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26.ロドルフ様の変化
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「ロドルフ様が話しかけているのも噂になっていました」
「どういう噂?」
「婚約解消したのが惜しくなったのではないか、
また再婚約するのではないかと」
「まさか!」
「ですが、レベッカ様と婚約されたわけではないですからね。
王子妃教育が滞っているとも聞いていますし、
王太子妃教育まで終えているナディア様と復縁したくなるのも当然かと」
「そういう理由で復縁なんてしたくないわ」
いや、どういう理由があったとしても再婚約なんてしたくないけれど。
できれば関わってほしくないと思っているのに、
それからもロドルフ様が私に話しかけてくるのは止まらなかった。
「ナディア」
呼びかけられて振り向くと、ロドルフ様が一人でいた。
レベッカ様は化粧直しにでも行っているのか、
不在の隙をねらって話しかけに来たらしい。
「どうかしましたか?」
「あのさ、やっぱり勝負なんかやめたほうがいいと思うんだ。
お前からシリウス様にそう言えよ。勝負を辞退します、って」
「辞退?」
「だって、勝負してしまったら、
お前は学園を退学になってしまうじゃないか」
「……それを言い出したのはロドルフ様ではないのですか?」
自分から条件を増やしたくせにどういうつもりなのだろう。
「いや、その時はそう思っていたんだけど、
よく考えたらそこまでする必要はないなって。
お前は学園を辞めさせられてしまったら、
クラデル侯爵家から追い出されてしまうんじゃないのか?」
「……それは聞いていませんが、
おそらく追い出されることはないと思います。
アンペール侯爵家と違って」
「そうか……アンペール侯爵家からは追い出されたんだよな。
俺と婚約解消してしまったから」
そうだけど、そうじゃない。
アンペール侯爵家から出たかったのは私だ。
なのに、ロドルフ様は悲しげに目を伏せた。
「なぁ、俺と婚約を……」
「ちょっと!ロドルフ!」
「げ!戻って来たのか、レベッカ」
いつの間にか教室に戻って来ていたレベッカ様が、
ロドルフ様に詰め寄って怒り始めた。
「今、何を言おうとしていたの?
まさかナディアに婚約しようって、
言おうとしたんじゃないでしょうね!」
「いや、その……」
「本当に言おうとしていたのね!
信じられない!いいわ、もうロドルフなんていらない。
私はシリウス様の弟子になって、婚約者にもしてもらうわ!」
「え?シリウス様の婚約者?」
ロドルフ様に呆れたからか、シリウス様の婚約者になると言い出したレベッカに、
教室にいた者たちがざわめきだした。
「ふふふ。弟子になれば、いつだってシリウス様に会える。
一番近くにいれば婚約者に選ばれることだってありえるじゃない」
「そんなわけは……」
その理論で言うと、私がシリウス様の婚約者になってもおかしくないことになる。
だけど、そんなことはまったくない……
ここで気がついた。ないと言えるのか?
レベッカ様がシリウス様にあんな風に抱き寄せられたり、抱き着いたりしていたら。
シリウス様がレベッカ様に心を許したら、婚約者になることだってありえるの?
「もうロドルフなんていらないわ。
ナディア様にあげるから好きにしてちょうだい」
「おい、レベッカ!」
「浮気者なんていらないのよ。もう話かけないでちょうだい。
ああ、勝負の条件を増やしましょう?
一位になった者だけがシリウス様の弟子になれることに。
私以外の弟子なんていらないもの」
「勝手に条件を増やすなよ!」
「いいじゃない。ロドルフと一緒に修行するなんて嫌だもの」
「……俺だって、俺だってお前と一緒にいるのはもうごめんだ!」
言い合いを始めた二人にどうしていいかわからないでおろおろしていると、
教師が教室に入って来て強制的に話は終わる。
その日からロドルフ様とレベッカ様は本当に別れてしまったようで、
二人は別々に行動し始めた。
レベッカ様は王子妃教育にも行かなくなったらしく、
ロドルフ様の妃になることも正式に断ったそうだ。
ロドルフ様はレベッカ様から離れたからか、
私と行動を共にしようとしてきたが、
休憩時間はミリアの教室に逃げ込むことで距離を置いている。
試験まであと三週間。
そろそろ魔力調整は終わる時期だけど、それから魔術の訓練をしなければいけない。
試験のことだけに集中したいのに、悩むことが多すぎて頭が痛い。
いつも通り魔術演習の授業を終え、
ようやく青三と紫一の間を行ったり来たりするところまできた。
「どうしたんだ、ため息ばかりだな」
「本当に間に合うのか心配で」
「お前の魔術の訓練は三日あれば十分だ」
「三日ですか!?」
「ああ、だから心配しなくていい。
青三で安定するまではこのまま続けろ。
それが一番うまくなる近道だ」
「……わかりました」
自信ありげなシリウス様を信じたいけれど、信じ切れない自分がいる。
学園を辞めてしまったら、シリウス様の弟子でなくなったら、
私はどうしたらいいのかわからない。
クラデル侯爵家から追い出されることはないと思っているけれど、
何もできないまま置いてもらえるのもつらい。
焦ってもできることは限られている。
それからも魔術演習の授業は時間いっぱい魔力調整に費やす。
