2 / 12
2
しおりを挟む
――…………
――……
「……遊星」
「…………維弦」
「一緒にかえろ」
「……うん。でも別に待ってなくていいって言ってるのに」
「いいじゃん。 一緒に帰りたいんだもーん」
「……いいけど」
「あ、教室寄ってく」
「ん? なんで?」
「向井が居るかも」
「…………」
「最近、向井この時間まで残ってることあるみたいだから。
もしかしたら今日も居るかも。一緒に帰れるかも」
「居なかったよ」
「そうなのか?」
「俺、さっきまで教室に居たけど、居なかったよ」
「……そうか。残念」
「…………向井のどこが好きなの? なにがいいの」
「……かわいい。あとおもしろい。あと癒される。なんかウサギっぽい」
「……ふーん。
………………変なの」
――…………
――……
――翌朝、暗い気持ちで教室のドアを開ける。
「はあ……」
学校へ行くのは、いつも憂欝だった。
最近は片桐との件で、益々憂欝になってしまった。
片桐には捨てられたくないけれど、だからこそ片桐と顔を合わせるのが辛い。
でも、俺に逃げる場所なんかない。
俺は学校へ行かなくてはならない。
「向井!」
「あ……」
「おはよ!」
「お、おはよう……」
教室に入ってすぐ、同じクラスの神崎遊星に声を掛けられる。
俺がクラスで唯一、ほんの少しだけ関わりのあるヤツだ。
だからって友達だなんて言うのはおこがましいけど……。
「借りてた漫画、おもしろかった。 返す。 ありがとう」
「あ、ああ」
神崎から漫画を数冊手渡される。
俺が貸した漫画だった。
丁寧に袋に入れてあって、大切にしててくれたんだなと分かった。
「『魔法少女探偵まじかる★ぴんく』、最高だった。
ぴんくが犯人に残酷なおしおきをするのがたまらない……」
「わ、分かる……。
絵柄は少女漫画だけど、グロの描写が毎回すごくて……」
「実写映画見たかった…… 前にやってたやつ」
「DVD持ってるからそれも貸そうか?」
「いいのか!?」
「明日持ってくるよ」
「ありがとう!」
「うん」
神崎とは、少女漫画を通して話すようになった。
前に俺が本屋で少女漫画雑誌を立ち読みしてたら、声をかけられたんだ。
俺は姉が居る影響で少女漫画が好きなんだけど、神崎もその手の漫画に興味があったらしい。
興味はあったけど、男だから少女漫画には手を出し難かったんだとか。
それで俺が持ってる漫画いろいろ貸してやってたりして……。
……なんていうか、こういうのって、なんかいいよな。
友達同士みたいでさ。
でも、俺みたいな根暗が神崎の友達を名乗るのは、やっぱりどう考えても図々しい。
身の程を弁えなくちゃ……。
「遊星ッ」
「……ん?」
突然やってきた片桐が神崎に抱きついて、べたべたし出す。
腕を取って、恋人みたいに指をするりと絡ませて……
「今日放課後タピオカ飲みに行こ~」
「えー……また? 昨日も行ったのに」
「奢るからさー」
「んー……」
片桐と神崎は、距離が近かった。
いつも片桐がべたべたして、神崎はそれを拒まない。
どうやら二人は幼馴染みらしく、昔から仲が良いのだとか。
正直俺は、それが気に入らなかった。
一人前に、嫉妬してるんだ。
神崎と居る時の片桐が、凄く楽しそうだから……。
片桐は、俺と居たってそんな風に幸せそうに笑わない。
俺が片桐を楽しい気持ちにしてやることなんか、できない。
……神崎が、羨ましい。
「向井も行く?」
「……えっ?」
――やば……
話聞いてなかった……。
「タピオカ」
「タピ……?」
「飲んだことある? 一緒に行かない?」
「え……いや俺は…………」
片桐のほうをチラリと見れば彼は、凄く不機嫌そうな顔をしていた。
……怒らせてしまった。
多分だけど、片桐は…………
「俺は、今日はダメだから…… ごめん……」
「んー、残念……向井と遊んでみたい……」
「はは……ご、ごめんな……」
俺は二人から顔を逸らし、逃げるように自分の席へ向かった。
そして何かを誤魔化すように、さっさと椅子に座る。
――たぶんだけど、片桐は……
片桐は、神崎のことが、好きなんだ…………
――……
「……遊星」
「…………維弦」
「一緒にかえろ」
「……うん。でも別に待ってなくていいって言ってるのに」
「いいじゃん。 一緒に帰りたいんだもーん」
「……いいけど」
「あ、教室寄ってく」
「ん? なんで?」
「向井が居るかも」
「…………」
「最近、向井この時間まで残ってることあるみたいだから。
もしかしたら今日も居るかも。一緒に帰れるかも」
「居なかったよ」
「そうなのか?」
「俺、さっきまで教室に居たけど、居なかったよ」
「……そうか。残念」
「…………向井のどこが好きなの? なにがいいの」
「……かわいい。あとおもしろい。あと癒される。なんかウサギっぽい」
「……ふーん。
………………変なの」
――…………
