こんなのはハーレムと呼ばない。

gacchi(がっち)

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17.これで旅ができる

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涙目になったルゥを胸に寄せて頭を撫でて泣き止ませる。
あぁ、もう。無駄に泣かせやがって。
きっとライムを睨みつけると、ライムは腰を抜かして座り込んでいた。

「…何、何なの?この子。」

「見てわからなかった?ルゥは竜人だよ。
 竜人の番を奪おうだなんて死ぬ気なのか?」

「竜人…?番!?」

「そう。番を奪おうとすれば殺されても文句は言えないだろ?
 だから、完全にあきらめたほうが身のためだぞ。」

「…。」

ようやく理解したのか、がっくりとうなだれたライムは放置することにした。
どうせ他の男どもが何とかするんだろうし。

気が付いたら周りの者たちが俺とルゥを遠巻きにしている。
竜人に下手に関わるのも嫌だろうし、黒髪を見慣れていない者も多いだろう。
ふと見ると騒ぎになったからか、カウンターの前が空いていた。
並んでいたものたちもどこかに行ってしまったようだ。

「さっさと登録して帰るか…。
 受付お願いできる?」

「はい!A級のユアン様ですね。活動再開ということでよろしいですか?」

さすがにギルドの受付が俺たちを避けることはなかった。
こういうところ、本当にプロだなと感心する。
しかもライムとの話が聞こえていたようで説明しなくてもよさそうだ。

「ああ、頼む。あと、この子の冒険者登録も頼む。」

「わかりました。確認してもいいですか?
 その女性は竜人で、ユアン様は番ということでよろしいでしょうか?」

「そうだけど、何かあるのか?」

「あります!
 竜人の方は身体能力が高いため、最初からC級スタートになっているんです。
 それと、番の方は登録できることになっています。
 これを登録しておくと、お一人での指名依頼は断れます。
 番が離れることは無いですからね。
 指名依頼は必ず二人で受けることができるようになるんです。」

「お。それいいな。じゃあ、登録してくれ。」

「はい!少々お待ちください!」

あまり獣人に関わって来なかったから番のルールをよくわかっていない。
だけど、要はルゥを優先して、ルゥだけを大事にすればいいってことなんだろう?
なら簡単だ。番と言えば他の女が寄ってこないことも分かったし。
…寄ってきてもルゥが追い払ってくれそうだしな。

「これで登録終わり?」

「後はこの紙に名前とか書けば終わりだ。書けるな?
 そうしたらいろんなとこに行こう?」

「うん!」

大きくなったとはいえ俺の胸くらいまでしか身長はないし、
華奢な身体に変わりはないけれど…。
先ほど見た竜人の本能はすごかった。
ルゥは下手したら俺よりも強くなるかもしれない。
冒険者の相棒としてこれ以上頼りになる恋人はいないだろうな。




こうして俺とルゥは冒険者になるのだが、
俺を狙う貴族からの護衛依頼はひっきりなしだった。
貴族にはあまり番という認識が浸透していないのかもしれない。
結果的に、愛人になりたいという令嬢たちは皆ルゥに蹴散らされていた。
本当に頼もしいことこの上ない。

数年後には二人そろってS級になり…
冒険者夫婦「黒の番」と呼ばれるようにまでなった。
S級冒険者とはいえ、俺たちはまだ二十代の若手で、
将来はギルド長に…なんて言われてたりもしたのだが。

ルゥが身ごもった後はあっさりと冒険者をやめて魔の山に戻った。
その後、俺たちの子孫が栄え、黒の竜人が最強の竜人と呼ばれるようになったころ、
人間としては長生きした俺も死を迎えることになる。
まぁ、幸せに暮らしたから、何一つ後悔はなく逝けたけどね。



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