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9.視察に来る
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「王子が視察に来る?…王子ってどちらのですか?」
「フレッド様だそうです。」
「…ちなみに今まで王子が視察に来ることってありました?」
「初めてだと思いますよ。
視察の授業はロージー先生で、案内はユリアス君にしてほしいと要望が来ています。
…大丈夫ですか?」
事務員さんが申し訳なさそうに伝えてくる。
おそらくフレッド様が私が同級生だったことと、ユリアス様の婚約者を取った事を知っているのだろう。
今まで無かったのに突然視察に来ることと言い、案内を私たちに頼むことと言い、何か企んでくるのは間違いない。
とりあえず視察のことは学校長にも伝えてもらうようにお願いした。
何かあった時に助けてくれるのは学校長しか思いつかなかった。
「というわけで来週に視察に来るようなのだけど、大丈夫?
無理なら誰か生徒に助手を頼むこともできると思うけど。」
「俺を代えてもロージーの授業を視察するのは変わらないんだろう?
だったら一緒にいたほうがいい。何を企んでるのかわからないし。
…ロージーは最近綺麗さがにじみ出てきちゃってるから、より気を付けて。
間違ってもフレッド王子に見初められないように。」
「え。怖いからそんなこと言うのやめてよ。
…にじみ出てる?」
「うん、気を緩めすぎて、所作が変わってる。
普通の生徒は平民ばかりだからロージーが貴族だとわかればそれで納得する。
だけど見る者が見れば違いはあきらかだ。」
「そっか…わかった。気を付けるね。
ユリアスも困ったことになったら、すぐに学校長に言いに行こう。」
「学校長に頼るのか…できれば避けたいな。」
「私もできれば頼りたくない。
学校長が権力とか貴族的なものを嫌いなの知っているし。
だけど最終的にどうにもならなくなったら頼るしかないよ。」
「わかった。しかし、何しに来るんだろうな。」
フレッド様はマリージュ様との婚約破棄の後、キャロル様とは婚約されていない。
王位継承順位はそのまま変わってはいないが、それは議会がまだ話し合いを続けているからだそうだ。
第一王子のマイケル様の母である側妃様は身分が低く、後ろ盾も無い。
王妃様の子を押しのけて王太子にするには難しかった。
かと言って、筆頭公爵家をないがしろにするような王子を王太子にすることもできない。
話し合いは平行線をたどるように続けられていた。
そんな時に魔術師学校に視察?
本当に何を考えているのだろうか。
フレッド様が視察の訪れたのは一週間後の午後だった。
その隣にはキャロル様、側近のイルジェ様とハンス様も一緒にいた。
本当ならその横には側近としてユリアス様がいたはずだった。
自分がいたはずの場所、自分の婚約者だった令嬢。
共にいるはずだった仲間たち。
ユリアスはそれらを何の感情も見えない目で出迎えていた。
「フレッド様だそうです。」
「…ちなみに今まで王子が視察に来ることってありました?」
「初めてだと思いますよ。
視察の授業はロージー先生で、案内はユリアス君にしてほしいと要望が来ています。
…大丈夫ですか?」
事務員さんが申し訳なさそうに伝えてくる。
おそらくフレッド様が私が同級生だったことと、ユリアス様の婚約者を取った事を知っているのだろう。
今まで無かったのに突然視察に来ることと言い、案内を私たちに頼むことと言い、何か企んでくるのは間違いない。
とりあえず視察のことは学校長にも伝えてもらうようにお願いした。
何かあった時に助けてくれるのは学校長しか思いつかなかった。
「というわけで来週に視察に来るようなのだけど、大丈夫?
無理なら誰か生徒に助手を頼むこともできると思うけど。」
「俺を代えてもロージーの授業を視察するのは変わらないんだろう?
だったら一緒にいたほうがいい。何を企んでるのかわからないし。
…ロージーは最近綺麗さがにじみ出てきちゃってるから、より気を付けて。
間違ってもフレッド王子に見初められないように。」
「え。怖いからそんなこと言うのやめてよ。
…にじみ出てる?」
「うん、気を緩めすぎて、所作が変わってる。
普通の生徒は平民ばかりだからロージーが貴族だとわかればそれで納得する。
だけど見る者が見れば違いはあきらかだ。」
「そっか…わかった。気を付けるね。
ユリアスも困ったことになったら、すぐに学校長に言いに行こう。」
「学校長に頼るのか…できれば避けたいな。」
「私もできれば頼りたくない。
学校長が権力とか貴族的なものを嫌いなの知っているし。
だけど最終的にどうにもならなくなったら頼るしかないよ。」
「わかった。しかし、何しに来るんだろうな。」
フレッド様はマリージュ様との婚約破棄の後、キャロル様とは婚約されていない。
王位継承順位はそのまま変わってはいないが、それは議会がまだ話し合いを続けているからだそうだ。
第一王子のマイケル様の母である側妃様は身分が低く、後ろ盾も無い。
王妃様の子を押しのけて王太子にするには難しかった。
かと言って、筆頭公爵家をないがしろにするような王子を王太子にすることもできない。
話し合いは平行線をたどるように続けられていた。
そんな時に魔術師学校に視察?
本当に何を考えているのだろうか。
フレッド様が視察の訪れたのは一週間後の午後だった。
その隣にはキャロル様、側近のイルジェ様とハンス様も一緒にいた。
本当ならその横には側近としてユリアス様がいたはずだった。
自分がいたはずの場所、自分の婚約者だった令嬢。
共にいるはずだった仲間たち。
ユリアスはそれらを何の感情も見えない目で出迎えていた。
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