――……
――翌朝、暗い気持ちで教室のドアを開ける。
「はあ……」
学校へ行くのは、いつも憂欝だった。
最近は片桐との件で、益々憂欝になってしまった。
片桐には捨てられたくないけれど、だからこそ片桐と顔を合わせるのが辛い。
でも、俺に逃げる場所なんかない。
俺は学校へ行かなくてはならない。
「向井!」
「あ……」
「おはよ!」
「お、おはよう……」
教室に入ってすぐ、同じクラスの神崎遊星に声を掛けられる。
俺がクラスで唯一、ほんの少しだけ関わりのあるヤツだ。
だからって友達だなんて言うのはおこがましいけど……。
「借りてた漫画、おもしろかった。 返す。 ありがとう」
「あ、ああ」
神崎から漫画を数冊手渡される。
俺が貸した漫画だった。
丁寧に袋に入れてあって、大切にしててくれたんだなと分かった。
「『魔法少女探偵まじかる★ぴんく』、最高だった。
ぴんくが犯人に残酷なおしおきをするのがたまらない……」
「わ、分かる……。
絵柄は少女漫画だけど、グロの描写が毎回すごくて……」
「実写映画見たかった…… 前にやってたやつ」
「DVD持ってるからそれも貸そうか?」
「いいのか!?」
「明日持ってくるよ」
「ありがとう!」
「うん」
神崎とは、少女漫画を通して話すようになった。
前に俺が本屋で少女漫画雑誌を立ち読みしてたら、声をかけられたんだ。
俺は姉が居る影響で少女漫画が好きなんだけど、神崎もその手の漫画に興味があったらしい。
興味はあったけど、男だから少女漫画には手を出し難かったんだとか。
それで俺が持ってる漫画いろいろ貸してやってたりして……。
……なんていうか、こういうのって、なんかいいよな。
友達同士みたいでさ。
でも、俺みたいな根暗が神崎の友達を名乗るのは、やっぱりどう考えても図々しい。
身の程を弁えなくちゃ……。
「遊星ッ」
「……ん?」
突然やってきた片桐が神崎に抱きついて、べたべたし出す。
腕を取って、恋人みたいに指をするりと絡ませて……
「今日放課後タピオカ飲みに行こ~」
「えー……また? 昨日も行ったのに」
「奢るからさー」
「んー……」
片桐と神崎は、距離が近かった。
いつも片桐がべたべたして、神崎はそれを拒まない。
どうやら二人は幼馴染みらしく、昔から仲が良いのだとか。
正直俺は、それが気に入らなかった。
一人前に、嫉妬してるんだ。
神崎と居る時の片桐が、凄く楽しそうだから……。
片桐は、俺と居たってそんな風に幸せそうに笑わない。
俺が片桐を楽しい気持ちにしてやることなんか、できない。
……神崎が、羨ましい。
「向井も行く?」
「……えっ?」
――やば……
話聞いてなかった……。
「タピオカ」
「タピ……?」
「飲んだことある? 一緒に行かない?」
「え……いや俺は…………」
片桐のほうをチラリと見れば彼は、凄く不機嫌そうな顔をしていた。
……怒らせてしまった。
多分だけど、片桐は…………
「俺は、今日はダメだから…… ごめん……」
「んー、残念……向井と遊んでみたい……」
「はは……ご、ごめんな……」
俺は二人から顔を逸らし、逃げるように自分の席へ向かった。
そして何かを誤魔化すように、さっさと椅子に座る。
――たぶんだけど、片桐は……
片桐は、神崎のことが、好きなんだ…………
0
あなたにおすすめの小説
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
Bランク冒険者の転落
しそみょうが
BL
幼馴染の才能に嫉妬したBランク冒険者の主人公が、出奔した先で騙されて名有りモブ冒険者に隷属させられて性的に可哀想な日々を過ごしていたところに、激重友情で探しに来た粘着幼馴染がモブ✕主人公のあれこれを見て脳が破壊されてメリバ風になるお話です。
◯前半は名有りモブ✕主人公で後半は幼馴染✕主人公
◯お下品ワードがちょいちょい出てきて主人公はずっと性的に可哀想な感じです(・_・;)
◯今のところほとんどのページにちょっとずつ性描写があります
BL小説家ですが、ライバル視している私小説家に迫られています
二三@冷酷公爵発売中
BL
BL小説家である私は、小説の稼ぎだけでは食っていけないために、パン屋でバイトをしている。そのバイト先に、ライバル視している私小説家、穂積が新人バイトとしてやってきた。本当は私小説家志望である私は、BL小説家であることを隠し、嫉妬を覚えながら穂積と一緒に働く。そんな私の心中も知らず、穂積は私に好きだのタイプだのと、積極的にアプローチしてくる。ある日、私がBL小説家であることが穂積にばれてしまい…?
※タイトルを変更しました。(旧題 BL小説家と私小説家がパン屋でバイトしたらこうなった)2025.5.21
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる