってしまう俺も、相当イカレている。
そういう意味じゃ、俺と浬はお似合いのカップルだ。
動物園を一通り周り終わった時には、夕方になっていた。
「結構楽しかったね~。
くーちゃん、付き合ってくれてありがと!」
「うん」
「オレね、あんまり母さんにこういうトコ連れてって貰ったコトとかないから……
ほら、結構昔からほったらかしにされてたじゃん?」
「…………ああ、うん」
「だから今日はすっごく楽しかったよ。また来ようね」
「ああ。俺でよければいつでも付き合うよ」
「やった! じゃあ今度は水族館ね。遊園地もいいなぁ」
「うん」
そう言って無邪気に笑う浬は、とても可愛らしかった。
こうして笑っていると、年齢よりも幼く見える。
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