その手をとって、反撃を

gacchi(がっち)

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17.王宮のお茶会

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王宮からの迎えの馬車が来て、ミリアと乗り込む。
迎えに来た女官は私一人じゃないことに嫌そうな顔をしていたが、
特に聞かれることもなかったので説明はしなかった。

令嬢がお茶会に呼ばれて侍女を連れて行くのは当たり前のことで、
今まで侯爵令嬢の私に侍女がいなかったのが不思議なくらいだ。

王宮に着いて女官に案内されるままについていくが、
どう考えても行先がおかしい。

何も言わずに早歩きで進む女官に聞くこともできず、
仕方なく後ろについていく。
だが、着いたのはどう見てもマルセル様の私室のようだ。

「こちらでお待ちください」

「あの、ここはもしかしてマルセル様の私室でしょうか?」

「はい。さぁ、中へどうぞお入りください」

「ええぇ……」

どうしてマルセル様の私室でお茶会を?
初めてのお茶会だというのに私室だというのはありえないし、
そもそも私は婚約者でも婚約者候補でもない。

疑問に思いながらも中に入ろうとすると、
部屋の中で待機していた女官にミリアが止められる。

「そこの者は外で待機していなさい」

「え?ミリアは私の侍女ですが?」

「マルセル様がお呼びしたのはナディア様だけです。
 侍女は廊下で待機させてください」

私一人でマルセル様の私室に入るなんてありえない。
そう抗議する前にミリアが毅然とした態度で入って来る。

「出て行きなさいと言ったでしょう!」

「あなたは王宮の女官ですよね?」

「な、なによ」

「私はクラデル侯爵家の侍女です。
 ナディア様から絶対に離れないようにとシリウス様より命じられています。
 それを王宮女官が拒めると?」

「!!」

「わかったら、従ってください」

「……」

悔しそうな顔をしながらも女官は黙った。
どうやらミリアのほうが立場は上のようだ。

「安心してください、ナディア様。
 たとえ陛下からの命令があったとしても離れることはありません」

「あ、ありがとう、ミリア」

部屋の中央にあるソファに座るとミリアは私のすぐ後ろに控えた。
シリウス様から厳しく言われているのか、少しも離れる気はないらしい。

それほど待つこともなくマルセル様が部屋に入って来る。
ミリアを見て驚いていたが、女官から小声で報告を受けてうなずいている。

「よく来てくれたね、ナディア。元気にしていた?」

「はい。マルセル様もお変わりなくお過ごしでしょうか」

「ああ、僕はこれ以上ないくらいご機嫌だよ」

「そうでしたか」

言われてみればいつも以上に楽しそうな顔をしている。
何かいいことでもあったのだろうか。

女官がお茶の用意をして部屋から出て行く。
もともとそのような予定だったのなら、ミリアがいてくれてよかった。
マルセル様の私室に二人きりでいたなんて言われたら、
男女の関係になっていると思われても仕方ない。

本当にマルセル様は何を考えているのか……

とりあえず目の前に置かれたお茶に手を伸ばす。
一口でも飲まないと会話は始まらない。

王宮のお茶を飲むのも久しぶり。
王子妃教育の一環でお茶を飲む機会は多かった。
美味しいとは思うが、寮の部屋で一人で飲めたらもっと美味しいのに。

「そこの侍女はクラデル侯爵家がつけたそうだね」

「はい、学園の同級生ですが、私の専属侍女になりました」

「それはもしかしてシリウス様が手配したの?」

「ええ、そのようです。
 彼女が学園を卒業したら就職したいというのは知っていましたので、
 それで私の侍女にしてくれたのだと思います」

「ふうん。シリウス様の弟子になったというのは聞いたが、
 ずいぶんと可愛がられているんだね」

それはそう思う。自分でも驚いているから、
マルセル様が驚くのも無理はない。

「ねぇ、前に言っていたこと覚えている?
 僕の側妃にならないかって誘ったの」

「……ええ、覚えてはいます」

「覚えてはいます、か。本気にしていなかったとか?」

「はい。私などを側妃にするなんて冗談だと思っていました。
 マルセル様が王太子になることも決まっていませんし、
 何よりもマルセル様にはアナイス様が。
 結婚して間もないのに側妃の話が出るなんて信じられませんから」

ルグラン公爵家のアナイス様と結婚したのに、
そう簡単に側妃が娶れるとは思わない。

それにマルセル様が王太子になると決まったわけでもない。
誰か側妃を娶るにしても数年は先の話だろうと思う。

「僕は本気だよ。
 まぁ、たしかにすぐに側妃にするのは無理だろう。
 ナディアはまだ学生だしね。
 だけど、二十歳になるまで待っていてくれたら……
 いや、それよりも先に僕が王太子になるだろう」

「王太子に指名すると陛下が?」

「それはまだだけど、ロドルフがナディアを手放したし、
 レベッカに王太子妃になる素養はない。
 もうすでに王子妃教育で音を上げているようじゃね」

「それは……」

レベッカ様なら大丈夫かと思っていたけれど、
やはり短期間で王子妃の教育を終わらせるのは難しいのか。
だけど、それをやり遂げなくては王子妃にはなれない。

せめて同盟国の言語だけでも身につけておかないと、
婚約すら認めてもらえないはず。

「ナディアと婚約解消した次の日からレベッカは王宮に来ている。
 しかも毎日だ。それなのに全然進まないことにイラついている。
 まだ王宮内だというのに文句を言いながら帰っているらしい」

「まぁ……」

思うようにいかなくてイラつくのはわかるけれど、
おそらく屋敷に帰るまでのことはすべて陛下に報告されている。
教師たちへの文句や愚痴なども聞かれていることになる。

ロドルフ様はどうしてもレベッカ様と結婚したいだろうから、
陛下に見捨てられるのも時間の問題かもしれない。

だけど、問題はそれだけではない。

「私を側妃にしたいという話はアナイス様にはしたのでしょうか?」
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