あぁ、もう!婚約破棄された騎士がそばにいるからって、聖女にしないでください!

gacchi(がっち)

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48.お友達でしょう

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「ねぇ、精霊の滝で何があったの?」

もう何度目の質問だろうか。
何度答えてもマリージュ様が納得してくれない。

「ですから、精霊のいたずらで湖の中に引き込まれましたけど、
 すぐに解放されました。30分くらいでしょうか。
 その後は身体も冷えてしまったので、すぐに帰ってきましたよ?」

「それはもう聞いたわ。」

「そうですよね。私も答えるのは何度目でしょうか。
 …他に何も報告することが無いのですが、
 どうしてそんなに気になるのですか?」

そう返すと、マリージュ様の頬がぷぅっとふくらんで、拗ねたのがわかる。
でも、そんな風に拗ねられても困るのだけど…。


「だって、帰ってきたら、ユリアスが素顔になってるし!
 そりゃ、私だって王家の血筋だから認識阻害かけられても、
 だいたいどんな顔なのかはわかるけど…。
 今まで隠してたのをあれだけ堂々と出すようになったのよ?
 何かあったと思うじゃない!」

「あぁ…ユリアスの変化が精霊の滝で何かあったと思って聞いてたんですか。
 それを最初から聞いてくれたら答えましたのに。」

「え!やっぱり何かあったの!?」

ものすごくうれしそうなマリージュ様に、残念な気持ちになりながら答える。
きっと期待外れの答えだろうなぁ…。

「…ユリアス、認識阻害を無意識にかけてたそうです。」

「は?」

「幼いころから無意識にかけてて、
 常時発動してたの気が付いてなかったそうです。」

「はぁあああああああ?何それ!
 そんなわけないでしょう!?どれだけ魔力消費すると思ってるのよ!」

そう言う反応になると思ってた。
私も驚いたけど、何となく納得してしまってた。


「本当みたいですよ。だから、今はかけていないんです。
 確かに他の人だったら信じられないですけど、
 考えてみたら納得したことがいくつかあるんです。
 ユリアスって、かっこいいでしょう?」

「ええ、そうね。」

「キャロル様がフレッド様に浮気したり、目の前でいちゃついてた理由。
 ユリアスをうまく認識できてなかったんじゃないですか?
 ユリアスが素顔のままでいたら、そんなことなかったと思うんですよね。」

「…あぁ、そういうことね。
 王族が降嫁したことないモンマイド侯爵家じゃ、王家の血ははいっていないわ。
 闇属性だし…顔はぼんやり見えてるくらいよね。
 認識阻害かけられていたことすら気が付いてないでしょう。
 それじゃユリアスのことをたいした顔じゃないとか思ってるかも。
 普通の顔のフレッド王子と浮気したのも似たような顔だと思ってたら、
 王族の方が魅力的に見えたのかもしれないわね。」

「そうですよね…
 どう考えても、キャロル様がユリアスをちゃんと見えていたとは思えなくて。」

「それにしても…無意識だとは。
 ずっと認識阻害をかけてるのは、
 護衛騎士だから目立たないようにしてるんだとばかり思ってた。
 ほら、フレッドについている時は王子様より目立ったらダメでしょう?
 ロージーについてる時は、女が寄ってこないようにするためかと思ってたわ。」

「帰ったら騒がれるでしょうね…。」

「今も大変よ?
 騎士団の訓練を見に、女官や侍女がさぼってしまって。
 女官長が騎士団まで行って、さぼってる者たちに説教していたわ。」

「…まぁ、それも明後日には帰国しますから。」

「二人がいなくなったら寂しくなるわ。
 ロージーは…私の初めてのお友達だから。」

「えっ。私なんかがマリージュ様のお友達ですか!?」

「…何よぅ。身分は同じ公爵令嬢じゃない。
 私の友達になるのが嫌なの?」

「いいえ…そういえば、同じ公爵家なんですね…忘れてました。
 でも、マリージュ様は半年後には王妃になるのでは?」

「王妃だとしても、隣国の公爵令嬢なら友達でおかしくないでしょう。
 …帰国しても手紙送ってもいい?」

「ふふっ。もちろんです!
 私も帰国したら手紙書きますね。
 落ち着いたのかどうか、マリージュ様も気になると思いますし。」

「そうね…マイケル王子か…。困った人ね。」

ルーニア国に来て、一月が過ぎた。
明後日には帰国する予定になっている。あちらは本当に落ち着いたのだろうか。
学校長は大丈夫だと言っていたけれど、陛下との話はついているのだろうか。

不安はあるけれど、帰らなければ先には進めない。
自分の願いは自分で叶えると決めたのだから、
まずは自分の姿を隠さずに生きられるようにしたい。

王太子に捨てられて泣いていたのは、今のロージーではない。
ロージーが好きなのは王太子ではないのだから、もうあの気持ちは捨てて、
新しい気持を受け入れ前に進もうと思っていた。





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