早く安定させなくてはと思えば思うほど魔力は乱れる。
やっと魔力が青三で安定したのは、試験の一週間前だった。
「どういう噂?」
「婚約解消したのが惜しくなったのではないか、
また再婚約するのではないかと」
「まさか!」
「ですが、レベッカ様と婚約されたわけではないですからね。
王子妃教育が滞っているとも聞いていますし、
王太子妃教育まで終えているナディア様と復縁したくなるのも当然かと」
「そういう理由で復縁なんてしたくないわ」
いや、どういう理由があったとしても再婚約なんてしたくないけれど。
できれば関わってほしくないと思っているのに、
それからもロドルフ様が私に話しかけてくるのは止まらなかった。
「ナディア」
呼びかけられて振り向くと、ロドルフ様が一人でいた。
レベッカ様は化粧直しにでも行っているのか、
不在の隙をねらって話しかけに来たらしい。
「どうかしましたか?」
「あのさ、やっぱり勝負なんかやめたほうがいいと思うんだ。
お前からシリウス様にそう言えよ。勝負を辞退します、って」
「辞退?」
「だって、勝負してしまったら、
お前は学園を退学になってしまうじゃないか」
「……それを言い出したのはロドルフ様ではないのですか?」
自分から条件を増やしたくせにどういうつもりなのだろう。
「いや、その時はそう思っていたんだけど、
よく考えたらそこまでする必要はないなって。
お前は学園を辞めさせられてしまったら、
クラデル侯爵家から追い出されてしまうんじゃないのか?」
「……それは聞いていませんが、
おそらく追い出されることはないと思います。
アンペール侯爵家と違って」
「そうか……アンペール侯爵家からは追い出されたんだよな。
俺と婚約解消してしまったから」
そうだけど、そうじゃない。
アンペール侯爵家から出たかったのは私だ。
なのに、ロドルフ様は悲しげに目を伏せた。
「なぁ、俺と婚約を……」
「ちょっと!ロドルフ!」
「げ!戻って来たのか、レベッカ」
いつの間にか教室に戻って来ていたレベッカ様が、
ロドルフ様に詰め寄って怒り始めた。
「今、何を言おうとしていたの?
まさかナディアに婚約しようって、
言おうとしたんじゃないでしょうね!」
「いや、その……」
「本当に言おうとしていたのね!
信じられない!いいわ、もうロドルフなんていらない。
私はシリウス様の弟子になって、婚約者にもしてもらうわ!」
「え?シリウス様の婚約者?」
ロドルフ様に呆れたからか、シリウス様の婚約者になると言い出したレベッカに、
教室にいた者たちがざわめきだした。
「ふふふ。弟子になれば、いつだってシリウス様に会える。
一番近くにいれば婚約者に選ばれることだってありえるじゃない」
「そんなわけは……」
その理論で言うと、私がシリウス様の婚約者になってもおかしくないことになる。
だけど、そんなことはまったくない……
ここで気がついた。ないと言えるのか?
レベッカ様がシリウス様にあんな風に抱き寄せられたり、抱き着いたりしていたら。
シリウス様がレベッカ様に心を許したら、婚約者になることだってありえるの?
「もうロドルフなんていらないわ。
ナディア様にあげるから好きにしてちょうだい」
「おい、レベッカ!」
「浮気者なんていらないのよ。もう話かけないでちょうだい。
ああ、勝負の条件を増やしましょう?
一位になった者だけがシリウス様の弟子になれることに。
私以外の弟子なんていらないもの」
「勝手に条件を増やすなよ!」
「いいじゃない。ロドルフと一緒に修行するなんて嫌だもの」
「……俺だって、俺だってお前と一緒にいるのはもうごめんだ!」
言い合いを始めた二人にどうしていいかわからないでおろおろしていると、
教師が教室に入って来て強制的に話は終わる。
その日からロドルフ様とレベッカ様は本当に別れてしまったようで、
二人は別々に行動し始めた。
レベッカ様は王子妃教育にも行かなくなったらしく、
ロドルフ様の妃になることも正式に断ったそうだ。
ロドルフ様はレベッカ様から離れたからか、
私と行動を共にしようとしてきたが、
休憩時間はミリアの教室に逃げ込むことで距離を置いている。
試験まであと三週間。
そろそろ魔力調整は終わる時期だけど、それから魔術の訓練をしなければいけない。
試験のことだけに集中したいのに、悩むことが多すぎて頭が痛い。
いつも通り魔術演習の授業を終え、
ようやく青三と紫一の間を行ったり来たりするところまできた。
「どうしたんだ、ため息ばかりだな」
「本当に間に合うのか心配で」
「お前の魔術の訓練は三日あれば十分だ」
「三日ですか!?」
「ああ、だから心配しなくていい。
青三で安定するまではこのまま続けろ。
それが一番うまくなる近道だ」
「……わかりました」
自信ありげなシリウス様を信じたいけれど、信じ切れない自分がいる。
学園を辞めてしまったら、シリウス様の弟子でなくなったら、
私はどうしたらいいのかわからない。
クラデル侯爵家から追い出されることはないと思っているけれど、
何もできないまま置いてもらえるのもつらい。
焦ってもできることは限られている。
それからも魔術演習の授業は時間いっぱい魔力調整に費やす。
早く安定させなくてはと思えば思うほど魔力は乱れる。
やっと魔力が青三で安定したのは、試験の一週間前だった。
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